新作ゲームの展示&体験会といえば、日本のゲームファンには東京ゲームショウ(毎年9月開催)や、Gamescom(毎年8月にドイツ・ケルンで開催)、少し毛色が違うもののE3(毎年6月にアメリカ・ロサンゼルスで開催。一般のゲームファンの入場を解禁したのは最近)などがおなじみのところだろう。

 だが、世界各国、とくにゲーム市場の成長が著しいアジア地域には、台湾の台北ゲームショウ(台北国際電玩展)や、上海のChinaJoyといったイベントが存在する。一般公開日の長さなど、開催日程が異なるので単純な比較はできないが、東京ゲームショウ2019の総入場者数が約26万人だったのに対し、台北ゲームショウ2019の総来場者が約30万人、ChinaJoy 2019の総来場者が約36万人と、いずれも多くの来場者を集める一大イベントだ。

台北ゲームショウ2019の様子。会場は、最新ゲームをチェックすべく集まったゲームファンの熱気で満たされている。

 上記のうちのひとつ台北ゲームショウ2020が2020年2月6日~9日の期間に開催される(2月6日~7日はビジネスデイ)。日本からも飛行機を使って短時間で行くことができる(羽田空港から約4時間、那覇空港からなら約1.5時間!)台湾最大級のゲームイベントだが、近年ではインディーゲームの紹介の場も設けられ、優良作品の発掘にも注力しているという。

 以下では、そんな台北ゲームショウ事務局の蔡宇橞氏と、台北ゲームショウ2019のINDIE GAME AWARDでグランプリを受賞した『RPGタイム!~ライトの伝説~』の開発者・藤田トム氏(DeskWorks)に、台北ゲームショウの現在について話を聞いた。

――まずは、台北ゲームショウの概要について改めて教えてください。

台北ゲームショウは2003年からスタートしており、2020年で18回目の開催になります。第1回開催のころは、ほとんどPCのオンラインゲームのみの出展でしたが、数年後にはゲーム市場の変化に応じてコンシューマーゲームやスマホゲームが増えていきました。規模も年々拡大しており、じつは最近ではキャパシティをオーバーしてしまっていたのですが……台北ゲームショウ2020からは会場を南港展覧館第1ホールに移して規模がこれまでの約2倍になるため、混雑状況はかなり改善されるはず。

――取材で訪れると一般公開日は本当に超満員なので、それは朗報ですね(笑)。

通路も広くなりますので、快適にお楽しみいただけるようになると思います。また、台北ゲームショウではここ数年B to Bにも力を入れていまして、カンファレンスや業界人向けのフォーラムも充実させています。毎年テーマを変えて、各分野の専門家を講師として招待しているんです。そのほか、ここ数年のあいだにとくに力を入れているのは、インディーゲームの分野ですね。私たちの目的は台湾から世界中のゲーム業界を盛り上げることですので、すぐれたクリエイターさんたちに参加いただき、台北ゲームショウをきっかけに世に出て欲しいと考えているんです。ご協力いただけるデベロッパーも増えていまして、台北ゲームショウ2019では180社の参加がありました。

――ちなみに、台湾でのインディーゲームの盛り上がりはどういう状況なのでしょうか。

台北ゲームショウに関して言えば、2019年は台湾からの出展が50~60くらいでした。もちろん、タイトルが未完成であったりクオリティーを磨いている途中であったりという事情で出展を見送ったチームもあり、それらを含めると100以上のデベロッパーが存在していると思っています。また、これはゲーム業界に限ったことではないのですが、台湾全体の社会的なムードとして、クリエイターを応援する風潮があります。そんなムードの後押しもあり、ゲームの制作意欲は高まっていると感じます。

台北ゲームショウ クリエイティブディレクター/蔡宇橞氏

――そういった風潮があるのは素晴らしいですね。そんな中で、台北ゲームショウ2019では『RPGタイム!』がINDIE GAME AWARDのグランプリを受賞しました。これについて、藤井さんはどんな感想をお持ちですか。

藤井グランプリを取れるとは思っていなかったので、驚きがいちばんでした。ただ、会場で遊んでいただいた現地のゲームファンからの反応はとてもよく、手ごたえを感じていたのも事実です。日本でもかなりいい反応を得られているなという実感はあったのですが、台北ゲームショウではそれ以上のリアクションがありました。

――日本と台湾では、ユーザーの反応に違いがあるものなのでしょうか。

藤井日本でも台湾でも様々な反応いただけますが、台湾の方々はプレイ中にもリアクションをくれるイメージです。おもしろいと感じたら僕のほうを見てサムズアップ(親指を立てるグーのポーズ)してくれたりして、楽しんでくれていることがすごく伝わってくるんですよね。

――『RPGタイム』のゲーム性は、あちらではどのように受け入れられたのでしょうか。グランプリが取れた要因は何だったと思われますか?

