“The World R:X”からさらに進化した“THE WORLD FORCE:ERA”
2012年1月21日より、いよいよ劇場用3Dアニメーション『ドットハック セカイの向こうに』(以下、『セカイの向こうに』)が全国劇場公開スタートとなる。本作は、『.hack』シリーズの創設メンバーが結集して作られた、『.hack』シリーズ初の劇場用3D(立体視)アニメーション映画だ。
『.hack』シリーズでは、ネットワークゲーム“The World”を舞台に、ゲーム内世界とリアル世界の二面が描かれてきた。『セカイの向こうに』でもそれは同様で、2024年における、最新の“The World”が描かれている。今回は、シリーズを通してバージョンアップを重ね、進化してきた“The World”についてまとめていく。
【“The World”のバージョン遍歴】
※【】内は作品世界での時系列を表しています。
◆fragment【2007年】
(登場作品:『.hack//黄昏の碑文』など)
The Worldのβ版として、3ヵ月間だけ、抽選で選ばれた1024人をテストプレイヤーとして限定公開された。
◆The World R:1【2007年~2015年】
(登場作品:PS2用ゲーム『.hack//感染拡大 Vol.1』からの4部作、アニメ『.hack//SIGN』など)
2007年から2015年にかけて運用。利用者数は2000万人を超える。
ゲーム内にはfrgmentの制作者ハロルドにしかわからないブラックボックス=アウラを生み出すためのプログラムが仕掛けられていた。しかしアウラの誕生を阻止しようと旧システムであるモルガナ・モード・ゴンが暴走。数多くの意識不明者を生みだし、最終的に第二次ネットワーククライシスを引き起こす。
いちPCであるカイトの働きかけで、ハッカーのヘルバと管理者が手を組み、オペレーション・テトラポッドを実行。その最中、アウラが究極AIへ覚醒。ネットワーククライシスは急速に収束した。
◆The World R:2【2016年~2018年】
(登場作品:PS2用ゲーム『.hack//G.U.』3部作、アニメ『.hack//Roots』など)
2016年から2018年にかけて運用。世界観を一新し、蒸気機関や獣人といった要素が追加。利用者数はおおよそ1200万人とされる。
RAプロジェクト失敗の影響によりサービス停止された前バージョンに代わり、急遽運営が決定された。
一方、ネットワークの中で新たなデータ生命体AIDAが誕生し、さまざまな問題が発生。アウラはその自己防衛反応から追跡者を生みだし、その駆除に当たらせた(=三葬騎士)。
ハセヲたち碑文使いPCにより、AIDAは駆除されることになる。
◆The World R:X【2020年~2022年】
(登場作品:PSP用ゲーム『.hack//Link』、OVA『.hack//Quantum』など)
2020年に公開。ユーザー権が半年待ちの人気作となる。
CC社は天城丈太郎の残した構想をもとに“アカシャ盤”プロジェクトを開始。アウラの捕獲に成功する。
ダブルウェアなる特殊な資質を持つ少年トキオによってアウラは救い出されるが、トキオのPCボディに仕組まれていた洗脳ウィルスにより、アウラは“終焉の女王”となり、人間をデータに変換し、デジタル世界に取り込んでいく。
AIDAの末裔であるAIKAとトキオたちの活躍で、アウラの洗脳も解けたものの、データを大きく損傷し、力を失ったアウラは再び姿を消す。
◆THE WORLD FORCE:ERA【2024年~】
(登場作品:劇場用映画『ドットハック セカイの向こうに』)
2024年に公開。世界観が再度一新され、浮島を舞台とする世界となったが、根幹には黄昏の碑文のイメージが存在する。過去バージョンのプレイヤーが戻ってきたこともあり、利用者数は2000万人を超える。飛空艇など新たなシステムが登場。
THE WORLD FORCE:ERAとはどんなゲーム?
