植松氏の日本でのライブは今年初!

 『ファイナルファンタジー』シリーズを始め、数々のゲームの音楽を手掛けていることで知られる作曲家の植松伸夫氏のライブ出演情報が到着! 2013年8月17日、18日に開催される“ファンタジー・ロック・フェス 2013”に出演するという。会場では、植松氏が率いるバンド“EARTHBOUND PAPAS(アースバウンド・パパス)”のセカンドアルバム「DANCING DAD」が先行発売されるとのこと(※一般販売は2013年9月1日より)。植松氏に、ライブでのパフォーマンスと、セカンドアルバムの内容について聞いた。

※本インタビューは、週刊ファミ通2013年8月1日号(7月18日発売)に掲載したものに加筆したものです。

セカンドアルバム発売とライブ出演を控えた植松伸夫氏にインタビュー!_06
植松伸夫氏
Nobuo Uematsu

ゲームミュージックを中心に、さまざまなジャンルの曲を手掛ける作曲家。バンド“EARTHBOUND PAPAS(アースバウンド・パパス)”のキーボード担当でもある。

待望のセカンドアルバムには、バラエティー豊かな10曲を収録

――8月に行われる“ファンタジー・ロック・フェス2013”に出演されるとのことですが、植松さんが日本でライブを行うのは、久しぶりですよね。
植松伸夫氏(以下、植松) そうですね。去年の秋に、自由が丘の駅前で演奏したのが最後だから……今年初ですね!

――ファンタジー・ロック・フェスでは、初日の公演と2日目の公演で、演目がまったく異なると伺いましたが。
植松 初日は、植松伸夫の“Solo Project”です。僕と“アースバウンド・パパス(以下、EBP)”のベース担当の弘田佳孝、キーボード担当の成田勤の3人で演奏します。昨年、ベルギーやフランスでは披露したんですけど、日本では初めてですね。

――凱旋公演ですね!
植松 そう言うと、聞こえはいいけど(笑)。『FF』の曲が多くなるかな。『ファンタジーライフ』の曲も演奏しようかと思っています。それから、東京佼成ウィンドオーケストラさんのために書いた『妖精の森』という組曲を演奏します。この曲は、ライブで清田愛未さんの朗読つきで演奏したら、また違った形でおもしろくなると思ったんです。この曲のために、“妖精の森”の絵も描いてもらったんですよ。

――その絵は、ライブ会場で見られるのでしょうか?
植松 はい。どのようにスクリーンに映すかは考え中です。

――目でも耳でも楽しめるライブになるということですね。では、2日目はどのような曲を演奏されるのですか?
植松 2日目は、EBPとして出演します。9月1日に発売するEBPのアルバム「DANCING DAD」の曲を、全曲演奏しますよ。

――「DANCING DAD」とは、ユニークなタイトルですね(笑)。
植松 おもしろいでしょう、“踊るオヤジ”って(笑)。アルバムには、バラエティー豊かな曲を収録していますよ。「Dancing Mad」(『ファイナルファンタジーVI』より)は、ラテン語のナレーションが入っています。「Fight With Seymour」(『ファイナルファンタジーX』より)は、新アレンジで。それから、『アナタヲユルサナイ』のバラード曲「Toneless」、『ブルードラゴン』から「私の涙と空」。『ロード オブ ヴァーミリオン』から「LORD of VERMILION」、『神次元ゲイム ネプテューヌV』から「Delight of the victors」も収録しています。

――トラック1には「Homecoming Again ~ Opening Fanfare」という曲が収録されているようですが?
植松 これは、ドイツで開催してもらった、僕のゲーム音楽のオーケストラ・コンサートのために書いたファンファーレです。書いたときから、バンドで演奏したいなと思っていた曲です。

――ほかにも、オリジナル曲を収録されていますね。
植松 「Doppelganger」、「La petite malice du Kijimunaa」はオリジナル曲です。

――このアルバムは、会場で先行販売されるんですよね。
植松 そうです。会場か、DOGEARRECORDS SHOPで購入してくださった方には、クリアファイルもプレゼントします。皆葉(デザイナー皆葉英夫氏)デザインです。

――今回のジャケットは、皆葉さんの描き下ろしなのですね。
植松 皆葉くんには、“THE BLACK MAGES”(かつて植松氏が所属していたロックバンド。現在は解散している)のころから、ジャケットを描いてもらっているんです。EBPのファーストアルバムでは、時間がなくてお願いできなかったんですが、今回はぜひ! と。

