●立体視で描かれる驚異的な“THE WORLD”の世界!
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2011年8月23日、東京・秋葉原UDXシアターにおいて発表会が開催され、人気RPG『.hack』が劇場用3Dアニメーションとして2012年1月に全国劇場公開されることが明らかになった。主演の桜庭ななみほか主要キャストや、監督の松山洋氏、脚本の伊藤和典氏なども登場した発表会の詳細をリポートしよう。
まず、改めて発表されたプロジェクトの詳細を解説しよう。本作は、ゲームやテレビアニメ、OVA、コミックなど多彩なメディアミックスで人気を博している『.hack』の、初の劇場用3D(立体視)アニメーション作品だ。『.hack』の創設メンバーが結集し、監督を松山洋氏、脚本を伊藤和典氏が務め、サイバーコネクトツーの映像制作チーム“sai-サイ-”が映像を制作。主要キャストは、主人公の有城そら(ゆうきそら)役を桜庭ななみ、そのクラスメートである田中翔(たなかかける)役を松坂桃李、同じくクラスメートの岡野智彦(おかのともひこ)役を田中圭が演じる。
【作品概要】
[タイトル] 劇場用3Dアニメーション『ドットハック』
[公開日] 2012年1月より全国劇場公開予定
[製作] .hack Conglomerate
[アニメーション制作] サイバーコネクトツー sai
[監督] 松山洋
[脚本] 伊藤和典
[配給] アスミック・エース エンタテインメント株式会社
<ストーリー>
ごく普通の女子中学生、“有城そら”は、友人たちに誘われ、オンラインゲーム『THE WORLD』(ザ・ワールド)に参加することになる。最初のうちは乗り気ではなかったが、ゲームの面白さを知るにつれ、いつしか仮想世界での冒険に夢中になっていく。しかし、やがて不穏な気配が彼女の周辺に迫り始める。
『THE WORLD』で発生した異変が、加速度的に現実をも侵食していく。現実とゲーム空間、二つの世界を救うため、そらは異変に立ち向かうことを決意するが…。
本作では、「どこか懐かしい」現実世界と「豪華壮大な」仮想世界が交差し、二重性のあるドラマが展開される。未だかつて誰も体験したことのない、スペクタクル・アクセス(接続)・ストーリーが今始まる。
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<有城そら>(イラスト中央)
本作の主人公は中学2年生の女の子「有城そら(ユウキ ソラ)」。明るい性格で活発だけど、頑固者で芯の通った強い性格。ゲームは未経験で他の同世代よりハイテクに依存していない事もあり、流行りの話題にはうといタイプ。ゲームには興味がなかったが、オンラインゲーム『THE WORLD』に興味を持って始めることに。ゲーム中でのプレイヤーキャラクター名は“カイト”。
<田中 翔>(イラスト左)
「そら」をサポートする同級生の男の子「田中翔(タナカ カケル)」。一見クールに見え、物静かで何を考えているのか分からない雰囲気があり、マイペースな感じのタイプ。ゲームマニアで『THE WORLD 』は流行前からプレイしていた。ゲーム中でのプレイヤーキャラクター名は“ゴンドー”。
<岡野智彦>(イラスト右)
「そら」とは幼馴染でクラスの人気者「岡野智彦(オカノ トモヒコ)」。陽気でポジティブでノー天気な性格。1 人よりもみんなで遊ぶことが好きなタイプ。ゲーム中でのプレイヤーキャラクター名は“バルドル”。
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▲3人がオンラインゲーム『THE WORLD』に入った際の姿。左からゴンドー、バルドル、カイト。 |
●『鉄拳』、『.hack』、そして第3弾も……!?
