独裁国家運営シミュレーションゲーム『トロピコ 6』が、スクウェア・エニックスから2019年9月27日にプレイステーション4で発売となる。
本作の目的は、国の指導者である“プレジデンテ”となり、カリブ海に浮かぶ島国“トロピコ”を統治していくこと。ユニークなのは、ほかの同ジャンルのゲームと比べて非常にプレイの幅が広くなっている点! 独裁国家運営というだけあって、国の方針は自分の思うがまま。国民を全面監視するディストピアを作り上げてもいいし、すべての軍事施設を無効とする平和主義国家のユートピアを築いてもいい。ともかく本作は、思想の異なる国民たちをまとめ上げて国家発展を成し遂げるゲームになっている。
今回、そんな人気シリーズの最新作をいち早く遊べる機会を得ることができた。本稿ではシリーズほぼ未経験の筆者が『トロピコ 6』の所感や注目ポイントを語っていこうと思う。本作を心待ちにするファンはもちろん、筆者と同様に『トロピコ』シリーズをほとんど知らない人もぜひチェックしてほしい。
遊びやすさ抜群のミッション†
冒頭で「何をするのも自由!」みたいなことを強調して言ってしまったが、別に「島を用意した。後は好きにしろ」と放り出されるわけではないので安心してほしい。まあ、それに近いモードはあるが、プレイするのはシステムを熟知してからになるだろう。それに、全5章に渡るなかなかのボリュームの“チュートリアル”が存在し、かなり丁寧にゲームの解説をしてくれる。すべて遊んでおけば、要素の全体の80%くらいは理解できると思われる。
『トロピコ 6』の基本的なゲームモードには“ミッション”と“サンドボックス”があり、通常は前者のミッションから遊ぶことになる(最大4人でプレイする“マルチプレイ”もあるが、今回は体験できなかった)。なお、前作までにあったストーリーを体験する“キャンペーン”モードはなくなっている。
ミッションはそれぞれ異なる島を舞台に、随時提示されるメインクエストをこなしたり、他国の要望を叶えたりしていくモード。やるべきことを明確に教えてくれるので初心者でもわかりやすく、プレイしながらゲームをより深く知れるような流れになっている。「酒場を作ってほしい」、「輸出ルートを開いてほしい」など、かなり言いたい放題の要求をされるが、理想的な街作りをしつつ要望を叶えていくのは、なかなかどうしておもしろい。
たとえば、最初のミッション“カリブ海のペヌルティーモ”は植民地時代が舞台。トロピコは帝国の支配下にあり、さまざまな要求に従わなければならないのだが、裏では革命派の国民を集めていき、いずれは独立を果たすという胸アツな展開が待っている。
こんな感じでミッションごとに時代やフォーカスされる内容が異なっているので、各ミッションをこなすだけでもいろいろな楽しみかたができてしまうのだ。ちなみに、時代設定は植民地時代、世界大戦時代、冷戦時代、現代の4つ。時代に応じてやれることや建設できる施設がガラッと変わってしまう点もじつにユニークな仕組みだ。なお、メインクエストをすべて終えると(時代をまたぐこともある)ミッションをそこで終えるか、ずっと続けるか選ぶことも可能。気に入った島が完成したのなら続けて遊ぶのもアリだろう。
一方、サンドボックスは好きなマップを選び、設定もプレイヤーが自由に決めてスタートできるモード。ミッションを遊び尽くした後は、こちらのモードでとことんプレイしていくことになるのではなかろうか。長年の『トロピコ』ファンなら「こっからが本番」くらいに考えているかもしれない。
マップはミッションで登場したもののほか、サンドボックス用のもの、自分で島のサイズや火山の有無などの詳細を決められるランダムマップが用意されている。ランダムマップに限ってはシェアコードの発行も可能で、SNSなどを通じて同じ条件のマップで遊んでもらうこともできる。また、開始時代や初期資金、政治の難易度など、さまざまな項目の設定も自由自在。資金を無制限にすれば、いままでのうっぷんを晴らせるかもしれない。ともあれランダムマップのおかげで、マップ不足ということにはならなそうでうれしい。
島の複数管理と海賊行為が楽しい†
