2018年12月3日、東京都・品川のグランドプリンスホテル新高輪にて“PlayStation Awards 2018”の授賞式が開催された。その中で、『ゴッド・オブ・ウォー』でユーザーズチョイス賞、Gold Prizeを受賞したサンタモニカスタジオへのインタビューをお届けする。

 2018年12月3日、東京都・品川のグランドプリンスホテル新高輪にて開催された“PlayStation Awards 2018”。ふだんは来日する機会のあまりない、世界に名だたる開発スタジオのキーパーソンたちも駆け付けた本授賞式に合わせて、ファミ通.comではインタビューを敢行した。本記事では、ユーザーズチョイス賞(※1)とGold Prize(※2)の2部門で受賞を果たした『ゴッド・オブ・ウォー』(PS4)の開発スタジオであるサンタモニカスタジオのコーリー・バルログ氏へのインタビューの模様をお届けする。

※1 2017年10月1日~2018年9月30日の期間中に発売・配信されたタイトルの中で、ユーザーの投票数がもっとも多かった10タイトルに贈られる賞。
※2 日本を含むアジア地域で累計出荷数(配信数) 50万本を超えたタイトル。

※PlayStation Awards 2018受賞タイトルの詳細はこちら

サンタモニカスタジオ

 SIEワールドワイド・スタジオ傘下のアクションアドベンチャーゲームにフォーカスしたスタジオとして、1999年にアメリカ・サンタモニカに設立された。『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズの開発元として名を馳せる。

『ゴッド・オブ・ウォー』

 ギリシャ神話をモチーフに、神の下僕となる運命を背負わされたクレイトスが怪物の潜む古代ギリシャの世界を冒険する人気シリーズの最新作。本作では、ギリシャを離れ、北欧の世界に身を移したクレイトスとその息子アトレウスとの絆が描かれている。なお、12月6日にアメリカ・ロサンゼルスで行われた“The Game Awards 2018”では、その年を代表するゲームに贈られる“Game of the Year”に輝いている。ちなみに、同賞において、コーリー・バルログ氏は“Best Game Direction”も受賞した(関連記事は以下のリンク先をどうぞ)。

コーリー・バルログ氏

サンタモニカスタジオ『ゴッド・オブ・ウォー』クリエイティブ・ディレクター

最強の親子の物語はどのように作られた?

――ユーザーズチョイス賞、Gold Prizeの受賞おめでとうございます。『ゴッド・オブ・ウォー』ではどのようなところがプレイヤーに評価されたと思いますか?

コーリー本作の中で描いた親子の絆は、プレイヤーの国籍を問わず、世界中の誰もが共感できる部分です。旅の中でクレイトスとアトレウスの関係性が変化し、仲が深まっていく様子がプレイヤーの胸に響いて、共感していただけたのではないかなと思っています。
 また、日本のプレイヤーが本作を遊んでいる動画を見たときは、プレイヤーが何を言っているのかはわかりませんでしたが、“ブレイズ・オブ・カオス”を入手したときの反応がとても興奮ぎみだったのが印象的でした。これまでのシリーズ作品でずっと使っていた武器を初めて手にする瞬間なので、とても盛り上がってもらえたのだと思いますね。

――そのほかにプレイヤーからはどんな反響があったのでしょうか? また、地域ごとに反応に差はありましたか?

コーリースタジオに寄せられたいろいろなコメントを見ると、やはり「親子愛に共感できる」という声が多かったほか、「アトレウスがかわいい」という声もたくさんありました。
 本作は非常に多くのプレイヤーに遊んでいただくことができましたが、先ほどお話した通り、ゲーム中で描いている親子の絆は世界中の誰でも共感できるものなので、地域ごとの反応の違いはあまりないように感じます。
 むしろ反応の違いという点では、以前に手掛けたシリーズ作との違いに対する反響のほうが大きかったです。というのも、これまでは「すごいアクションだった!」という声が多かったのですが、今回はストーリーも評価されていて、「ゲームをクリアーした後に20年ぶりに父親に電話したよ」という声もあったんですよ。

――過去のシリーズとは大きく雰囲気を変えて、親子の絆をストーリーでしっかりと描くことにしたのはなぜですか?

