独特の作風で世界中で話題を呼んだ『LIMBO』と『INSIDE』を生んだ、デンマークのゲーム開発会社Playdead。

 「ほとんどのインタビューは受けられません」。Playdeadは自社のWebサイトにこのように掲載するほど、取材を受けることは稀だという。だが、ファミ通では、直接コンタクトを取り、Playdeadを訪問。世界を魅了した『LIMBO』と『INSIDE』の誕生秘話を始め、絶妙なレベルデザインの構築方法、そして、会社の設立とこれまでをうかがった。

 4回に渡ってお伝えしてきたPlaydead特集に最後にお届けするのは、第1回に続いて登場するスタジオ代表としてクリエイティブを統括するアーント・イェンセン氏へのインタビュー。作品が実際に、どのような思想と工程を経て生み出されているのかを浮き彫りにしつつ、取材の中でアーント氏が語ってくれた、まだ見ぬ最新作が描き出そうとする世界についても、アーント氏の言葉から、そのディテールに迫っていく。

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アーント・イェンセン

アーント・イェンセン氏(文中はアーント)Playdead創立者で、CEOと作品のディレクションを担当。

「絶対的な完成形を決めない」

――ゲームの開発については、どのように進めているのでしょうか。

アーント 作品から受ける感覚はハッキリとわかっているのですが、最終的にどんなものができあがるのかは、自分でもわからないまま進めていました。開発には本当に長い時間が必要で、自分のインスピレーションが原点になっているのかすらも特定できないほどに、ぼんやりとした感覚から始まっていると思います。

 方向性を決めるのはとても難しいことなのですが、“あるイメージが降りてくる”、とでも言うのでしょうか。何かを突き詰めて考え続けていると、何度考えてみても“ひとつの答え”が何回も返ってくることがあります。それが、その先に進む意思になります。たとえば、『LIMBO』の開発で言えば、それは“誰かとつながろうとして一生懸命に何かを作る想いや、気持ち”から来ているかもしれません。

 『INSIDE』は、投資家やお金のことばかりを考えていたことに大きく影響を受けています。IPや会社に対して、お金でコントロールしようとしていた人たちの存在から、とてもインスパイアを受けていると言えます。

――ああ……なるほど。『INSIDE』はプレイヤーが動かしていた主人公でさえ、支配されている側だったと感じ取れるような部分もあります。

アーント ただ、絶対的にそういったイメージをプレイヤーに感じてもらいたいと思ってスタートさせたプロジェクトではなく、スタッフとのあいだで「こういうことを考えているのだけれど」と、自分の考えを少しずつシェアしていった結果、あのようなゲームになった……という感じでしょうか。いっしょに働いているスタッフには自由に創作をしてもらいました。

 我々は、開発の終盤に近づいてきたところで、やっとイメージが固まっていくようなところがあって、その段階に来て初めて、私も細かい指示を出せるようになるのです。とにかくイメージをシェアしながら自由に進めていく中で、みんなが作ってきたものを見て、これは必要だ、これは不必要だと取捨選択していく。それを続けた先に、あるべきカタチが見えていくのです。

「開発は“ボンサイ”のように」

――まるで、植物を剪定するような作りかたですね。

アーント ああ、そうだ! まさに、日本の“ボンサイ”のようなものかもしれないです! チームには才能に溢れた人たちが得意分野で活躍してくれているので、そのオーガニックな発想の中からいいものをピックアップしていける環境にあります。そうしていると、当初は思ってもいなかったイメージやカタチなど、作品の輪郭に触れる部分が浮かび上がってきて、どう発展していけばいいのかわかってくるのです。

 そうした開発のやりかたは、とても時間がかかるかもしれませんが、最終的な完成形をはっきりと知りながら開発を進めていくのはおもしろくないと思うのです。それに、我々はこうした植物を育てるかのような開発のしかただからこそ、「みんなで新しいものを作った」と自信を持って言えるのだと思っています。

――触発されることについても、重要視しているのですね。では、開発スタッフ間で設定などの意識共有はどのようにしているのでしょう。

アーント 設定はドキュメント化しません。それを行ってしまうと、“決定事項”ができてしまって、我々が望んでいる開発とは異なってきてしまいます。

 たとえば、文章化されたものがある中で新しい人が参加してくれた場合、「その事項を守らなければならない」と考えてしまうはずです。そのようなことを望んでいるわけではなく、ひとつの開発をしている中で「こうしたらもっとよくなるよね」とか、「こんなアイデアはどうだい」といった発想が生まれてくることを大切にしたい。

――『LIMBO』や『INSIDE』は世界観に注目が集まりがちですが、2Dアクションパズルとしても、非常に優れたゲームバランスとして世界中から評価されています。この点は、どのように実現を?

アーント 小さなゲームですが、とても長い期間をかけて開発しているので、幾度も作り直していますね。やり直して、やり直して、これ以上は直せないのではというところまで手を入れます。

――だからこそ、プレイヤーの感覚にフィットするようなプレイ感覚が生まれていると。

アーント そうです。1シーンに対して100通りくらいのテストをして、やり直しをしていると思います。それを毎日試していくプレイテストを行い続けます。アイデア自体は変えないのですが、ビジュアルでヒントを出したり、工夫をして難度を調節していきます。

――ビジュアルのヒントと言えば、Playdead作品は、文字がいっさい出てこないユニバーサルデザインが特徴ですね。

アーント プレイした人が、すぐにあの世界に入っていけるようにと、言葉のないデザインになりました。いろいろな説明があったり、読まなければその世界に入れなかったり、そういった要素をいっさい排除したかった。