日本ゲーム大賞2018 アマチュア部門”大賞を受賞したHAL大阪の学生さんに聞く、「プロとして見てもらえるようなクオリティーの高いものが作りたかった」【TGS2018】

東京ゲームショウにおいて、“日本ゲーム大賞2018 アマチュア部門”の大賞を受賞した、HAL大阪のTINY MAD KIDの皆さんに聞いた。

 東京ゲームショウにおいて、記者がそこはかとなく楽しみにしている取材がある。“日本ゲーム大賞2018 アマチュア部門”の大賞受賞者の皆さんへのインタビューだ。

 “日本ゲーム大賞2018 アマチュア部門”は、一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)が、同じアマチュアを対象に実施していた“CESAスチューデントゲーム大賞”と“日本ゲーム大賞 インディーズ部門”を統合し、2007年から設けた賞で、人材発掘などを目的として、アマチュアのすぐれた作品を表彰すべく実施している。毎年決められた募集テーマを設定しているという点もユニークで、今年のテーマは“うつす”で、今年は過去最多となる454作品がエントリーし、最終審査には17作品が進んでいた。

 東京ゲームショウ2018の会期中にあたる9月22日に行われた受賞式では、優秀賞を受賞した12作品の中からHAL大阪のTINY MAD KIDによる『Glalear(グラリア)』が見事大賞に輝いている。

“日本ゲーム大賞 2018 アマチュア部門”大賞は『Glalear(グラリア)』! 今年のテーマ“うつす”を最大限に活かした作品【TGS2018】

コンピュータエンターテインメント協会は、“日本ゲーム大賞 2018 アマチュア部門”の受賞12作品の中から『Glalear(グラリア)』をアマチュア部門の大賞に決定した。

 記者が日本ゲーム大賞 アマチュア部門に強く心惹かれるのは、そのドラマ性かもしれない。学生たちが一生懸命取り組んだ作品で応募し、結果は必ずしも期待した結末が得られるわけではないかもしれないというところに……。実際のところ、授賞式には優秀賞を受賞したチームの関係者が多く観覧に訪れているのだが、大賞を受賞したチームの関係者の喜びぶりと、それとは対照的な受賞を逃したチームの関係者の肩を落とした落胆ぶりを見ると、ちょっと複雑な思いにとらわれる。もちろん、数多くのエントリー作品の中からひと握り選ばれるだけでも光栄なことだが、時に神様は残酷だ。

 アマチュア部門の司会を努めている鷲崎健さんが、「ここ数年、授賞式で涙ぐんでしまう」とコメントしていたが、その気持ちはよくわかる。まさに悲喜こもごものドラマといったところだろう。すでに人生でいろいろなものを取り落としてきたおっさんの記者からすると、なにかと甘酸っぱい気持ちになるのは無理からぬところ。

 で、イベント直後に、大賞を受賞した学生さんにインタビューをするわけだが、皆さんのうれしそうな表情といったら! しかも皆さんとても受け応えがしっかりしていて、自分が同じ年齢だったころの体たらくぶりと照らし合わせると、つい「こういった若者がいるのならば、日本もまだまだ行ける!」と心強くなってしまう。まあ、おっさんの感慨です。

 そんなわけで、記者も幸せをわけてもらった、『Glalear(グラリア)』を作った、HAL大阪 TINY MAD KIDのミニインタビューの模様をお届けする。

HAL大阪 TINY MAD KIDの皆さん

蒲生大地さん(下・左から3人目)
弓達大輝さん(上・右端)
物部太稀さん(上・左から3人目)
車利幸さん(下・左から4人目)
前野裕太さん(下・左からふたり目)
成瀬光一郎さん(下・左端)
ウォン・アンドリューさん(下・右端)
西山侑花さん(上・左からふたりめ)
井上裕太さん(上・左端)
井島礼陽さん(下・左から5人目) 

『Glalear(グラリア)』

 屋敷に迷い込んだランタンのようなキャラクターを出口に導くアクションパズルゲーム。明るい部屋の中から、暗い窓の外を見たときに、部屋の中がガラスに“映る”現象から発想した本作は、ランタンやろうそくやの灯りをうまく利用して、手前の箱をガラスの奥に映しだし、実体化することで、出口に向かう新たな道を作り出していくことになる。

