『ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター』(以下、ミンサガ リマスター)の生放送番組“ミンサガリマスター まるわかり生放送”内で実施された、“サガ”シリーズ総合ディレクター・河津秋敏氏のインタビューの模様をお届けする。
本番組は、2022年12月1日に発売されるプレイステーション5(PS5)、プレイステーション4(PS4)、Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)、PC(Steam)、スマートフォン(iOS/Android)向けソフト『ミンサガ リマスター』のすべてがわかる公式番組。開発者への50の質問を交えて、本作の詳細が紹介された。
新たに発表された追加要素の詳細や細かい仕様については11月11日に公開した記事でリポートしているので、そちらでチェックしてほしい。
なお、本記事には『ミンサガ リマスター』の一部ネタバレが含まれている。原作をプレイしていない人は、記事の中盤以降は読まないことをおすすめする。
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河津秋敏(かわづ あきとし)
スクウェア・エニックス 『サガ』シリーズ総合ディレクター。『サガ』の生みの親。シナリオ執筆やゲームデザインなど、その業務は多岐にわたる。(文中は河津)
――原作の『ミンサガ』からは17年、初代『ロマサガ』からだと30年。感慨深いものはありますか?
河津自分が何かをして30年経ったわけではなく、時間は自然と経つので。とくにそのこと自体に感慨深いものはないのですが、こうやってリマスター版が出せたり、新しいユーザー、それからファンの皆さんに遊んでもらえるという意味では、すごいなぁと思います。
――初代『ロマサガ』を神話ベースの物語にした理由は?
河津『ロマサガ』の前にゲームボーイで『魔界塔士サ・ガ』を作っていて、そのときは塔を昇って行ったり、いろいろな世界に行ったり、ファンタジーだけではなくSFチックだったり、いろいろな要素が入り混じったごった煮みたいなゲームでした。
『指輪物語』のような本格的なハイファンタジーと呼ばれる世界観のものを作ってみたいということで、そのために背景からしっかり作ろうと直接ゲームには出てこない神話や世界観を組み立てていきました。そういったストーリーを作ること自体が目的だったので、ああいう話になりました。
――初代『ロマサガ』で8人の主人公を選べるようにした理由は?
河津本当は、キャラクターメイキングでプレイヤーに主人公を自由に作らせたかったんです。ゲームをプレイするときに、自分で自由に想像して主人公像を作ったほうが楽しいですから。
しかし、完全に自由にさまざまな見た目のキャラクターを無限に作れるかというとできないので、プリセットで何体か用意して、その中から選んでもらうような形にしようと、いろいろな年齢層の男女4人ずつ、8人に設定しました。
――『ロマサガ』の自由度が高い理由は?
河津もともと、どんなコンピューターゲームのRPGも広い世界を自由に歩き回ることができる、というふうな設計なんですね。
でも、『ファイナルファンタジー』にしろ『ドラゴンクエスト』にしろ、シリーズが進むごとにだんだんとストーリー要素が入ってきて、そうするとストーリーをたどっていくことに重点が置かれて、わりと一本道にお話しが進んでいくようになっていきました。
ストーリーを描くためには必然的にそうなっていってしまうんですけど、そういう方向に当時のRPGが進んでいたので、最初に作っていたように、どこに行ってもいいような形式でゲームを作りたかった。それでいて、ストーリーがちゃんと進んでいくような仕組みを実現できないかということで、模索して作ったのが『ロマサガ』でした。
どこにでも行けるので、簡単にストーリーを見失ってしまったりして難度が高くなってしまったのですが。そこらへんを反省してリメイクした『ミンサガ』では、もうすこしストーリー寄りに話を進んでいけるように修正しつつ、でも自由度は確保して、というところは苦労しました。
――初代『ロマサガ』も原作『ミンサガ』もバトルの難度が高い理由は?
河津あんまり簡単なゲームを作っても仕方がないといいますか、おもしろくない。難度を高くしたいというよりは、遊んで楽しくしたいんです。
あたり前ですがゲームは勝ってくれないと先に進めないので、必ず勝てるように作るんですね。でも、それがわかって「何をやっても勝てるよね」とプレイしていたらゲームとしてはおもしろくないじゃないですか。ゲームとプレイヤーのやり取りが成立しないと、ゲーム性がよりおもしろくなっていかないので、「そう簡単には勝たせないよ。油断していると死んじゃうよ」というような投げかけをゲーム側からしてくるように作りたかったんです。
べつにプレイヤーをいじめたいとか、そういう意図があったわけではありません。
――リマスター版は非常に遊びやすい印象ですが上野ディレクターのこだわり?
河津『ミンサガ』自体が周回前提でいろいろな要素が入っているのですが、そのわりには、当時は周回してやりこんでチェックするところまで時間がなかったせいもあって、「ここまで周回させるんだったらもっとこうしておけばよかったよね」というところがたくさん出てきました。
そこを実際にプレイヤーとしてプレイしてくれた上野くん(※)が汲み取って、もともとあった周回要素をより楽しんでもらえるようにしてくれたので、本当に遊びやすくなっていると思います。原作でもかなりやりこんでいただいたプレイヤーも多いと思いますが、そのとき取れなかった武器だったり、そういうものをぜひ集めていただけたらと思います。
※『ミンサガ リマスター』ディレクターの上野真史氏。
河津氏が選ぶおすすめ主人公は?
――シリーズファンかつ『ミンサガ』未プレイの人に遊んでみてほしい主人公は?
河津ファンであればジャミル。吉野裕行さんの声もすごくいいですし、ストーリーやスタート地点、イベントもいろいろ楽しめるので、ジャミルがイチオシです。
――シリーズが初めての人に遊んでみてほしい主人公は?
