2021年6月11日、対戦格闘ゲーム『GUILTY GEAR(ギルティギア)』シリーズの最新作『GUILTY GEAR -STRIVE-』が発売された。
先日、新たなプレイアブルキャラクター“ブリジット”が配信され、「かわいいけど、男」「さらに女っぽくなった」など、SNSでは大きな盛り上がりを見せていた。
本稿で紹介をするのは、そんな『GUILTY GEAR(ギルティギア)』シリーズの大きな転機となった『GUILTY GEAR Xrd -SIGN-』(2014年2月20日稼働開始)だ。稼働前に公開されたトレーラー映像とともに、筆者の想い出を語っていく。
※本稿は、ざっくばらんな物言いとどうでもいい話が9割で構成されており、主観的でしかない内容を多分に含んでいる。閲覧の際は、リバサポチョムキンバスターを許せる程度の広い心をご用意のうえ、どうぞお楽しみを。
『GUILTY GEAR Xrd -SIGN-』トレーラー紹介
『GUILTY GEAR Xrd -SIGN-』(以下、GGXrd -SIGN-)のトレーラー映像は、2013年5月19日に横浜で開催された“ARC SYSTEM WORKS FESTIVAL”で公開されたものだ。
残念ながら筆者は当時、会場に足を運ぶことができなかった。会場での発表後、ネットに公開された本映像を見た筆者は、非常に興奮したものだ。
トレーラーでは、シリーズを通しての主人公“ソル=バッドガイ”と、こちらもシリーズおなじみのもうひとりの主人公“カイ=キスク”が登場。これまでのシリーズ作品とは一線を画す、3Dモデリングによる2D格闘ゲームということがわかる映像となっている
ソルとカイの剣戟は、過去シリーズの戦闘前演出でも見ることができたが、『GGXrd -SIGN-』のトレーラーで確認できた映像は、エフェクトの派手さも、ビジュアルの美麗さも、キャラクターの臨場感もすべてが過去作とは違った。
楽曲『HEAVY DAY』とともに、シリーズ作品の魅力である“コンボ”を決めていく。今でこそよく見た映像だが、ドット絵で形成されていた前作『GUILTY GEAR XX Λ CORE PLUS R』からは考えられないほどの進化に驚きを隠せなかった。
第1弾トレーラーは視聴者の興味を大きく惹き、ファンの期待を膨らませた。後にさまざまなキャラクターが登場する第2弾トレーラー、オープニング映像が公開されていく。そして本作は、『ギルティギア』というシリーズだけではなく、筆者のゲーマー人生においても、大きな影響を及ぼすことになる。
ただ漠然と格闘ゲームを遊ぶ人から格ゲーマーに変わった瞬間
筆者が『ギルティギア』シリーズに初めて触れたのは、PSP版の『GUILTY GEAR XX #RELOAD』。プレイヤー間での通称は『青リロ』である。当時はまだ、自由にゲームを買うことができず、歳が6つ離れた兄のものでゲームを遊んでいた年齢だった。
そのころ、エレキギターを弾くことにすべての労力を費やしていた兄は、『ギルティギア』シリーズの楽曲に惹かれ、よく耳コピをしては筆者に聞かせてくれた。
覚えたての楽曲はところどころ間違っており、照れ笑いをしながら説明をしてくれた兄の顔は、脳裏に焼き付いている。いちばんのお気に入りだったのは、“カイ=キスク”のテーマ曲『Holy Orders(Be Just Or Be Dead)』だった。
対戦格闘ゲームであるPSP版の『青リロ』を遊んでいたものの、対戦というものはしたことがなかった。兄から教えてもらう“ロマキャン”(※1)のコンボや、物語を読みながらCPUと対戦する“ストーリーモード”、メダルを集めてスコアを稼ぐ“M.O.Mモード”で本作を満喫していたのだ。
※1:ロマンキャンセル(RC)の略。適切なタイミングでボタンを押し、テンションゲージを消費することで技の硬直をキャンセルできるシステム。シリーズ2作目の『GUILTY GEAR X』(ギルティギア ゼクス)で初登場。『GGXrd』で性能がリニューアルされる。『ギルティギア』の代表的なシステムのひとつ。
つぎに触れたシリーズ作品は、“メーレーアクション”と銘打たれた、『GUILTY GEAR 2 -OVERTURE-』(GG2)だった。
