「6月に開催されたE3 2019で印象的なタイトルは?」と聞かれて記者が答えていたタイトルの1本が、『The Outer Worlds(ザ・アウターワールド)』だ。
Xbox E3 2019ブリーフィングのオープニングアクトを飾って世界中のゲームファンの注目を集めた同作は、Private Divisionがパブリッシングを手がけ、Obsidian Entertainmentが開発を担当する壮大なスケールのサイエンスフィクションRPG。主人公は、銀河の果てにあるコロニーを舞台に、宇宙を揺るがす事件に巻き込まれていくことになる。まずは本作の概要をピックアップしていくと以下の通り。
- 壮大なスケールのシングルプレイRPG
- キャラクターメイクが多彩
- 武器がバラエティーに富んでいる
- 選択肢の多いストーリー
- 仲間となるコンパニオン(パートナー)の存在
端的に言うと、骨太なRPGを楽しみたい方にはたまらない1作ということになるであろうか。開発元であるObsidian Entertainmentに言及するときは、“『Fallout: New Vegas』(2010年)を手がけたチーム”と紹介されることが多いが、そこからイメージする期待を裏切らないタイトルと言える。
Obsidian Entertainmentは2003年にカリフォルニアで生まれた開発会社。『Star Wars Knights of the Old Republic II: The Sith Lords』(2004年)に始まり、『Neverwinter Nights 2』(2006年)、『Fallout: New Vegas』(2010年)、『ダンジョン シージ3』(2011年)、『Pillars of Eternity』(2015年)など、設立から16年にわたって一貫してRPGを作り続けてきたスタジオとなる。そして、RPGゆえにローカライズの敷居が高いのか(テキスト量が多いから)、日本でタイトルがあまり紹介されてこなかったスタジオでもある。
ちなみに、E3から帰国後、記者はたまたまゲーム開発現場の苦労を描くノンフィクション『血と汗とピクセル:大ヒットゲーム開発者たちの激戦記』(ジェイソン・シュライアー・著、西野竜太郎・訳)という本を読んでいたのだが、その第1章がObsidian Entertainmentにあてられていた。その章では、当時Obsidian EntertainmentがXbox Oneのローンチタイトルとして開発中だった『Stormlands』がキャンセルとなり苦境に陥ったところに始まり、ティム・シェーファー氏率いるDouble Fine ProductionsがクラウドファンディングのKickstarterで220万ドルを集めたことに刺激を受けて、同社もKickstarterにトライ。結果として400万ドルを超えるほどの資金を調達でき、『Pillars of Eternity』をリリースし、大ヒットを記録した……といういきさつが紹介されている。
その後、2018年にはObsidian Entertainmentが、2019年にはDouble Fine Productionsもマイクロソフト傘下に入るというのは、何やら縁というものを感じさせつつも……。『血と汗とピクセル:大ヒットゲーム開発者たちの激戦記』を書いたジェイソン・シュライアー氏はRPGがお好きとのことで、そんなシュライアー氏が自著の第1章にObsidian Entertainmentを持ってくるということは、北米のゲームユーザーのあいだでは、同社は“RPGを作る会社”として、しっかりと認知されているのかなあ……という印象。
なんてことをぼんやり思っていたところに、Private Divisionさんから「アメリカ・ロサンゼルスで開催される『The Outer Worlds』のプレスイベントに参加しませんか?」との連絡が届いた。まさに渡りに船である。絶好のタイミングとばかりに記者は太平洋を渡った。
『The Outer Worlds』最強の存在はモンスター
サンセットビーチでおなじみのロサンゼルス・サンタモニカのホテルのミーティングルームを貸し切って、世界中の取材陣を招いて行われたプレスイベント。そのメインとなるのは、ゲームのハンズオン。担当者によるちょっとしたゲームの概要紹介のあとは、たっぷりとした試遊時間が設けられていた。
