2023年6月23日~25日の期間、シンガポール・サンテック国際展示場で開催中のオリンピックeスポーツウィーク(6月22日開会式)。その2日目の模様をお届け。
日本人プレイヤーが躍動し、暑いシンガポールよりもさらに熱い戦いがくり広げられた。
『パワプロ』しょーら選手が優勝、タイジュ選手が準優勝で金銀独占!
オリンピックeスポーツ2023 野球競技 決勝
個人的にもっとも注目していた野球競技。オンライン予選には30000人が参加した、『パワプロ』オリンピックの決勝。
Switch、PS4で100円[税込]でダウンロードできる『WBSC eBASEBALLパワフルプロ野球』を使用しての試合となる。試合は3イニング制、延長時はタイブレーク方式となる。
この日試合を行ったのは、前日にKONAMIブースにてオフライン予選決勝を勝ち抜いた4名。準決勝第1試合は日本のタイジュ選手と台湾のCMWANG選手。準決勝第2試合はアメリカのKANGGANG選手と日本のしょーら選手の組み合わせとなり、両試合とも日本人選手が勝利を収めて決勝戦に駒を進めた。
この時点で日本人選手が本大会初の1位、2位を獲得することが確定。金トロフィーを獲得したのは、序盤から激しい打撃で圧倒したしょーら選手。銀トロフィーはタイジュ選手の手にわたった。
3位決定戦では台湾(チャイニーズ・タイペイ)とアメリカの戦いになったのだけど、こちらはタイブレークの延長戦となる熱戦で、台湾からの応援団がフラッグを掲げていたりと盛り上がっていたのが印象的。
しょーら選手、タイジュ選手、おめでとうございます!
試合結果(決勝)
しょーら 420 | 6
タイジュ 001 | 1
優勝しょーら選手へのインタビューをお届け
――おめでとうございます。いまのお気持ちは?
しょーら本当にうれしいです。ここまで来るのが長かったというのもありますし、肩の荷がおりたような気持ちもしますね。
――緊張はしませんでしたか?
しょーら準決勝の前は少ししていましたが、決勝戦ではこうなったらもうやってやろうと。海外で『パワプロ』をプレイすることはなかなかないですが、それでも実際にやることというのは画面の前に座っていつもと変わらないので、そこは日本にいるのと変わらずできましたね。
――壇上では、ここまで辛い道のりでもあったとおっしゃっていました。
しょーらそうですね、昨日のグループステージも全員日本人プレイヤーのトップレベルの人たちが揃っていて、ハイレベルな戦いで、最終試合に負けたら準決勝には進出できませんでしたし。本当にギリギリのなかでこういう結果になり、よかったです。
――決勝戦では初回から4点を取り試合を有利に進めました。
しょーら僕が先攻で、やっぱり後攻のほうが有利なので、初回から1点でも取れればいいなと考えていたところに、僕の配球の読みと実際の投球が噛み合ったかなという形です。
――決勝戦の相手のタイジュ選手とは対戦経験があると思いますが、どのような特徴の選手でしょう?
しょーら低めの出し入れのコントロールがじょうずなので、しっかりボール球も見極めようと。使ってくる投手の木場は(爆速)ストレートが速くて浮き上がってくるので、それを捉えるにはかなり早めにスイングしないとヒットにならないんですよね。ですから際どいところは捨てて、甘いコースに来たら思い切り引っ張るという気持ちで臨みました。
――ここまではふだん、どんな練習を?
しょーら相手の使ってくるピッチャーを相手に打撃練習をしたり、逆に自分が使うピッチャーの二度押しのタイミングをカラダに染み込ませるように繰り返し練習していました。平日は1~2時間で、休日にがっつり6~8時間くらい、やれるだけやっていた感じですかね。平日はウォーミングアップをしてからオンライン対戦、休日は先程言った自分の練習と、何か新しい発見ないかなと探すようにしていましたね。
――最後に、『WBSCパワプロ』を遊んでいるプレイヤーにアドバイスをお願いします!
