小高和剛氏に影響を与えたマンガを発表! 意外なジャンルの作品も!?

 『ダンガンロンパ』シリーズの生みの親として知られ、現在はToo Kyo Games(トゥーキョーゲームス)を立ち上げたゲームクリエイター小高和剛氏。彼が原作を担当するマンガ『ギャンブラーズパレード』が、このたび最終回を迎えた。

 同作は、“ギャンブル嫌い”の男性教師・蜘蛛手渚(クモデ ナギサ)と“不運体質”のヒロイン・東雲花梨(シノノメ カリン)らによるギャンブルチームが、策謀渦巻くギャンブルに挑む姿を描いたギャンブルマンガ。前述の通り、原作は小高和剛氏。漫画は『ねじまきカギュー』の中山敦支氏が担当していた。

 連載の終了と、最終話が収録された第4巻が2019年7月17日に発売されることを記念し、小高氏にインタビューを敢行。作品作りに影響を与えたマンガを語ってもらいつつ、初めての週刊連載の思い出を語ってもらった。

小高和剛(こだか かずたか)

Too Kyo Games(トゥーキョーゲームス)所属。『ダンガンロンパ』の生みの親であり、シリーズすべてのシナリオなどを担当した。

――そもそも小高さんは、昔からマンガを読まれていましたか?

小高もちろんです。最初に『キン肉マン』を買って、『キャプテン翼』に手を出して……。そこから本格的にマンガを読み始めて、小学生のころから『ヤングマガジン』などもチェックしていました。中学校は電車通学で、通学時間を有効活用するために、すべてのマンガ雑誌を買っていました。

――小中学生が読みそうなマンガ雑誌と言うと、『ジャンプ』、『マガジン』、『サンデー』……。

小高あとは『チャンピオン』とか。ただ、当時はひとりですべてのマンガ雑誌を買えなかったので、友人と回し読みをしていました。購入するマンガ雑誌の担当を決めておくんですよ。「お前は『ジャンプ』担当ね」って。ちなみに、自分は数の少ない『チャンピオン』担当でした(笑)。

――(笑)。小高さんは、マンガ雑誌をすみずみまで読んでいたのですか?

小高ちゃんと読んでいましたね。マンガ雑誌は、当時貴重なエンタメでしたから。いまの小中学生は、マンガ雑誌を買って回し読みってやっていないかもしれませんが。当時は、信じられないくらいおもしろいマンガが多かったんですよ。

――かなりのマンガっ子だったのですね。そんな小高さんのマンガ人生の中で、とくに影響を受けたマンガ家やマンガを教えてください。

小高うーん、(しばらく悩んでから)松本大洋、初期の『ドラゴンヘッド』(作者:望月峯太郎)、『ベルセルク』(作者:三浦建太郎)……。あとは、『東京大学物語』(作者:江川達也)かな。

――えっ!? 最後だけ毛色が違う気がしますが、まずは松本大洋さんを選んだ理由を教えてください。

小高松本大洋は、大学生のときに短編集を読んでハマりました。彼の作品は、映画的なマンガだなとビックリしました。当時は『COMIC CUE』のような、サブカル系マンガが流行っていて、僕の周囲でも松本さんの作品が話題になっていたんです。それから『花男』や『鉄コン筋クリート』、『ピンポン』などを読んでいきましたね

――松本大洋さんの作品は、描写が独特ですよね。

小高そうですね。松本大洋のマンガはアートっぽかったんです。当時は映画業界を目指していたのですが、ちょっと嫌な言いかたをすると、映画業界を目指している人たちが見ても恥ずかしくないと言うか……。逆にほかの映画と並んで語られるような作品だと思えて印象に残っています。

――松本さんのマンガを読むと、自分でも作品を作ってみたいと思うんですか?

小高いや、当時は大学生でちょっとこじらせていて。オシャレなものを読んでいるオレが好きみたいなところがありました(笑)。「松本大洋を読んでいるオレが好き」みたいな。

――あぁ、周囲がもっとメジャーな作品で騒いでいるなか、オレは違うぞと。

小高そうですね。だからToo Kyo Gamesでも同じようなことをしたいなって。メジャーには行かずに、尖った作品が好きな人が知っているような。知る人ぞ知るみたいな。

――小高さんの代表作である『ダンガンロンパ』も、最初はそんなイメージでしたよね?

小高『ダンガンロンパ』よりも、もっと売れない感じで(笑)。

――(笑)。松本さんの作品で、ほかにどんなところがお好きですか?

小高セリフ回しが好きですね。セリフがちょっとわかりづらい感じも、オシャレだなって。ポエムのようで、当時流行っていた渋谷系の音楽に通じるものがあると思います。歌詞がちょっとわかりにくいけど、調べてみるとちゃんと意味があって。そんなところが、すごくオシャレなんですよ。

――万人に受け入れられる作品ではないと思いますが、むしろ小高さんはそういった作品のほうが好みであると?