試遊は、まずはゲームに慣れてもらおうという意図のもと、ゲーム冒頭からキャラクターメイク、そして操作を覚えるチュートリアル的なパートをプレイしたあとで、ある程度ストーリーが進んだ部分にチェンジするという二部構成で行われた。まず体験できたのは、冒頭でも言及した“多彩なキャラクターメイク“。昨今のRPGともなるとキャラクターメイクが充実しているのはもはやデフォルトと言えるのだろうが、そこはRPG作りに定評のあるObsidian Entertainmentのこと。しっかりとツボを押さえつつも、『The Outer Worlds』らしい独自の要素が……。とはいえ、キャラメイクは今回のタイミングではお伝えできる範疇ではないので、いずれ紹介できる機会を待ちつつ、本試遊のメインとなるパートへ……。
試遊のメインとなるのが、ゲームがスタートしてからある程度ストーリーが進んだ部分。これは、『The Outer Worlds』のゲームプレイをひと通り体験できるから……との配慮によるものだ。試遊の舞台となるのは、惑星“モナーキ”。ここは銀河の果てにある入植地で、いかにも開拓途中といわんばかりの人類が建てたうらさびれた町がいくつか点在するのみ。E3 2019のデモでは、“町を牛耳っている女性(キャサリン・マリン)に会いに行き、クライブという男からとある工場を取り戻すために仕事を請け負う”くだりが紹介されていたが、おそらくそれは最初に行く惑星の“テラ2”で、今回の試遊はその“テラ2”でのミッションをひととおり終えたあとで、“モナーキ”に移ってからのパートではないかと思われる。
荒涼としたフィールドに点在する町……と、モナーキに身を浸して改めて思うのが、いかにも西部劇風であるということ。一匹狼である主人公は、利権を求めて利害が対立する住民たちのあいだを渡り歩きながら、己の求める道を貫いていくことになる(それがどのような道かは、おそらくプレイヤー次第)。1940年代に生まれた“スペースオペラ”は、西部劇(“ホースオペラ”という言いかたもされる)に端を発したという説もあるようなので、“王道SFアクション”として、自然な流れと言えるのかもしれない。
で、これは最初に強調してしまうのだが、“西部劇風フィールド”にアクセントを与えているのが、モナーキに棲息する動物の存在。いや、動物というよりは、もうモンスターと呼んだほうがふさわしいような見た目と強靭さを持つ彼・彼女らは、この地にはそこかしこにたむろしていて、ミッションを進めようとすると、こいつがまあ、相当やっかい。動物愛護派の記者からすると、「できれば、君たちとは無駄に戦いたくないんだよ……。僕の腕もからっきしだし」というところなのだが、敵に放ったはずの弾が間違ってモンスターに当たって逆鱗に触れたり、出会い頭で遭遇したり……と、細心の注意を払っていないとすかさず相まみえることになってしまう。そしてこのモンスターたちの手強いことといったら! とくかく固い。おそらくモナーキ最強ではなかろうか……と思われるくらいなのだが、今回のハンズオンでは記者も何度煮え湯を飲まされたかしれない。
とはいえ、このモンスターが『The Outer Worlds』のゲームプレイにアクセントを加えていることは間違いなく、“未開の地で油断は禁物”という緊張感を保つ上で欠かせないという意味合いも含めて、『The Outer Worlds』を象徴する存在と言えるのかもしれない。ちなみに、試遊のあとで行ったシニアプロデューサーさんへのインタビューで、これからのモンスターは「遺伝子操作により新しい生物を育てるという計画が失敗して凶暴化した」存在だと教えてもらった。
ちなみに、そんな強さを誇るモンスターと相対するにあたって、極めてありがたい攻撃方法がある。“Tacticle Time Duration”だ。こちらは、左トリガを押すことで発動。しばし、時間の流れをゆっくりさせられるというけっこう最強なシステム。『Fallout』シリーズの“V.A.T.S.”を発展させたと思われるこのシステムは、ゆっくり動くモンスターの弱点を狙ってヒットさせたりすると、これがとにかく爽快! とくに初心者にとって重宝するこのシステムだが、その爽快さは腕の良し悪しは問わないのではないだろうか……。まあ、当然“Tacticle Time Duration”は多用できないので、頼りすぎはよくないのは言うまでもない。
いかにモンスターが手強いかを、2例ほど紹介。愚直なまでに突進してくるモンスターは手強い存在。火を放つモンスターもおり……。炎に包まれることもしばしば。
とにかく頼もしいコンパニオン
