本日(2018年11月6日)発売のNintendo Switch(ニンテンドースイッチ)、プレイステーション4、Xbox One、PC(Steam)向けソフト『ワールド オブ ファイナルファンタジー マキシマ』(以下、『WOFF マキシマ』)。その発売を記念して、本作のディレクターを務める千葉広樹氏にインタビューを行った。週刊ファミ通2018年11月15日号(2018年11月1日発売)に掲載したインタビューに加筆修正を行い、制作の経緯から調整内容、新ミラージュの秘密、次回作の構想まで、盛りだくさんの内容に注目だ。また、プレイレビューを掲載している下記記事もぜひチェックを!

これが『WOFF』の完成形
――まずは、『WOFF マキシマ』が制作されることになった経緯を教えてください。
千葉 『WOFF』は全世界で90万本販売できたのですが、「もっともっといろいろな方々に遊んでほしい」という思いがありまして、最初はそのまま移植することを検討しました。しかし、どうせ移植するのだったら追加要素も入れちゃえ! ってことで(笑)、思い切って『WOFF マキシマ』というアップグレードバージョンにしました。
――今回は、『WOFF』時には対応ハードではなかったニンテンドースイッチとXbox Oneでも発売されるのですね。
千葉 Xbox Oneは海外で人気がありますし、すでにPC版が発売している都合で移植が比較的楽だったので(笑)。ニンテンドースイッチ版については、ハードのロンチタイミングに合わせて移植することも検討していたのですが、社内調整やタイミングの都合などで見送り、先にPC版のみ出したということがありました。それで今回、ようやくニンテンドースイッチに出せるのだから、どうせならパワーアップさせたいなと。
――ニンテンドースイッチへの移植がきっかけで、アップグレードバージョンにすることを決めた?
千葉 そうです。ぶっちゃけますと、予算は少ないので、できることが限られてしまい(苦笑)。ただ、時間だけはじっくりと掛けられたので、できることはやりました!
――ぶっちゃけトークありがとうございます(笑)。Xbox Oneへの移植は問題なかったとのことですが、ニンテンドースイッチに移植する際に苦労された点はありますか?
千葉 携帯&テーブルモードと、TVモードは解像度が異なりますので、その調整についてはスタッフたちが苦労していました。ちなみにゲームエンジンは引き続き、シリコンスタジオさんのOROCHIを使用しています。じつはOROCHI自体がニンテンドースイッチに対応していなかったので、なんとかエンジン側で対応していただきました。『WOFF マキシマ』は、OROCHIを使用したニンテンドースイッチ初のタイトルになったのではないでしょうか。
――そうしたチャレンジもあったのですね。では、“マキシマ”というタイトルにはどんな思いが込められているのでしょうか。
千葉 我々が送り出す『WOFF』として最大限に、マックスに楽しんでいただけるものを入れ込んだ作品である、というところから“マキシマ”と名付けました。これは野村(哲也氏)考案です。
――そんな『WOFF マキシマ』が、ついに発売を迎えます。
千葉 『WOFF』の時点で作品としてのベースができ、『WOFF マキシマ』では要素を加えていろいろなハードで出すことができましたので、ようやく『WOFF』はひとつの区切りを迎えられたように思います。ただ、これは本当に申し訳ないのですが、プレイステーション Vita版はアップグレードに対応できませんでした。というのも、新たな要素が多数入っているので、携帯機のメモリではどうしても動かすことができなかったんです。
――そこはクロスセーブに対応しているので、プレイステーション4版に引き継ぎをしていただく……というのがベストでしょうか。
千葉 申し訳ないのですが、そうなってしまいます。やはり、もともと遊んでいたデータで再度遊びたいですよね。個人的にはほかのハードのセーブデータから、別のハードに引き継げればいちばんいいと思うのですが、ハード間のクロスセーブはどうしても垣根があるので……。プレイステーション Vitaで遊んでいた人は、プレイステーション4版に引き継いでもらえればと思います。

