“オープンワールド×サイバー空間”が生み出す唯一無二の戦いが魅力の『ウォッチドッグス』シリーズ最新作『ウォッチドッグス レギオン』。近未来のロンドンを舞台にくり広げられる、街の住人たち誰もが操作キャラクターになりうるという、前人未踏、未体験の戦いとは!? 2019年10月6日に開催された"UBIDAY2019"に合わせて来日した本作のクリエイティブディレクター、クリント・ホッキング氏に、その世界と魅力を聞いた。

『ウォッチドッグス レギオン』では、“誰もが主人公になりえるゲーム”にチャレンジした。クリエイティブディレクターに聞く挑戦に対する思い_02

クリント・ホッキング氏

ユービーアイソフト『ウォッチドッグス レギオン』クリエイティブディレクター

新たな舞台、ロンドンでの奇跡!?

――『ウォッチドッグス レギオン』の“誰もが主人公になりえる世界”という、前例がないスケールにすごくワクワクしているのですが、本作を『ウォッチドッグス 3』というナンバリングタイトルにしなかったのは理由はあるのでしょうか?

クリントシリーズのコンセプトを踏襲しつつも、まったく新しいゲーム体験になっているので、人々の期待をいい意味で裏切る意味でナンバリングではなくて『3』ではなく、『レギオン』という形にしました。もちろん、シリーズファンは正当な続編として楽しめる内容なので安心してください。

――今回、舞台がイギリスのロンドンになりましたが、なぜロンドンなのでしょうか?

クリント『ウォッチドッグス』シリーズは、共通の世界観として、“高度に発達したテクノロジー”と“それを利用する巨大組織”が存在します。今作ではもっと広い視点でこの世界を作り上げたいと考えておりました。ですので、『1』と『2』の舞台であったアメリカから離れて、国際的な都市で、かついろんな文化や人種が入り交じっている場所として、ロンドンを選びました。

――ロンドンといいますと、イギリスのEU離脱問題“ブレグジット”が国際的なニュースとなっております。本作もEU脱退後の世界を描いていますが、その辺も制作に影響したのでしょうか?

クリントじつは“ブレグジット”の前から本作の開発はしていたので、実際にイギリスがEU離脱すると聞いて、物凄くビックリした記憶があります。

――えっ!!! そうなんですか! てっきり、シナリオライターが“ブレグジット”から本作の物語や世界観の発想を得ていたのだと……。

クリント『ウォッチドッグス』はシリーズを通して、テクノロジーが社会に及ぼす影響や、生み出す格差、選挙への影響などを一貫して描いています。ですので、物語を作るときは、実際の政治、社会および世界情勢、事件などをリサーチしながら、シナリオライターが“起こりうること”を想定しながら書いているんです。それが今回“ブレグジット”のタイミングに、奇跡的にはまったのかなと。

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誰もが世界を変えられるヒーローに!

――舞台をロンドンに移した『レギオン』ですが、それ以外に変わったものはありますか? 

クリント最大の違いは、“主人公がひとりではなく、誰としてもプレイできる”ことです。街でいろいろな人をリクルートして操作キャラクターにすることで、プレイヤーがその人そのものになって街を探索できるんですよ。

――ひとりのヒーローを立てたほうが、プレイヤーも感情移入がしやすいですよね。あえてアイコニック的なヒーローを立てないで、ゲームを作ることの不安はありませんでしたか?

クリント操作キャラクターをひとり用意して、ユーザーに感情移入させるのは、従来のゲーム作りの方法だと思います。ユービーアイソフトは、つねに革新やイノベーションを求める会社なので、今回は“誰もが主人公になりえるゲーム”にチャレンジすることにしました。実際に『レギオン』のプロトタイプを作ったときの周りの評判、フィードバックがとてもよかったので、その手応えに背中を押される形で開発に突き進みました。銃を持ったすごいマッチョな男でなくても、“私たちひとりひとりが世界を変えられるチャンスがあるだ“というメッセージを本作で感じてほしいですね。

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――実際に仲間にできる可能性のキャラクターは何人ぐらいになりますか?

クリントToo Many、ものすごく多いです。今作のために、データベース上でキャラクターを自動生成するシステムを新たに導入しました。年齢や性別、人種の違いはもちろん、歩きかたから首の振りかたまで、テンプレートを自動的に組み合わされて、街の住人たちが作られていきます。私がプレイしている『ウォッチドッグス レギオン』と、皆さんがプレイしている『ウォッチドッグス レギオン』に登場しているキャラクターは、まったく異なるようになっているはずです。また、一見同じような見た目をしていても、声が違ったりと……。あらゆる部分で個性を持たせるようにしております。

――話だけを聞いていると、とても気が遠くなるような作業に感じますが……。

クリント本当に気の遠くなる作業で(笑)、今回の最大のチャレンジの部分ですね。もちろん、外見だけでなく、キャラクターが街でどういう行動をするのかも、特別なエンジンを組んでシミュレーションしています。

――なるほど、もはや仲間キャラクターは、理論的に無限と言ってもいいくらいですね。

クリントはい。“いっぱい”(日本語で)です(笑)。

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ストーリーに“違い”をもたらすキャラクターたち

――それだけ操作キャラクターが多いとなると、ストーリーはいったいどういった形で進んでいくのでしょうか?

