『ワイルドアームズ』シリーズの金子彰史氏と『シャドウハーツ』シリーズの町田松三氏が、それぞれの手掛けた過去作品から着想を得たふたつの新しいJRPG『アームドファンタジア』と『ペニーブラッド』を生み出すプロジェクト“ダブルキックスターター”の到達額が2億円を突破した。
これを記念し、金子彰史氏と町田松三氏のふたりが実施した特別対談が公開中。クラウドファンディングという初めての試みに対する感触や、過去作の裏話なども飛び出しているので、ファンはぜひチェックしてほしい。
Amazon.co.jpで『ワイルドアームズ』関連商品を検索する Amazon.co.jpで『シャドウハーツ』関連商品を検索する以下、リリースを引用
『アームドファンタジア』『ペニーブラッド』のクラウドファンディングが2億円突破!それぞれの開発を手掛ける『ワイルドアームズ』シリーズ金子彰史と『シャドウハーツ』シリーズ町田松三による特別対談が到着
株式会社Sグループ会社であるアリア・エンターテインメントのクロスメディア部チーフ・プロデューサー金子彰史による新作RPG作品『アームドファンタジア』に関連するプレスリリースをお送りいたします。
『ワイルドアームズ』シリーズの金子彰史と『シャドウハーツ』シリーズの町田松三。それぞれが手掛けた過去作品から着想を得たふたつの新作大型JRPGの制作を目指す“ダブルキックスターター”キャンペーンが8月29日にスタートし、約20時間で1億円を達成。一躍注目を集めた今回のクラウドファンディングも、いよいよ後半戦に突入しました。
現在すでに2億円を突破、バッカー(支援者)も1万人を超え勢いを増す中、金子氏と町田氏による特別対談が実現しました。
『アームドファンタジア』トレイラー映像
『ペニーブラッド』ゲームプレイ・トレイラー映像
金子彰史×町田松三 特別対談
金子彰史と町田松三。それぞれが手掛ける新作RPG大作『アームドファンタジア』と『ペニーブラッド』のクラウドファンディングの現状や、気になるゲーム内容、お互いの作風の違いなど、二人が語り合った特別対談が到着。
はじめてのクラウドファンディングに戸惑いながらも、世界中のファンから届く支援、そして熱い応援の言葉について、まずはじっくりと語っていただきました。
【クラウドファンディングは「ライブ」なんだなと】
――キャンペーンのさらなる盛り上げのために、今回のプロジェクトの中心人物であるお2人にお話しを伺ってまいります。
町田 ありがとうございます。『ペニーブラッド』はずーっとアタフタしているような状態で・・・。
金子 いや、こっちもアタフタだよぉ。色々はじめてなことばかりで本当に大変・・・。
町田 全然そんな風に見えない!こっちは足引っ張らないようにと思って、ホントに。
金子 慌てて絵とか描いて「もう絵で何とかもたせよう!」とかさ。
町田 一緒、まったく一緒(笑)!
――スタート初日でいきなり1億円を突破、ミニマム・ゴール達成はすごい展開でした。
町田 本当にびっくりしました。クラウドファンディングは「ライブ」なんだなと。反応が返ってきて、それに応えるために用意していたものの順番を入れ替えたりとか、臨機応変な対応が求められていて。このライブ感は予想していませんでした。
金子 当初はマラソンで考えていたんだけども、どうやらマラソンではなく短距離走だった。しかも短距離走のスピードでマラソンの距離を走らされるんだなっていう感じ。一ヵ月間という期間限定なので、今は力を出し切って、悔いのないようにやりきるしかないですね。頭で考えるより、とにかく体を動かせみたいな感じで駆け抜けるだけです。
町田 まさにそうですね。だってこっちはもう当初予定していた作戦はほぼほぼ崩壊しているんで(苦笑)。
金子 うちもそんな感じ。完成する前のゲームの内容をみんなに伝えるのが、こんなにも難しいのか!って。ぜんぜん今までの経験が通じない。それがとまどいの要因ですよね。
町田 でもファンからしてみると、金子さんが今度作るゲームがどんなものなのか、今知りたいんですよね。今見たいし今知りたい。でもまだ言えないことも多いから。
金子 そうそう。そのバランスが難しい。せっかく興味を持ってくれているから、できるだけ質問には答えてあげたいじゃないですか。
町田 今までとは勝手が違うし、はじめてのことだから僕も正解がわからない。だけどわからないなりに一生懸命にアタフタしながらもリアクションして、その姿を見てもらうこともライブ感なんだろうなって、思うようになりました(笑)。
金子 この後に俺たちと同じようにキックスターターでゲーム開発のキャンペーンをする人がいるなら、俺たちの屍を乗り越えて上手くやってください(笑)。
町田 俺たちの屍を越えていけ(笑)!
