ファミ通関連の編集者がおすすめゲームをひたすら語る連載企画。今回のテーマは、PCを自作するゲーム『PC Building Simulator』です。

【こういう人におすすめ】

  • 自作PCに興味を持っていてゲームで練習したい
  • 実在のパーツを使って自分だけのマシンを作りたい
  • ゲームを遊びながら楽しくPCの知識を学びたい

※本稿は週刊ファミ通2020年7月2日号(2020年6月18日発売)の特集“いまこそ絶対に遊ぶべき46のゲーム”をWeb用に調整したものです。

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『PC Building Simulator』

  • プラットフォーム:Switch、PS4、Xbox One、iOS、Android、PC
  • 発売日:2019年1月30日
  • 発売元:The Irregular Corporation
  • 価格:2050円[税込]
  • パッケージ版:なし
  • ダウンロード版:あり
  • 『PC Building Simulator』Steamページ

※データはPC版のものです。

PC Building Simulator | Esports Expansion Trailer

 自宅に机を買ったら、巡り巡って、パソコンを自分で組み立てる“自作PC”にハマった、という話。

 今年の3月にファミ通編集部でも本格的なテレワークがスタートしたが、そのとき自宅には小さめのちゃぶ台しかなく、長時間のパソコン作業をするには、ちょっとしんどい感じ。というわけで、思い切って自室のレイアウトを変更して大きめのパソコンデスクを購入することにした。

 それをきっかけに自分の中で堰を切ったように“在宅環境を整えたい欲”がムクムクと湧き上がってきて、ちょっといい感じのWQHD(2560×1440)の液晶モニター2枚や、それをしっかりと固定するエルゴトロンのディスプレイアーム、座り心地がいい感じのゲーミングチェアなど、オフィス以上に快適な“自分向け最強デスクレイアウト”を構築するべく、つぎつぎとアイテムを買い揃えていったのだった。余談ではあるが、これ、いま思い返せば外出できないストレスを衝動買いで発散していただけかもしれない(笑)。

 で、最後に目に留まったのが、これまで自宅で使っていたデスクトップ型PC。5年ほど前にPCショップでBTO購入し、簡単な動画編集やSteamのゲーム起動確認など、作業の補助に使っていたもので、「この少し古くなってきたPCをリストアしてみてはどうだろう」と思い立ち、人生初の自作PCにチャレンジすることにした。

『PC Building Simulator』“自作PC”は、テレワーク時代のスタンダード(かも)【推しゲーレビュー】_01

 そう言えば、仕事も遊びも含めて、これまで人生の大部分をPCの前で過ごしてきたはずなのに、その構造をよくわかっていないというのも不思議な話だ。いい機会だからと、一念発起してPCケースをおそるおそる開けてみると、知識としては知ってはいるものの、実物を見たことがないパーツたちが、ケースの中で整然と収まっているではないか。「このひときわ大きな電子回路基板は、PCのベースとなるマザーボードかな。その中心部に堂々と鎮座しているのが心臓部であるCPU! 映像を司るグラフィックボードは想像以上にデカい……!」などと、みずからの知識と実体験が結びついていく、得も言われぬ感動を味わったのだった。

 PCの構成って複雑そうに見えてじつはけっこうシンプルなので、自作PCがよくプラモデル制作にたとえられる理由も、このときなんとなくわかったような気がした。「意外と簡単」と思えたことで一気に興味が湧いてきて、その後グラフィックボードを換装したり、電源ユニットを交換したり、HDDの増設など、有意義な“はじめてのじさくPC”ライフを堪能。初めはただテレワーク用の机を買っただけなのに、偶然にも自作PCの扉を開くことができたのが僥倖だ。おそらくこれからもテレワーク体制は続いていくが、個人が知識を蓄えてPCを自分でメンテナンスしていくのはけっこう大事なことなのでは? と思えるようになってきた。

 さて、だいぶ前置きが長くなったが、そんな自分が最近ハマっているのが、Steamなどで絶賛配信中の『PC Building Simulator』である。本作は、世にも珍しい“自作PC”をテーマとしたシミュレーターゲーム。実在のブランドのパーツを自由に組み合わせて自分だけのオリジナルマシンを作り上げられる、言わば“PCを自作するPCゲーム”だ。

『PC Building Simulator』“自作PC”は、テレワーク時代のスタンダード(かも)【推しゲーレビュー】_02
3Dで構築されたPCパーツを、視点をグリグリ動かして眺めたりするのも一興。

 「ゲームの世界でパーツを組み換えることの何がおもしろいの?」という声が聞こえてきそうだが、自作PCはなかなかにお金がかかる趣味で、当たり前だがケーブルひとつとってもタダじゃないし、苦労して用意したパーツが相性の問題でムダになり、悔しい思いをすることもときにはあったりする。しかし、本作を購入すれば、そんな悩みとは無縁で、お金をかけずに理想とするマシン構成に必要なパーツのテストができる、自作PC好きにとってはまさに夢のようなソフトなのである。

 さらに、自分のような初心者にとってありがたいのが、本作に実装されている“キャリアモード”だ。このモードは、PCショップのオーナー兼作業員となって、つぎつぎに舞い込んでくるクライアントの依頼(おもに修理)に対応し、店を経営していくという、言わば“ストーリーモード”にあたる存在で、ゲームを遊びながらPC知識を身につけられる作りとなっている。

『PC Building Simulator』“自作PC”は、テレワーク時代のスタンダード(かも)【推しゲーレビュー】_03
インテルやAMDといった実在メーカーの人気パーツが登場するのがアツい。

 仕事の依頼内容はさまざまだが、最初はマシンのホコリ除去やウイルススキャン、メモリの増設程度だったのが、ゲームを進めるにつれて難度が少しずつ上昇していき、客の要望通りのスペックのマシンを組んだり、ベンチマークテストを実行してゲームの推奨スペックを満たしたり、マザーボードを交換して起動チェックするといった大仕事も任せられるようになってくる。

 現実では駆け出しとも言える自作PC初心者である自分だが、本作のキャリアモードを遊ぶうちに(ゲームの中だけではあるが)メンテナンスの分野における立派なスペシャリストに成長できた(笑)。この経験は、きっと今後役立つに違いない。『PC Building Simulator 』は、テレワーク時代に生きるすべての現代人の生活を豊かにしてくれる可能性を秘めた、貴重な1本だ。