全世界で爆発的な大ヒットとなり、インディーゲームの常識を塗り替える異例の記録を打ち立てたMojang Studios(旧名:Mojang)の『マインクラフト』。その最新作にして、ハック&スラッシュ型のアクションアドベンチャーとして生まれ変わった『Minecraft Dungeons(マインクラフト ダンジョンズ、以下『マイクラダンジョン』)のPC版プレイレビューをお届けします。

『マインクラフト ダンジョンズ』プレイレビュー。ひとり用でもマルチプレイでも楽しめる良質なハック&スラッシュ入門!_01

 『マイクラダンジョンズ』は、2020年5月26日にXbox Game StudiosからNintendo Switch、プレイステーション4、Xbox One、PC用ソフトとして配信されたタイトルです。サンドボックスで地形を自由にクラフトできた従来のスタイルとは大きく異なり、最初から用意された世界を冒険するアクションと探索を重視した作品として生まれ変わりました。

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 『マイクラ』は物を作ることが前提で決められた目的がないゲームでしたが、本作は大枠としての物語が存在。ローカルorオンラインで最大4人まで参加できるマルチプレイも用意されており、強い装備品を求めて何度もくり返し遊べるハック&スラッシュ型のアクションアドベンチャーになっています。

クラフトしないし1人称じゃないけどおもしろい!

 『マインクラフト』と言えば、誰もが知っているサンドボックスゲームの金字塔。日本でも子どもたちを中心に大ヒットを飛ばし、ブロック型の素材から建物や世界を作り上げていくモノづくりの楽しみを教えてくれた偉大な作品です。自分も当然プレイしたことがありますが、本作ではなんとその目玉とも言えたクラフトの要素がありません! 地形は崩せないし、建物を建てたりもできません。視点も1人称ではなくクォータービューの見下ろし視点。完全にアクションアドベンチャーの方向性に振り切れているんですよ。

 タイトルに『マインクラフト』とついているのにクラフトの要素がない。ここを知らずに初めて遊んだ人は驚くかもしれません。ですが、クラフトの要素がないからつまらないのかと言えば答えはノー。おもしろいですよ。むしろ、純粋なアクションアドベンチャーとしてちゃんとおもしろいのです! 従来の『マインクラフト』を求めているとまったく違うのですが、誰でも気軽に遊べるハクスラアクションとして作り込まれており、万人が楽しめる内容になっています。

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 物語の舞台は、邪悪な村人の王によって支配された暗い世界。プレイヤーは、王を倒すために英雄となって世界を冒険することに……という明確な物語があるのも特徴。ゲーム開始時に好きなキャラクターの見た目を選択して、ひとりまたはローカルでマルチプレイが楽しめる“オフラインゲーム”か、ネットワーク上のフレンドとゲームを遊べる“オンラインゲーム”を選んだら冒険が始まります。

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キャラクターの見た目による性能差はありません。性能は装備による違いのみ。自分の好きな見た目で遊びましょう。

 選んだステージの始まりと終わりに軽く物語を説明するナレーションが入りますが、物語主導型というよりもどちらかというとフレーバー的ですね。冒険を彩る背景設定くらいのシンプルなもの。あくまでも、本作はハック&スラッシュでより強い装備を入手していく楽しさに比重が置かれている印象です。

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 とくに、アクション部分は見た目こそ『マインクラフト』ですが、実際に動かしてみると本当に違う操作感。操作自体もわかりやすく、Aボタンによる近接攻撃とRTボタンによる遠距離攻撃(弓矢)を使い分けて群がる敵を駆逐するのが基本。それに加えて、最大3つまで装備可能で、振り分けたボタンによって発動するアーティファクト。RBボタンで出せる前方へのローリング回避という操作方法になっています(XBox 360コントローラーでプレイした場合の操作方法)。『マイクラ』に比べると完全にアクション寄りの操作で使うボタンは多いのですが、直感的に動かせます。

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本数制限はありますが弓矢がかなり便利かつ強い! デフォルトの難易度だとそこそこの頻度で拾えるので積極的に使っていけます。

 また、ジャンプがないのも驚くところ。ジャンプ段差を飛び越えて乗ることはできませんが、高低差がある場所では階段状の段差がついています。ジャンプがないので崖などを飛び越えることはできませんが、行き過ぎて落下することもありません。とはいえ、まったく飛び越せないかというとそういうわけでもなく、回避行動がジャンプの代わりになることも。回避行動中は落下しないので、歩いて届かない位置にある宝箱を取りたいときは回避を行うことで隙間を飛び越えられます。高所から降りる時も回避で飛び降りると楽です。

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 回復アイテムも存在していますが、なんと実質無限に使えます。もちろん、1度使用するとクールタイムがありますがアイテム自体はなくならないんですよ。所持数無限。ボス戦以外ではクリーパーに自爆でもされない限り、それほど回復に困るようなことはない(本作のクリーパーは集団で爆発してくるので本当に脅威です)と思いますが、回復アイテムをいちいち探す必要もなし。非常にテンポよく探索できます。

 弓矢で遠距離からバリバリ敵を撃ち、近距離攻撃でつぎつぎとなぎ倒して……とバトル部分もサクサクです。ゴリゴリ進んでいけるので、やめ時がみつかりません! これは確かに『マイクラ』ではなく『マイクラダンジョンズ』なんですよ。遊びの方向性がまったく違います。ハクスラというジャンルとしてもみても意外なほどにシンプル。余計な要素がほとんどないと思えるくらいアッサリしているのですが、だからこそ気がつくといつの間にかハマってしまうかもしれません。 