小高そうですね。そのとき在籍していた大学の映画学科も尖った人間が多くて。好きな映画にメジャーな作品を挙げたら許されない感じでしたから(笑)。当時は、松本大洋の作品を褒め称えたり、反論したりして、1日過ごせるくらいでしたね。それぐらいの熱量がありました。

――それはすごいですね。周囲の人も松本さんの作品を読んでいる人が多かったのですか?

小高映画学科の人間は、ほとんど読んでいたと思います。アニメで言うと『フリクリ』が流行っていたころで、サブカル的なマンガやアニメが一世を風靡していました。

――ああ、『フリクリ』も尖った作品でしたね。松本さんの作品は、小高さんにどのような影響を与えたのですか?

小高オシャレでありたいとは思いますね。そんなには出せないですけど。あと、セリフはマネしたいですね。わかりやすさというよりも、2、3回読んで理解できるセリフを作りたいです。1回で理解できちゃうセリフは、アニメ的というか、どんどん流れていってしまう感じがするので。ただ、あまりやり過ぎるとお客さんがついてきてくれないかな。

――そうですね。では、続いては初期の『ドラゴンヘッド』と言うことですか……。

小高『ドラゴンヘッド』は、連載が始まります、というタイミングで読んで、本当にビックリしました。新連載で衝撃を受けたマンガのナンバー1ですね。いまだに『ドラゴンヘッド』の衝撃を超える作品に出会ったことはありません。第1話の展開だけで、読者を驚かせるのはなかなかできないと思います。そこからずっと続きが気になって、『ヤングマガジン』で追い続けました。最新号が発売される1週間後が待ち遠しかったですね。つぎが気になってしかがないという感覚は、ユーザーとしてなかなか出会えないだけに、忘れられない思い出です。

――なるほど。『ドラゴンヘッド』が小高さんの作品に与えた影響もお聞きしたいのですが、読者を惹き付ける展開は、『ダンガンロンパ』に通じるものがあると思います。

小高そこはやりたいことと言うか、序盤の『ドラゴンヘッド』のように引きを作って、物語をガンガン進められたらいいなとは思います。ただ、登場人物が多いと、キャラクターの紹介もしなければいけないので、『ドラゴンヘッド』のように突っ走れなくて。いつか登場人物を紹介する展開を抜きにして、おもしろい展開だけで物語を動かしていきたいですね。『ドラゴンヘッド』を読んだことがない人は、3巻まででいいから読んでほしい。『漂流教室』(作者:楳図かずお)くらいの衝撃でした。『漂流教室』、途中で広がりすぎるんですけど、オチはものすごくちゃんとしているんですよ。そういう意味では、ふたつ目のタイトルは『ドラゴンヘッド』と『漂流教室』だな。

――増えた! 続いては、『ベルセルク』とうかがいました。

小高『ベルセルク』は、高校のときに“蝕”のシーンを見てひっくり返りました。もともと『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』(作者:萩原一至)のようなダークファンタジーが好きで、友人が『ベルセルク』を勧めてくれたんです。当初は、グロい『バスタード』という認識だったんですが、過去編の“黄金時代”からどんどんのめり込んでいきました。それから連載に追いついて“蝕”を見たんです。先が読めない展開はもちろん、絶望のどん底に叩き落される感覚がとても気持ちよかったのを覚えています。

――確かに、“蝕”のシーンは衝撃的でした。

小高気持ち悪くてへこむ作品は数多くあると思いますが、『ベルセルク』ほど清々しくへこめるマンガはないんじゃないかな。『ベルセルク』は、エンタメされた絶望感があって。ただただ嫌な気持ちにさせようとする単なるエログロではなくて、絶望をエンタメ化しているのがすばらしいなって。

――『ベルセルク』は、いまも継続して読んでいるのですか?

小高読んでいますよ。“蝕”以降の展開も好きです。絵もうまいですし、“絶望エンタメ感”はいまもあるので。

――“絶望エンタメ感”も、『ダンガンロンパ』で感じられますよね。4つ目は『東京大学物語』とのことですが、ちょっと流れ的に急に代わりましたね。『東京大学物語』を選ばれた理由は?

