2018年6月12日~14日、アメリカ・ロサンゼルスのコンベンションセンターにて開催されている、世界最大規模のゲームイベントE3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2018。そのE3のタイミングで発表されたスクウェア・エニックスと『Life is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』を手掛けたDONTNOD Entertainmentの新作『The Awesome Adventures of CAPTAIN SPIRIT』(以下、『CAPTAIN SPIRIT』)。

「『Life is Strange 2』の物語を語るために『CAPTAIN SPIRIT』で10歳の少年を描く必要があった」デモ&インタビュー【E3 2018】_01

 本作は、人気アドベンチャー『Life is Strange』と同一の世界観を持つ作品で、同作のコアメンバーが開発に当たっている。主人公は意外にも(?)10歳の少年クリス。PVでは、クリスが“CAPTAIN SPIRIT”という架空のヒーローごっこに夢中な様子が描かれていたが、果たしてどんな作品になるのか。本稿では、E3会場スクウェア・エニックスブースで行われたプレゼンテーションとインタビューで判明したことをまとめた。なお、本作は海外ではプレイステーション4、Xbox One、Steam向けに2018年6月26日に無料で配信されるが、日本でのリリースは現在のところ未定となっている。

 プレゼンテーションでは、ゲーム冒頭からのデモプレイがお披露目された。

 クリスは架空のヒーロー“CAPTAIN SPIRIT”に夢中な10歳の少年。クリスの中では、“CAPTAIN SPIRIT”には超能力があるという設定らしく、物を動かしたり、ドアを開けたりといったときに、いちいち超能力を使おうとする(もちろん、クリスにそんな能力は備わっていないので、右手をかざして超能力を使う格好をするが、その傍ら左手で物を動かしたり、ドアを開けたりする)。

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 そんなクリスは父親とふたり暮らし。理由は不明だが、母親はいなくなってしまったらしい。父親はクリスのヒーローごっこに話を合わせてくれる優しいパパといったイメージだが、朝からビールをあおり、テレビでスポーツ観戦を楽しむという(一日のほとんどをテレビの前で過ごしそうな感じ)、少し問題も抱えた人物のようだ。

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 基本的にほったらかしにされているクリスが、自分で作り上げた架空のヒーロー“CAPTAIN SPIRIT”になり、寂しさを紛らわせるためか、ちょっとした用事でも想像力を膨らませて冒険にしてしまうという、ヒーローごっこに遊びに夢中になるのは、なんとなく理解できる家庭環境だ。クリス自身は、“CAPTAIN SPIRIT”ごっこを明るく楽しんでおり、それが大人目線から見ると健気。友だちはいるのかなあ……(友だちは少なそう。筆者の勝手なイメージだが)。

 本作では、クリスが次にどんな遊びや用事(CAPTAIN SPIRITの任務)をするかを複数の中から選び、それぞれちょっとしたクエストのようなものをこなしていく、といったゲーム内容になっていた。たとえば、ウォーターサーバーをウォーターイーターというモンスターに見立てて、“CAPTAIN SPIRIT”として戦う、という空想の冒険シーンがあったり。

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 デモの範囲では、物語というものはとくになく、クリスのごっこ遊びを微笑ましく見る感じだったが、先日配信されたスクウェア・エニックスのE3特別番組“SQUARE ENIX E3 SHOWCASE 2018”では、『Life is Strange 2』の世界への入り口というも言える作品との言及もあった本作。プレゼン後、さまざま疑問についてDONTNOD Entertainmentの『Life is Strange』と『CAPTAIN SPIRIT』のクリエイティブ・ディレクターのRaoul Barbet氏に聞いた。

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――まずは、ファンが期待する『Life is Strange 2』ではなく、『CAPTAIN SPIRIT』を開発した経緯を教えてください。

Raoul 『Life is Strange』の発売後、すぐに『2』の開発を始めたのですが、じつは平行して『CAPTAIN SPIRIT』の開発も進めていました。『2』では、マックスでもクロエでもない新しい人物の物語になることはすでにアナウンスしていますが、スクウェア・エニックスと我々DONTNOD Entertainmentと、今後の『Life is Strange』についていろいろと話し合った中で『CAPTAIN SPIRIT』の内容も固まっていきました。

――『CAPTAIN SPIRIT』は『Life is Strange 2』の世界への入り口とも言える要素がいろいろ散りばめられているとのことですが、具体的には? デモにもあったように、ウェルズ校長からの手紙であったり、そういったちょっとした文章などで『Life is Strange』の世界と地続きということを意識させるということでしょうか。それとももっと大きなつながりが?