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発表会では、まず本作のエグゼクティブプロデューサーを務める、バンダイナムコゲームスの副社長・鵜之澤伸氏が登壇。鵜之澤氏は、「もうすぐ、2011年9月3日に公開される『鉄拳 ブラッド・ベンジェンス』がフル3DCGアニメ映画として公開されます。図らずも、『ドットハック』が第二弾となります」と語りつつ、今後も積極的に映像分野で作品をプロデュースしていく意欲を表明。「僭越なようですが、我々の販売力を使って、優秀なクリエイターが世界に羽ばたく手助けをしたいと思います」(鵜之澤氏)と語った。
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さらに、鵜之澤氏に招かれて、『鉄拳 ブラッド・ベンジェンス』に続いて本作でも配給を担当する、アスミック・エースの代表取締役社長・豊島雅郎氏が登壇。豊島氏は、アスミック・エースは、いままでにも『東のエデン』やドリームワークスのアニメ映画や、『鉄コン筋クリート』などのアニメ映画を配給してきたことを説明しつつも、「ゲーム会社さん、それも世界に打って出ているバンダイナムコゲームスさんの、世界に向けたアニメをお手伝いできるということで、いままでのアニメ映画とは違った認識を持っています」(豊島氏)と、特別な意識を持って配給を手掛けていることを説明。「違った切り口での宣伝、劇場営業をしていかないといけないと思っています」(豊島氏)と語った。さらに、「『鉄拳』、『ドットハック』を成功させて、3作目以降もユニークな形でお手伝いできればと思います」(豊島氏)と、早くもつぎのプロジェクトを望む意気込みを語っていた。
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つぎに、プロデューサーのバンダイナムコゲームス・三戸亮氏が登壇し、本作の概要を解説した。2024年、世界が当たり前のようにネットワークでつながっている環境で、主人公の女の子がTHE WORLDを初めてプレイ。最初は乗り気ではなかったものの、やがて夢中になっていくが、ある事件を発端に、現実世界にも重大な事件が発生。ふたつの世界で巻き起こるスペクタクルなストーリーが展開されていく……というのが、本作のあらましとなるようだ。
●制作トップ4人による危険なトークショー!?
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つぎに登壇したのは、監督を務めるサイバーコネクトツー代表取締役社長の松山洋氏と、脚本を担当する脚本家の伊藤和典氏。鵜之澤氏と三戸氏も再度登壇し、4人による制作秘話の暴露トークショー(?)が展開された。
鵜之澤氏 僕が(このプロジェクトの)言い出しっぺです。4年前に、松山さんとこういうことをやってみようと。最初はもっとこじんまりとやる予定だったのが、結果的に、けっこうな予算になってしまいました(笑)。
松山氏 鵜之澤さんと話をしてほどなく、伊藤さんに声をかけたんですよね。映画を一緒にやりませんかと。
伊藤氏 そんな丁寧なオファーじゃなかったよ。パイロット映像を見せられて、「これ書いて」って(笑)
松山氏 そうそう(笑)。うちはまずテスト映像をつくって、それで口説くパターンが多いので。今回もそうでした。
伊藤氏 話があったのが4年前。夏に取材をして、書き始めて、翌年の1月に初稿が出た。
松山氏 本作の舞台となる2024年は、いまから13年後。遠いようで、そんなに遠くない未来のお話です。いままで『.hack』はいろんなメディアで展開してきましたが、『.hack』の定義として、必ず架空のゲーム“THE WORLD”が中心にあります。そして基本的に二面世界、ゲームパートとリアルパートを描きます。ネットワークがおかしくなって事件が起きるのですが、いまの時代、東京だけじゃなくて、田舎ですらこういったトラブルに巻き込まれるはずだと。そこでギャップも含めて描けるということで、九州が舞台になっています。スタッフを連れてロケハンに行って、福岡県、福岡市、柳川市さんにもご協力をいただいて、地名なども実名で描いています。福岡のベスト電器さんとかも実名で出てきますよ。……三戸君、何かしゃべらなくていいの?(笑) でも三戸君は、3rdシーズンからの参加だからね。
三戸氏 もちろん『.hack』自体は知っていましたが、まさか自分がこんなに関わることになるとは思っていませんでした(笑)。今回の映画は、サイバーコネクトツーさんの技術力、伊藤さんの脚本があってこそですが、3Dも新鮮ですし、客観的に一般視聴者の視点から見て、誰から見ても楽しめるものになっていると思います。
松山氏 『.hack』は長く続いているシリーズですが、これは劇場公開する映画なので。誰でも、なんの前準備がなくても楽しめるものにしようというのは意識しました。使ったお金は回収しなきゃいけないけど(笑)、その手応えは感じています。
鵜之澤氏 ……よくしゃべるでしょ。この人、ゲームメーカーの社長ですよ。これでゲームも作って、映画も作って、よせばいいのにカプコンさんとも仕事してますから(笑)
松山氏 それはいいじゃないすか(笑)
鵜之澤氏 伊藤さんは、CG映画は初めてでしたっけ?