しょーら
VRでやる卓球、近未来感がすごい『Eleven VR』
VR卓球 オリンピックeスポーツシリーズ
エキシビションマッチとして行われた卓球競技。VR卓球ゲーム『Eleven VR』を使用して行われた。
本来的にはオンライン対戦で楽しむゲームのはずだけど、本大会では同じステージ上で選手たちがボールを打ち合った。
およそ現実の卓球と同じくらいの距離感でコントローラを振り、VR空間内でラケットがボールを捉えれば、打球音もリアルに会場に響く。
そう、まさに、ステージ上で透明な卓球台を挟んで現実の卓球をやっているかのように見えるのだ。
となると、逆に「これなら現実の卓球をやったほうが手っ取り早いのでは……」という身も蓋もない考えがつい思い浮かぶ。首を振りアタマから振り払おうとしても浮かんでしまう。う、ううむ。
現実の競技をeスポーツ化、リアルにVRゲーム化するメリットとしては、たとえば専門の道具(卓球の場合ラケットや卓球台やピンポン球)を必要としないとか、CPU対戦でひとりでも楽しめるとか、オンラインで離れた選手とも対戦できるとか、屋外競技でも室内で楽しめるとか、モータースポーツのように資金・設備的にハードルが低く済むということが考えられる。
そういったメリットをあえて棚に上げてリアル会場の対面方式で実施されたVR卓球競技。限りなくリアル卓球大会に近いVR卓球大会と言うことができるだろう。
しかし途中、VR機器のキャリブレーション(位置検出)や接続に手間取り時間が掛かってしまう様子も垣間見られ、「これなら現実のが……」という思いがつい。
う、ううううむむむむ。ゲーム機器が進化してリアルに近づけば近づくほど「現実でいいのでは」と思ってしまうのは、VRスポーツゲームが持つジレンマというものかもしれない。
とはいえシンガポールは卓球人気が高いのか会場にはけっこうな数の観客が訪れていて、絶妙なコースにスマッシュを決めたりすると盛り上がる場面も多かった。会場のブースにはリアル卓球台も設置されていて、来場者は楽しんでいた。
あとは、たとえば家にVRゲーム機があって、卓球のゲームがインストールされていて、たまたま遊んでみて……とか、そんな切っ掛けでeスポーツを通じて卓球を知ったり始めたりするプレイヤーもいることだろう。卓球を愛するひとりとしてVR卓球や本大会が卓球普及の一助となることを願う(元卓球部の筆者)。
マインドスポーツの代表格“チェス”も開催
チェス オリンピックeスポーツシリーズ 決勝
今回初めて、国際チェス連盟とChess.comが協力し、初のオリンピック・eスポーツ・チェスの勝者となる機会をプレイヤーに提供することになった。
決勝には8名のチェスプレイヤーが登場したが、予選イベントには42000人のプレイヤー参加したとのことだ。
プレイヤーは同じステージに並んで競技を行うものの、チェスボードを使うわけではなく、PCとオンラインを経由して戦う。ルールは伝統的なチェスのルールと同様だが、本式のチェス競技とかなり異なるのはその持ち時間。各ゲームの制限時間は3分+1手につき2秒とかなり短く設定されている。将棋でいう1分将棋に近い感覚ではないだろうか。
オンラインでの視聴者や、つまり“eスポーツとしてのチェス”と考えたときに、このくらいのスピード感が求められていると国際チェス連盟は考えたのだろう(野球のMLBで“ピッチクロック”が導入された目的と通じる気がする)。
チェスは歴史も長くプレイされている国も人口も多く、また運の要素がないテーブルゲームで、“マインドスポーツ”というジャンルで呼ばれることもある。
それゆえに「チェスはオリンピック競技になりえるか?」という議論はかなり古くからなされているのだけど、現在のところ、正式なオリンピック競技としてチェスが行われたことはない(アジア大会などで行われたことはある)。
言ってみれば「eスポーツはスポーツか?」というような議論が、eスポーツよりも早くなされていた競技の先輩というような経緯があるのだ。そんなこんなで今回のオリンピックeスポーツでも競技として採用されている。
試合はセルビアのAleksei Sarana選手が優勝し、金トロフィーを獲得した。
They made all the right moves ♟️
Presenting your #OlympicEsportsSeries winners for chess!
