E3 2019にて発表された『テイルズ オブ』シリーズの最新作、『テイルズ オブ アライズ』。国内外から注目を集める本作について、 プロデューサーを務める富澤祐介氏にインタビュー。

 マイクロソフトが開催したカンファレンス“Xbox E3 Briefing”にて、『テイルズ オブ』シリーズ最新作がついにベールを脱いだ! その名も『テイルズ オブ アライズ』。PS4/Xbox One/PC(Steam)向けに、2020年発売予定となっている。

 本作のプロデューサーを務めるのは、バンダイナムコエンターテインメントの富澤祐介氏。本記事では、『テイルズ オブ アライズ』の狙いや、6月10日に公開された第1弾PV中で見て取れた気になるシーンなどについて、富澤氏に伺ったインタビューをお届けしよう。

富澤祐介氏(とみざわ ゆうすけ)

『テイルズ オブ』シリーズIP総合プロデューサー。『GOD EATER』シリーズのIP総合プロデューサー、『CODE VEIN』のプロジェクト統括も担当。

新たなファンを獲得するための継承と進化

――ついにシリーズ最新作『テイルズ オブ アライズ』が発表されました。いつごろから開発はスタートしていたのでしょうか?

富澤ちょうど1年前に『テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER』を発表させていただきましたが、それよりもかなり前からプロジェクトは始動していました。映像をご覧いただければわかるかと思いますが、『テイルズ オブ アライズ』はとてもチャレンジングなタイトルです。制作に当たって、まずは『テイルズ オブ』シリーズとは何なのか、どうあるべきなのかを改めて見直す時間が、とても長かったですね。

――たしかに、PVを見る限りでは、本作はこれまでの『テイルズ オブ』シリーズとは一線を画すような作風に見えます。

富澤そうしたインパクトを感じられることは想定しています。そこには、本作がシリーズの伝統に向き合いながらその“継承と進化”を目指しているという背景があります。20年以上続く『テイルズ オブ』シリーズの魅力とは何なのか分析する中で、将来に向けて進化が必要だと考えられる部分も、やはり多く存在していました。今後もブランドを維持拡大していくためにも、たとえば若いユーザー層にも新たな『テイルズ オブ』シリーズに目を向けてもらう必要があります。

――長く続くシリーズならではの課題ですよね。新たに若いユーザーにファンになってもらうというのは。

富澤そのためには、やはり従来とは異なるアプローチを取ることも必要でした。そして、どのような伝えかたをしていくべきか考えて、より多くの皆さんの目に留まるよう、これまでの規定路線からあえて外すような魅せかたをしたりすることにも今回はチャレンジしています。PVだけを見ると、これまでの『テイルズ オブ』シリーズファンの皆さんは不安に感じる部分もあるかと思いますが、大事なこととして、『テイルズ オブ』シリーズの持つ根本的な魅力や、継承されるべきポイントは十分に議論し、それを踏まえたうえで進化のポイントも選択・設計しているということをお伝えしたいです。そうした進化の理由や変化の目的などは、今後、要素ごとに丁寧に説明していきたいと思います。

――進化と変化をより感じられるように、最初は驚きを重視したPVを作られたと。進化といえば、グラフィックもかなりレベルアップしていて、街の情景や、フィールドらしき草原などが、かなり美しくなっていますね。

富澤グラフィックについては、純粋な進化として受け止めていただけるかと思います。これまでの『テイルズ オブ』シリーズは、『テイルズ オブ』シリーズ専用エンジンを使用していましたが、今回は“アンリアルエンジン4”をベースに採用しています。ただ、現世代機でよく見られるフォトリアルなグラフィックというのは、『テイルズ オブ アライズ』の目指しているところではありません。リッチなライティングや空気感をともないながらも、水彩調で描かれているような独自のグラフィックと、親しみやすいキャラクターたちのモデルを描くために、“アンリアルエンジン4”をベースにしつつも、完全新規のシェーダーなどを独自に開発しています。