伊藤氏 いや、日本最初のCG映画、『ビジター』っていうのを。あれ、記録のうえでは最初のCG映画です。でも3Dは今回初めて。いままで3D映画は4〜5本観てきたけど、その経験だと、「おれ3D嫌いだわ』って(笑)。でも今回の『ドットハック』は、検証試写を観ている限りでは、負担のない、いい3Dだと思う。
松山氏 そこは時間をかけましたから。リアルパートでは、立体の視差、奥行き感は控えめにしています。でも劇中で3Dメガネを掛けると、壮大なゲームの世界が広がるります。
まだまだしゃべり足りない雰囲気の松山氏だったが、ここで進行の都合上(?)、司会者の静止でトークショーはいったん終了になり、続いてプロモーション映像が披露された。映像自体は、記事の冒頭で紹介している映像と同じものだが、会場では3Dメガネが配布され、3D立体視で鑑賞することができた。松山氏の言う通り、主人公の“そら”がメガネをかけてTHE WORLDにログインし、世界が広がったときの臨場感は相当なもの。これは通常の映画では表現できない、3Dならではの迫力だ。こうした演出が全篇にわたって駆使されているそうなので、本編には非常に期待が持てそうだ。
●キャスト陣も太鼓判を押すデキに!
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続いて、主要キャストの桜庭ななみ、松坂桃李、田中圭の3人が登場。自分が演じるキャラクターについて、それぞれがみずから説明した後、松山氏を交えてのトークショーとなった。
――アフレコについての感想を教えてください。
桜庭 アニメのアフレコは別の作品でもやったことがありますが、何度挑戦しても難しいです。
松山氏 今回はHD映像で解像度が高い分、口の動きもリアルなんです。それにぴったりあわせてもらわないといけないので、収録中は、何度もリテイクをお願いしました。桜庭さんは主役な分台詞も多くて、がんばってもらいました。
松坂 アフレコは初体験でしたが、本当に難しくて。監督がおっしゃったように、キャラの口の動きに自分の声を乗せるというのは初めての経験で、こういうやりかたで役に入ったことがなかったので、感情を乗せにくかったです。いままでとは、役に対して違ったアプローチをしなければいけなくて、それが難しくて、おもしろかったですね。
田中 僕も初めてで、最初はすごく難しかったですね。ふだんのお芝居は、目を見たり、相手に届けるようにやるんだけど、同じように台詞を読んでいても、アフレコは画面を見ながらになるので、「届いているのかな」って不安になってしまう。でも、自分の動きを映像がやってくれるので、最後のころには楽しくやれました。
松山氏 田中さんは、比較的3人の中でも、キャラになりきるのが早かったんですよ。ほかのスタッフとも、ディレクションルームで見ていて「おお、智彦がいるよ」って言っていました(笑)。松坂さんは、ご本人のふだんの性格は明るいからだと思うのですが、翔はすごくクールなんですね。なので、「松坂さん、まだちょっと元気がありすぎですね」とリクエストをしたことを覚えています。
――皆さんが演じたキャラクターについて、どう思われましたか?
桜庭 最初に監督が書いてくださった役の設定が、本当に私に似ていて。好きな色とか、行くお店とか……すべていっしょでうれしかったです。演じていても、自分に近くて楽しかったです。
松山氏 うちはゲーム会社なので、通常の映像の作りかた以上に、そういう設定を細かく決めているんですね。それぞれ60以上、どんな本が好きかとか、いろんな設定を決めていたんです。
松坂 僕も翔くんと同じで、物静かで、ぼそぼそっと話すんですが、そこは似ていました。いままで現場で、「もうちょっとテンションあげて」とはよく言われましたが、「元気がありあすぎる」と言われたのは今回が初めてで、新鮮でしたね(笑)
田中 僕はふだんからテンションが高いのでやりやすかったです。ただ中学生ということで、そこは意識して、ちょっとかわいこぶってやっていました(笑)
――皆さんの、お互いに対する印象はいかがでしたか?
