いよいよ今週2018年9月14日(『デラックスエディション』と『クロフトエディション』のアーリーアクセスなら12日からプレイ可能)に発売されるスクウェア・エニックスのプレイステーション4、Xbox One、PC用ソフト『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』。本作は、『トゥームレイダー』シリーズのリブート作品として、ララ・クロフトが新米考古学者として活躍する新生『トゥームレイダー』、『ライズ オブ ザ トゥームレイダー』に続く、リブート版3部作の最終章となる。
本稿では、発売を控えた9月上旬に来日したディレクターのダニエル・ビッソン氏とシニアプロデューサーのマリオ・シャブティーニ氏(ともにEidos Montreal)へのインタビューをお届け。『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』の魅力や開発秘話などをうかがった。その前に、まずは公開されたばかりのローンチPVをご覧あれ。
衝動に駆られ、世界の終末を始めてしまったララはその危機をどう乗り越えていくのか――†
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ディレクターのダニエル・ビッソン氏(左)とシニアプロデューサーのマリオ・シャブティーニ氏(右)。
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――最終章を完成させたいまの心境は?
ダニエル 私はリブート版『トゥームレイダー』の1作目から開発に関わっているので、開発期間も含めると、8年くらいずっとララのことを考えていました。大学を卒業したばかりの未熟な研修者だった彼女が、“トゥームレイダー”として成長していく姿を見守ってきたので、自分にとってララは娘のような存在に感じています。ですので、3部作を終えてホッとした気持ちがありつつ、少し悲しい気持ちもあります。
――娘を嫁に出すような気分ですか?(笑)
ダニエル まさにその通りです(笑)。
マリオ 私は本作から開発に参加したのですが、世界でも有名なこのフランチャイズに参加できてとても光栄でした。開発は楽しかったです。
――リブート版は第1作目はそれまでの強いヒロイン像とは違う、弱々しいララが描かれました。それまでとイメージの違うララを描くのは、勇気がいったのでは?
ダニエル リブート版を開発するにあたって考えたのは、それまでのララは完璧すぎるキャラクターだったので、そのイメージを壊したい、という思いがありました。ですので、第1作目は、ララの弱さや人として未熟な部分を描き、そんな彼女が冒険家としての自信を少し獲得する、という位置付けの作品になっています。2作目の『ライズ オブ ザ トゥームレイダー』では冒険家として自信を持ったララが、さらに強くなっていく様と、クロフト家の血筋……ララが根っからの冒険家である理由を描きました。そして『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』では、冒険家としての成長や一人前になる姿を描いています。ただ、一人前になる、つまり大人になるということは、責任を負うということでもあります。今回のララの肉体的な成長はもちろん、精神的な成長も描くということも命題としてありました。本作で宿敵となる、ドミンゲス博士はララにはない精神的な強さを持っていて、ララより上手(うわて)です。まだ未熟なララとは対照的な人物として、うまく描けたかなと思います。
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ドミンゲス博士。
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――『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』の“シャドウ”の意味は、ララとドミンゲス博士の対比や、未熟なララから成熟したララといった二面性を表したもの?
ダニエル そうですね。それ以外にも“光と闇”や“生と死”などの二面性を表していて、ゲーム中にもイシュ・チェルとチャク・チェルという破壊の神と創造の神がキーワードとして出てきます。本作の物語の発端は、ある遺跡からララが短剣を持ち去ったことで、世界の終末が始まり、それを食い止めるために“イシュ・チェルの銀の箱”を見つける冒険に出ます。世界の始まりを始めてしまったララが、自身の衝動的な行動を悔い、彼女自身が食い止めようとすることも二面性と言えます。世界を救うことが彼女自身を救うことでもあるんですね。その冒険の中でララは、人間は完璧ではなく、多かれ少なかれ闇を抱えているけれど、光を絶やさず持つことが大切だと気づきます。
また、物語だけではなく、ゲームデザインにも“シャドウ”は反映されていて、本作では暗い地下に潜るような構造になっている遺跡や、光が届きづらい深い水中の場所が数多くあります。ただ、そこから地上に出たとき、美しい世界が広がっています。暗闇から光溢れる地上に出ることで、より世界の美しさを感じてもらえると思います。
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リブート版1作目からララをサポートするジョナ(左)。本作でも、暴走しそうなララに冷静になるようアドバイスするなど、ララを支える。
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――その世界の美しさと同時に、ララが世界の終末を始めてしまったときの自然の驚異の表現は壮大なものになっていましたね。
ダニエル 複数の建物の崩壊は物理演算でやっているので、フレームレートをキープするのはたいへんでした。また、物理演算なので、毎回少しずつ違う壊れかたをしているかもしれません(笑)。
――物語はそれぞれ変化をつけやすい一方で、シリーズ最終章ともなると、ベースとなるアクションアドベンチャーのシステムを、どう進化させていくかについては、苦労もあったのでは?
