スクウェア・エニックスは、2022年6月17日に『ファイナルファンタジーVII』(以下、『FFVII』)の25周年関連の最新情報を伝える番組“ファイナルファンタジーVII 25th アニバーサリー セレブレーション”で、『クライシス コア -FFVII-』のリマスター版となる『クライシス コア -FFVII- リユニオン』や『FFVII リメイク』続編『FFVII リバース』などを発表。本稿では、それらの発表から『クライシス コア -FFVII- リユニオン』について北瀬佳範氏、野村哲也氏、佐藤万里子氏に話を訊いた。
なお、『FFVII リバース』や『FFVII エバークライシス』についてのインタビューも同時公開しているので、そちらもお見逃しなく。
北瀬佳範氏(きたせ よしのり)
・『クライシス コア -FFVII- リユニオン』エグゼクティブプロデューサー(PSP版の原作も同様)
・『FFVII リメイク』プロデューサー
・『FFVII リバース』プロデューサー
・『FFVII ザ ファーストソルジャー』エグゼクティブプロデューサー
・『FFVII エバークライシス』エグゼクティブプロデューサー
『聖剣伝説 ~FF外伝~』や『ロマンシング サ・ガ』の開発を経て、『FF』シリーズには『FFV』から参加。『FFVI』で初めてディレクターを務め、続く『FFVII』でもディレクターを担う。以降、多数のシリーズ作で、ディレクターやプロデューサーとして制作を統括。『FFVII』シリーズでシリーズエグゼクティブプロデューサーを務める。
野村哲也氏(のむら てつや)
・『クライシス コア -FFVII- リユニオン』クリエイティブ・ディレクター&キャラクターデザイナー(PSP版の原作ではクリエイティブプロデューサー&キャラクターデザイナー)
・『FFVII リメイク』ディレクター
・『FFVII リバース』クリエイティブ・ディレクター
・『FFVII ザ ファーストソルジャー』クリエイティブ・ディレクター
・『FFVII エバークライシス』クリエイティブ・ディレクター
『FF』シリーズは『FFIV』でデバッグ、『FFV』でキャラクターやモンスターデザインなどを担当。『FFVII』ではメインキャラクターデザインにとどまらず、物語やバトルなどのアイデア出しも行う。その後も『FFVIII』、『FFX』、『FFX-2』、『FFXIII』などにメインスタッフとして携わる。『キングダム ハーツ』シリーズではディレクターも担当。『FF』や『KH』シリーズ以外にも、さまざまなタイトルを手掛けている。
佐藤万里子氏(さとう まりこ)
・『クライシス コア -FFVII- リユニオン』プロデューサー
『ワールド オブ FF』や『FFVII』のSwitch版、Xbox One版、『FFVIII リマスタード』などでプロジェクトマネージャーを務める。『クライシス コア -FFVII- リユニオン』が自身初のプロデュース作品となる。
学生時代に『クライシス コア -FFVII-』で涙した佐藤氏が15年後プロデューサーに
――『FFVII リバース』に『クライシス コア -FFVII- リユニオン』と新作の発表がありましたが、まずは発表を終えての感想をお聞かせください。
北瀬事前に情報が漏れることもなく、やっと発表できました。発表から間もなく、世界的な規模でリアクション動画などがアップロードされていて、『FFVII リバース』はもちろん、『クライシス コア -FFVII- リユニオン』も反響が大きかったように見えました。
――とくに『クライシス コア -FFVII-』は不意打ちの感もありましたし、原作はPSPで発売されたこともあり、携帯ゲーム機が普及しづらい海外ではプレイした人も限られるでしょうし、うれしい驚きだったでしょうね。
北瀬そうですね。海外の方もそうですし、現在はPSPの環境でプレイするのが難しいので、多くの方が喜んでくださっているようでした。
――野村さんはいかがですか?
野村今年は、『ストレンジャー オブ パラダイス FF オリジン』の発売から始まり、『キングダム ハーツ』は20周年というアニバーサリーで、『キングダム ハーツIV』や『キングダム ハーツ ミッシングリンク』を発表し、そして今回の発表もあったりということで、個人的に「たいへんな年になるぞ」とは思っていました。もちろん、発売までがたいへんなのですが、まずは発表という節目は迎えたので安心しています。
――『FFVII』も25周年ですし、20周年の『キングダム ハーツ』と節目が重なって、毎回たいへんだとは思いますが、今年はとくに大きい発表が重なりましたね。では、続いて佐藤さんはいかがでしたか?
佐藤想像していた以上の反響をいただきまして、うれしく思っています。と同時にプレッシャーを感じています。もともと『クライシス コア -FFVII- リユニオン』の開発に携わることをプレッシャーに感じていたんですけど、さらにそれが大きくなりました(苦笑)。開発自体は終盤に差し掛かっているのですが、少しでもいいものを届けられるように、開発チームとともに毎日細かい調整をし続けています。
――佐藤さんは『クライシス コア -FFVII- リユニオン』のプロデューサーの前はどんなタイトルに携わっていたのですか?