桜庭 田中さんは、以前共演させていただいていたので、アフレコのブースに入ったときも、緊張せずに楽しくやらせていただきました。松坂さんは、今回初めてごいっしょさせてもらったのですが、初めて会った感じがしなかったです。いとこみたいな感じがして。
松坂 いとこですか(笑)。初めて言われました。ありがとうございます。僕は、おふたりとは初めましてだったのですが、ふたりにはすでに絆があって……。
桜庭 ありましたっけ(笑)
田中 そこはあるでいいじゃん!(笑)
松坂 (笑)。そこに飛び込んでいくのは緊張するな、と思っていたのですが、でもおふたりがやさしくて、緊張せずに入れました。
田中 僕も、ふたりから元気をもらって演じられました。
――皆さんが、もしTHE WORLDに行けたら、何をしたいですか?
田中 僕ね、、魔法を使いたいんですよ。ずっとひとりっ子で、学校の帰りに、道行く人たちをみんな敵に見立てて、戦うフリをしたり(笑)。もう27歳なのですが、いまでも魔法に憧れていて、自動ドアに手をかざして、ウイーンって開くと、ちょっと気持ちよくなったりして。……あれ、ひいた?(笑)
桜庭 いやいや、意外だな、って(笑)
松坂 僕は人間じゃなくて、恐竜になったり、プテラノドンになって空をとんだり……全然違う存在になってみたいですね。
桜庭 私は、ゲームの中では男の子になりたいです。男の子の気持ちになってみたいです。戦いをしたりとか。
――最後に、本作の見どころと、感想をお願いします。
桜庭 今回は3Dアニメーションになって、迫力のある映像になっています。私もゲームの中にはいったような気持ちになって楽しみました。ゲームをやったことがないかたでも楽しめる作品になっていると思いますので、ぜひ観てほしいです。
松坂 現実とゲームの世界は、違うけど、同じ自分なんですよね。現実の自分が、本来こういう性格だけど、ゲームの世界だと、違った性格が出てくる。たとえば僕だったら、暗い感じだけど、ゲームの世界だと明るくなれたり。今回この作品では、それが疑似体験できるというか、表現できていると思います。
田中 ふだんの現実世界の映像もきれいなんですけど、台本を読んで想像していたTHE WORLDの世界が、映像ではもっとすごくて。それが3Dになっているわけじゃないですか。「全部観たい!」って素直に思えるし。THE WORLDに対する憧れというか、「こんなゲームやってみたいな」って思えると思います。圧倒されて、気持ちいいし、おもしろい。CGアニメ―ションのよさを感じさせてくれた作品でした。
▲桜庭さんが持っているのは、1分の1サイズの“まことさん”。松山氏によると、2024年には、一家に一台、音声認識で受け答えしてくれる“サーバーロボ”があり、人間のサポートをしてくれる。主人公のそらが、自分のサーバーロボに付けた名前が“まことさん”。劇中では、リアル世界、THE WORLD内ともに、この“まことさん”がいろいろとサポートをしてくれるそうだ。 |
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最後に、松山氏からのメッセージともに、発表会は終了となった。松山氏のメッセージはつぎの通りだ。「サイバーコネクトツーとしてゲームを作ってきましたが、今回、初の全国公開劇場アニメということで、ゲームクリエイターの持つノウハウを発揮させてもらいました。既存の映像作品とはひと味もふた味も違う作品になっていると自負しています。それにキャストの3名の方々。彼らが息を吹き込んでくれて、初めて映像として完成したと思います。単純に気持ちいい、「見てよかった」と思ってもらえる作品になっていると思います。じつはもうちょっと作業はあるのですが、公開までにしっかりやって、公開したいと思います」(松山氏)