――キャラクターモデルの頭身が高くなっているのも、これまでとは違うポイントだと感じます。

富澤これはキャラクターに限ったお話ではないのですが、本作はこれまで以上に“没入感の高い体験”を提供したいというテーマがあります。その表現のひとつとして、キャラクターたちの演技やアクションなどをより高めていまして、「本当に、このキャラクターがこの世界で生きているんだ」という感覚を、皆さんに感じてもらうのが狙いです。そのアプローチとして、水彩調で描かれるフィールドとキャラクターを馴染ませ、また、キャラクターの頭身の上げて人間らしさをより強調しています。とくに大きいポイントは、モーションにかなり力を入れていることです。たとえば、振り向くという動作にしても、瞬時にクルッと後ろを向くような、いわゆるゲームキャラクターの動きではなく、身体を捻って後ろを向く……という動きをさせることで、リアリティーをアップさせています。

――キャラクターと言えば、今回のPVでは、主人公らしき男性と、ヒロインと思われるような女性の姿を確認できました。PV内には、イラストレーターのクレジット表記などはありませんでしたが、今回のキャラクターデザインはどなたが担当されたのでしょうか?

富澤映像やホームページのキービジュアルを見て気づかれた方もいるかもしれませんが、今回はバンダイナムコスタジオに所属する、岩本稔がメインキャラクターのデザインを担当しています。加えて、岩本は今回アートディレクションも同時に努めています。先ほどお話ししたような、キャラクターとフィールドを馴染ませるための調整といった部分も含めて、全体のビジュアルを見ているわけです。

――岩本さんは、『テイルズ オブ ゼスティリア』ではエドナとザビーダ、『テイルズ オブ ベルセリア』ではライフィセットとアイゼンをデザインされていましたが、おひとりでメインキャラクター全員担当は初となりますね。

富澤さらに言うと、メインキャラクターデザインとアートディレクションを同一人物が担当するのも、いわゆるマザーシップタイトルでは初です。これによって、さまざまなレベルで作品内のアートの統一感が生まれてきます。たとえばこの世界の外観のデザインとキャラクターの衣装のデザインを同時に進めることで、これまでにない文化レベルまでを統一的に表現することができます。先ほどお話しした通り、今回は“没入感をより高める”ことをテーマにしていますので、そうしたデザインの統一性もその目的に沿っており、このような制作体制を採りました。

――3Dモデルのキャラクターの表情は、グッとリアルになっていましたね。

富澤はい。キャラクターのフェイシャルアニメーションや、カメラワークなど、演技にまつわる部分はテレビや劇場で見る3Dアニメのレベルを目指しています。「3Dシーンがそこまでレベルアップするなら、2Dアニメーションシーンは要らないのでは?」と思われるかもしれないですが、『テイルズ オブ』シリーズにとって、2Dアニメ表現はやはり重要な存在であり、継承と進化という大きなバランスを担う一翼でもあります。作品内でのより効果的な活用を模索しながら、双方でドラマがより盛り上がるよう設計していきます。

――ちなみに、本作の開発は、バンダイナムコスタジオが担当しているのですか?

富澤はい、バンダイナムコスタジオが取り仕切って制作を進めています。スタッフもさまざまで、直近作『テイルズ オブ ベルセリア』からのメンバーも多くいますし、中には『テイルズ オブ ファンタジア』から参加しているというメンバーもいます。『テイルズ オブ』シリーズに愛を持つ新旧スタッフたちが、伝統の継承と進化を議論しながら制作しています。

――ディレクターなどのメインスタッフは、今後公開されていくのでしょうか。

富澤さまざまなセクションのスタッフたちがいますので、たとえばバトルの詳細について公開する際には、その担当スタッフたちの声を直接届けたいなと考えています。音楽などの担当についても、いまはヒミツですが追ってご紹介します。もちろん、テーマソングがなくなる、なんてことはありませんので、そこはご安心ください。

ダナとレナ。主人公とヒロイン。

――PVのナレーションでは“ダナ”と“レナ”という世界があると語られていましたが、具体的にはどんな世界なのでしょう?