さて、さきほど主人公は“一匹狼”と書いたが、それはあくまで言葉の綾で、実際のところはそうではない。E3 2019のリポート記事でもお伝えしたとおり、強力なNPC(ノンプレイヤーキャラクター)のコンパニオン(仲間)を、最大ふたりまでパーティーに加えることができるのだ。本作では何名かコンパニオンが用意されており(具体的な数字はまだ明かされていない)、プレイヤーは自由に選ぶことが可能。楽しいのは、それぞれ性格や属性が異なることで、どのコンパニオンを選ぶかで戦闘時にもたらされるボーナススキルも違ってくるようだ。このへんは主人公の育成要素ともかかわってくると思われる。
で、このコンパニオンがめっぽう強い! 記者が手強そうな敵の物腰にオタオタしていると、「何もたもたしてんの!」とばかりにずかずかと突き進み(本当にそんなふうに言っているように聞こえる)、敵を一網打尽にしてくれるのだ。「もう少し僕に活躍の余地を残しておいてくれても……」とも思わないでもないが、ものぐさな記者からしてみると、清々しいばかりの豪放ぶり。まさに“頼りになる旅の仲間”なのだ。
そんな血気盛んな彼・彼女たちなのだが、たまにモンスターたちに猪突猛進していっては修羅場を見ることも……。モンスターとコンパニオン、記者が見る限りその実力は五分五分といったところかしら。
ちなみに、難易度がノーマルだと、コンパニオンはどこかの段階で復活するが、ハードになると一度失ったコンパニオンは一切復活しないとのこと。いずれにせよ、コンパニオンの喪失は大きなダメージになりそうなので、いたわりながらプレイするのがよさそう。
頼りになります、コンパニオン! 記者が手強そうな敵に怖気づいていても、がんがん突撃。遠巻きにしているうちに拠点を制圧したり……。惚れます!
会話ひとつでストーリーが変化する自由度の高さ
最後に、本作の大きな特徴のひとつであるストーリーの自由度の高さについて。ハンズオンで端的にうかがうことができたのが、キャラクターとの対話の選択肢の多さ。とにかく話題が尽きることがなく、「どこまで会話を用意しているんだろう?」と気になるほど。E3 2019では、「キャラクターとの会話によりストーリーが変化する」と聞いたのだが、会話を続けていると、何かの折りにフラグが立って、分岐が発動していくのだろう。ストーリーが変化してしまうかもしれないことを考えると、『The Outer Worlds』では会話の選択ひとつとってもあだやおろそかにはできなさそうだ。
記者の貧困な英語力ではまったく理解すべくもないが、各キャラクターはそれぞれ個性がにじみでるような会話をしているはずで……本作には“会話の楽しさ”というのもあるのかもしれない。本作は、セリフは全部音声つきというこだわりぶりだが、そこには“会話の妙味を味わってほしい”という、作り手のこだわりも含まれているのかもしれない。
ちなみに、記者はプレイも終盤に差し掛かったころに、ようやく「そういえば、コンパニオンとも会話できるのかしら……」とはたと思いつき、おもむろに後ろを向いて話しかけてみると、なんとコンパニオンがしっかりと受け答えをしてくれるではありませんか! しかもミッションまで発動してしまった。「何たる灯台もと暗し!」。「ミッションをクリアーしたら、コンパニオンとの関係性も変化したりするのかしら……」と、つらつら考えているうちに、試遊の時間は終了となってしまった。
Nyokaとの会話。クエストを受けるまでと、クエストをクリアーしたあとの会話となる。会話システムがいかに奥深いかおわかりいただけるのでは? ローカライズがたいへんそう。
ところで……本作は、プレイステーション4、Xbox One、PC向けに2019年10月25日発売予定で、なんと英語やフランス語、イタリア語など11ヵ国語に対応しているという。ありがたいことに日本語にも対応しているのだが、あれだけのテキスト量をどのようにローカライズしているのであろうか……。つぎの機会があったらうかがってみたいところ。
※ちなみに、取材後『The Outer Worlds』のNintendo Switch版が発売されることが正式アナウンスされた。発売日は未定。
いずれにせよ、モンスターに“Tacticle Time Duration”、コンパニオンなどを加えたバトルの楽しさに加えて、キャラクターとの会話も楽しめる『The Outer Worlds』は、RRG好きにはたまらない魅力の詰まった1作と言えそうだ。
最後に砦での戦いの模様をちょっとだけご紹介。まさに西部劇さながらの雰囲気にしびれる。