『トロピコ 6』で大きく変わった要素のひとつに、舞台となる島のマップがある。いままでは単独の島で街作りをしていたのだが、本作では複数の島で構成されたマップに変更されている。最初はひとつの島でしか開発できないが、橋を架けたり、トラック港などを作ることで国民が島間を行き来可能になり、物流が生まれて開発できるようになるといった流れだ。金や鉄のような資源は離れた島でしか採れない場合も多く、うまく交通インフラを整えることが国家発展の近道。少しずつ島を繋げて交通ネットワークが完成したときは、なんとも言えない達成感もある。
バスやケーブルカーなどの交通手段のほか、トンネルの設置も可能で、国民がストレスなく移動できるようになると、仕事へのモチベーションがアップ。資金をより稼げるようになるといった、リアル世界でも一部通じるような仕組みができあがっているのがスゴイのひと言。念のために言っておくと、サンドボックスのランダムマップであれば、いままでのような単独の島を生成することも可能なので覚えておこう。
『トロピコ 2』以来の登場となる“海賊”も新しい要素のひとつ。『トロピコ6』では、根城となる海賊の入り江を設置すれば海賊を雇える。この海の荒くれ者たちには、プレジデンテの命令ひとつで他国からの資源略奪や人材確保のための救助、宝探し、世界的に有名なランドマークの強奪などを行う。なかなかに人の道にもとる行為だが、資源が採れにくいマップなどではめちゃくちゃ活躍。ミッションによっては、基本ひとつしか作れない海賊の入り江を複数設置できるマップもあり、略奪につぐ略奪をくり返すことも可能だ。奪った資源で加工品を作って大儲けした暁には、もうニヤニヤが止まらないくらいうれしい。実際、海賊がどこの国から奪ってきているのかはわからないのだが、もし資源を奪った国へ加工品を輸出していたなら、なんかとんでもない極悪人だな……。
それから、世界的に有名なランドマークの強奪についても語らなければなるまい。そもそもどうやって強奪するのか謎なのだが、海賊たちはストーンヘンジなどの有名な建造物を数年かけて強奪してくる。これらのランドマークは、奪ってくるとマップに設置可能になる仕組み。しかも、そのランドマークによって観光客を増加させたり、国の評価を高めたりするほか、多種多様な特殊な効果を発動し、マップに多大なメリットを生み出すスグレモノとなっている。
また、時代が進めば海賊の入り江だけでなく、特殊部隊駐屯地やスパイ養成学校、サイバー活動センターといった施設も建設できる。妨害工作や諜報活動、市場操作など、多岐にわたる活動が可能なほか、強奪できるランドマークの種類が増加。エッフェル塔、自由の女神、スフィンクス、滋賀県の彦根城まで奪ってこれてしまうのだから驚く、というか笑ってしまう。見た目的にもプレジデンテの宮殿なみにインパクトがあるので、有名ランドマークはチャンスがあるならぜひとも強奪しておきたいところだ。
そうそう、本作はUnreal Engine 4を採用して、島の景色がより美しい表現になっている点にも要注目。ランドマークもそれはそれは立派なものだ。限界まで拡大して、建物や国民たちを観察してみるのもおもしろいかもしれない。
ファン歓喜の宮殿の移動とカスタマイズ†
本作ではプレジデンテの宮殿を細かくカスタマイズできるようになった。宮殿のカラーや外壁などをはじめ、宮殿の場所を決めるレイアウト、道の材質、教会の壁、屋上立てまし、ガーデン、装飾といった具合に細部に渡っていじり倒すことができる。プレジデンテのホログラムで謎のアピールをしてみたり、屋上にデカイ水槽を設置してみたりと、ユーモア溢れる装飾が多数登場。条件を満たすとアンロックされるアイテムも数多くあるので、いずれはコンプリートしてみたいところ。自分は装飾なしのシンプルな宮殿がお気に入りなので、すべて取っ払って運用している。ふだんのゲームプレイ中に宮殿をまじまじと眺めることはまずないとは思うが、こんなに細かくカスタマイズ要素を入れてくれているのはうれしい限り。