小高心理描写と、その時間を示す “この間0.1秒”といった演出が印象的でしたね。(少し考えてから)あとやっぱり、エロいですよね(笑)。

――確かに、エロいですけど(笑)。

小高子どものころって、マンガでいろいろなことを覚えていくじゃないですか。エロもそのひとつと言うか、当時はパソコンやスマートフォンを使って簡単にエロいものが見られる時代ではなかったですし、エロ本を買うのにも勇気がいるのに対して、『東京大学物語』は『ビッグコミックスピリッツ』を買えば読めましたからね。堂々とエロ本を買えるという。

――いや、エロ本じゃないですよ(笑)。

小高でも、マンガとしておもしろい作品でしたよ。これまで読んだことないジャンルでしたし、さっきも言いましたが、心理描写の時間表示とかも斬新でした。それに、同じ作者が描いた『まじかる☆タルるートくん』ですらちょっとエロいなと思っていましたから、それ以上のものをやってくれるなんてと感動しましたね。『ビッグコミックスピリッツ』もみんなで回し読みしていました。

――心理描写の演出のほかに、ストーリーで好きなところはありますか?

小高主人公がヒロインに勢いだけで告白するシーンなど、展開がおもしろかったですね。出てくる女の子もかわいくて、しかもどんどんエロくなっていくので、これはすごいなって。エロの敷居が高かったときに、お手軽なエロとして一世を風靡しましたよね。

――『東京大学物語』で、小高さんが影響を受けたところは?

小高影響……。(しばらく考えてから)影響は、作品としてはまったくないですが……。

――ないの!?

小高でも、人として成長できたと思います。いまも覚えているのが、服を脱がさずブラジャーを取る方法が作中で描かれていて、「これはすごい!」と思いました。手品のようなことができるんだ、「へぇー!」って。そういう影響はありました。

――人というか、男として成長できたと。

小高エロと言えば、最近注目しているマンガがあって。たまたま持ち歩いていた、この『デスラバ』(原作:カズタカ、マンガ:智弘カイ)という作品なんですが。

おもむろに『デスラバ』1〜4巻を取り出し、並べる小高氏。

――急に出しましたね。持ち歩くほどお好きなんですか。ちなみに『デスラバ』は、どういうところに注目を?

小高『東京大学物語』以降、エロ系のマンガに惹かれることがなかったのですが、『デスラバ』は久しぶりにハマりましたね。エロ系のマンガは、ふだんはまったく読まないですし、見ることもないですが、『デスラバ』は魅力がすごくて。

――魅力というのは、キャラクターの魅力ですか? それともエロの魅力ですか?

小高どちらも魅力ですが、読んだそばから前のページの内容を忘れられるのもいいですね! もしかしたら、『デスラバ』の作者はそういうことを考えているのかもしれません。読者に考えさせることをさせずに、忘れさせるストーリーを考えるのは逆に難しいので。いやー、これは作者がすごい。

――なるほど。ふつう作家だったら、覚えていてほしいと思いますからね。

小高そうなんですよ。作家のエゴをまったく出さないのは、同じシナリオを考える人間として、すごいなーと思います。それに、作者の名前(カズタカ)が僕といっしょで、親近感が湧きました。

――それは奇遇ですね。

小高機会があれば、カズタカどうしで対談をしてみたいですね。僕とは真逆の作風なので、話は盛り上がらないかもしれませんが。

――でも、主人公が拉致されて閉じ込められるといったシチュエーションは、小高さんの『ダンガンロンパ』シリーズに近いものを感じます。

小高ちょっとパクられた感じがしますよね。でも、デスゲームのエロマンガはありそうでなかった気がするので、目の付け所はさすがだと思います。

――自画自賛のように褒めますね。キャラクターが魅力的とのことですが、とくに誰がお気に入りなんですか?

小高メインヒロインのさやかちゃんがいちばん好きですね。○○(編注:念のため伏せ字)が考える清楚っぽい感じがして。作中に漂う○○感もいいですね。おそらく、この作者のコンビはふたりとも○○なんじゃないかな。

――えっ!? 原作者だけではなく、マンガを描いている人も?

小高○○な人じゃないと描けないと思うので。

――(単行本のページをめくりながら)それにしては、描写がリアルですが……。

小高確かに、描写はリアルなんですけど、○○が想像したリアルというか。彼の願望がつまっている気がするんですよね。『デスラバ』のようなマンガが、中高生のときにあったらたまんなかっただろうなと思います。僕における『東京大学物語』のような感じで。

――ああ、なるほど。性の参考書になるような感じで。

小高中高生の推薦図書になるといいんじゃないかな。

――PTAに許されない!

小高堂々と置くのが無理なら、トイレにこっそり置いてほしい。あとは、川辺に落ちていてほしいですね。

――下手に突っ込めない話題ですね。ほかに『デスラバ』の魅力はありますか?

小高2巻は最高傑作だと思います。ギャグがおもしろかったですね。女の子にバレないように○○○○(編注:どう考えても伏せ字)をするっていう回なんですが、これが本当にくだらなくて。読んでいるうちに何を見ているんだろうって気持ちになりました。僕は何を書いているんだろうって。

――僕? 小高さんが書いているんですか?