1️⃣st place: Aleksei Sarana
2️⃣nd place: Maksim Chigaev
3️⃣rd place: Son Nguyen
#OlympicEsportsWeek | @chesscom https://t.co/NLsSM3gaX5
— The Olympic Games (@Olympics)
2023-06-24 19:42:10
テニス『テニスクラッシュ』
テニス オリンピックeスポーツシリーズ 決勝
『テニス・クラッシュ』は、ワイルドライフ・スタジオが国際テニス連盟と共同で開発された、スマートフォン向けオンライン対戦テニスゲーム。
2023年4月4日に開催された予選の上位から5名と、シンガポールからワイルドカードで1名が参加した。
【ルール】
- 6人のプレーヤーが2つのグループに分かれる
- 各グループは1回戦総当たり戦を行う
- 各グループ上位2名が準決勝に進出(ベスト3)
- 決勝はベスト5方式で行われる。
フランスのアナス・ベンガジ選手が優勝を果たした。
The results are in!
Here are the winners in the tennis category at the #OlympicEsportsSeries
1️⃣st place: Anass Benghazi - 'Anteo'
2️⃣nd place: He Shenghao - 'Kafe'
3️⃣rd place: William Foster -'Fozzy'
#OlympicEsportsWeek https://t.co/piHwgXxxf2
— The Olympic Games (@Olympics)
2023-06-24 21:01:08
2日目のトリは『フォートナイト』! Pepo選手、Zagou選手が活躍
射撃『フォートナイト』オリンピックeスポーツシリーズ 決勝
『フォートナイト』オリンピックeスポーツシリーズ決勝大会では、通常のバトルロイヤルルールとは大きく異なるタイムアタック競技として採用された。
このために作られた特別なステージ“フォートナイトアイランド”を走り、途中に出てくる的を撃ち抜き先へ進んでいく。コースは平坦ではなく空中へ進むような場面もあり、そこでは『フォートナイト』ならではの、構造物を構築するクラフト作業をいかに素早く行えるかの操作も問われる。
コース上にたくさん現れる的を撃って走り、走って撃つ。競技としては“射撃”というよりスキーとライフル射撃を組み合わせたバイアスロンに近いかもしれない。
射撃の正確さが試され、短距離、中距離、長距離射撃の3つの異なるセクションで成り立っており、ファイナリストたちは照準の正確さと構築スキルを駆使して、フォートナイトアイランドを最速で駆け抜けた。
13名のファイナリストが1回の予選タイムトライアルに出場し、上位8名がシングルエリミネーションの準々決勝に進出する。各準々決勝の勝者が準決勝に進み、最後の2名が決勝に進出。グランドファイナルは3本勝負となる。
日本からはZETA DIVISION所属のZagou選手とCrazy Raccoon所属のPepo選手のふたりが出場。
いよいよこの後、日本時間20:45からフォートナイト(射撃)がスタート
ファイナルが始まる前に #OlympicEsportsSeries のマップで練習するZagou
ライブ配信
https://t.co/RCVn3Vyp6j
@Zag0u
#OlympicEsportsWeek https://t.co/ZG4Q2KUt9f
— オリンピック (@gorin)
2023-06-24 19:59:54
どの選手もエイムの正確さ、操作のスピードがヤバい!
いやもう、ヤバい! とシンプルそのものな表現しか出てこないほど、しかしそれでもそう叫びたくなるくらいくらいの異次元のパフォーマンスを見せてくれる。
的を狙う正確さと速度。照準移動がすばやくかつブレない。中には照準器を覗き込まず、いわゆる腰だめ撃ち(腰撃ち)で的を撃ちまくる選手も。なんで当たるの。
通常とは異なる特別なルールでの『フォートナイト』競技だけど、こちらのほうがふだんFPS・TPSをやらなかったり視聴経験が少ない人でも選手の凄さは伝わりやすいはずだ。
これ本当に同じゲーム? 俺の『フォートナイト』はこんな動きしないんだけど? と思ったが、オリンピック選手と比べるのはそりゃウサインボルトと100メートル走るようなものだからそれはそうなると思った。納得だ。
とくに連続で射撃を行い複数の的に素早く当てるパートや、クラフトを駆使してコースを進んでいくパートでみごとなプレイが出ると、会場からは自然と歓声と拍手が上がっていた。
初回タイムアタックを終えて、Pepo選手は2分13秒62の11位で予選敗退、Zagou選手は2分10秒76の8位で準々決勝進出!
Zagou選手は惜しくもその準々決勝で敗退となってしまったが、日本人プレイヤーの存在感をしっかりとアピールする結果となった。
※一部の画像は配信をキャプチャーしたものです。