Raoul デモでは、物置の段ボールにブラックウェル高校のウェルズ校長からの手紙があったのをご覧になったと思いますが、そうした小さなつながりもありますし、ゲームをプレイしていただければ、もっと大きなつながりが見えたり、体験していただけると思います。

――『Life is Strange』のキャラクターが出てきたりとか?

Raoul 現段階では詳しくは言えません(笑)。ただ、クリスの部屋にはクリスが描いたホットドッグマンの絵が飾られていたり、そうした登場はあります(笑)。また、『CAPTAIN SPIRIT』は『Life is Strange 2』の架け橋になる物語という位置付けの作品で、『CAPTAIN SPIRIT』で選んだ選択・行動の一部は『Life is Strange 2』に引き継がれます。

――時間軸的には『Life is Strange』より後なんですか?

Raoul 『Life is Strange』の3年後という設定です。『Life is Strange』は現実の重たいテーマを扱った作品ですが、クリスの部屋を見ると、すごく明るい子どもの部屋です。重たいテーマ(少し問題を抱えた父親)と少年の明るさを同時に両立させようとしたのが『CAPTAIN SPIRIT』です。

――何を目的に進めていく作品になるんでしょうか。

Raoul 本作はクリアーするための明確な目標はありません。“CAPTAIN SPIRIT”としての任務をすべてこなす必要もありませんし。少年が“CAPTAIN SPIRIT”としてどんな体験をするか、というのが目的と言えばそうかもしれません。ただ、何回もプレイして、さまざまなものにインタラクトしていけば、『Life is Strange 2』につながる要素が見つかるというゲーム性になっています。

――くり返しプレイすることで隠された要素が見つかるかも、と。

Raoul はい。おそらく大きなサプライズもあると思います。

――少年の物語を描くことにした理由は?

Raoul 『Life is Strange 2』の物語を語るために、10歳の少年クリスである必要がありました。『Life is Strange』はリアルな日常を描くことが特徴のひとつなので、セリフ作りや声優のキャスティング、リアルに少年を演じてもらうことなど、いろいろと難しいところはたしかにありました。10歳という年齢は、無垢な少年であると同時に、まわりの大人たちが抱えている問題もおそらく気づける年齢になってきていて、現実から逃げたくなるような、とてもデリケートな年ごろだと思います。そいしたことも、10歳の少年を主人公した理由のひとつでもあります。我々が大人になって失ってしまったであろう、ムダなことに時間を費やせる楽しさをもう一度体験してもらいたかった、というのもあります。

――『CAPTAIN SPIRIT』自体は、6月26日に配信されるエピソードのみの作品なんですよね?

Raoul はい。いまのところ単体の作品として考えています。

――Unreal Engine3からUnreal Engine4に変更したことで、たとえば、もっとリアルなグラフィックにするという選択もあったと思うんですが、グラフィックは前作からのイメージを踏襲していますね。

Raoul どういったところをリアルにするかは、いつも開発チームと話し合ってはいるのですが、いちばん重要なのは『Life is Strange』の遺伝子を失わないこと。ですので、『Life is Strange』らしさを損なわない程度の進化を目指し開発をしています。

 グラフィックはもちろん、手書き風な文字、UI、カメラワーク、そして音楽など、いたるところに『Life is Strange』らしさを感じる『CAPTAIN SPIRIT』。日本でのリリースは未定だが、リリースされないハズはない! 正式発表とリリースを期待したいところ。