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日本語版プロデューサーインタビュー「ボヘミアの中に“いること”。その感覚こそが本作の魅力そのもの」

キングダムカム・デリバランス』の見どころや本作の楽しみかたについて、日本語版プロデューサー松本氏に話をうかがった。

公開日時:2019-07-18 18:30:00

 プライベートでのプレイ体験から『キングダムカム・デリバランス』の世界観やゲーム性に惚れ込み、日本でのパブリッシングを決め、日本語版プロデューサーを務めたDMM GAMESの松本卓也氏。日本語版は膨大な音声もすべてローカライズするという力の入れようだ。

 ほかのゲームにはない『キングダムカム・デリバランス』の魅力や、日本語版の見どころについて、さらには本作の楽しみかたから理不尽さ(!)まで、プロデューサー松本氏に話をうかがった。

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日本語版プロデューサー
DMM GAMES
松本卓也氏

とても“変わった”ゲーム

――DMM GAMESでローカライズを行うことになった経緯について教えてください。

松本 『キングダムカム・デリバランス』は、2018年の2月13日に英語版がSteamで発売されました。Steamの初期バージョンを自分で買ってプレイし、ユーザーの反響の大きさを見て、日本語で遊びたいなと思ったのが、日本語版発売を決めたいちばんの理由です。

―― 松本さんはサービス中の『エルダー・スクロールズ・オンライン』の日本語版も手掛けられましたよね。

松本 そうですね。ボリューム的に大きいものをまたやりたいという思いがありましたし、プレイステーション4の作品を出したいと考えていました。『WarThunder』や『TROVE』はPS4版もありましたが、これほどの規模ではありませんでしたね。日本のPS4ユーザーにDMM GAMESを知ってもらうにはちょうどいいかなと思い、『キングダムカム・デリバランス』の日本語化を決めました。

――日本でのターゲット層は、どのあたりを想定しているのでしょうか?

松本 おそらくど真ん中は、『ゲーム・オブ・スローンズ』、『ロード・オブ・ザ・リング』が好きな人かな、と。あとは欧州のものが好きな人。このゲームは“空気感”だと思うんですよね。何かを強制されることがすごく少ないし、その場に浸ることがとても心地いいんです。主人公もものすごくプレーンというか、どの色にでも染まるヘンリー君で。これは、いままでにない特殊なゲームだと思いますね。

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――変わったゲームですよね。舞台が用意されていて、好きなことを選んでいくのは、テーブルトークRPGに近いと感じました。

松本 変わったゲームですね(笑)。いわゆる“ロールプレイングゲーム”のピュアな体験ができます。4キロ四方のごく狭い中から見た中世ボヘミアのヨーロッパの世界が見渡せる体験ですが。冒頭1.2時間触っただけで、最後まできっといいんだろうなと感じました。

――“プレイする”というよりも、ボヘミアで“過ごす”という感覚が近いですね。

松本 先に進みたいところを、「もうちょっとここに居てみよう」とか、「村で泣いているお母さんの話を聞いてみよう」とか、隅々まで行っても苦じゃないんですよね。舞台がほどよく狭くて。そういう限定的な空間の作りかたがうまいと思います。ひとりでテーブルトークRPGをやっている感じで、誰にも気兼ねしないで、つい酒場に長居したりとか(笑)。

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――じっくり遊べますね。取材時にプレイ時間が5時間もあって驚いたのですが、いざプレイすると、ずっとやっていられるという。

松本 端から端までプレイするのは、100時間ぐらいかかるとのことですが、それくらいの時間をかけて過ごせるのはいいなと思いますね。魔法とかモンスターとか、つい派手にしたくなってしまうところを、ぐっと抑えての100時間。冗長ではなく、つねにプレイヤーを楽しませる仕掛けがありながら。主人公の視点への降ろしかたが、『スカイリム』や『ウィッチャー』よりもさらに低いと感じます。主人公が特殊なものを持っていないので、本当に入りやすく、入ってしまうとずっとここに浸っていたいと思えます。ここまでのものはなかったと思える、RPGの新しい方向性のひとつと言っていいのではないでしょうか。

―― 舞台のサイズがちょうどいいですね。

松本 ディレクターのダニエル・ヴァブラ氏は、かなり卓越したゲームマスターのようで、シナリオを書きながらマップのレベルデザインや舞台設計もこなすスーパーマンです。ヘンリーの強さを想定したうえで、きっと4キロ四方の舞台ができあがったんだと思います。限定版のブックレットに収録したダニエルのコメントを読むと、彼の仕事ぶりがよくわかります。マップデザインのことから、キャラクターの設計、UIへのこだわり。ゲームのデザインやゲームのメカニクスに興味がある方は、とても楽しめる内容になっていると思いますよ。

―― ただ、戦闘やロックピック(鍵開け)は難しすぎるのではと感じましたが(笑)。

松本 たしかに(笑)。ロックピックは初期よりだいぶ易しくしたと言っていました。ゲームの序盤の戦闘は、ヘンリーが弱すぎるので難しく感じると思いますが、スキルを上げればそれなりに戦えますし、そのころには操作にも慣れると思います。当初は弓のレティクル表示もなかったようで、さすがにそれは……。どれだけリアルさを追求しているのかと(笑)。

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――さらにリアルさを体験できるハードモードもあるのですよね?

