『ライフ イズ ストレンジ』から3年後の世界

 現地時間2019年8月21日〜24日に、ドイツ・ケルンで開催された、ヨーロッパ最大級のゲームショウ“gamescom 2019”。このイベント内で、海外スクウェア・エニックスから発売されている『ライフ イズ ストレンジ 2』の開発を務めるDONTNOD Entertainment社の開発スタッフにインタビューをする機会を得た。

 『ライフ イズ ストレンジ』は、キャラクターの心情も含んだリアルなストーリー描写で話題になったアドベンチャーゲーム。日本では、第1作『ライフ イズ ストレンジ』が2016年に、前日譚となる『ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム』が2018年に発売。ゲーム内容もさることながら、丁寧なローカライズも話題を呼んだ。

 第1作の主人公は、アート系の学校に通うマックスと、その友人・クロエ、前日譚『ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム』はクロエと、同じ学校に通っていたレイチェルのエピソードを描いた。そして、『ライフ イズ ストレンジ 2』は『ライフ イズ ストレンジ』から3年後の世界が舞台。主人公は、メキシコ系アメリカ人二世のショーンとダニエル。ダニエルはとあるきっかけで超能力に目覚め、ショーンはそのダニエルを守るために、ともに旅をすることになる。

 『ライフ イズ ストレンジ 2』は、海外やSteamではエピソードごとの販売を行っており、現在はエピソード4まで発売中。日本語には対応しておらず、日本語版の発売日は未定となっている。また、下記インタビューでも話題に挙がっているが、『ライフ イズ ストレンジ 2』には本作につながるエピソードを描くティザー作品『The Awesome Adventures of Captain Spirit』(以下、『キャプテン・スピリット』)というものがあるが、『キャプテン・スピリット』の概要は下記をご覧いただきたい。

 なお、本インタビューは複数のメディアの合同取材を編集したものになる。

インタビューに答えてくれたミシェル・コッホ氏(右)と、ジャン・リュック・カノ氏(左)

ミシェル・コッホ氏

『ライフ イズ ストレンジ』、『ライフ イズ ストレンジ 2』クリエイティブディレクター。

ジャン・リュック・カノ氏

『ライフ イズ ストレンジ』、『ライフ イズ ストレンジ 2』シナリオライター。

『ライフ イズ ストレンジ 2』で開発スタッフが描きたかったもの

――これまでに配信された3つのエピソードの反応は、いかがですか?

カノファンの反応はかなりいいと感じています。前作の主人公・マックスとクロエが好きな人たちが、今作のショーンとダニエルのことも大事に思ってくれているようでとてもうれしいです。一方で、各エピソードを出すまでに時間がかかってしまったという反省もあります。ゲームをプレイした人はとても楽しんでくれていますが、もっと多くの人にプレイしてもらいたいと思っています。

コッホプレイヤーの中には、エピソード4や5が配信されて、全体のストーリーがわかるのを待っている人がいるのもわかります。ですが、そこまで待たずにプレイしてくれている人たちは、今回のキャラクターや兄弟の関係を本当に楽しんでくれています。

 1年前に本作を発表したときには、多くの人が「ショーンとダニエルではなく、マックスとクロエの話にしてほしい」と言っていましたし、本作をプレイしていない人たちの中には、いまでもそう思っている人がいるでしょうが、プレイしてくれた人たちは新しいキャラクターをとても愛してくれています。そういった方々は、私たちが新しいキャラクターを作るリスクを負ってでも描きたかったもの、作りたかったものがあることを認識してくれていると思います。そういったリスクを負わなければ、第1作のマックスやクロエも存在していませんから。

――日本のファンは日本語版を待っています。日本でもぜひ発売してほしいと思います。

カノ先月日本へ行ったときに前作『ライフ イズ ストレンジ』の日本語版トレーラーを見たのですが、とても良くできていました。日本のローカライズチームとは密に連絡を取り合っていますし、日本でもぜひ発売して欲しいですね。

コッホ日本で第1作のゲームがリリースされたことはとてもうれしかったです。フランスでは日本のアニメやマンガの人気が高いので、日本の声優さんによって日本語が吹き込まれたものを聴いたときは、本当にすばらしいと思いましたね。もし日本でも発売されるとしたら、ショーンとダニエル、そのほかのキャラクターも、日本語版のボイスを聴くのが楽しみです。

――第1作と、本作のテーマの違いをお聞きできますか?

カノ第1作のメインテーマは“大人になる、成長する”ということでした。そして、今回は“教育”だと思っています。プレイヤーの行動が自分とストーリーだけでなく、弟のダニエルと彼の行動に影響を与えていく。これが大きな違いになっています。

――第1作は、ひとつの町を舞台にふたりのキャラクターを描いていましたが、本作ではロードムービーのように舞台が移り変わって、そのたびに新たなキャラクターが登場しています。サブキャラクターの魅力を描き切れないなど、表現が難しいところがあるのではないでしょうか?