佐藤『ワールド オブ FF』や『FFVIII リマスタード』、『クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズエディション』などのプロジェクトマネージャーをしていました。
――プロデューサーは『クライシス コア -FFVII- リユニオン』が初めてですか?
佐藤はい。
――プロジェクトマネージャーからプロデューサーに抜擢された経緯を教えていただけますか?
野村開発初期段階は肩書を決めずにやっていたのですが、佐藤は予算の管理などすでにプロデューサーと同等の業務をこなしていたので、「いいんじゃないか?」と。
北瀬もうひとり、坂本という『フロントミッション』系担当の者(坂本幸一郎氏。『LEFT ALIVE』などのプロジェクトマネージャー)がいるのですが、『クライシス コア -FFVII- リユニオン』は佐藤と坂本のふたりで進めていました。本作を発表するにあたって、プロデューサーとしても女性が活躍する時代ですし、キャリアを積む意味でも佐藤に立ってもらいました。今後も活躍してもらいたいな、という意味も込めています。
――期待のホープなんですね。ちなみに、オリジナル版の『クライシス コア -FFVII-』が発売されたころ、佐藤さんは何をされていたのですか?
佐藤学生でした。いちユーザーとして涙しながらプレイしていたファンでしたね。
――涙してから15年の時を経て、プロデューサーになられたと。
佐藤はい。『FF』を作りたくてスクウェア・エニックスに入社したので、携われることをうれしく思っています。
『クライシス コア -FFVII- リユニオン』のバトルのテンポ感は現代風に調整
――『クライシス コア -FFVII- リユニオン』の開発は社内で?
北瀬開発会社のトーセさんにご協力いただいています。
野村社内では、当時のカットシーン担当していたスタッフたちにも開発に関わってもらっています。
――『クライシス コア -FFVII- リユニオン』開発の経緯は?
野村リマスターにしろリメイクにしろ『クライシス コア -FFVII-』を現行のハードで遊べるようにしたいという話は、『FFVII リメイク』の制作中に出ました。そのころはまだ『FFVII リメイク』の構成をどうするか検討していた段階だったので、具体的にどうするかは決めかねていましたが、その後、『FFVII リメイク』の内容が決まった段階でリマスターとして進めることになりました。
――トレーラーを見た感じ、リマスターとはいえ、グラフィックの進化をかなり感じました。リマスターとリメイクのあいだのような。
野村『FFVII リメイク』を到達点としてスタートしたので、大幅にブラッシュアップしています。UIまわりはもちろん、エフェクトやキャラクター、モンスターなど、すべてを『FFVII リメイク』レベルに寄せていく感じにしており、ゲームエンジンも同様にUnreal Engine4へと変更しています。ですが、ゲームのベースとなっている骨組みは『クライシス コア -FFVII-』のものを使用しているので、完全に『FFVII リメイク』と同水準とはならないまでも、リメイクとリマスターのハイブリッドなものになっていると思います。バトルのテンポ感も『FFVII リメイク』に寄せて上げています。
――バトルはどうテンポアップしているんですか? モーションのスピードなどで?
野村モーションスピードとかではなく、バトルを構成するテンポ感です。細かな部分を言えば、エフェクトの速度等も調整しています。また、D.M.W(デジタル・マインド・ウェーブ。本作の特徴的なアクションのシステムで、戦闘中に3つのリールが回転し、揃った目によってさまざまな効果が現れるというもの)もテンポを削がないように調整を行っています。
佐藤D.M.Wについては同じ演出を何回も見ることになるのは改良したい、という意見も開発チームから寄せられていましたね。
――難易度の調整などは入るのでしょうか?
佐藤全体的にバランスは見直しています。また、原作の海外版にあったハードモードを今回、より遊び応えがあるように調整して追加しています。
――ノーマルとハードで難易度以外に何か違いはありますか?
佐藤とくにありません。ハードモード限定のアイテム追加なども検討はしたのですが、より多くの方に楽しんでいただけるように、単純に難度が変わるだけにとどめました。
――約300あったミッションには何か変更や増減はあるのでしょうか? 個人的には神羅軍1000人組み手や最強の敵ミネルヴァが印象的なのですが。
佐藤バランスは調整していますが、原作のミッション数もそのままです。
――開発に際して、思いのほか苦労している部分などは?