松本 ハードモードは、HPやスタミナ、コンパスなどの表示がなく、健康状態も視覚効果から判断する必要があります。ファストトラベルもできず、食べ物のリソース管理がシビアになっていたりと、本当の意味でのハードモードです(笑)。ノーマルモードをクリアーしたら挑戦してみてはいかがでしょうか。

音声だけで海外ドラマ60話相当

――日本語版は、テキストだけでなく音声もすべて日本語化されています。翻訳量はどれくらいだったのでしょうか?

松本 何万ワードって言ってもなかなか伝わらないと思いますので、海外ドラマでたとえると『ゲーム・オブ・スローンズ』程度のセリフの密度で、60話分程度になります。シーズン5.6くらいなので、だいぶボリュームがあります。さらに、それと別に村人たちが勝手に喋っている部分もすべて日本語音声にしているので、まあ常軌を逸してますよね(笑)。

―― 声優さんもたいへんですね……。

松本 いちばんのウリは、イベントのカットシーンですね。カットシーンは声優さんを全員集めて、掛け合いで一気に録りました。ゲームの収録ではあまりやらないのですが、やっぱり掛け合いって最高ですね。本当に舞台を見てるような感じです。海外ドラマで活躍している声優さんが多いのですが、ふだん海外ドラマはそういう録りかたをしているようで。日本語的な間ま とか、日本人が聞いたときにわかりやすいヘンリーとママの間ま などを意識して録ったので、そこまでこだわったローカライズは、ゲームではなかなかないと思います。日本語音声がないとしたら、きっと選択肢を適当に流してしまうと思うんですよね、字幕を読んじゃって。そう思うと倍は得してるかな。へたすると3倍くらいかもしれないですね。

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―― 音声収録で苦労した点はありますか?

松本 役作りに苦労されていた方が多かったようですね。あとは、大人っぽいシーンがあるので、女性にとってはなかなか……。ヘンリーも色っぽい声を出さないといけなかったりで。

――ベッドシーンや残酷表現もありますし、本作はCEROがZになっていますね。

松本 ベッドシーンは……PS4版は真っ暗になってしまうかもですが、音声は残しているのでご期待ください。音はそのままです! DMMGAMES初のCERO Zタイトルです。私の人生初のCERO Zでもありますし、感慨深いですね。これでDにしたら「丸めすぎじゃん」みたいなところもありますし、最低限の修正でZにしました。

――ゲーム本編に加えて、コーデックス(図鑑)もあって、テキスト量もかなりのものかと。

松本 翻訳量としてはそこも多かったんですよね。あれは読み応えがあって、中世が好きな人にはたまらない、いい資料集です。テーブルトークRPGのルールブックを読むのが好きという方も多いと思いますが、そんなノリですかね。鍵開けとか戦闘で心が折れたときに、コーデックスを読もう、みたいな(笑)。

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―― Saviour Schnapps(ゲーム中の酒)の“救生酒”という翻訳がおもしろかったです。

松本 Saviour=救世主で、Schnapps=酒で、そのまま。養命酒みたいですね(笑)。ゲームと関係ないですが、チェコにはベヘロフカという薬用の酒があって、朝と夜に飲むと体にいいとか。まさに養命酒。ゲームの救生酒は、飲むとゲームデータのセーブが可能です。朝晩にクイっと飲んで、セーブしてください。飲みすぎるともれなく“泥酔”のステータス異常が付いてフラフラになってしまいますが(笑)。

――DLC(ダウンロードコンテンツ)の翻訳も、すでに進めているのでしょうか?

松本 はい。そちらも進行中です。

――英語版ではDLC第4弾まで実装されていますが、日本語版ではどうなるのでしょうか?

松本 リリース後に少し期間を置いて、順次追加しようと考えています。ただし、トーナメントや基本機能のアップデートについては、できればリリース日に同時実装したいです。

―― 発売が楽しみです。

松本 本当に、こんなゲームはないですよ。そのひと言に尽きますね。十分に時間が取れるときにプレイするほうが楽しめると思います。本当はゴールデンウィークに出したかったのですが……ぜひともシルバーウィークに遊んでください! ちょっと遠いな(笑)。ロールプレイング(役を演じる)ゲームに興味がある方は、目からウロコです。じっくりのんびり遊んでみてください。日本語化の品質に関しては全力で挑みましたので、リリース後に気になる翻訳がありましたら、突っ込んでいただければ改善します。ぜひともそういったご意見やご要望がありましたらお願いします。

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タイトル
『キングダムカム・デリバランス』
対応機種
プレイステーション4、PC
ジャンル
オープンワールドRPG
価格
PS4版 8180円[税抜](8834円[税込])、ダウンロード版は7360円[税抜](7949円[税込])
PC版 通常版(ダウンロード版のみ)は7360円 [税抜](7948円[税込])
CERO
Z(18才以上のみ対象)