追加要素を入れた理由は?
――改めて『WOFF』についてお聞きします。発売から1年ほどが経過していますが、ユーザーからの反応はいかがでしたか?
千葉 『FF』ファンの方々からは、“『FF』の世界を大事にしている”というところを評価していただけました。『FF』をあまり知らない方は、“気軽に遊べるRPG”として手に取ってくださったケースが多かったようです。日本も海外も、『WOFF』についてメッセージを届けてくださったのはやさしい方が多かったです(笑)。
――以前の『WOFF』のインタビューでは、低年齢層のユーザーや、『FF』を遊んだことがない人たちを取り込みたいというお話もありました。
千葉 日本に関しては、狙い通りにそうした層のユーザーが非常に多かったです。Twitterでも僕に直接、気さくに意見をくださったりするんですよ。これまで手掛けてきた他のタイトルでは、あまりなかったことなんですが(笑)。
――『WOFF』ならではなのですね。海外のユーザー層についてはいかがですか?
千葉 海外はおもに熱心な『FF』ファンの方々を中心に遊んでいただけたようで、このキャラクターを出してほしいというような意見をたくさんいただきましたね。それに付随して、ひとつ謝罪しなくてはならないことがあります。『WOFF マキシマ』で公開したトレーラーに、ガーネットが居ますよね。……あれ、じつは登場しないのです。
――確かにガーネットは、TGSトレーラーの冒頭に一瞬映っていました。けれど登場しない?
千葉 ごめんなさい! スマホアプリの『WOFF メリメロ』で登場させる予定で制作していたものを、『WOFF マキシマ』のトレーラーにも反映してしまっていて。特典要素として『WOFF メリメロ』含むさまざまなムービーが観られるようにはなっているので、この映像も収録されてはいるのですが、ゲーム本編には登場しません。ですが! 皆さんの応援があれば、今後ゲーム本編にも追加されるかもしれません!
――DLCで、ってやつですね!? 『WOFF マキシマ』では新たに6人の『FF』キャラクターが登場しますが、彼らを選出した理由を教えてください。
千葉 『WOFF』は、先にストーリーを書いてから、その筋書きに当てはまる『FF』キャラクターを選んだので、ナンバリングタイトルとしては抜けている作品もあるんです。そういった部分を補うため、『FFII』のフリオニールと『FFIV』のセシル、『FFXIV』のヤ・シュトラを選びました。『FFXIV』からは、個人的にはヒルディブランドも出したかったです(笑)。『FFXV』からはアラネアも登場させたかったのですが、まずはノクティスでしょうと。ザックスは、個人的にザックスとクラウドを並べたい! セラも、スノウと並べたい! という思いが強かったのが大きな理由ですね。


――今回、新キャラクターたちはボイスも収録されたんですよね。
千葉 フルボイスのゲームなので、新キャラクターだけ声がないというわけにはいきませんからね。ただ、先ほど言ったように大元が移植プロジェクトなので、限られた予算でどう実現するのかは苦心しましたが、なんとか収録することができました。
――各キャラクターのストーリーは“ココロクエスト”で進んでいくのでしょうか。
千葉 そうです。ただ、ノクティスはいろいろな都合で、ココロクエスト用のシナリオを書くか、釣りのミニゲームを入れるのかの2択になってしまいました。どちらにするか迷っていたときちょうど、『FFXV』の関連タイトルである『モンスター オブ ザ ディープ: FFXV』が発売されたんですよ。本編が釣りをフィーチャーしているのなら、こちらもフィーチャーせねばと! ちなみに、ミニゲームで使用している釣り竿は、本家『FFXV』の釣り竿のデータをもらい、それをもとに制作しています。……まぁ、ゲーム中はほぼ身体に隠れて見えないのですが(笑)。

――釣り竿にそんな裏話が(笑)。本編にはクリアー後の追加ストーリーもあると以前おっしゃっていましたが、どんなお話になるのでしょうか?
千葉 具体的なところはネタバレになるのでお伝えできませんが、ラァンとレェンのその後を描くちょっとしたお話ですね。ちなみに追加キャラクターたちのココロクエストは、『WOFF』クリアー後の裏側を描いたお話になっていますので、すでにプレイされた方々も新たな物語を楽しんでほしいです。
――追加のボスなどは……?
千葉 はい、居ますよ。追加ストーリーのボスは“暗黒の不滅龍”という敵でして。これはもう、ゲーム中で最難関の敵にしています。裏ボスみたいな存在ですね。


――ラァンとレェンがセイヴァーたちの姿に変身できる“アバターチェンジ”も大きな目玉です。
千葉 もともとのコンセプトとしては、『FF』シリーズのモンスターや召喚獣である“ミラージュ”たちを育てて戦うゲームなので、セイヴァーたちを召喚獣のような役回りにしていました。でも、バトル中も歴代『FF』キャラクターたちを使いたい、という声が非常に多くて実装を決めました。最初はラァンとレェンの見た目だけ変えれば、当初のコンセプトを崩さずにできると思ったんですよ。でも、いざ試験的に実装してみたところ、「やっぱり彼ら独自の能力も欲しいよね」と欲が出てきまして、固有能力や専用技を追加しました。
――技などを追加すると、ゲームバランスにも関わってきますよね?
千葉 技や能力を追加するということは、そのあたりの調整をイチからやり直すということですから、まぁ大変でした(苦笑)。でも、たとえばザックスを使っているのに、ザックスらしい戦い方ができなかったらイヤですし、そこはがんばりました。なお、“アバターチェンジ”で編成するキャラはMサイズに限られます。オオビト化でLサイズにもなれるラァンやレェンとの大きな違いのひとつですね。
――戦略的にもそうした違いを意識する必要がある、というわけですね。ちなみに“アバターチェンジ”できるキャラクターは、セイヴァー召喚が可能なキャラクターに絞っていますよね。
千葉 そうですね。ファリスやリュックなど、物語には登場するものの、バトルに参加しないキャラクターたちまで“アバターチェンジ”できるようにしてしまうと、物語的にも齟齬が出てしまうこともあり、もともとセイヴァー召喚に対応しているキャラクターと、新キャラクターを対応させています。