多々ある『ギルティギア』シリーズの中でも珍しい、対戦格闘ではないジャンルの作品だ。サーヴァントを使役しながら、プレイアブルキャラクター同士で拠点を破壊しあう、アクションとRTS(リアルタイムストラテジー)を合わせたような遊びが楽しめた。いまで言うMOBA系のゲームに近い。
サーヴァントは魅力的な見た目をしていたし、プレイヤーキャラクター同士の戦闘はジャンルこそ違えど、間違いなく“『ギルティギア』らしさ”が詰まっていた。
これも対戦はせずにひとり用をよく遊んでいた記憶がある。ちなみに後から気づいたことだが、『GG2』のストーリーは『GGXrd』シリーズを遊ぶうえでとても重要だった……。
その『GG2』の発売から7年後の2014年。『GGXrd -SIGN-』が稼働開始。このころになると筆者は、多少のお金を自由に使える年齢になっていた。
待ちに待った新作の稼働に興奮した筆者は、すぐさまゲームセンターに向かった。ゲームセンターでは、某レーシングゲームや某アクションゲームを遊んでいた経験があり、もちろん対戦格闘ゲームが置いてある場所もわかっていた。いつも横目で盛り上がっているのを「いいなぁ」と眺めていた記憶もある。
稼働日ということもあり、筐体の周りには少しの列ができていた。筆者はアーケードで初プレイ、そのうえ対戦初心者だ。そのゲームセンターでは初心者台は用意されておらず、経験を重ねた今ならわかるが、完全な初心者がプレイするには、最適な環境ではなかった。
対戦格闘ゲームには、対戦相手がいる。1対1の勝負だ。技の硬直、有利不利、崩し、固め、そして読み合い。格闘ゲームのすべてを知らなかった筆者の心が折れるのは、そう遅くなかった。
そんなこんなで『GGXrd -SIGN-』に熱を上げていたとき、兄も同作を遊んでいることがわかった。一緒に住まなくなり、あまり顔も合わせなくなった兄と、思い出のゲームである『ギルティギア』で真剣勝負を行ったが、格闘ゲームのイロハすら知らない筆者が勝てるはずもなかった。
対戦後の兄が気遣って投げかけてくれた「手加減しようか?」という言葉が、妙に心に響いてしまった。煽っているのではなく、本当に気を遣ってくれていたのがわかった。
「兄に気を遣わせたことが情けない」「一緒に遊んでくれたのに、楽しくなかったのではないだろうか」。そんな思いを胸にした筆者は、格闘ゲームに本格的にのめり込んでいくことになる。ただ漠然と格闘ゲームを遊ぶ人から格ゲーマーに変わった瞬間だった。
幸いにも、すでに動画配信が普及しており、知識を得ることはそんなに難しくなかった。フレームという概念を覚え、対空や置き技、差し込みを学んでいく。次々と知識を蓄えていくと、不思議なもので、一度心が折れた格闘ゲームを、遊びたくて仕方なくなっていた
再び兄と対戦する機会が訪れたとき、兄の気を遣った言葉を聞くことはなく、つぎに聞いた言葉は「もう10先やろう!」になっていた。ついでに言うと、負けて不機嫌になった兄を見るのは、ちょっとだけ気まずかった。
格闘ゲームのおもしろさに気づくきっかけは、人の数だけ違うと思っている。コンボの完走が気持ちよかったとき、倒したい相手が生まれたとき、強くなった自分を実感したとき……いろいろあるだろう。筆者の場合は、「対戦相手につまらないと思われたくない」だった。
『GGXrd -SIGN-』は、筆者に格闘ゲームのおもしろさを教えてくれた作品で、知識を大きく広げてくれたし、兄とのコミュニケーションに幅を持たせてくれた。
ソルの必殺技“ライオットスタンプ”を擦られまくって負けたり、立てないことをいいことにダストアタック(※2)ばかり使われたりして夜も眠れぬほどに震えた日もあったが、格闘ゲームを好きになったのは間違いなく本作のおかげだ。
※2:いわゆる中段攻撃(しゃがみガード不可)でヒット後に追撃可能。ちなみにガードできないと擦られまくる。
さて、本稿を書き終えたら『GUILTY GEAR -STRIVE-』を遊ぶことにしよう。
次回は『アイドルマスターSP』をお届け
第5回では、『アイドルマスターSP』に関するお話をお届けする予定だ。お楽しみに。