前作から約7ヵ月後のワシントンD.C.を舞台に、敵勢力との壮大な戦いを描くユービーアイソフトのオンラインRPG『ディビジョン2』。これまで数々の大型アップデートが実施され、さまざまなコンテンツを導入してきた本作。10月15日には、エピソード2“ペンタゴン:ラストキャッスル”を含む、最新の大型アップデートが実施予定だ。
そのアップデートに先駆けて、『ディビジョン2』のクリエイティブディレクター、ジュリアン・ギャリティ氏にインタビューを敢行。『ディビジョン2』の現状や今後について伺うことができたので、その模様を余すことなくお届けする。
ジュリアン・ギャリティ氏
ユービーアイソフト『ディビジョン2』クリエイティブディレクター
レイドはいまよりも難しかった!?
――『ディビジョン2』がリリースされた後、いくつかのアップデートを経てエピソード1が配信されました。ここまでの手応えはいかがでしょうか?
ジュリアン新しく追加された“キャンプ・ホワイトオーク”と“マニング国立動物園”のミッションは、すごく楽しんでプレイしていただけているようで、とても好評なフィードバックをいただいております。ですが、週替わりで更新される新ミッションの“エクスペディション”は、開発チームが何をしたかったのかということがみなさんに伝わっていなかったようなので、今後、さらにブラッシュアップしてよりいいものにしていきたいですね。
――伝わっていなかったといいますと?
ジュリアン事前にエクスペディションの情報を公開していましたが、その伝えかたに問題があったのかなと。エクスペディションは週替わりに更新されていく、いわば期間限定のようなミッションなのですが、プレイしていただいた方の中には「急に終わってしまった」と混乱してしまった方もいらっしゃるようなんです。ですので、つぎからはコミュニケーションを向上させて、皆さんがより楽しんでいただけるようにしようと思っています。
――『ディビジョン2』が発売されてからここまでの道のりは、総じて期待どおりの反応でしたか?
ジュリアン自分たちが作ったゲームなので、ついつい批判的な意見に目がいってしまいます。いろいろなプレイヤーの方の意見を拝見させていただくなかで、とくに気になるのが、長くプレイされている方が途中で止まっているということです。そのあたりを改善して、どんどんゲーム体験を向上させていきたいですね。
――実装されたレイドは、難しいという声も多いですが、この難度は当初の想定通りでしたか?
ジュリアン難度は、自分たちが最初に予定していたものよりは、少し簡単になっています。ただ、いちばん最初に実装されたときは、すごく難しかったと感じられた方が多かったようです。最初はコンソール版をプレイされている方々が、「これは絶対に無理だ」とおっしゃっていたんですけど、いまは15分ぐらいでクリアーできるようになっています。いいチームがいて、コミュニケーションもしっかり取って、戦略がわかってさえいれば、短時間でもクリアーすることができます。
――ある程度は歯応えのあるコンテンツを提供したつもりが、実際のところは想定を上回る感じでユーザーの方々がクリアーしたということですか?
ジュリアン最初にテスターとプレイしたときは、クリアーにかかる時間が30分ぐらいだったんです。テスターたちはゲームに慣れていて、とてもゲームがうまい方たちなので、それぐらいにはなるだろうなとは思っていたのですが、プレイヤーの方々がまさか15分でクリアーできるようになるとは、正直想定していませんでした(笑)。
――ちなみに、クリアーされている方の割合は?
ジュリアン僕が把握しているのは、70000人の方々がレイドにチャレンジしてくれたということです。その挑戦してくださった方の何%の方がクリアーしたかまではわからないですね。
――レイドというコンテンツ自体に対するユーザーの反応はいかがでしたか?
ジュリアンもともとレイドがどういったものかを知っている方々には、すごく楽しんでいただけたようです。最初にレイドというもの自体がどういったものかを知らない方々には、「なんでマッチメイキングがないんだ」という声も多くいただきました。ただ、レイドそのものにはマッチメイクはないべきものだと思っています。
――レイド自体を知らなかった方々にとっては、驚きの体験だったかもしれませんね。そのような方々に対して、裾野を広げるような仕組みは用意する予定は?