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拠点からステージを選んで出撃し、装備を掘って帰還する。シンプルなハック&スラッシュの醍醐味が詰まっています。ちなみに、本作ではいわゆるプレイヤーのレベル=パワーという表記なので、推奨パワーと書かれているのは推奨レベルのことです。

装備を掘ってエンチャントして……

 本作には職業やキャラクターのスキンによる性能の違いはいっさいありません。性能に影響するのは、装備品のみです。ここら辺もシンプル。装備品はたとえ同じ見た目でも、入手した時点でパラメータや追加効果などが異なるので同じものは手に入りません。つねに何かが違います。

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性能が高いものからペットのコウモリがついてくるという謎機能がある防具も。コウモリがカワイイので何となく装備しちゃう。

 拠点でエメラルドを支払って武器やアイテムを手に入れることもできますが、基本は強い敵を倒して拾い集め、また強い敵に挑んでというサイクル。これだけでも十分楽しめるのですが、本作には“エンチャント”というシステムが存在しており、手に入れた装備品をさらに強化できます。これまたハクスラ好きにはたまらない要素。レベルアップで入手したエンチャントポイントを消費し、装備ごとにランダムで用意された特性を強化することで自分好みに装備をカスタマイズしていけるのです。

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 違う装備品を強化したい場合は、エンチャントポイントを振り分けた装備品をメニュー画面から“回収”するだけでOK。装備品は消滅しますが、使ったポイントといっしょにエメラルドも戻ってきます。振り分けたポイントが戻ってくるので、気軽にエンチャントできるのもよいところ。

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 敵を倒してレアな装備品を漁り、そのなかからよい性能のものを選り分け、エンチャントして自分好みに強化して……このサイクルが短時間でどんどんできるので、気がつくと時間が溶けていきます。とても気軽に遊べて、ハクスラの入門として申し分なし!

ひとりプレイはもちろんマルチプレイも楽しい!

 すでに開発者インタビューでストーリークリアーまでは5時間程度と言われているように、1周(初期難易度デフォルト)のボリューム自体はそこそこ。ひとつのステージもサクッと30分かからずに終わります。全部で3段階の難易度が用意されており、デフォルトのレベルをクリアーすることでさらなる高難易度に挑戦できる仕組みです。

 デフォルトの難易度は、ソロプレイでも終始プレイヤー側のほうが強い爽快感重視の感覚。強い装備を求めて潜り、より高難易度に挑むことを楽しむゲームになっています。さすがに最高難易度をガッツリ語れるほどまでにはやり込めていないのですが、アクションが苦手な人でもデフォルトなら装備品を強化したり、アーティファクトを使うことで問題なく楽しめると思います。

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釣り竿で敵を引き寄せてスタンさせたり、アーティファクトと武器の組み合わせ次第でいろいろな戦いかたが可能に!

 とはいえ、ソロプレイでも楽しいのですが、こうしたジャンルの楽しみはなんといってもマルチプレイにあるでしょう。サンプル版だったのでローカルマルチプレイしか試せませんでしたが、仲間と協力しながらワイワイ遊ぶのは単純に楽しい! ひとりプレイでは使い道がなかった回復系のアーティファクトが便利だったり、マルチプレイならではの発見もあります。

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アーティファクトのなかには敵を倒すと手に入るソウルが必要なものも。他者を回復するといったマルチプレイ専用に近いものもあり、協力して遊ぶときにより真価を発揮します。

 ちなみに、ドロップアイテムの奪い合いになるようなこともないのでご安心を。本作では、レアな装備品のドロップアイテムはプレイヤーごとに拾えるものが決まっています。プレイヤーごとにウインドウが色分けされた物しか拾えないので、自分の装備を取られてケンカになるようなこともありません。

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装備品の名前があるウインドウの枠と、同じ色のプレイヤーしか装備を拾えません。黄色なら黄色のプレイヤー1。青なら青色のプレイヤー2しか拾えない仕様です。

 なお、ソロプレイでは敵にやられるとすぐにライフを消費してしまいますが、マルチプレイでは誰かが生き残っているとその場で復活させてもらえるという利点も。ただし、倒れるたびに夜へと近づき、あまりやられすぎるとモブが沸いてしまうデメリットもあるので気を付けましょう。

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 今回はふたりプレイで試したのですが、敵の強さや硬さのバランスもソロプレイより手ごわくなっているように感じました。デフォルトの難易度はソロプレイで適切なバランスなのですが、アクションが得意で手ごたえを求めるなら最初からマルチプレイで遊ぶのもアリだと思います。

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声を掛け合って一緒にトラップを抜けたり、逃げ出す鍵(本作に出てくる扉の鍵は意思を持っているので、捕まえて運ぶ必要があります)を一緒に追いかけたり、ソロプレイにはない共闘感も見どころ。

 遊んでみた印象としては、操作の感覚からゲーム的な目的。アクションの気持ちよさに至るまで完全に『マイクラ』とは別物。『マインクラフト』の最新作だからとクラフト的なものを求めて遊ぶと、思い描いていたものとは違ってとまどうでしょう。

 ですが、この遊びやすさや奥深さは紛れもなく『マイクラ』。純粋なハクスラアクションとして、何度も挑戦したくなる魅力があります。日常の空いた時間を使ってちょっとだけ遊ぶこともできますし、プレイヤーキャラを強くしていくサイクルもよくできていて、この手のジャンルに触れたことがない人にもオススメしやすい作り。ハクスラの入門作として、ぜひ友だちを誘って遊んでみてください!