本作を制作したサイバーコネクトツーは、劇中で“The World”の最新バージョンである“THE WORLD FORCE:ERA”をとことん描写するために、通常のゲーム制作に匹敵するほどの詳細な企画書を作成したという。世界設定やゲームシステムなど膨大な量に及ぶ設定資料は、もちろんすべてが劇中で描かれるわけではないが、詳細な設定というバックボーンがあってこそ、説得力のある描写が生まれるのだ。こうしたこだわり抜いた物作りは、サイバーコネクトツーの真骨頂と言えるだろう。
今回は、その極秘の企画書の内容を、特別に一部紹介する。『.hack』シリーズのファンなら、これらを見るだけでもワクワクすること間違いナシだ。また、これらを踏まえたうえで映画を見れば、より楽しさが増すことだろう。
◆世界観
■世界観
世界アルバ――“黄昏の碑文”を舞台とする世界の名称。
かつて存在した光と闇の精霊たちは、元素の世界へと帰ることを決めた。そして、この世界にはヒトと獣人だけが残った。
この物語は、そこから始まるひとつの叙事詩である。
■周辺地図
この世界では、巨大な浮島の大陸を中心にして、大中小の浮島が集合している。いちばん大きい浮島大陸の中心部分に湖があり、その湖の中央にある小島に女神像がそびえ立っている。
浮島の下方には海が広がっているが、浮島自体が広大なので、目にすることはまれである。
◆世界アルバ
黄昏の碑文を舞台とする世界の名称。
十番目の月の風の強い黄昏時、大地と大気が光と闇の精霊を作った。双方は生まれたときより片方を制圧しようと試み、争いをくり広げた。その争いの過程でヒト・獣人が生まれ、そしてそれらは精霊達にはない“影”を持っていた。“影持つもの”たちは、影持たぬものを恐れ、迫害し、退けようとし、三つどもえの戦いに発展した。だが、その戦いの結末にあったのはすべてを飲み込む“禍々しき波”と呼ばれる虚無の誕生であった。波は次々に世界を飲み込んでいったが、その虚無に対抗するべくすべての種族が手を取り合った。
その闘いを終わらせる鍵となったのはひとりのヒトの少女だった。光と闇の精霊たちは、ひとつの時代が終わったことを悟り、元素の世界への帰還を決めた。そして、この世界にはヒトと獣人だけが残った……。
◆ゲームシステム
職業と種族を選び、クエストを受注してこなし、レベルやステータスを上げていくことが基本。戦闘はアクション要素が強い。多人数プレイに対応しており、世界中の人とつながることが可能。さまざまな人と、冒険に挑んだり、交流したり、ときには争ったりなど、あらゆる面において自由度の高いゲーム性を誇っている。
■紋(ウェイブ)の属性
この世界は、火、水、木、土、雷、闇の6属性からできており、火と水、木と土、雷と闇はそれぞれ相対する属性として互いにせめぎあっている。その地域に生息する魔物などは、その大地、大気、環境の呪紋に影響されており、属性も受け継いでいる。
また、各属性を組み合わせると、さまざまな派生を産むことができる。飛空艇などの空に浮かぶための呪紋は最先端の技術と言われている。
■飛空艇文化の発達
プレイヤーが飛空艇を使用するには、ギルドに所属してギルド専用機に搭乗するのがもっとも容易である。個人で飛空艇を所有することも可能だが、そのためには一定以上のレベルと特殊なライセンスが必要となる。
飛空艇はカスタマイズで質感や色、外装などを変更することが可能。システムとしての艦隊戦も存在する。略奪を目的としたモンスター扱いの空賊とエンカウントし、甲板で戦闘になることもある。
■職業
紋(ウェイブ)技術が発達するにつれて、いつしか、自分の武器や防具に呪文(ウェイブ)を埋め込み、扱う者たちが現れた。彼ら“武器使い”はそれぞれ固有の“職業”として統一されていった。時を経てアルバの時代では、ひとつの“職業”が複数の武器を使い分けられるようになった。職業は、基本職、上級職、最上級職まで合わせて全34種。双剣士、斬刀士、紋章士、呪療士の4系統に加えて、生産を生業とする特殊系の職業も存在する。
■ギルド
同じ目的、価値観などを持つPCたちの互助組織。過去のバージョンにおいて存在したカナードやケストレルといったギルドは、“THE WORLD FORCE:ERA”でも健在。本作では飛空艇技術が発達したことから、各ギルドが飛空艇をホームとして所有している。