カノ自分にとってとても難しかったことのひとつは、何度か会うだけでも信じられるキャラクターを作ること、プレイヤーとしてそのキャラクターに対する意見を持てることでした。新しいキャラクターとの関係は、とくに注意して描かなければいけない部分ですので、シナリオを書いてからミシェル(コッホ氏)に見せてフィードバックをもらって、修正をしています。とくに、プレイヤーが受ける最初の印象がより明確になるように努力をしました。ロードトリップでは、各地で会うキャラクターから経験を得て、またそれを置いていく必要があります。

 一方で、過去に出会ったキャラクターについて何か耳にすることもあります。こうした人たちとの経験や感情を共有することが、本作のゴールに向かって進んでいく大事なポイントだと思います。

――本作へつながるティザー作品として『キャプテン・スピリット』がありますが、これを作ろうと思った理由は?

カノ本作を作り始めたときに、短編のゲームを出してティザーのように使うということを考えました。というのも、ダニエルと同じ年代の幼い子どもであるクリスを操作してもらえば、プレイヤーがダニエルたちへの感情移入もしやすくなる、この新しい世界への入り口として最適な手段になるのではないかと興味を引かれたんです。

 『キャプテン・スピリット』の最後にショーンとダニエルが出てきますが、ここでゲームを終われば、数ヵ月、数週間を経て『ライフ イズ ストレンジ 2』にすんなり入ってもらえるかなと。プレイヤーはすでにクリスと彼のまわりの人物を知っていますが、ショーンとダニエルは知らないという状況で、クリスのストーリーを入れることはおもしろいのではないかと。

――今作をプレイするに当たって、前作をプレイしていたほうがいいのでしょうか?

カノ前作をプレイしていなくても本作は楽しんでいただけますし、本作のあとに第1作などをプレイしていただいてもいいでしょう。同じユニバースであり、つながりもあり、イースターエッグのようなものありますが、独立したゲームとして楽しめると思います。

――第1作の終わりかたは大きく2種類の展開がありましたが、本作はどちらの世界からつながっているのでしょうか?

コッホ両方です。というのも、本作はスタート時にいろいろな質問が投げかけられるんですが、前作をプレイしたかどうかということも聞かれますし、あなたの知っている世界ではどんなことが起こったかというのも聞かれるので、それに答えることで、前作で起きたことをベースに、細かい部分も含めて、本作に影響を与えるんです。

――政治的なことについて。『ライフ イズ ストレンジ 2』のメインキャラクターはメキシコ系アメリカ人の子どもで、メキシコに行ったことはないが救いを求めて初めて行こうとしています。これはクレイジーな考えかただと思いますが、こういったストーリー展開で何を伝えようとしているのでしょうか?

カノおっしゃる通り、とても子どもっぽいアイデアだと思います。ゲーム序盤で、ショーンは信じられない状況に直面し、弟は気を失ってしまう。さらに警察がやってきてパニックになる。彼はメキシコ系アメリカ人として、このような場にいてはまずい状況になることはわかっていますので、弟を連れて逃げ出します。それは、その場に留まっても彼らが公正に扱われず、警察に捕まってしまうことを知っているからです。そこで、自分たちのルーツとも言えるメキシコのどこかに家があるからそこへ行こうと考えたわけですが、良識がある行動とは言えないですし、16才の子どもらしい判断だったと思います。

コッホ政治的な面については、確かにアメリカにおけるメキシコ系アメリカ人という特定の状況ではあるものの、これはより広義の状況としてとらえることができると思います。排他という意味では人種差別はもちろん、ホームレスとして見られて差別されることなど、いろいろな状況に当てはまるものですし、世界的な問題です。人種など、何かが違うだけで差別されてしまう、それはどんな社会にもあると思います。

――前作に比べて、非常に重いストーリーを描いているように感じます。

カノ本作は、前作に比べて成熟した暗いストーリーのように感じると思いますが、兄弟のやりとりに楽しさやノスタルジーを感じられるはずです。このふたつのバランスを取るのは難しいときもありますが、何とかバランスが取れたと思っています。前作も、とある男が無理やりティーンエイジャーの女性の写真を撮るなど残酷なところはありました。ショーンとダニエルが日々直面する現実の残酷さは私たちもよくわかります。シーンによっては、プレイヤーが自分の経験に近いため辛いと感じることもあるかもしれません。

――なぜ、このようによりシリアスなものを選んだのでしょうか?

カノテーマが先にあってストーリーを考えたわけではありません。まずストーリーを作っていき、ミシェルやもうひとりのクリエイティブ・ディレクターと話し、語りたいものが見つかったので、そこからメキシコに逃げていくふたりの兄弟を設定し、ふたりに何が起こるのかを考えました。いろいろなシーンがあり、いろいろな人に会うというように、ストーリーを組み立てていった結果、ダークなものになったわけで、よりダークなものにしようと思って作り始めたのではありません。

――日本のファンには、とくにどう楽しんでほしいですか?

コッホ正直なところ日本の文化に詳しくないので、日本のプレイヤーから見て魅力があると思われるところはすぐには思いつきません。でも、このストーリーやテーマはどんな人でも共感できるものだと思うので、もし日本版が発売されることになったら、ぜひ楽しんでほしいと思います。