――植松さんから、どのような絵がいいか、皆葉さんにリクエストはされたのですか?
植松 アルバムのタイトル名のもとは「Dancing Mad(妖星乱舞)」なので、「モンスターとか、妖怪みたいなのがお祭り騒ぎしているようなイメージで……でも、皆葉くんが想像する「Dancing Mad」を自由に描いていいよ」って伝えたら、こんなのが上がってきました(笑)。

――まさに“自由に”描かれたんですね(笑)。
植松 自由でいいけど、ニップノップを描いてほしいと頼んだところ、こうなりました。

――えっ、ニップノップって、ファーストアルバムのジャケットに描かれていたキャラクターですよね? どこにいるんですか?
植松 このキャラクターがそうなんです。ほら、耳も、お椀も付いているでしょう?(笑) おもしろいですよね。

――言われなければ、わかりませんでした!(笑)

セカンドアルバム発売とライブ出演を控えた植松伸夫氏にインタビュー!_01
セカンドアルバム発売とライブ出演を控えた植松伸夫氏にインタビュー!_03
▲左がファーストアルバム「Octave Theory」、右がセカンドアルバム「DANCING DAD」のジャケット。描かれているのは、なんと同じキャラクターだということが明らかに。
セカンドアルバム発売とライブ出演を控えた植松伸夫氏にインタビュー!_04

ファンタジー・ロック・フェスは、化学反応が起きるフェス!

――ファンタジー・ロック・フェス2013で共演する皆様とはお知り合いですか?
植松 はい。日比谷カタンさんは、あるバンドのコンサートに行ったら、ひと組目に出てきたんですけど、そのパフォーマンスに僕は感動して。すぐに挨拶をして、『ロストオデッセイ』の曲「亡魂咆哮」のラップをやってほしいと直談判したんです。今回の出演も、僕が岩本さん(ファンタジー・ロック・フェス2013のプロデューサーを務める岩本晃市郎氏)に推薦して決まりました。

――では、畑亜貴さんとは?
植松 1999年に、「TEN PLANTS 2」というオムニバスアルバムを出したんですよ。そのとき、畑さんに曲を提供してもらったのが、初めていっしょにお仕事をしたときでした。それ以来、14年くらいお会いしていなかったんですが、岩本さんに「誰か出演してくださる方はいませんか?」と聞かれて、これまた推薦して決まりました(笑)。

――谷山浩子さんは、前回のファンタジー・ロック・フェスに続いての出演ですね。
植松 僕は去年、谷山さんとROLLYさんが出したアルバム「ROLLY&谷山浩子のからくり人形楽団」に、ライナーノーツを寄稿させていただいたんです。うれしくてしょうがなかったですね。本当に音楽が稀有で。今回は、きっと昨年のフェスとはぜんぜん違う演奏をされると思います。

――ファンタジー・ロック・フェスは、“プログレッシヴ・ロック”をテーマにしているかと思いますが、そのほかのロック・フェスと「ここが違う」と思われるポイントはありますか?
植松 まあやっぱり……こんなことを言うのはなんですが、わかりにくいですよね(笑)。

――(笑)。
植松 ファンタジー・ロック・フェスが、“プログレッシヴ・ロック”のフェスかというと、そういうわけでもないと思うんです。プログレっぽいことをやっているヤツらもいますが。最初に岩本さんとこのフェスのお話をしたとき、「“ファンタジーの世界”と“ロック”が、RPGの中では共存しているんじゃないか」と言われたんですよね。ファンタジーの世界というのは、トールキンの『指輪物語』に見られるような。言われてみて、確かにそうだなあ、と思って。ファンタジーとロックがいっしょになったRPGで流れている“ゲーム音楽”が、プログレッシヴ・ロックかというと、そうとは言い切れないけれど、非常に近いものではあると思うんですね。ハード・ロックやヘヴィ・ロックでもない、ファンタジーなケルト音楽でもない、すべてが合わさった音楽という意味では、ゲーム音楽って、プログレッシヴ・ロックっぽい音楽なんですよ。その、ファンタジーとロックの融合みたいなフェスティバル、だと思うんですね、ファンタジー・ロック・フェスは。音楽としては幅広いと思いますね。ROLLYさんのような演劇性の強い音楽もあれば、黒沢ダイスケさんがやっている非常にテクニカルなフュージョン・ロックもありますし。今回で開催3回目になりますが、毎回内容が違うので、それを楽しんでいただける方には、とてもおいしいフェスだと思います。いろいろなおもしろいことをやっている人が、「出てみたいなあ」と思えるようなフェスになるといいですね。