【この3年で俺はもう死ぬつもりで『アームドファンタジア』を作る】
――Twitterでのやり取りやDiscordでのやり取りを見ていても、やはり海外ファンの多さが目を引きますね。
町田 正直、驚きました。過去のゲームを掘り起こして、思い出してくれたファンがこんなにも大勢いてくれたってだけで、ものすごく感謝しています。
金子 これは反省点なんだけど、もっと英語の勉強をしておけば良かったなって思いました。やっぱり海外のみなさんは日本とは違うベクトルの熱量があって、受け答えするのがとっても楽しいんですよ。キャンペーンチームの翻訳家さんも頑張ってくれるのですが、直ぐに返答できないことがちょっともどかしくて。ちゃんと英語を勉強して、ちゃんと自分で向き合えたらもっと面白かっただろうな・・・っていう反省点はあります。
町田 なんとかキャンペーンを成功させて、3年後頑張ってゲームを作って、この熱い期待に応えていきたいなって。
金子 実際にお金を払って支援してくれたみなさんに対する一番誠実な答えって「描いた理想を形にする」しかありません。この3年で俺はもう死ぬつもりで『アームドファンタジア』を作るので、まずは夢を吐き出しきれる舞台をつくるためにも、ぜひプレッジ(支援)していただきたいという思いがあります。いろいろな都合で7割、8割の完成度でお出しするというのもプロとしては必要な決断ではありますが、今回のプロジェクトではこれまで以上にそうしたくない思いが強いです。
町田 でも本当に死なれちゃこまりますからね。僕は金子さんの一ファンとして、まだまだ金子さんの新作は楽しみたいから。
金子 でもね、俺って毎作続編を考えないでやるのよ。毎回「これで終わり!全部出し切った!」みたいに。
【「よくもアリスを殺したな。許さない」っていう】
――お二方の作風の違いの比較は面白そうですね。
金子 これは個人的な作品評になるんだけど、町田さんの作品の魅力って絶対的に「エンディング」なんですよ。エンディングがすごくいいんですよね。本当に素晴らしく物語を落着させているのに、その後にまた、ちゃんとシリーズが連綿とつながっていくのがたまらない。町田作品には「追いかける」という醍醐味もありますから。
町田 そんなことないっすよ(笑)。だって『シャドウハーツ2』作るときに「たくさんファンレター来てますよ」って言われて、その一つの封を開けてみたら「よくもアリスを殺したな。許さない」っていう(一同笑)。1のヒロインを殺したことに対してものすごくバッシングされましたから。
金子 あれはバッドエンドから繋がるからいいんじゃん!よくあのバッドエンドから、次につながる話が書けたなぁって思ったのに。
町田 さすが!やっぱり一流のクリエイターはわかってくれるんですよ(笑)!今の金子さんの言葉を聞いて自信が持てました。僕が考える『ワイルドアームズ』の魅力って、ユーザーのツボに入るようなことが絶え間なく起こることだと思っていて。若い子たちに向けて作る場合、難しいテーマであっても嚙み砕いてわかりやすく伝えてあげることが重要なんですけど、僕はそういうのが逆に苦手なので、ちょっとひねくれた考え方で「分かってくれる人だけが拾ってくれればいいや」みたいな考えがあるんですよ。でも『ワールドアームズ』ってそうではなくて、金子さんはきちんとそこを自分の中で整理して、わかりやすく伝えていける人で。でも、そうすると説教臭くなりがちなのに、そうならずにしっかりエンタメにしちゃうところが上手いなぁって思っていました。
金子 それはね、たぶん俺自身が偉いと思ってないからじゃないかなぁ。脳内は“エブリタイム中学生”だから(笑)。でも町田さんも同じだと思うんだけど、設定とか解説に、物語の尺って使いたくないじゃないですか。
町田 それはそうですね。
――バッカー(支援者)のみなさんは今後ますますストレッチゴールを意識していくことになると思います。さらなる支援でゲームがもっと面白くなるための要素が追加されていくわけですよね?
町田 まだオフレコではあるんですけどね、さらに支援してもらうといろいろと実装されていくんですよ。
金子 言いたいけどまだ言えないもどかしさ・・・。
町田 最初から全部見せちゃいたいんですけどね。「みんなでこれを目指そうよ!」って。
金子 だよね。ちょっとだけ、言いませんか?追加支援してストレッチゴールを達成すると、どんな良いことが待っているのか。
町田 『ペニーブラッド』のストレッチゴールで目玉になる要素と言ったら、2周目以降が変わる要素。1周目で見てきたイベントに対してキャラクターたちのモノローグが入るように、2周目はしようと思っているんですよ。つまり、1周目でプレイしたイベントが同じようにはじまるんだけど、そこにキャラクターの心情として「俺はこの時こうなることをわかってなかった」とか、「あいつの背中はこんなことを俺に伝えたかったんだろうか」みたいな要素が入っていくことによって、そのイベントシーンがまた新鮮に見えてくるというか、新しい解釈が加わっていく感じですね。
金子 ストレッチゴールの構成にもそれぞれの特徴が出てて面白いなあ。『アームドファンタジア』の場合、装備可能なARMが増えたりとか、ゲームシステムが追加・拡張されていくのが多い感じです。物語的なゴールにはどんなのがあったっけな?オープニングアニメも作りたいと考えていますし、中期までのワイルドアームズシリーズにあったキャラクター個別視点のプロローグも復活させたいです。たしかかなり終盤のゴールには、冒険の舞台となるワールドマップをひとつ増やすとか、豪快なのもあった気がします。その分、ダンジョンやストーリーも増えるんですよ(笑)。それにしても、町田さんのアイデアもすごく面白いなあ!クリアする前から二週目が楽しみだ!