コーリー『ゴッド・オブ・ウォー』シリーズは2005年から続いていて、これまでずっと同じようなメンバーといっしょに開発してきました。
 そのため、1作目の開発を始めたころにはみんな若かったのですが、シリーズ作を開発していくにつれ、我々も成長して、実際に家族を持った人もいます。そんな中で、我々の心境にも変化があって、描きたい内容も変化していったんです。
 1作目を開発したときは、とにかくいいアクションゲームを作ることに夢中でしたが、いまは、プレイヤーの心に訴えかけるような、大人になった私たちだからこそ作れるゲームを目指しています。

――なるほど。それでも、ゲームの内容を大きく変えることはかなり勇気のいる決断だと思います。スタジオ内から反対意見も挙がったのでは?

コーリーシームレスなゲームプレイの仕様については、開発チームの誰もが「無理だよ」と言いました(笑)。そこで説得のためにチームのメンバーに話したのが、三上真司さん(※Tango Gameworks代表。『バイオハザード』シリーズを手掛けたことで知られる)が『バイオハザード4』を開発されたときのエピソードです。
 『バイオハザード4』の登場以前、一般的には「カメラを固定して見せたいところを見せるからホラーになる」と言われていたのですが、三上さんはカメラ操作の自由な『バイオハザード4』をヒットさせ、その通説が間違っていると全世界に証明したんですね。
 『ゴッド・オブ。ウォー』でシームレスなゲーム体験を実現したいという想いを開発チームに伝えるときには、その例を挙げながら、「ゲーム開発者は挑戦することで成長して、ゲーム業界全体も進歩していくんだ!」と、何度も説得しました。

――それは、非常に説得力のあるエピソードですね。

コーリーもうひとつ説得するときの例として挙げていたのが、ジョン・ウー監督の映画『男たちの挽歌』です。その映画の中では、4分くらいのあいだずっとカメラが回っているなかで、いろいろな展開が起こるシーンがあるんです。それを実際に見せて、シームレス化することの意味を伝えました。

――なるほど。それにしても、父親として描かれるクレイトスは新鮮でした。これまでシリーズ作での彼との違いを出すのはたいへんだったのでは?

コーリー父親としてのクレイトスを表現するために、ゲーム中のいたるところで工夫を凝らしました。
 たとえば、クレイトスがアトレウスに手を差し伸べようとして、途中で躊躇するという場面があったかと思います。そうしたシーンが何度か挿入された後に、クレイトスが自身が神であることをアトレウスに告白するシーンがあるのですが、そのときはクレイトスが戦いの神ではなく、ひとりの父親になるんです。本作のなかでもとくに力を入れて描いたシーンのひとつですね。

挑戦の姿勢で、こだわり抜いて開発した自信作

――本作をプレイしたときにはアトレウスをとてもかわいらしく感じました。クレイトスを操作するプレイヤーの父性を喚起させるために工夫したことはありますか?

コーリーじつは開発段階でテストプレイに参加してもらったプレイヤーの反応は、「アトレウスが好きになれない」という声が多かったんです。その反応を受けて、どこをどう変えればかわいらしく感じてもらえるのかを考えながら、調整を重ねました。

――そうだったのですか。クレイトスといっしょにお酒を飲むシーンなど、印象的なシーンもたくさんありました。

コーリーお酒を飲むときにアトレウスがクレイトスの真似をして「プハー!」と言いますが、それは私の実体験がもとになっています。シーンを収録する前日に、私が水を飲んで「プハー!」と言ったら、息子もそれを真似して(笑)。その出来事がとても印象的だったので、ゲーム内にも取り入れることを提案したんです。
 だから、もともと収録される予定はなかったシーンなんですよ。それでも、プレイヤーからの反響も大きかったので、入れてよかったと思います。

――あのシーンは収録前日に生まれたのですね(笑)! そんなに臨機応変にシーンを変更できるものなのですか?

コーリー本作では非常にフレキシブルに収録していて、先ほどお話したシーンのように、子どもを持つアクターや開発チームの体験を、実際に採用することも非常に多かったです。
 また、英語版のアトレウスのアクターのサニー・スリッチくんは子役なので、彼の実際の発言も参考になりました。そうした実際の体験を取り入れることで、より共感できるリアルなゲーム体験につながるはずだと考えたんです。

――そういう意味では、制作スタッフが本当に一丸となって作り上げたゲームなんですね。

コーリーキャラクターを演じるアクターの方に、追加したいシーンがあれば自分で言ってもらうこともよくありました。今回は、バルドル役のジェレミー・デイビスさんが非常に熱心に演じてくださって、「もうオーケーだよ」と言っても、本人の納得がいかずに同じシーンを何度も収録し直したことがありました。そのように、アクター本人の熱意やアイデアを取り入れたことも、よりよいゲームに仕上がった理由のひとつだと思います。

――そうして徹底したこだわりとともに制作された『ゴッド・オブ・ウォー』は世界中で評価されています。日本のファンからの反響がコーリーさんのもとに届くことはありますか?