――では、これからも、ファンタジー・ロック・フェスを続けていきたいとお考えですか?
植松 やってみたいですよ。世の中には、メジャーというわけではないけれど、おもしろいことをやっている人は、ぜったいにいっぱいいますから。

――このフェスに参加し続けていると、「これがプログレだ」という感覚がわかるようになりますか?
植松 「これがプログレ」ってひと言でいうのは、難しいですよ(笑)。クラシックとロックが合わさったようなものもあるし、ジャズとロックが合わさったようなものもあるし。人と違うことをやってやろう! って思った人たちの音楽だとは思うんですが。そういう意味では、やはりビートルズだと思うんですよね。プログレッシヴ・ロックの道筋を歩み始めた先駆者は。「俺らで曲を作っちゃえばいいじゃん! 録音したテープを切り貼りすればいいじゃん! 逆回転させればいいじゃん」って、当時は誰もやっていなかったことをつぎつぎと進めていった。そのビートルズが解散した後に、雨後の筍のように、各地で「やりたいことやろうぜ!」という人たちが出てきたんです。69年から70年にかけて。それがロック畑におけるプログレッシヴ・ロックだと思います。でも、ジャズの分野でも「ロックのミュージシャンといっしょにやろうぜ」という人たちが出たりして。60年代後半から70年代の初めって、音楽屋さんが、みんな融合し始めた時代なんですよね。メインストリームのジャズだけじゃない、メインストリームのロックだけじゃない……って、がっちゃんこ、がっちゃんこ、と。……そこから始まったものなので、ひと言で「プログレとは何か」というのは難しいですね。

――なるほど。
植松 でも、プログレって、本当におもしろい音楽がいっぱいありますよ! 何十年も前の音楽でも、熱がありますね。熱い。ミュージシャンが「何かを生み出したい」っていう思いに溢れていて、いまでもじゅうぶん聴ける音楽だと思います。ファンタジー・ロック・フェスも、そんな風に何かが生み出される、化学反応が起きるフェスなんです。

――ファンタジー・ロック・フェスで、おもしろい音楽を聴けるのを楽しみにしています。最後に、読者にひと言お願いします。
植松 重たい腰をやっと上げて、セカンドアルバムを完成させました。ジャケットも、皆葉くんの力作になっているので、楽しみにしていてください。ファンタジー・ロック・フェスには、おもしろいもの、ヘンなものを探している人にぜひ来てもらいたいですね。アニメファン、ゲームファン、プログレファンはもちろん、そうでない人も。絶品のヘンなもの、目白押しです!

セカンドアルバム発売とライブ出演を控えた植松伸夫氏にインタビュー!_05

■ファンタジー・ロック・フェス2013 開催概要

日時:2013年8月17日(土)、18(日)
開場16時予定/開演17時予定
会場:クラブチッタ(神奈川県川崎市)
チケット料金:7500円[税込]
※入場の際にドリンク代500円が別途必要です。
※全席指定(1日限定600席)となります。

出演:
2013年8月17日公演
谷山浩子×THE 卍×石井AQ
植松伸夫(Solo Project)
日比谷カタン

2013年8月18日公演
植松伸夫 / EARTHBOUND PAPAS
死蝋月比古(畑 亜貴)
日比谷カタン

詳しくは公式ホームページにて
http://clubcitta.co.jp/001/fantasy-rock-fes-2013/
リンクは→こちら

セカンドアルバム発売とライブ出演を控えた植松伸夫氏にインタビュー!_03

■EBP 2ndアルバム「DANCING DAD」

発売元:ドッグイヤー・レコーズ
発売日:2013年9月1日
DERショップにて販売開始
http://www.dogearrecords.com/shop/
リンクは→こちら
※ファンタジー・ロック・フェス2013にて先行販売
価格:3800円[税込]
収録曲:
1. Homecoming Again ~ Opening Fanfare (for Symphonic Odysseys / シンフォニックオデッセイズ)
2. Doppelganger
3. Fight With Seymour (from FINAL FANTASY X / ファイナルファンタジーXより)
4. La petite malice du Kijimunaa
5. Toneless (from Anata wo yurusanai / アナタヲユルサナイより)
6. Interlude ~ Anthony's Dream
7. Delight of the victors (from Ultra Dimension Neptune V / 神次元ゲイム ネプテューヌVより)
8. LORD of VERMILION (from LORD of VERMILION / ロード・オブ・ヴァーミリオンより)
9. Dancing Mad (from FINAL FANTASY VI / ファイナルファンタジーVIより)
10. Watashi No Mizu To Sora (from BLUE DRAGON / ブルードラゴンより)