『東京魔人學園剣風帖』発売から20年、今井秋芳監督が語る『魔人』の歩み。「『帝戰帖』を、いつの日かお届けしたい」

1998年に『東京魔人學園剣風帖』が発売されてから20年。『東京魔人學園伝奇』シリーズを統括する今井秋芳監督に、節目の年を迎えて思うことを語ってもらった。

 1998年6月18日、プレイステーション用ソフト『東京魔人學園剣風帖』(以下、『剣風帖』)の発売とともに、『東京魔人學園伝奇』シリーズは産声を上げた。『剣風帖』は、怪異に立ち向かう高校生たちの青春劇や、アドベンチャーゲームとシミュレーションRPGが融合したシステムが好評を博し、その後、多数のメディアで作品が展開。2002年には続編『東京魔人學園外法帖』(以下、『外法帖』)が発売された。

 “ジュヴナイル伝奇”という新たなジャンルを確立し、その名を知らしめた同シリーズ。節目の年を迎えて思うことを、シリーズを統括する今井秋芳監督に語ってもらった。『剣風帖』、『外法帖』に続くタイトルとして構想されている、『東京魔人學園帝戰帖』に関する話も飛び出し……!? 『魔人』ファンは括目せよ!

記念すべきシリーズ1作目『剣風帖』。キャラクターからの問いかけに対し、感情を入力して答える独特のシステムで話題に。

2作目『外法帖』は幕末が舞台。『剣風帖』に登場したキャラクターの血縁者たちがドラマをくり広げた。

1998年の東京で、主人公たちが戦ってから20年。いま思うこと

――『東京魔人學園伝奇』(以下、『魔人』)が20周年を迎えましたが、この20年を振り返ってみて、いかがですか? あっという間でした?

今井あっという間でしたね。ファンの皆さんが今でも『魔人』が好きだと言ってくれている光景を目にしたり、『魔人』がきっかけでゲーム業界に入った人もいるようで、仕事をしていても、いろいろな方と会う中で、「『魔人』のファンなんです」と言われることも多かったりします。なので、自分の中では、20年経ったという気がしないです。

――改めて、20年前に『剣風帖』を開発したときの思い出をお聞かせいただけますか。

今井当時、学園モノのゲームというと、恋愛ゲームか、成人向けしかなかったんですよ。そうではなくて、青春を描いた学園モノを作りたかったんです。そこに伝奇という要素を混ぜて、青春群像劇を作ろうと思ったのがきっかけでした。

――“伝奇”とひと言で言っても、『剣風帖』には、風水やクトゥルフ神話、ドラキュラの伝説など、じつに多彩な内容が詰め込まれていたのが印象的でした。

今井剣風帖』を作ったときは、「これから先、伝奇やジュヴナイルを扱ったゲームが出たとしても、『剣風帖』が最高峰であってほしい」と思って、すべてを詰め込みました。自分の好きなものを全部取り入れて、やりたいことをやったゲームです。苦労もしましたけど、思い出に残っていますね。監督・脚本を担当した初めてのタイトルですから。

――『剣風帖』の評判が広まるにつれて、小説やコミックなど、さまざまなメディアで展開していったのも思い出深いです。公式サイト“真神庵”でのファンの盛り上がりも、あの時代ならではという感じがします。

今井真神庵に寄せられたコメントは、私がすべて返していました。スタッフとファンの距離が、かなり近かったなと思いますね。声優の方にコメントをもらったりもしましたし……。いまはなかなか、ああいった形の公式サイトを運営できませんが。本当に、『魔人』はメディアやファンに育ててもらったと思います。

――小説やドラマCDのシナリオも、今井監督が書いていましたよね。

今井本業はゲームクリエイターですが、ほかの創作活動に割く時間も日々増えてきて……。ドラマCDを作っていたころ、仕事量が自分のキャパシティを超えてしまって、シナリオが収録までに書き上がらなくて、シナリオが出来るまで、声優さんたち(いまではすっかり有名な堀江由衣さんや田村ゆかりさんや加瀬康之さんなど)を何時間も待たせてしまったことがあるんですよ。いまでも、キャストの皆さんに、当時の話をいじられます(苦笑)。でも、メディアミックス作品を作るなら、ゲームの監督が作るのがいい、そのほうがファンの皆さんに満足してもらえると思っていたので、忙しくはありましたが、自分で手掛けると決めていたんです。

――ところで『剣風帖』は、1998年の東京を舞台にしていましたが、あのころ高校生だった主人公と仲間たちは、いまごろ、どんな30代になっているのでしょうか。

今井どうなんでしょうね(笑)。そこはファンの皆さんのご想像にお任せします。今後また、私が作るタイトルと『魔人』がクロスオーバーすることがあれば、彼らのその後が少し見られるかもしれませんが。