小高いや、僕じゃなくて、カズタカさんは何を書いているんだろうって気持ちになったということです。正気を疑うというか。パンツを監視カメラに投げたり、匍匐前進をしながら○○○○をしたり……。本当に何を考えているんだって。4巻のアルティメット野球拳も、「何がアルティメットだ!」って思いました。

――そういったところには、作者のやりたかった願望が書かれているんですかね?

小高まぁ、そうでしょうね。金持ちになったらやる予定のことを書いているんじゃないですか。でも、内容が過激すぎたせいか、スマホのアプリでは配信停止になったらしんですよ。ブラウザではまだ見られるんですが、敷居の高さも作品の魅力だと思いますね。

――それぐらい過激だけど、18禁ではないんですよね?

小高そうですね。一線は超えていないですからね。単行本では、隠れているところが見えちゃっていますが。あ、思い出しました。自分が中高生のときに『ギルガメッシュないと』に夢中になっていたんですが、いまの中高生をそのときの気持ちにさせたいと思ったんです。『ギルガメッシュないと』は、一種のカリスマなので。ただ、カズタカさんは、名前は出したくないんでしょうね。某有名オンラインストアで、本名を検索したときに関連商品に出てくると困るので。

――まるでカズタカさん本人のように、心情を語りますね。カズタカという名前も、ペンネームかもしれませんしね。そういえば、パンツを監視カメラに投げるシーンは、『ダンガンロンパ』の1作目を彷彿とさせました。

小高え、そんなシーンありましたっけ?

――桑田が焼却炉に投げるシーンです。

小高あぁ、たしかに。そこも親近感が湧きますね。人生を懸けた一球を投じるというのは。そういえば、新章に突入して南国に行くところも似ていますね。

――『ダンガンロンパ』シリーズも、『2』になって舞台が南国になりましたからね。

小高『デスラバ』は最新刊の5巻から南国に行くので、興味のある人はチェックしてみてください。ちなみに、2巻と3巻は飛ばしても大丈夫です。4巻は大事なことが描かれているので、時間がない人は1巻と4巻を読んでから5巻を読みましょう。

――急に宣伝チック! 単行本と言えば、小高さんが原作を務める『ギャンブラーズパレード』の4巻が2019年7月17日に発売されます。同作はこの巻で最終回を迎えますが、初めての週刊連載はいかがでしたか?

小高素人くさい感想ですが、中山さん(敦支氏。『ギャンブラーズパレード』の漫画を担当)の絵が毎週見られるのが楽しかったですね。雑誌で見るのと、校了紙で見るのは、迫力がぜんぜん違うなと思いました。

――週刊連載ならではの苦労はありましたか?

小高僕は原作をまとめて書いた後、中山さんに原稿を渡して、好きなところで切っておしいとお願いしていたので、週刊連載の苦労は体験していなくて。もし今後機会があるなら、毎週原作を用意して、ライブ感覚で連載する形にもチャレンジしてみたいですね。

――ただ、Too Kyo Gamesでゲームを作りながら、毎週マンガ原作の原稿を考えるのは、たいへんだと思います。

小高そうですね。ただ、『ギャンブラーズパレード』は話を切るところの判断をお任せしていたので、今度は切るところを自分で決めたいなと。いずれにせよ、いい経験になりましたし、最終話もきれいに落ちが決まったので、よかったと思います。

――では小高和剛としては、いったんマンガは終わりということに?

小高しばらくは中山さんやカズタカさんの応援をしていこうと思いますが、マンガは今後も関わっていきたいですね。週1か月1かはわかりませんが、もしかしたら年に1回のペースでもいいかもしれません。

――小高さんが新作を発表されるのを楽しみにしています。最後にゲームの話もうかがいたいのですが、Too Kyo Gamesとして近々発表できそうなことはありますか?

小高そろそろ見え始めてきたので、年末から来年の頭にかけて、情報を出していけるかなと思います。作品は、来年から再来年にバンバン出していけると思います。どれもふつうの出しかたはしないと思うので、毎回驚いてもらえるんじゃないかと思います。たとえば、ハンドル付きの携帯ゲーム機があるじゃないですか。

――手回しハンドルで操作する“Playdate”のことですね。

小高そうです。ああいうような驚きがあることをやりたいという思いがあるので、枠組みからしっかりと仕込んでいる感じですね。いずれ発表しますので、続報にご期待ください。

『ギャンブラーズパレード』原作:小高和剛、漫画:中山敦支/講談社/4巻は2019年7月17日発売
『デスラバ』原作:カズタカ、漫画:智弘カイ/講談社/5巻は2019年7月5日発売