ジュリアンすでに、レイドをいままでプレイしたことがなかった方々に向けて“ディスカバリーモード”というものを実装しています。このモードでは、マッチメイキングもあって、難度も低めになっているのですが、レイド限定のリワードがありません。そのディスカバリーモードを通して、レイドがどういったものかを知っていただいたり、練習していただいて、本来の難度のレイドにチャレンジしていってほしいですね。
『ディビジョン2』の今後の展望
――先日のトークショウで、今後のアップデートのプランを発表されていました。このプランは、『ディビジョン2』が発売されてからユーザーのフィードバックを受けて構築されたものなのですか?
ジュリアンアップデートや調整のプランは、みなさんのフィードバックを得たものと、さらに自分たちがゲームをプレイして『ディビジョン2』をどのような方向に持っていきたいかという、ふたつの観点から構築しています。
たとえば、コミュニティの方々からゲームをこうしたほうがいいというフィードバックをいただいたとします。それをもとに、『ディビジョン2』の世界をその方向にもっていったほうがいいか、これをチームとして達成できるかということを協議して、新しいアップデートが決まっていきます。
ダークゾーンに関しても、発売直後からいろいろな意見をいただいているので、今後のアップデートで修正していきたいですね。
――とくにユーザーから多かったフィードバックはなんですか?
ジュリアンダークゾーンに関するフィードバックですね。自分たちがプレイしたときも感じたのですが、ほかの世界はいろいろなアクティビティが起きていて、すごく生き生きとしたものになっています。ですが、ダークゾーンはそれに比べると、物足りない感じがしていたんです。角を曲がった途端に何かが起きるかもしれないというような緊張感やドキドキが足りないという意見もいただいているので、アップデートで改善していく予定です。
――ダークゾーンは『ディビジョン』シリーズを象徴するようなモードだと思いますが、今後もこだわり続けていきたいという思いはあるのでしょうか?
ジュリアンダークゾーンは、美しいシームレスな場所で、PvP体験もすることが可能です。そこで出会ったプレイヤーが、友だちかもしれないし、敵になるかもしれないという、ほかの場所にはないユニークな体験をすることができる場所となっています。
現在のダークゾーンは、初代『ディビジョン』で作り上げることのできた理想とするダークゾーンとちょっと違ったものになってきたなと思っています。ですので、今後、武器の標準化をなくすことを考えています。そうすることで、ダークゾーンに来る人たちは、自分が持っているいちばん強い武器や装備でやってくるでしょう。ほかの人たちも、その武器を狙って襲い掛かる……といったような、より緊張感のあるプレイを楽しめるように調整する予定です。あとは、とにかく多くのプレイヤーが集うような環境を整えれば、より過激な場所になると思っています。
――現在のダークゾーンは、当初の理想とは違っていたんですね。
ジュリアンダークゾーンの最終的な目標としては、ほかのコンテンツとまったく違う体験をしていただくことです。先ほども言いましたが、ダークゾーンはPvP体験が楽しめるモードです。『ディビジョン2』自体はPvEのゲームなので、ふだんとは違う体験をしていただき、楽しんでいただくことが目標です。
――『ディビジョン2』の目指す方向性とはどういったものなのでしょうか?
ジュリアンゲーム中の選択肢を増やすことですね。現時点では、特定の武器や戦いかたが強くなっています。もちろん、それを選んで遊びたいという人が増えているのですが、プレイの幅を広げるためには、これが最強だと言われているもののレベルをちょっと下げる必要があると考えています。いままでがんばってその武器を作り上げてきたプレイヤーにとっては、その弱体化に対して「なぜ?」と思うかもしれません。ですが、これによってゲーム内の選択肢が広がるので、結果的にゲームとしていい方向につながっていくと信じています。
――ゲームバランスの調整ということですね。
ジュリアン選択肢を広げるためのバランス調整ですね。これを使ったら絶対に勝てる、というのではなく、ほかにもいろいろな選択肢が広がるように調整していく予定です。エピソード2では、新しく“目標アイテム”というシステムが入るのですが、それによってプレイヤーのほしいアイテムが見つけやすくなったりします。このように、選択肢が広がりやすくなるようにいろいろと調整しています。
――今後も武器が追加されていくと思いますが、その都度、調整を行っていくのでしょうか?
