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開発会社Warhorse Studiosのキーマンが語る本作の魅力は「自由度と空気感」
公開日時:2019-07-11 18:00:00
(写真左より) |
ニッチな世界観設定だが、おもしろさには自信あり†
――海外でリリース1週間で100万本セールス、累計では200万本を超えるヒットとなりましたが、成功をどのように感じていますか?
マーティン ユーザーの反響が大きく、我々がこう感じてほしいと思っていた部分を評価していただけたので、とてもうれしいです。売上という面でもホッとしています。
ヴィクトール 本作は舞台や世界観がニッチで、万人受けするゲームというわけではありませんが、数字として結果が出たことで非常によろこばしく思っています。
トビー アメリカとEUはマーケットの規模から見て販売数の割合も大きく、ユーザーの反応がとくによかったのはお隣のドイツですね。ドイツのユーザーは濃いRPGやコアなストラテジーゲームを好む傾向があります。そして何より、すばらしいドイツ人PRマネージャー(トビー氏自身のこと)がいますから(笑)。
――(笑)。海外ユーザーは本作のどういった点を、とくに評価していますか?
マーティン ストーリーですね。主人公はヒーローではなく、最初に敵が現れたときには逃げなければならないなど、ステレオタイプではないゲーム性が評価されています。
ヴィクトール 自由度の高さを楽しいと感じているユーザーも多いです。本作には、誰に話しかければいけないとか、誰がいい人で悪い人だという概念がありません。これらはプレイヤーの選択しだいで決まるものです。自分が選ばれし者で世界を救うといった使命もなく、ただ“どう生きるか”に主眼を置いています。
――物語や設定で言うと、剣も魔法もなく、こう言っては何ですが、地味で暗い時代が描かれています。そういった舞台設定を選んだ理由は何だったのでしょうか?
マーティン ゲームデザインの観点から、銃火器が登場する前の時代というのが、大きなポイントです。それ以降は剣が廃れてしまうため、剣で戦う最後の時代を選びました。ボヘミアを選んだのは……近いから?(笑)。資料も豊富で、ロケを行うことも容易ですし。
ヴィクトール また、この時代は防具が洗練されていて、相手の武器に対してどの防具を選ぶかも重要ですし、馬での戦いもあります。戦闘のバリエーションが豊富な時代なのでゲーム化したらおもしろいのでは、と思いました。
――15世紀を選ぶというのは、日本で言うと時代劇を作るようなイメージだと思います。キックスターターで開発を始めたということですが、最初から勝算はありましたか?
マーティン 最初は数多くの大手パブリッシャーに企画を持ち込んだのですが、いいゲームだと評価を受けるものの、「万人受けしないだろう」という反応でした。それでキックスターターで開発をスタートしましたが、どう中世を感じてもらうかという点が命題でした。
どの国にも中世の時代には身分の差やヒエラルキーがありましたので――たとえば日本では侍にも身分がありましたよね――舞台がボヘミアでも共感できる部分は多いでしょう。いったんゲームを体験すれば、この世界を楽しんでいただけるだろうという自信はありました。
ヘンリーの視点から中世を体験してほしい†
――主人公のヘンリーはヒーローではなく、ただの田舎の青年で、物語冒頭ではろくでもないやつみたいな印象です。このヘンリーの主人公像は、どのように生まれたのでしょうか?