河津いちばんオーソドックスなのは、やはりアルベルトなのでおすすめです。
でも、最初のダンジョンのボスが結構強かったりするので必ずしもやさしく進めるわけでもないのですが、お姉さんのディアナがいたり、途中からはシフが仲間として入ってきたりするので、遊びやすさという意味ではアルベルトじゃないかなと。ストーリーの起伏も激しいですし、目的意識もはっきりしているキャラクターなので、おすすめだと思います。
――そのほかにおすすめの主人公は? 8人全員おすすめですか?
河津どのキャラクターも意識的に設定していますし、性格付けもそれぞれ変えているのでみんな楽しめると思います。お気に入りのキャラクターを見つけていただけるとうれしいです。
『ロマサガ』を作ったころはホークのような海賊の主人公はあまりいなかったですし、シフのような女性主人公もあまりいなかったと思うので、そういうところもプレイしていただければと思います。
<ネタバレ注意>アルドラが生まれた経緯、『ミンサガ』でシェリルが仲間にならなかった理由
――アルドラがプレイアブルキャラクターとなった理由は?
河津『ロマサガ』をリメイクするときに「新しく主人公を追加できたらしたいよね」という話が出て、じつはダークは主人公用に作ったキャラクターだったんです。
アサシンギルドで復活したところから、ダークを主人公としてプレイさせるという構想ではあったのですが、なかなか難しくて断念しました。それで仲間キャラクターとして追加したのですが、アルドラはもとの『ミンサガ』にもエンディングにだけモデルが出てきます。
エンディングにしか使わないのにモデルを作ってモーションを付けていたので、「もったいないよね」という話はしていました。その経緯を上野くんも知っていたので、「せっかくだから使えるようにしませんか?」という話もあり、追加することになりました。エンディングでアルドラが出てくるシーンを見られた方は仲間にできます。
アルドラを連れてプレイすると、彼女の視点でいくつかのイベントが見られる追加シーンがあります。過去のミルザとの話などを若干補完しているので、楽しんでもらえればなと思います。
――アルドラの物語が悲劇的な理由は?
河津ミルザがサルーインと戦い、オイゲンは置いていくという話は最初の設定からそうしていて、そのときはミルザとオイゲン以外の関連するキャラクターは具体的には設定していませんでした。
ですから30年前の『ロマサガ』にはアルドラはいなかったのですが、新たに『ミンサガ』を作るときに設定を補強して、ミルザの仲間にはどういうキャラクターたちがいたのかを決めていくなかで生まれたキャラクターです。みんながみんな最後にサルーインと戦って名を残すわけではなく、そこについていけないけどいろいろな想いを残していく、そんなキャラクターがいてもいいだろうと。
実際の人生のなかでも、みんなが名前を残すような形で成功するわけではないですし、だからといってその人たちが存在しなかったわけでもない。そういうものを描けたらなと彼女のストーリーを作りました。
――初代『ロマサガ』でシェリルを仲間にできなかった理由は?
河津神様なので、仲間に入ってきちゃったら強すぎてゲームにならないという単純な理由です。
『ミンサガ』のときも、じつは仲間にできるくらいには作ってあったのですが、やっぱり話として成立しないのでボツにしたわけなんですが、今回は割り切って、プレイヤーへのご褒美として用意しました。シェリルのイベントをちゃんと見て、そのうえで戦って勝ってとかなりハードルが高いので、そこまでやった人にはご褒美として使えてもいいんじゃないと。
パラメータ的にはゲームバランスを壊さないように割り切った作りになっていますので、神様といっしょに戦えるわけではないのですが、楽しんでもらえればなと思います。
――フラーマ、モニカ、マリーンについてもひと言。
河津フラーマはキャラクター設定的に相当強いはずなので、パーティーメンバーに入れてバランスがとれるのかという理由で、そもそも仲間に入れないように設定していました。今回は上野くんのほうでうまくバランスをとってキャラクター表現をしてくれていると思うので、そこは楽しんで使ってもらえればと思います。
モニカはちょい役でしか出てこない非常にもったいない使い方だったので、今回は掘り起こしてもらって使ってもらいました。
マリーンは「仲間になっていいんじゃない?」という話が『ミンサガ』のときにもあったのですが、キャラクター性が独特なので、どういう性能にするか詰め切れなかったので仲間になりませんでした。『ミンサガ』をプレイしていただけるとわかるのですが、油断すると接触されてイベントに巻き込まれるというやっかいなキャラクターなんですけど、やっかい者なだけではかわいそうなので、今回はぜひ仲間にして使っていただければと思います。
――“サガ”ファンに向けたメッセージをお願いします。
河津リマスター版を制作できるのもファンの皆さんの支えがあってこそでした。上野くんが全力で遊びやすくしてくれていますし、皆さんの“愛”を受け止めて返しているものになっていますので、ぜひ遊んでみてください。
――“サガ”シリーズが初めての人に向けたメッセージをお願いします。
河津PCを含めてゲームコンソールをお持ちの方であればじっくり遊んでいただけると思います。長時間プレイできますので、ゆっくりじっくり楽しんでください。
ミンサガリマスター まるわかり生放送 概要
原作をプレイ済みの人も、シリーズ初めての人も、これを観れば『ミンサガ リマスター』のすべてがわかる。実機でのゲームプレイや開発者への質問を交えて、本作の魅力を丁寧に紹介する生放送番組。
【出演者】(敬称略)
- MC:ペンギンズ ノブオ(芸人・タレント)
- 『ミンサガ リマスター』プロデューサー:三浦宏之
- 『ミンサガ リマスター』ディレクター:上野真史
- “サガ”シリーズ総合ディレクター:河津秋敏(動画コメントで出演)
【12月1日(木)発売】 #ミンサガリマスター まるわかり生放送
※画像は番組をキャプチャーしたもの。