富澤主人公たちが生活している星が“ダナ”で、キービジュアルやPVの中でも見られる、上空に浮かんでいる星が“レナ”です。ダナは自然豊かな大地が特徴で、かつてダナの人々は、レナのことを“死者が住まう地”として崇めていました。このふたつの星が物語の舞台となっています。レナは科学や魔法技術が発達している星で、本作の物語が始まる300年前、レナはダナに侵攻します。ダナの文化は中世くらいのレベルでして、科学はほぼなく魔法も使えません。圧倒的な力の差でダナは敗北し、レナはダナの人たちを隷属させました。その一方的な関係が300年続いている中で、物語がスタートするのです。この始まりだけでも、かなりハードでダークな雰囲気を感じてもらえるのではないでしょうか。

――そんな状況から、鎧をまとった主人公らしき男性が何かを成し遂げていくと。

富澤もちろん、彼が主人公です。虐げられている状況からいかに覆していくか、というのが彼の成すべき物語のひとつの方向性になるでしょう。彼の姿も、これまでの『テイルズ オブ』シリーズにはなかったタイプですよね。主人公なのに、最初はフルフェイスという(笑)。王道的な鎧騎士風のデザインについては、昨今『テイルズ オブ』シリーズも海外での人気を獲得してきていますので、欧米のRPGファンの方々にも受け入れてもらえるようなテイストを入れることを意識した側面もあります。ですがそれ以上に、彼の鎧や兜は、彼のとある身体的特徴が理由で装備しているものです。『テイルズ オブ』らしいキャラクター性に基づいたデザインという点もきちんと考慮に入れながら、新しいキャラクターデザインの文法にトライしています。キャラクターの詳細情報や名前、声優さんなどは今後の続報をお待ちください。ちなみに、主人公が見せるのはあの鎧姿だけではありません。状況に合わせて、さまざまな衣装に着替えていきます。

――女性キャラクターについては、かわいらしさよりも、凛とした雰囲気を感じました。彼女はヒロインなのでしょうか?

富澤はい、ヒロインです。かなり強気でカッコいい女性でして、戦闘などにも積極的に参加していく姿がPVでは描かれています。そして、主人公とは最初から仲よしとはいかないような雰囲気ですよね。そこにはやはり、“ダナ”と“レナ”の力関係が関わっています。主人公はダナ人であり、ヒロインはレナ人なので、人種が異なるわけです。レナ人はダナ人を差別しているという状況の中で、ふたりの関係性がスタートし、やがて大きなドラマにつながっていきます。

――PVではふたりのバトルシーンもありましたが、バトルはもちろんアクションバトルですよね。

富澤はい、『テイルズ オブ』シリーズらしい、敵とエンカウントをしてのアクションバトルです。PVの中ではごく一部のバトルシーンしか披露していませんが、 目指しているテーマの片鱗を少しでも感じていただきたいです。今回は、新規ユーザーの方々にも「『テイルズ オブ』シリーズのバトルは、爽快感のあるバトルだ」と感じてもらうことがテーマです。見るだけでおもしろそうと思ってもらえるような、より直観的でスピード感のあるアクションで戦えることを目指しています。

――『テイルズ オブ』シリーズのバトルシステムもいろいろあり、タイトルによってはコンボを楽しむには修練や時間を要することもありましたが、今回は、もっと気軽にアクションができるという感じでしょうか?

富澤状況に合わせて、いろいろなアクションがくり出せます。もちろん、使い込んで熟練度を上げていくような要素もあります。詳細なシステムについては、続報をお待ちください。

――PVで主人公が相対していた敵は、かなり凶悪な見た目をしていました。

富澤敵のデザインは、脅威感を強めています。「倒し甲斐のある敵を倒すことで、より達成感を味わってもらうべきだ」と、開発チームに最初に相談しました。あまりにも怖い敵を作ると、女性ユーザーの皆さんには嫌われてしまうかも……という考えもありますが、やはりRPGのバトルというのは、敵を倒す達成感が重要だと思っていますので、そこをPVでも感じてもらえればと。

――過去作には、オタオタのようなかわいらしい敵も出てきましたが、今回はテイストを変えていると。

富澤たとえば、かわいらしいボアが出てきたときに、シリーズファンは「これが敵なんだ」と文化として認識できますが、新規ユーザーの人には、世界観とのギャップが感じられ、大事なバトルでの挑戦心や達成感が得にくくなってしまう。先ほども言ったように、今回は世界観とキャラクターの統一感を強めて、より没入感を出すというコンセプトですから、敵も基本的には世界観のトーンに沿ったデザインになっています。ただ、かわいいタイプの敵がまったくいないワケではありません。また、まだ秘密ですがマスコット的な存在もいたりしますし。『テイルズ オブ アライズ』に心温まるものがまったくない、ということではないのでご安心ください。今回は、新作発表のインパクトを感じていただくため、尖った部分を強めてアピールしています。