マーティン 中世の戦争というものを、一般人の視点から体験してほしかったことが大きな理由です。ヘンリーは何も知らない青年です。そんな彼が自発的に人に話しかけ、何かを学んでいきます。中世を体験してもらうには、一般人であることが大事でした。
ヴィクトール ヘンリーの存在は、ストーリーを充実させることにもひと役買っています。ヘンリーは何者でもありません。たとえば、レベル1の勇者がレベル99の勇者になっても、「最初から勇者じゃん?」と思いますよね。でもレベル1の一般人がレベル20のナイトになったら、これはとてもすごいことですし、感情移入しやすいと思います。
――中世を体験するだけでなく、中世を学べる点もすごいと感じました。ゲーム内にあるコーデックス(図鑑)は、中世の歴史や人物、文化や風俗まで網羅しており、読み物として充実していますね。もはや中世Wikiというべきもので、読むだけで楽しいです。
マーティン スタジオにはフルタイムで働く正規社員の歴史家がいて、彼女が調べたことを文書化し、何百ページにもわたるレポートをあげました。この膨大なレポートをゲームの資料として使うだけではもったいないと感じ、ユーザーに還元したいと議論したうえで、コーデックスという形で提供しました。
――チェコは現在もいたるところに中世の雰囲気が残っていて、びっくりしました。
トビー チェコの人たちは、本作の歴史的背景は詳しくないかもしれないですが、ゲームに出てくるチャールズ4世は誰でも知っていますし、街にも歴史遺産が多く残されているので、そこにいるだけで中世を体験できる土壌がありますね。そういう点では、プラハと京都は似ていると感じます。
――チェコ政府観光局と協力して、このようなメディアツアーを実施しているのは興味深いです。日本ではなかなか考えにくく……。
トビー 観光局が本作を助けているというよりは、本作発売後にゲームの舞台を訪れるファンが増えて、観光事業につながったという感じですね。リリースした日には、本作は文化の輸出に貢献している作品として、チェコの新聞やメディアが大きく取り上げました。その後もアメリカやドイツ、日本のチェコ大使館が応援してくれて、本作を通じてチェコを知ってもらいたいという動きが生まれました。
※画像提供:チェコ政府観光局 |
ずばり、本作の見どころは?†
――少しお話を戻しまして。ゲーム内でとくに気に入っている部分はありますか? 皆さんが思う見どころはどこでしょうか?
トビー どのシーンというわけではありませんが、物語が急展開する場面は気に入っています。カットシーンは凝っていて、何度見ても鳥肌が立つシーンがあります。また、本作で魅力的な部分は、中世の世界観です。たまにはストーリーを外れて、街や森を散策したりして、その空気感を感じてほしいです。
マーティン 宗教の在りかたに着目するのもおもしろいと思います。この時代は、統治する国が変わっても信仰(キリスト教)は変わりませんでした。国が変わっても住民は同じ教会に通います。生活にしみついたキリスト教と言うべきもので、それがゲーム内でも見られます。現在よりも戒律はきびしく、敷かれたレールの上で生活するような感じでした。
DLC第4弾では、そういった生活にしみついたキリスト教とは異なる考えを持った教徒が現れたときにどうするか、という部分を題材にしています。こちらもぜひお楽しみに。
ヴィクトール 私は戦闘シーンを推したいですね。本作は物語と自由な選択を重視しており、ほぼすべての戦闘を避けることもできます。しかし、戦闘には力を入れていまして、中世の剣術をリアルに再現しています。戦闘方法は序盤でほとんど学べますが、その時点ではまだヘンリーも武器も弱いので、なかなかうまくはいかないでしょう。
ゲームを進めていく中で、レベルが上がって武器も強くなりますし、なによりプレイヤー自身のスキルが上がります。その上達を感じられるところにおもしろさがあります。メインストーリーを無視して、盗賊退治をするのもいいでしょう。そうすれば、武器やお金が手に入り、ヘンリーが強くなってストーリーを進めやすくなるかもしれません。そういう自由なところも、本作のおもしろさのひとつだと考えています。
――今後の予定や、追加されるコンテンツについてお聞かせください。
マーティン 先ほど話に出ましたDLC第4弾が先日実装されまして、そのつぎはPC版のMOD対応を予定しています。7月18日に発売される日本語版でも、DLCを順次リリースしていく予定です。DMM GAMESと力を合わせて翻訳作業を進めていますので、楽しみにしていてください。そして、『キングダムカム・デリバランス』を通じて、チェコという国を知ってもらえれば、これに勝る喜びはありません。
■Warhorse Studiosについて
チェコのプラハを拠点とする開発スタジオ。2K Czechで『マフィア』シリーズの開発に携わったダニエル・ヴァブラ氏が中心となって2011年に設立。2018年2月13日に欧米で『キングダムカム・デリバランス』をリリースし、高い評価を得る。現在はTHQ Nordicの子会社KochMedia傘下の独立スタジオとして運営。
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