ジュリアン現時点で目標としているのは、すべてのゲームプレイのパワーバランスを均一化することです。すごく将来的な話になるのですが、レベルキャップを上げるときまでは、何を使っているから有利、ということがないようにバランスを調整していきたいと思っています。
――どれぐらい先まで見据えて運営されているんですか?
ジュリアン少なくとも2年先を見て運営しています。
――10月15日に実施される予定の大型アップデートで、さまざまなコンテンツが実装されますよね。どのようなコンテンツが導入されるのでしょうか?
ジュリアン簡単に説明すると、マニング国立動物園とキャンプ・ホワイトオークに侵略モードが追加されます。さらに、ダークゾーンが導入されたり、コンフリクトに新しいマップを追加し、“チームエリミネーション”という4対4の新モードが追加されます。エクスペディションも改良されており、新しいマスタリーシステムという仕組みを導入します。それ以外にも、エピソード2のペンタゴンでのミッションや、新しいスペシャリゼーションも追加されます。
――マスタリーシステムとはどういうものなんですか?
ジュリアンもともとエクスペディションはパズル要素があって、違う部屋や違う場所をどうやって進んでいくかを解読するみたいなモードでした。そこにさらに、“次元のタイムリミット”のようなものを付け加えて、クリアー時間が短くなればなるほど、リワードがもらえるというひと手間を加えています。
また、モディファイアという仕組みも導入されます。モディファイアは、受けたミッションが手強くなるほど、最後に得られる報酬が豪華になるというものです。クリアー時のリワードは増えるのですが、敵を倒したら爆発するという制約を課せられることもあるので、同じミッションでも制約の内容次第でどうやって進んでいくかを考えながらプレイしなくてはいけません。
――よりスリリングになるということですね。
ジュリアンイエス!
――ちなみに、ペンタゴンは実在のものを再現されているのでしょうか?
ジュリアン開発チームがワシントンD.C.に視察に行ったときに、ペンタゴンを視察する特別なツアーにも参加しました。が、実際に行ってみると、それほどエキサイティングなものではなかったんです……(笑)。ですので、ゲームとして再現するときには、プレイヤーの方々があっと驚くようなエキサイティングなものにしています。
――理想のペンタゴン像を描いているわけですね。
ジュリアンオフィスやショッピングモール、フードコートなどの施設だけを見たので、僕らの頭の中で「じつはこのドアの後ろはこうなっているだろう」みたいな感じの妄想も取り入れています(笑)。
――ところで、『ディビジョン2』で実現したかった“挑戦”は何でしたか? またその挑戦に対する手応えはいかがですか?
ジュリアン『ディビジョン2』では、ゲームを作るうえでも、コンテンツ配信後のアップデートでも、すべての面で初代『ディビジョン』を上回るゲームにするということが目標でした。実現できたかどうかは、イエスでもあり、ノーでもあります。イエスの部分は、フィードバックを受けてさまざまな部分を改善していけているので、『ディビジョン』よりいいゲームになったのではないかと思っています。ノーの部分は、これまでになかった新しい問題も出てきていることです。こちらも、どんどん改善していきたいと思っています。もし僕が10年後も『ディビジョン』シリーズに携わっていれば、このような改善を重ねて、よりよいゲームにしていきたいですね。
――アップデートされるにつれ、新しい要望が出てくるのは当たり前の話になってきていますよね。
ジュリアンどんどんアップデートできる“ライブゲーム”の利点とも言えるのですが、フィードバックでさまざまな意見をいただいて、それを改善できるいい機会があるとも感じています。10年前ですと、ゲームを発売したらそれで終わりという感じだったのですが、いまはライブゲームになったことによって、小さな改善を重ねていけるので、よりよいゲームにしやすくなっていますね。
――では最後に読者の方に向けてメッセージをお願いします。
ジュリアン日本の皆様には、『ディビジョン2』をサポートしてくださっているので、とても感謝しています。これからもゲームを定期的に改善していく予定ですので、楽しみにしていてください!