続編のシナリオも完成済み!?
――『WOFF マキシマ』は新しいミラージュも多数追加されています。とくにガーランドの参戦には驚きました。
千葉 ガーランドは、『FF』のモンスターなどを育てるゲームとして、歴代ボスもミラージュにするべきだろうと思ったのが発端です。ボスキャラクターの中でガーランドだけ参戦させたのは、将来的な部分を考えて……ですね。
――将来的な……と言いますと、続編の展開でしょうか!?
千葉 いえいえ、続編の予定はいまのところないですよ? ただじつは、物語はもう僕が勝手に全部書いちゃいました! もしスクウェア・エニックスから許可が下りれば、いますぐにでも開発をスタートできます(笑)。もしそうなったら、の場合に備えて用意したまでですので、すべては皆さんの応援次第ですね。
――愛ゆえの先走り感がすごい! ぜひ実現してほしいです。では話をミラージュに戻しまして、今回追加された中で、千葉さんオススメのミラージュについてお聞きできれば。
千葉 デブチョコボから発想して生まれたデカバンクルは、とにかくデカい! ぽよぽよとした身体が、めちゃくちゃキュートです。それからクァールは、『FF』に登場するときはだいたい狂暴そうな獣として登場しますが、本作ではそんなクァールだけでなく、レッサークァールというSサイズのすっごいカワイイ猫科動物系のモンスターも登場します。クァールの幼獣のようなイメージです。あとはメル。『WOFF メリメロ』では案内役でしたが、今回はバトルもしてくれます。ちょこちょこと動き回る姿が見ていて楽しいので、ぜひ皆さんにも使ってほしいミラージュですね。



――『WOFF マキシマ』では追加要素のほかに、調整を加えられた部分もあるそうですね。
千葉 今回、“強くてニューゲーム”にあたる、“つづきのはじめから”を導入しています。最初からストーリーを再度追いかけたい、というご意見が思いのほか多かったんですよね。それからトロフィー&実績関連。たとえば宝箱をすべて開けるなど、一部の条件がきびしいということで、2周目のプレイでは宝箱の位置がわかるサポートアイテムが手に入るようにしたり。あと、仲間にする難度が高いミラージュについて、一部条件を緩和しています。ミラージュの取りやすさって、じつはバトルバランスに関わっているんですよ。というのも、ミラージュが取りにくければ取りにくいほど、プレイヤーも意図せずレベル上げをすることになってしまうので、その後のバトルがサクサク進むようになってしまうんです。そうした調整による再調整も含め、細かい部分にも手を加えています。
――逆に、実装を見送った要素もあるのでしょうか。
千葉 じつは“ラァンのダジャレはどうなのか?という意見があって(笑)。そこで、オプションでダジャレオフ機能を考えていたりはしました。ダジャレのセリフだけがまるっと変わるみたいな。ほとんどできていたのですが、でもさすがにラァンがかわいそうだし、「ダジャレを言わないラァンはラァンじゃない!」と思って踏みとどまりました(笑)。あと、2周目のプレイでは、ラァンやレェン、タマやセラフィなどが、カットシーンでオーディオコメンタリーをするという要素も考えていましたが、メタフィクションすぎるのでやめました(笑)。
――千葉さんの遊び心ですね。それはそれで見てみたかった気もします(笑)。それでは最後に、読者の方々へメッセージをお願いします!
千葉 『FF』ファンの方はもちろん、『FF』を知らない方にも楽しんでもらえる作品です。このゲームの存在自体、まだ知らない方が多いというのも実感しています。ぜひ今回の『WOFF マキシマ』を機会に知っていただき、遊んでいただいて、世界観からまるごと『WOFF』を好きになってもらいたいですね。皆さんの声があれば、何らかの展開ができる可能性が高まりますので、ぜひ応援をお願いいたします!