佐藤たくさんありますね……。プロジェクトを立ち上げたときは、マルチプラットフォームでなるべく多くの人に手に取ってもらい、かつ『FFVII リメイク』を遊んだ方があまり違和感を感じないリマスターにしたい、という思いだったのですが、いざ完成した『FFVII リメイク』を見ると、少し手を入れただけのリマスターだとグラフィックや操作感が古臭く感じるだろう、という感想が私だけでなく開発チーム内からも出たので、そこから当初の予定を上回るクオリティーを目指すリマスターになりました。いちばん苦労したのはそこですね。
ザックスの悲運を描いたオリジナル版。『FFVII リメイク』を経てエンディングに変化は?
――グラフィックは大きく進化し、バトルの調整も入るけれど、ゲーム内容的には大きくは変わらないということですね? そこで気になるのはエンディングなのですが、『FFVII リメイク』の最後の展開を見ると、整合性が取れるのかな? と気になるのですが、『クライシス コア -FFVII- リユニオン』ではエンディングに変更は?
野村ストーリー関連には変更はありません。オリジナル版自体が『FFVII』とも『FFVII リメイク』とも整合性は取れているので問題はありません。
――えっ!? ではあのシーンは……いや、これはいま掘り下げても答えられないヤツですね……(笑)。
野村ただ、バスターソードのデザインに関しては整合性をとるために変更しています。オリジナル版のほうは当時、リリース時期が近かった『FFVII アドベントチルドレン』をベースにしたデザインにしていたのですが、『クライシス コア -FFVII- リユニオン』のほうは『FFVII リメイク』同様、オリジナルの『FFVII』のバスターソードに合わせました。
――タイトルに加わった“リユニオン”ですが、『FFVII』シリーズでは重要なキーワードです。『FFVII リバース』に続くタイトル候補にもなりそうなワードですが、これを『クライシス コア -FFVII-』のリマスター版のタイトルに加えたことに、何か意図は?
野村意図はいくつかありますが、当初“リマスター”と呼ぶべきか悩んでいたときに、“リメイク3部作”の “リメイク”と“リバース”に方向性を合わせようということになりました。“リユニオン”は再集結、再会などの意味を持ちますが、生まれ変わり的な意味より、成長して戻って来たという意図が強いです。時系列的には『FFVII』の前日譚、序章的な物語になるので、再集結して『FFVII リメイク』に繋がるという流れも意識しています。
GACKTさん演じるジェネシスの追加収録は?
――フルボイス化されているとのことですが、ジェネシス役のGACKTさんは体調不良で年内にも芸能活動再開か、という報道もありましたが、収録は大丈夫なのですか?
野村じつはジェネシスはオリジナル版の段階でフルボイスだったので、追加収録が必要な場面はありませんでした。ただ、そのほかのキャラクターは想像していたよりも収録が必要なキャラクターは多かったですね。ザックスもちろんですが、カンセルは追加収録が多かったです(笑)。
――ザックスの友人のカンセル! たしかに、いろいろ助言してくれるキャラですし、セリフも多いですもんね。
野村ボイスが付くことで新鮮に感じられる部分は多いと思います。
――音楽もアレンジされ、新鮮に感じる部分は多そうです。
佐藤音楽は石元さん(石元丈晴氏)とお話して、現代風にしようということで一部の曲をリマスター、リアレンジしていただきました。BGMをオリジナル版のものと切り換える機能はご用意していませんが、トレーラーの音楽もそうですが、当時の雰囲気を壊さないアレンジになっているのでご安心ください。絢香さんが歌う主題歌『Why』はそのまま収録しています。
ザックスを知っておくと『FFVII リバース』がより楽しめる
――さきほど、開発も終盤に差し掛かっていると仰いましたが、発売に向けてひと言ずつ意気込みをいただけますか?
佐藤改めて『クライシス コア -FFVII-』をプレイする方も、初めてプレイする方も、楽しんでいただけるようにチーム一同全力で取り組んでおります。一日でも早く、また少しでもいいものをお届けできるように開発を進めていますので、もう少しだけお待ちいただければと思います。
野村『FFVII リメイク』に登場したザックスがどういう人物なのかよく知らない方もいるとは思いますが、今回発表された『FFVII リバース』でも彼は重要なポジションになってきます。今回同時に発表した、ザックスが主人公である『クライシス コア -FFVII- リユニオン』が先に発売されますので、こちらを遊びながら『FFVII リバース』を待っていただき、彼について掘り下げておいていただくと、“リメイク”シリーズがより楽しめると思います。
北瀬個人的な話になってしまうのですが、最近、親戚の女の子から久しぶりに連絡があったんですよ。「『FFVII リメイク』はとてもよかった」と。それで、ザックスの過去を知る『クライシス コア -FFVII-』というタイトルの存在を知って、PSPごと買おうかなと言っていたんですが、そのときは何も言えませんでしたが(笑)、いまは『クライシス コア -FFVII- リユニオン』を楽しみにしてくれているはずです。同じように『FFVII』のストーリーやザックスを深堀りしたい方も少なくないと思いますので、ぜひ楽しみにしてください。