藤井ユーザーの反応は異なりますが、日本と台湾ではゲームを楽しんでくれるポイントが似ているように思います。それに加えて、これまでになかった作品の新鮮さも評価されてのではないでしょうか。

――日本的なRPGの文化をベースにしながら、そこにもうひとひねり利かせたような作品だと思いますが、そういった文脈も伝わっているものなのでしょうか。

藤井そうですね。現地の方からも、子どものころはノートと鉛筆を使って遊んだという話を聞きました。もしかしたら、机の材質だったり黒板ではなくホワイトボードだったりといった違いはあるかもしれませんが、大枠の体験は問題なく通じたようです。

ちなみに、INDIE GAME AWARD自体はユーザーによって評価されるものではなく、同じく賞に応募したデベロッパーどうしで評価を行う一次審査と、こちらでお願いした審査員が評価を行う二次審査から成っています。2019年はINDIE GAME AWARDへの応募作品が115ほどあって、二次審査に進んだのが22タイトル。そのうち日本のタイトルは『RPGタイム』を含めて、3~4タイトルだったと思います。

――最初の審査は参加者どうしで行うんですね。

藤井そうなんですよ、おもしろいですよね(笑)。応募者は、エントリーされたチームのデモを事前にプレイしたり、映像を観たりできるんです。それを、グラフィックやゲームデザインなど、いくつかの項目に分けて5段階で評価すると。その中で上位だった作品が二次審査に進出し、審査員たちの評価を受ける流れですね。

――それはユニークですね。

藤井僕も初めての経験でしたが、台北ゲームショウへの出展中はどうしても忙しくてほかの出展タイトルをあまり見に行けないので、それを事前に遊べるのはうれしかったです。しかも、「これはおもしろい」と思ったら、会場で直接「あなたのゲームは素晴らしかった」と伝えられるので、すごく素晴らしい取り組みだと思います。

――なるほど。

藤井それと、自分たちのゲームに対する評価を事前プレイの段階で知ることができるのもいいところですね。台北のデベロッパーからはこう評価されているとか、オーストリアのデベロッパーからはこうとか。それを確認できるので、間に合えば改善点を修正して出展することも可能です。

――クリエイターどうしの評価が一次審査だと、まだあまり名前が売れていないクリエイターであっても作品のレベルが高ければチャンスが大きそうですね。ちなみに、これまでに『RPGタイム!』以外で日本のタイトルがグランプリを受賞したことはあるのでしょうか。

INDIE GAME AWARDは2019年時点で4回目の開催だったのですが、日本の作品は今回が初のグランプリ受賞です。それまでは台湾、オーストリア、韓国のタイトルがそれぞれ受賞してきました。

――『RPGタイム!』は国内だけでなく、海外での評価も高いですよね。藤井さんとしてもワールドワイドに戦えているという手ごたえはあるものですか?

藤井そうですね。ただ、その足がかりとなったのは、まさに台北ゲームショウ2019でのグランプリ受賞でした。E3 2019ではマイクロソフトさんのカンファレンス(Xbox E3 2019 ブリーフィング)にも映像出展させていただきましたが、マイクロソフトさんがお声がけしてくださったのも、台北ゲームショウがきっかけのひとつだったんです。台北ゲームショウでのグランプリ受賞は注目度が高いようで、台湾のメディアやパブリッシャーの方々はもちろん、日本、北米、欧州と世界中から声をかけていただけました。

海外への情報発信も我々が大きく力を入れている分野のひとつです。台北ゲームショウには毎年海外からメディアを招待しておりますので、今後も世界からの注目度は上がっていくと思います。

deskworks/藤井トム氏

――そんな台北ゲームショウですが、台湾における日本タイトルの現状についてもお聞かせください。会場を訪れると、かなり好意的に受け入れられていると実感したのですが、それはここ数年変わっていませんか。

日本のタイトルはすごく人気ですよ。台湾のゲームファンは日本のカルチャーに詳しい人が多く、日本の声優さんの大ファンという人もたくさんいます(笑)。また、最近は日本のタイトルが台湾でも同時に発売されることが多くなっており、台湾のユーザーとしては喜ばしい傾向にあると思います。

――台北ゲームショウ2020では、会場がかなり広くなるということですが、長期的な視点で今後の展望についてお聞かせください。

イベントの規模はますます拡大し、内容もより豊かになっていきます。今後はゲームだけでなく、アニメやマンガのような、ゲームと近しい位置にあるコンテンツも合わせて展示したいと思っています。今回、藤井さんを交えてお話させていただいたインディーゲームの分野も毎年拡大してはいますが、やはり現状ではアジアからの出展が中心になっています。これからは、欧米を始め世界各国からさまざまなデベロッパーをお招きし、より国際色豊かなゲームショウにしたいですね。

――藤井さんは今後の台北ゲームショウについて、どんなことを思いますか。

藤井ゲーム開発者として、台北ゲームショウに出展する価値はかなり高いと感じています。ですがそれ以上に、いちゲームファンの視点から見ても、台北ゲームショウが本当におもしろい場所であることをもっと広く知ってほしいと思っています。

――確かに。日本から距離も近いですし、台湾観光を兼ねて台北ゲームショウを見に行くのもいいですね。食事もおいしいですし(笑)。

藤井いや、距離は本当に近いですよね。雰囲気も僕らが慣れ親しんでいる東京ゲームショウと似たものがありますし。それに、言語こそローカライズされていますが、日本のゲームがたくさん出展されていて、なにか安心感がある(笑)。海外のゲームショウに初めて遊びに行く人には、間違いなく最適な場所だと思います。

ありがとうございます。台北ゲームショウ2020のINDIE GAME AWARDにもたくさんの応募がありましたが、どんな作品がグランプリを受賞するのか、期待していただければと。台北ゲームショウ2020もたくさん見どころがありますので、ぜひ日本のゲームファンも会場に足を運んでいただければと思います。