――『魔都紅色幽撃隊』では、あの忍者っぽい人の影がチラホラ見えますしね。コガメ便とか。

今井コガメ便、どういう体制で運営しているんでしょうね? もしかしたらスタッフがたくさんいるのかも……。

――(『魔都紅色幽撃隊』に)成長した舞園さやかが登場したことも、ファンとしてはうれしかったです。ボイスも、『魔人』同様、永迫舞さんが担当されていました。

今井永迫さんは、『外法帖』では涼浬を演じていますが、そのとき「おとなしくて、低い声にしてください」とお願いしたんです。その声を聞いて、『九龍妖魔學園紀』では、白岐幽花を永迫さんで当て書きしたんですよ。今泉文乃さんも、『外法帖』では風祭澳継役ですが、「この声で女の子を演じてもらおう」と、『九龍妖魔學園紀』で八千穂明日香を演じてもらいました。そういう風に、『魔人』を作りながら、つぎの作品のキャストを考えたりしていましたね。

『東京魔人學園帝戰帖』は「“Hope”がある」!

――20周年を記念して、イラストレーターの小林美智さんによるイラストが公開されました。この絵に描かれている京一は、高校生のころの姿ですね。今回、このイラストを制作した経緯は?

今井ファンの皆さんが記念日をお祝いしてくださっているのが非常にうれしくて、「今年は20周年だし、こちらからも何かお返ししよう!」と思い、小林さんにお願いしました。『魔人』の開発時は、私が絵の指示書を書いて、小林さんに描いてもらっていたので、今回もそのようにしています。

――ラーメンをモチーフにしたケーキを持っていたりと、京一らしい絵になっていますね。そのケーキに主人公がちょこんと乗っていて。

今井京一と主人公は相棒どうしなので、京一だけじゃなくて、主人公も入れたいなと。“プレイヤーと京一”をテーマに描いてもらいました。ラーメンモチーフのケーキについては、小林さんはピンとこなかったようで、「詳しく絵に描いてほしい」と言われたんですよ(笑)。それで、私が絵を描いてお渡ししました。

――久しぶりに『魔人』の新しいイラストが見られて、うれしかったです。京一はお気に入りのキャラクターだったので、懐かしい気持ちになりました。

今井京一は、男性からも女性からも好かれるキャラクターにしたいと、当初から思っていました。それと、“イヤな仲間キャラクターはいない”というのも、ゲームを作るうえで心がけているところです。

――今後、『魔人』について、何か予定している企画はありますか?

今井そうですね。『魔人』については、『東京魔人學園外法帖血風録』(2004年発売)以来、新作が出ていませんが、そろそろ『魔人』の新作を皆さんにプレイしてもらえたらなと思っています。

――おお……! それはつまり、『東京魔人學園帝戰帖』(※)を、作るつもりがあるということですね?
※『東京魔人學園伝奇』3部作の最後を飾る作品として企画されているタイトル。2008年に制作発表され、ニンテンドーDS用ソフトとして発売予定だったが、2010年に発売中止が決定した。

今井はい。近々出したいなと……。

――近々!?

今井魔人』ファンの方なら、「“近々”か。5年、10年くらいかな~」となりそうですが(笑)。『帝戰帖』を出すとしたら、そのときのプラットフォームに合わせて『剣風帖』と『外法帖』もリマスターすることになると思います。携帯機ではなく据え置き機で。私もそうですが、キャラクターデザインの小林さんも、音楽の新田高史さんもずっとやりたいと言ってくれているので、皆さんも待っていてください。

――それは、発売までの道筋がある程度見えている、と思っていいのでしょうか?

今井映画『ローグ・ワン』でレイアも言っていましたが“Hope”があるということです(笑)。

――舞台は、帝都なんですよね。

今井はい、それはもう決定です。第壱話のシナリオは、DVD『東京魔人學園放送部』の特典として付けていますので、読んだ方もいらっしゃると思います。よかったら、今回のインタビューを機に、第壱話のシナリオをもう一度公開しましょうか?

――えっ、いいんですか!?
※この今井監督からの提案のおかげで、ファミ通.comにて、『帝戰帖』の第壱話&第弐話のシナリオを公開できることになりました。ぜひお読みください!

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――ところで昔、『帝戰帖』の蓬莱寺は女性なのでは? というウワサがありましたが、真相は……?

今井それは……お楽しみです。ただ、「蓬莱寺は女らしいぞ? ……ああ、ウワサの通り女だった」ということも、かといって「女らしいぞ? ……いや、男だった」ということもないです。皆さんが「さすが、蓬莱寺!」となる展開を考えています。

――『帝戰帖』を遊べる日が来るのを、楽しみに待ちたいと思います。では最後に、ファンにひと言お願いします。

今井20年という長い間、『魔人』を応援していただいて、ありがとうございます。『魔人』は、私の初監督・初脚本の作品で非常に思い入れがあって、自分の子どものように思っています。これからも末永く愛していただければと思います。そして、『外法帖』と『剣風帖』の血脈と歴史をつなぐ『帝戰帖』の物語もいつの日かお届けできたらと思っています。