クリントこれもまた複雑な話になります(笑)。本作では、キャラクターごとにそれぞれ固有のエピソードが用意されている訳ではなく、5~6つのメインストリーを追っていく形になります。ただ、誰でプレイするかによって、同じ武器商人と戦うイベントでも、武器商人への接しかたや、相手のリアクションなどが変わって、ストーリーの広がりかたにかなりの幅が生まれます。その違いをたとえて言うと、映画のリメイク作品をイメージしてもらえると分かりやすいかなと。

――映画のリメイク作品??? それはどういったことでしょうか?

クリント原作の映画と、それをリメイクした映画は、同じコンセプト、あらすじだけど、ストーリー展開などが違うケースはよくありますよね。リメイク版には新たに描かれるエピソードがあったり、とか。

――なるほど! “配役”が変わることで、ガラリと変わる部分があるということですね。となると、何回もくり返して遊べそうですね。

クリントまさに、その通りです。“試作品”が届いてプレイするたびに、「ラッキー♪」と思うのは、キャラクターが変わることによって、ストーリー展開などでまったく違う面が見られるので、本当に楽しいんですよ。ただ、ひとつ残念なことがあって……いままで自分がリクルートしたメンバーが、テストプレイのたびにいなくなってしまっていることです(笑)。

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――実際にリクルートはどのような形で行いますか? ユニークなものがありましたら教えてください。

クリントキャラクターが自動生成されるときに、抱えてている問題(“プログレム”)も各キャラクターに割り当てられます。たとえば、ギャングの下っ端として働く少年でしたら、“借金で困っている”とか。そんな彼らが抱える悩みや問題を解決していき、主人公たちが所属するハッカー集団“デッドセック”への好感度を上げていくと、ある日、「ボクは本当は強盗はやりたくないけど、自分の弟がギャングにつかまっていて……」的なイベントが発生します。見事、それをクリアーするとリクルートできるようになります。ただ、これはほんの一例で、シミュレーションされるイベントやシチュエーションは本当にたくさんあります。

――リクルートしたキャラクターを育てることはできるのでしょうか?

クリントもちろん! 本作には、銃撃戦が得意な“エンフォーサー”、ハッキング技術に長けた“ハッカー”、ステルスに秀でた“インフィルトレイター”の3つのクラスが存在するのですが、たとえば元軍人のキャラクターをリクルートしたら、彼をエンフォーサーとして育ててもいいし、ハッカーとしてスキルを磨かせることもできます。得意なスキルを伸ばしたり、弱点を強化したりと、自由に成長させることができるのです。ですので、プレイヤーによって、いろいろな遊びかただけでなく、キャラクターの成長の仕方も異なります。どういう方向で成長させても遊べることも、本作の魅力のひとつです。

――リクルートできるキャラクターに、能力の秀でた“S”ランク的な人とかいたりしますか?

クリント現実の世界と同じように、個体差はかなりありますね、

――となると、プレイヤーの目利きも重要に?

クリント出会った人をすべてをリクルートするのではなく、あのアビリティを持っているからリクルートしようというプレイスタイルが、ゲームを有利に進めるためには必要になってきます。ただ、いっぱい数を集める楽しさ、ひとつのキャラクターを成長させる楽しさの両方があるので、どちらも楽しんでほしいです。

――本作のオンライン要素は?

クリントもちろんあります! マルチプレイも可能なのですが、年末くらいに正式な発表ができると思います。いましばらく期待しながらお待ちいただければ。

――最後に本作を楽しみにしている日本のゲームファンに向けて、メッセージをお願いします。

クリントゲームの発売を待っていてくれている日本の皆さん、本作の舞台ロンドンは、いろんなところの文化が入り混じた都市でありつつ、伝統的で歴史深い街並みと同時にすごくモダンな一面も持つ、多様性豊かな街です。『ウォッチドッグス レギオン』によって、そのロンドンの街を一度に楽しんでいただけると思うので、そこを期待していただきたいと思います。

――革新的な“レギオン”というタイトルのためにロンドンという街は必須だったんですね。

クリントGreat Choice、正しい決断、 良い決断をしたかなと思います。

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