コーリー多くの場合、プレイヤーからの反響はいっしょに働いているスタッフから「こんなコメントを見たよ」と聞くことが多いです。それ以外では、いろいろな国のゲームイベントに行って、直接プレイヤーの反応を見ることがあるのですが、日本は今回の“PlayStation Awards 2018”が初来日なので、これまで日本のファンの声を聞いたことはほとんどありませんでした。
 でも、Twitterで「日本に行くよ!」と発言したところ、何人かの日本のファンから「会いに行ってもいい!?」という反応があったので、すごくうれしかったです。もし一般の方も入場できるイベントなら大歓迎なんですけどね(笑)。

――それは、またの機会に期待ですね(笑)。ところで、最近の日本のゲームで印象に残ったゲームはありますか?

コーリー龍が如く6 命の詩。』です。『龍が如く』シリーズは、ゲーム内で描かれる文化もとても興味深いですし、シリアスな部分とコミカルな部分の融合がすごくクールですね。また、今回我々が作った『ゴッド・オブ・ウォー』と同じく、親子愛も描いているところでも非常に印象に残っています。
 それから、最近のゲームではないのですが、もうひとつ深く印象に残っているのが『ワンダと巨像』です。端的に説明すると、“愛しい人を追う”という目的のために広く美しい世界を旅するのですが、そのシンプルな内容で、すばらしく美しいゲームプレイを実現している点が非常に気に入っています。
 サンタモニカスタジオでも同じように思っている人が多くて、上田文人さん(※ジェン・デザイン所属のゲームクリエイター。『ワンダと巨像』などのディレクターを務めた)がサンタモニカスタジオにいらっしゃったときは、スタジオの全員が列をなして自分の持っている『ワンダと巨像』や『ICO』にサインをしてもらいました(笑)。

――大ファンなんですね(笑)。ノーティードッグとは同じSIEのワールドワイド・スタジオの一員ですが、どのような関係性なのでしょうか?

コーリー『ゴッド・オブ・ウォー』の開発を始める前には、制作チームからのリクエストで、「ノーティードッグを訪問してくれ」と言われました。制作側としては「大規模なタイトルを制作するのが、どれだけたいへんかを思い知らせて諦めさせよう」という思惑があったと思うのですが、訪問から帰ったときには「絶対に大作を作ろう!」と決心していました(笑)。

――コーリーさんの心を折るつもりが、逆効果だったと(笑)。

コーリーはい(笑)。ノーティードッグとは親交があり、実際にやり取りする機会も多いので、インスパイアされることがあります。
 たとえば、近年はストーリーが複雑なゲームはあまり好まれないという傾向があると言われていましたが、ノーティードッグが『The Last of Us(ラスト・オブ・アス)』を始めとする、緻密なストーリーのゲームで成功したことで、ゲーム開発の新たな可能性に気づかせてくれました。
 『ゴッド・オブ・ウォー』はそうしたゲームを参考にしながら開発したんですよ。だから、本作はストーリーに深みを持たせるためにも、ある意味でいちばんの悪者は父親になり切れずにいるクレイトスであるとも言えるような、絶対的な悪者がいるゲームにしないように意識しながら作りあげています。

――ノーティードッグの作品がなければ『ゴッド・オブ・ウォー』は生まれなかったかもしれない、とも言えるわけですね。

コーリーそうですね。『The Last of Us』のヒットによって、ゲーム市場全体にストーリーに深みのあるゲームを制作しやすい土壌ができたと思いますし、実際に現在ではそういったゲームがたくさん発売されています。
 そのひとつの例が、インソムニアック・ゲームズの『Marvel's Spider-Man(スパイダーマン)』です。私が『Marvel's Spider-Man』をプレイしたときには感動で泣いてしまいましたが、そのときに得た感動は、『The Last of Us』などのいろいろな作品をプレイしてきたからこそ感じられるのだと思うんです。

――言われてみれば、確かに過去のゲーム体験はゲームを評価するときに欠かせない要素です。最後に、読者にメッセージをお願いします。

コーリー私にとって、日本のゲームはとても重要な位置を占めていて、ゲーム史における創世記のようなものだと思っています。そんなゲームを育んだコミュニティーに、私たちが作ったゲームを楽しんでもらえているということは開発者として非常に誇らしいですし、うれしく思います。

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