『トロピコ』シリーズのファンにとっては、恐らく“宮殿の移動”が可能になったことのほうが大きな変更だろう。ファンの要望に応える形での採用ということらしいが、シリーズ未経験の筆者としては「いままで移動できなかったの?」という驚きを隠せない。ともあれ、宮殿にカーソルを合わせてメニューを呼び出し、“施設を再配置”を選んで場所を決定するだけで自動的にクイックビルドが発動して瞬時に建設される。多少お金は掛かるが、移動の恩恵はかなり大きいだろう。もちろん、宮殿を動かした後の空いた土地には自由に建物を配置できる。
また、プレジデンテ自身のカスタマイズもいままでより自由度がアップしている模様。性別、服と色、帽子と色、アクセサリー、メガネ、髪型と色、民族タイプ、メイクアップの項目を自由に設定できる。まじめな雰囲気のものから、アホっぽいものまでバリエーションはそれなりの数が用意されている。海賊やファラオ、ローマ皇帝といったコスプレ感あふれる服が好きなので着てみているが、いつも遠景でプレイするため、プレジデンテを見かけたことはない(笑)。
やれることが細かいのが最高†
『トロピコ』シリーズは街作りをしていくシミュレーションでありつつも、政治に重きを置いている点が非常に独特でおもしろいポイント。国民ひとりひとりが資本主義者や軍国主義者、宗教信奉者などの思想を持っていて、プレジデンテの政策によって喜ばれる場合も不信感を抱かれる場合もある。あちらを立てればこちらが立たずではないが、いくつもある政治派閥との関係をうまく調整し、ときには利用して、もどかしいながらも街作りを進めていくのがじつに楽しい。ミッション内容によっては特定の派閥に肩入れするため、敵対する派閥のリーダーを逮捕させるだけでなく、何と暗殺までできてしまう。プレジデンテの障害になりそうなものは容赦なく粛清できるのも『トロピコ6』の醍醐味だ。他国との外交も重要で、貿易でいい関係を作れればいいが、ときには戦争に発展してしまう場合もある。そんなときは兵士を動員して戦闘もしなければならない。
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あまりに横暴な運営をするとクーデターが起きることも。
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また、図書館などを建設して研究を進めることで、住宅を無料にしたり、教会からお金を徴収したりと国の決定を布告して従わせることも可能。囚人たちの受け入れを奨励し、働き手を短期間でガッツリ稼ぐなどの手段もある。そもそも、憲法自体も自分で好きなように決めることだってできる。失業者が多いときは、学歴を必要としない仕事場を用意してホームレス市民を減らすことが重要だし、施設も建てたらおしまいではなく、予算を決めたり、労働者が少なければ外国人労働者を増やしたり、さらに効率化を図るためにアップグレードしたりと、とことん細かい!
この細かい部分は、最初はどうしても複雑に感じるかもしれないが、慣れてくるといろいろいじるのが確実に楽しくなってくる。むしろ積極的にいじりたくなっていくんじゃなかろうか。これらを楽しまないと、ただの街作りシミュレーションになってしまうので、ぜひプレイしてみて「細かいなー」と感心してもらいたいところ。ちなみに、文章で読むと余計に複雑に見えてしまう気がするが、ゲーム内で行うのはわりと簡単だということは付け足しておきたい。
シリーズ初心者にもやさしい†
本作の所感をいろいろと語ってきたが、なかでも注目してほしいのはやはり新要素。複数の島で同時に街作りをするのは、単独の島でするよりも確実におもしろくなっていると思う。島を繋げていくのは自然とワクワクするし、交通インフラを整えるのも何気に楽しい。
シリーズ初心者の自分でも、ミッションはかなりプレイしやすい印象。メインクエストと表示されるのが意外とよくて、「ああこれは大事なやつね」とか「こっちはサブね」みたいにわかりやすいのもよかった。自分は『トロピコ 6』のようなミニスケープはあまり遊ばないのだが、今回はそのおもしろさを再認識させられたという感じだ。
しっかりしたチュートリアルがあるし、つぎつぎと指示が飛んでくるとミッションは非常に遊びやすい。『トロピコ 6』は、自分と同じようにふだんこの手のゲームで遊ばない人にもプレイしてもらいたい1本と言える。
(文:ウワーマン)