町田 『デッドプール』って映画あるじゃないですか。「第4の壁」って言っていて、映画の中からユーザーに向かって話しかけるやつ。あれみたいなイメージでして。
金子 あれ面白いよね(笑)。
町田 あれをヒントにしたんですよ。
金子 『ペニーブラッド』本当に楽しみだなあ(笑)。ただ、ひとつ気をつけたいのは、俺や町田さんが盛り上がっているのはこの先に設定されたストレッチゴールの数々なんです。ミニマムゴールの達成は、あくまでも「最低限の仕様で作っていく」という開発のスタートラインに立った報告であり、ストレッチゴールの達成と実現は今後に集まった金額次第なので、世知辛い話ではありますが、みなさんからの更なる支援を必要としています。何卒、俺たちに頑張らせてください。
――開発チームと支援者たちが一丸となって一つの作品を作り上げるのがクラウドファンディングの醍醐味ですよね。
金子 これまでのようなゲームの購入感覚とはちょっと違うんですよね。たとえば、同じ一万円を支払うとしても、リリースされた製品版に一万円を払うのと、キックスターターに一万円支援するのでは、出ていく金額は同じでも、受け取る商品のクオリティやボリュームが全然違うものになるんです。
町田 そうですね。“特典付き最速先行予約”というか。
金子 さすが町田さんはうまい事言う(笑)。ついでに加えると、開発者たちと一緒にゲームを育てていく「体験や時間」という他では得られない「見えない特典」もあると思うんです。高額支援していただいたバッカーさんへのリワードにもありますが、それとは別に、今回のキックスターターのお祭り気分を共有したり、直接意見や質問をぶつけたりといったところにもきっとプレッジの醍醐味はあるんじゃないかと。どちらかというとこういう価値観って日本よりも海外の方が浸透してると思うのですが、個人的にはもっともっと広げていきたい。
【こちらが想定した理想の完成形、完璧な形で届けたい】
―― 最後に、『アームドファンタジア』『ペニーブラッド』を楽しみにしているファンのみなさんと、バッカーのみなさんにメッセージをお願いいたします。
町田 まずは、現在までにたくさんの支援をしていただき本当にありがとうございます。海外のファン、国内のファンともにみなさんの熱い気持ちを受け止めて、最後までこのキャンペーンを駆け抜けようと思います。僕らも基本オタクの世界で生きているので、こんなにも温かい仲間たちに見守られているのを感じて、とても勇気づけられました。バッカーさんになってくださる人たちに感謝と、期待に応えるために頑張っていきます!
金子 これまでいくつものゲームの開発やアニメの制作に関わらせていただきましたが、クラウドファンディングには、また違った楽しさがあると世界中のみんなから日々教えてもらっています。あとは、教えてもらった楽しさをできるだけ満足のいく形にして返していきたいです。金子の一番苦手な事ですが、『アームドファンタジア』が完成するまでは、なるべく寝ます。ちゃんとしたご飯食べます。せめて人並みに健康に気を使う事を約束しますので、どうか開発に参加していただけますでしょうか。荒野の果てには何があるのか、一緒に目指せると嬉しいです! 最後になりますが、既に有形無形のご支援をいただいていることに感謝いたします。とくにお礼を言いたいのは、キックスターターという異文化の解説と、こちらの至らなさの補足をしてくれている多くの有志に対してです。ありがとうです。その誠実に報えるよう頑張ります。
- 了-
金子彰史(かねこ・あきふみ)Profile
代表作『WILD ARMS』シリーズでは、トータルゲームデザインとシナリオを担当。
今作の『ARMED FANTASIA』でも、15年ぶりに同職を務める。
また、テレビアニメ『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズの原作・脚本家としても知られる。
町田松三(まちだ・まつぞう)Profile
『PENNY BLOOD』総監督・脚本。
20代でスクウェアに入社後、ゲーム開発者の道へ。
代表作は『SHADOW HEARTS』シリーズ。
小説家としても知られ、『圧巻のグリモアール』ほかを執筆。