記者にとってRemedy Entertainment(レメディエンターテインメント)はひときわ印象深い開発スタジオだ。同社のことを初めて知ったのは2010年にXbox 360用ソフトとしてリリースされたアクションアドベンチャーの『ALAN WAKE(アランウェイク)』。“光と闇の戦い”をテーマに、一般的なシューターではないプラスアルファのゲームシステムと独特な世界観が、当時好評を博した。

 2016年にリリースされた時間を操る攻撃を駆使する『Quantum Break』を経ての、彼らの最新作が『CONTROL(コントロール)』となる。本作は、主人公であるジェシーが超自然的な力を駆使して戦うアクションアドベンチャー。ガンプラスアルファのアクションと独特な世界観を持つという点において、きわめてRemedy Entertainmentらしいタイトルと言えるだろう。

 昨年のE3に合わせて発表され大きな話題を集めた同作が、いよいよ海外では2019年8月27日に発売されるということで、今回のE3では、海外でパブリッシングを担当する505 Gamesより試遊+インタビューの機会が設けられた。ここではその模様をお届けしよう。なお、『CONTROL(コントロール)』は、国内ではマーベラスよりプレゼンテーション4版が今秋に発売されることが明らかにされたばかりで、ゲームファンにとっては大いにうれしいニュースと言えるだろう。

 『CONTROL(コントロール)』は、主人公であるジェシー・フェイデンが、異世界の脅威に侵略されたニューヨークの機密機関に潜入して戦うというアクションアドベンチャー。今回試遊させてもらったのは、物語序盤にあたる3番目のチャプター。ジェシーが施設の中を進んでいくというシチュエーションだ。

『CONTROL(コントロール)』では超能力と武器を駆使してすべてを“コントロール”せよ。プレイ動画やクリエイターインタビューをを交え、その魅力を検証【E3 2019】_02

 本作のゲームシステムでキモとなるのは、前述の通りジェシーが超能力を駆使して戦うというという点。試遊させてもらったPC版では、R1ボタンに超能力での攻撃が、R2ボタンにガンでの攻撃が割り振られていたのだが、プレイヤーは適宜このふたつの攻撃方法を使い分けながら、敵に相対していくことになる。なかには銃による攻撃をシャットアウトする敵もいて、その場合は超能力による攻撃で敵にダメージを与えてから、銃で倒す……といったことも必要になる。

『CONTROL(コントロール)』では超能力と武器を駆使してすべてを“コントロール”せよ。プレイ動画やクリエイターインタビューをを交え、その魅力を検証【E3 2019】_01

 で、この超能力と銃による攻撃がとても心地よい。超能力による攻撃で敵を威嚇してから銃で仕留めるという一連のアクションが、メリハリが効いていて、極めて爽快。フィールドにある数多くのオブジェクトが超能力を使って移動させることができるので、ついつい意味もなく試してみたくなってしまうほど。とはいえ、超能力による攻撃は、ただ闇雲に駆使していればいいというわけではなくて、ちゃんと相手にあたるように狙いを定める必要がある。題名にもある“コントロール”の云いかな……とも思われるのだが……。

『CONTROL(コントロール)』では超能力と武器を駆使してすべてを“コントロール”せよ。プレイ動画やクリエイターインタビューをを交え、その魅力を検証【E3 2019】_03

 ちなみに、試遊できたバージョンで使えた超能力は、オブジェクトなどを持ち上げて相手にぶつけるというものだったのだが、公開されている画面写真などを見ると、空中浮遊などもできるようになるようだ。プレイが進むにつれて、超能力+銃によるゲームプレイは、さらに進化していくものと思われる。

 かようにRemedyらしさが溢れるアクションが楽しい『CONTROL(コントロール)』だが、一方で同社ならではの深みのあるストーリーにも期待できる。本作は、ジェシーの過去にも謎が秘められているようで、興味は尽きない。

※三番目のチャプターの冒頭シーン。ジェシーが建物の中に侵入していく。武器と超能力による操作は爽快!

キーワードは“コントロール”

 試遊後、Remedy Entertainmentのゲームディレクター、ミカエル・カスリネン氏と、ナラティブ・ディレクター、ブルック・マッグス氏に話を聞いた。

『CONTROL(コントロール)』では超能力と武器を駆使してすべてを“コントロール”せよ。プレイ動画やクリエイターインタビューをを交え、その魅力を検証【E3 2019】_05

ミカエル・カスリネン氏

Remedy Entertainment ゲームディレクター

ブルック・マッグス氏

Remedy Entertainment ブルック・マッグス氏

――銃と超能力のアクションが爽快でした。

ミカエル武器とアビリティの融合は、Remedyのお家芸と言えるかと思いますが、本作では新しいやりかたでコントロールしたいと思いました。超能力がモチーフの世界観なので、それがいろいろなことに影響を与えるというアイデアを持っていました。キーワードは“コントロール”です。環境をコントロールして敵を攻撃する、自分を防御する、敵の感情をコントロールしてお互いに攻撃するように仕向けることなどです。
 武器に関しては、これまでのRemedyのゲームでは、主人公が武器を集めて持ち歩くというスタイルでしたが、本作には適していませんでした。不思議な興味深いワールドであり、主人公はとても重要な役割を演じるので、彼女の持つ銃もそれに見合ったものでなくてはなりませんでした。そこで、超自然的な武器を考案しました。武器は異なる形を取ることができるのです。この武器とアビリティを使うことで、本作にユニークなダイナミズムをもたらすことになったのです。
 また、攻撃と体力回復を関連づけることで、プレイヤーにより攻撃的になってもらうことができました。敵にダメージを与えなくては体力が回復しないからです。これは、単に物陰から攻撃して撃ち進んでいくという状況を避けたかったからです。ゲームを進めるには、敵に対して効果的にアビリティを駆使しなければいけません。つまり、頭を使う必要があるわけです。

『CONTROL(コントロール)』では超能力と武器を駆使してすべてを“コントロール”せよ。プレイ動画やクリエイターインタビューをを交え、その魅力を検証【E3 2019】_04

――Remedyのタイトルはストーリーが魅力的ですが、本作はゲームデザインとストーリーのどちらが先に生まれたのですか?