『テイルズ オブ アライズ』というタイトルに決めた理由

――伝統に向き合い、継承と進化や変化を施すには相当の苦労があるかと思います。今回のPVでは“変化”の部分が強調されていますが、“伝統の継承”の部分で、大事にしていることは何ですか?

富澤皆さんが考える、『テイルズ オブ』シリーズの伝統の要素はたくさんあると思うんです。アクションバトルもそうですし、たとえば“スキットやチャット”と呼ばれる会話シーンですとか。そういう部分は、なぜ皆さんの人気があるのか? どういった進化なら望まれるのか? などなど、すべてにおいて細かく議論を重ねて、各要素を作っています。よりよい『テイルズ オブ』シリーズらしさを感じていただけるよう、チーム一丸となって努力していますので、それをユーザーの皆さんにしっかり伝えていく必要があると思い、シリーズを統括するブログを立ち上げました。今後はSNSでのやり取りも細かくやっていこうと考えています。

――たとえば、体験版の配信、試遊会なども積極的に行っていくのでしょうか?

富澤確約はできませんが、従来以上にユーザーの皆さんに、発売前に触れていただく機会は設けていきたいです。

――楽しみにしています。ところで、今回のタイトルをついて詳しくお聞きしたいのですが……これまで、『テイルズ オブ』シリーズの略称と言えば、『TALES OF PHANTASIA』なら『TOP』と、英単語の頭文字を取ってくるのが通例でした。そのルールで行くと、『テイルズ オブ アライズ』は『TOA』となり、『テイルズ オブ ジ アビス』と被りますよね。それでもなお、“ARISE”という言葉を選んだことには、何か意図や意味があるのだと思うのですが?

富澤頭文字の略称は、ユーザーの皆さんとの暗黙のルールとしてありますよね。まだ使われていない“N”か“O”を使った言葉にしようかとも思いましたが……じつは開発初期から本作の開発コードネームは“アライズ”だったんです。「『テイルズ オブ』シリーズを新生させたい」という強い意志で開発に取り組んでいる中で生まれてきた言葉でした。その後、タイトル案は数百案を世界中の開発・宣伝メンバーと検討しましたが、やはり信念を込めて付けたコードネーム“アライズ”がもっともふさわしいという意見が全員の総意でした。そこで、この機会に暗黙のルールを変えてでも、この現場の新生に向けた熱意を伝えるべきであると感じたのです。また当然ながら作品のストーリーで表現されているテーマにも紐づいています。抑圧された環境を覆すべく立ち上がる主人公たちの心情にARISEの文字が重ねられています。

――今後、本作のことは、どんな略称で呼んだらよいでしょう?

富澤アライズ』または『TOARISE』にしたいと考えています。新規の方にも、しっかりとタイトルを伝えたいという狙いです。たとえば『TOP』という文字を見ても、それが『テイルズ オブ ファンタジア』を意味しているとは、新規ユーザーの人はわかりませんよね。ですが『TOARISE』ならば、意味の片鱗は伝わるであろうと。ファンの方々に「長年のルールを変えるなんて」とお叱りを受けることは覚悟していますが、それでも多くのユーザーの皆さんに遊んでもらい、今後も『テイルズ オブ』シリーズを拡げていくために、時にはこれまでにない手法も採ろうと思います。

――では、最後の質問です。『TOARISE』の発売は2020年ということですが、具体的にはいつごろを予定していますか?

富澤発売日については、申し訳ありませんがまだ言えません。ビジュアル面は見ていただいた通り、ある程度は完成していますが、それでもまだまだブラッシュアップが必要ですし、バトルやドラマパートなど、作り込むべき箇所がたくさんあります。今回はまだお披露目ということでもうしばらくお待たせしてしまいますが、楽しみにしていてください。