マリオ 彼女が成長したことを表現できる場所として、本作ではジャングルという環境での冒険にチャレンジしました。ラペリングというロープを使って降りるアクションやせり出した崖を登るアクションも追加しましたし、そうした動きがひとつふたつ足されるだけで、探索の可能性が無限に広がるんです。
ダニエル AIも進化させ、敵に気づかれたとき、前作までは一直線でララのところにやって来ていたんですが、回り込んだり、裏を取ろうとしてくることもあります。失敗してやり直した際に、前回とは違う動きをしてくることもありますし、一度見つかっても見失わせることができたり、敵との駆け引きも感じられるようなものになっていますよ。
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マリオ あと、細かいところで言うと、今回、ジャングルということで、フィールドに植物をたくさん設置する必要がありました。そこで、植物を大量に設置しても、ララが視認できプレイに支障が出ないように、カメラを植物が避ける――まるで、カメラマンが植物をかき分けながら撮っているかのような表現を開発しました。これはテクノロジーとしては新しく、特許も獲得した表現です。
――パズルの設計やバリエーションを増やすのもたいへんだったのでは?
マリオ たしかにたいへんでした(笑)。似たようなパズルにならないように、ひとつひとつに特徴づけをする必要がありましたし、プレイしたユーザーのストレスになりすぎない謎解きになっているか、クリアーしたときの達成感があるかといった、バランスをチェックする必要もあります。ララがヒントを口ずさみますが、それによって簡単になりすぎてもダメですし、かと言ってわからなすぎても諦められてしまいます。そのバランスはユーザーテストを何度も実施して調整していきました。さらに本作では探索、戦闘、パズルと難易度を細かく、いつもで変更できるようになっています。難度を下げるとトラップの速度が落ちたり、白い目印がさらに目立つようになります。逆に難度を高く設定すると、ララはヒントも言わないし、進むべき白い目印も表示されず、トラップの速度も速くなったりします。
ダニエル ゲームの柱であるパズルは、難しく危険な作りになっています。ラペリングが加わったことでパズルの構造のバリエーションも広がりました。また、これまでは物理演算で解決できるパズルが多かったのに対して、本作では水中のパズルであったり、トラップベース、ロジックベースなど多彩なパズルを用意しています。パズルのデザインには、当時のマヤの文化でこうしたものが作れる技術があったか、ということをリサーチして作りました。
――ここのパズルはお気に入りだ、というのを挙げるとしたら?
ダニエル ネタバレになるので言えませんが(笑)、トラップベースのパズルが個人的には好きです。
マリオ ロジックパズルが好きです。遺跡によってはロジックパズルやアクロバティックな移動が求められるような、コンビネーションパズルもあります。そういったパズルとアクロバティックな動きは、本シリーズの魅力のひとつでもありますし、そうしたパズルは本シリーズの魅力を凝縮しているとも言えると思います。
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――武器についてはいかがですか? パイティティなど拠点で武器を購入できるようなったのは新鮮でした。
マリオ 弓やマシンガンなど、武器も強化しています。とくに前作まではハンドガンがいちばん弱いということで、あまり利用されていなかったので、ハンドガンはかなり強くなっていると思います。武器はそれぞれを細かくカスタマズできるので、好みに合わせやすいはずです。あと、武器の音にも注目してほしいですね。前作と比較すると明らかに違いがわかっていただけるくらいパワフルになり、臨場感が増していると思います。
ダニエル パイティティでは古いタイプの武器が購入できますが、パイティティ以外にも武器を売っている商人がいます。その商人からは現代的で強力な武器が購入できるので探してみてください。なかなか見つからないところにいますけど(笑)。
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――今回、フィールドが広くなっていますが、そうした商人の探索要素にも力を入れていると?
ダニエル 詳しくは言えませんが、ぜひ隅々まで探索してみてください(笑)。
マリオ 今回のチャレンジトゥームは、どれもすごく力を入れて作ったのですが、フィールドが広大だったり、水中を抜けた先にあって見つけづらいものも多いので、最初のユーザーテストでは「チャレンジトゥームが見つけづらい」という意見が多数ありました。そこで、入り口近くに黄色い目印を入れることにしましたので、チャレンジトゥームの入り口は見つけやすくなっていると思います。
――ところで、ダニエルさんは日本文化やアニメがお好きだとのことですが、そうしたものの中から影響を受けたものはありますか?
ダニエル ロープアローを打ち込める木に縄が巻いているものは、神社などで見たしめ縄からきています。アニメにインスピレーションを得たシーンは、ラストにあります(笑)。成長したララがその結果どうなったか、というシーンなので、ぜひ最後までプレイして確認してみてください(笑)。
――おお、楽しみです(笑)。では、最後にひと言お願いします。
ダニエル リブート3部作のララは開発陣全員で作り上げたキャラクターです。クリアーしたあとに彼女をもっと好きになってくれていたらうれしいです。
マリオ メインストーリーだけではなく、探索中に見つけたものからは、マヤの歴史や登場人物の背景がわかるものがいくつも用意されていますので、より深く『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』の世界に浸ってください。今後、7ヵ月にわたってダウンロードコンテンツを展開していくのですが、そちらでも登場人物を深く掘り下げる内容になっているので、そちらも楽しみにしていただければと思います。
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フォトグラフモードも用意。カメラアングルやララの表情、フィルターなどを細かく設定できる。それをスクリーンショット保存してSNSにアップすることも可能だ。
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