ブルック最初に“何をやりたいか”というコンセプトから始まり、実現するためのテクノロジーを作りました。そして、『CONTROL(コントロール)』は新しいIPなので、まずはその世界観を作るために時間をかけています。物語の核をなすのは、ジェシーのストーリーです。本作では、新しいゲームを作ろうと思い定めて、まずテクノロジーを開発し、その後世界観を構築し、個人的なストーリーとキャラクターを作りました。

ミカエル『Quantum Break』は、じつは技術面を重視した作りでした。生き生きとした本物の人間が、そのまま実際にゲーム内に入り込んだかのようなリアルなものを作りたいと思ったからです。それを実現するために多くの時間を費やしました。『CONTROL(コントロール)』では、まずはコアアイデアを追求しています。プレイヤーがゲームの中で、“コントロールしている”という感覚がしっかりと持てて、遊んでいて楽しいものでありたいという発想がありました。そして、それにしっかりと反応する物理的な世界を構築する必要があります。その中にある複雑さは敵にも反映されます。そのために、物理演算エンジンを当時使っていたものから、PhysXに変更しました。キャラクターのコントロールはアニメーションではなくて、基本的に物理演算で行われます。敵のAIシステムも作り直しています。まったく新しい行動システムは、複雑でダイナミックな反応をする環境を作るために必要でした。

――たしか、Remedyは独自のゲームエンジンを使っていましたよね?

ミカエルはい。Northlightというゲームエンジンを、20年以上にわたって使い続けています。『CONTROL(コントロール)』でも、Northlightをアップグレードしながら、ゲームに最適化して使っています。

――さきほどお話にありましたが、本作ではAIシステムも再構築しているのですね?

ミカエル『Quantum Break』では、外部のミドルウェアを使っていたのですが、そのツールの性能が芳しくありませんでした。けっきょくそのミドルウェアメーカーは解散してしまったのですが、自分たちの期待する水準のゲームを作るには、AIテクノロジーを外部に依存するのではなくて、自分たちで構築しようと決断したんです。『CONTROL(コントロール)』では非常に柔軟性のあるAIシステムが構築できましたし、敵の動きにも注目していただきたいですね。

※本作には、随時サイドミッションが盛り込まれれる模様。幻想的な世界に飛ばされてサイドミッションをこなすことで、アビリティーが使えるようになるようだ。

――本作は、主人公であるジェシーの過去を探るというストーリーでもあるようですね。

ブルック彼女は、子どものころに超自然現象が起こって弟が行方不明になってしまうんです。彼女の人生は、その答えを見つけることと、自分自身を理解することに費やされてきました。そしてそのために疎外感を味わってきたんです。他人はその能力のために、彼女のことを異常だと思うわけです。いわば彼女は居場所を探していたわけですが、最終的にたどり着いたのがニューヨークの秘密機関なのです。ところがその秘密機関の建物は、異常事態に陥っている。その異常事態を回復すべく、彼女は単身秘密機関に乗り込んでいくわけです。これまでの人生では彼女を異常なものに見せていた超能力が、異常事態を回復するためには、力強い味方になるわけです。私たちをユニークな存在にしている何か異色なものが、じつは私たちの強さであるということは言えるのかもしれません。

――『ALAN WAKE(アランウェイク)』を筆頭に、Remedyのタイトルには独特な世界観がありますよね。

ミカエルそうですね。危険な香りと、不安定な怖さとでも言いますか……。このふたつのバランスを取っています。興味深いキャラクターと世界観の構築には注力しています。ゲーム業界を見渡すと、大手パブリッシャーは似たようなタイプのゲームをくり返し作っているように思います。Remedyは小規模な独立スタジオですので、自分たちの手でクリエイティブなものを作りたい。ほかと同じようなゲームを作っても意味がありませんし。独自のものを生み出して、ほかとは一線を画したものを提供していきたいですね。

――本作は、日本でもマーベラスから発売されることが決定しました。最後に日本のゲームファンに向けてのメッセージをお願いします。

ブルック『CONTROL(コントロール)をみなさんと共有できることをとても嬉しく思います。本作は、いろいろな新しいことを取り入れた特別なゲームです。Remedyらしいところも見ていただけるでしょう。本作の世界観にぜひ興味を持っていただきたいです。謎に満ち溢れたストーリーを楽しんでください。

ミカエルサポートしてくださってありがとうございます。私は、日本の多くのゲームからたくさん刺激をもらっていて、いろいろな形で影響を受けています。このゲームが日本で発売されることになり、ファンの皆さんに遊んでいただけるのはとても嬉しいです。

※本作では不思議なキャラクターが多数登場する。動画で紹介しているのは、清掃員のAhti。自分のアシスタントにならないかとジェシーを誘うが、いかにも怪しげ。こういった存在感のあるキャラクターが世界観を盛り上げる。