「最高のチームで最高のゲームが作れた」

――まずは、皆さんの『Glalear(グラリア)』における役割と、アマチュア部門の大賞を受賞したことに対する率直な感想を聞かせてください。

蒲生大地さん(以下、蒲生) 『Glalear(グラリア)』チームのリーダーをやらせていただきました。本当に素晴らしい作品ばかりの中で大賞に選ばれたので、本当に嬉しく思っています。

弓達大輝さん(以下、弓達) ゲームプログラマーを担当しました。最高のチームで最高のゲームが作れて、それで賞を獲れてとても嬉しいです。

――皆さん、本当に仲がよさげですね(笑)。

物部太稀さん(以下、物部) プログラマーを務めました。感想としては、強い作品たちの中で、自分たちの作品が日本一に選ばれたことをとてもうれしく思います。

車利幸さん(以下、) チームのサブリーダー兼メインプログラマーです。僕はもともと大賞を狙うつもりで作品を作ったので、獲れて嬉しい反面、本当に安心もしました。ありがとうございました。

――おお、頼もしい。

前野裕太さん(以下、前野) グラフィックを担当しました。壇上でも「グラフィックがいいね」と言われて、とても嬉しく思いました。ありがとうございます。

――審査員の方から、「完成度が高い」と言われていましたが、何か秘訣などはあるのですか?

前野 秘訣ですか……。そうですね、簡単な話なのですが、“時間をかけてじっくりと作る”、でしょうか。時間をかけて丁寧に作れば、完成度は絶対に高くなると僕は思っています。やりかたをどうこう考えるより、手を動かしていっぱい作ったら、絶対にいいものができると思っています。がんばりました。

――しっかりしている……。

成瀬光一郎さん(以下、成瀬) プログラマー担当です。本当に長いあいだみんなで目標に向かってがんばれたのがすごく楽しかったです。

ウォン・アンドリューさん(以下、ウォン) チームのプランナーです。チーム全員の技術力が高くて、全員が全力を出した成果だと思います。よかったです。

西山侑花さん(以下、西山) キャラクターモデリングとモーションを担当しました。途中、体調を崩したりしてチームに迷惑かけてしまったのですが、チームの一員として賞を獲れたことを非常に嬉しく思います。

井上裕太さん(以下、井上) サウンドを担当しました。開発時、『Glalear(グラリア)』のコンセプトをもらったときに、どう落とし込むかというイメージがすぐにできました。メンバーからのフィードバックも早かったりと、環境作りや雰囲気が最高だったので、すごくいい仕事ができたと思います。

――審査員の方の音楽に対する評価も高かったですね。

井上 とても凝ったグラフィックの中でのかわいいキャラクターだったので、ちょっと小さくまとめたオーケストラに木管楽器でメロディーを入れようと発想しました。

井島礼陽さん(以下、井島) ゲームデザインを担当しました。今回のプロジェクトに関していえば、みんなそれぞれ違う個性を持っていて、違う能力を存分に発揮できたチームなので、こういった素晴らしい賞をもらえて、すごく光栄に思っています。ありがとうございました。

「みんなおもしろいものを作ろうという、ひとつの目標に向かっていた」

――では、『Glalear(グラリア)』の企画の成り立ちを教えてください。

蒲生 “うつす”というテーマがあって、“ガラスにうつす”という企画はすぐに浮かんだんです。ただ、アイデアが出た段階で、先生方からは“ガラスにうつす”という表現自体がうまくいかなければ、倒れてしまうような企画だという指摘はありました。ですが、素晴らしいプログラマーたちがいて、「絶対に(ガラスの表現を)再現してみせる!」と言ってくれたので、そこを信じてこのゲームの制作を進めました。

――ああ、ガラスの表現は難易度が高いのですね。ちなみに、僕が知る限りの例年のチームに比べて、大所帯な印象がありますが……。

蒲生 僕としては、“学生だから……”という前提なしに、本当にクオリティーの高いものが作りたかったんです。ちゃんとプロとして見てもらえるような作品が作りたかった。そのためには、必要な人材を確保したかったので、人数に対する妥協はせずに、学内でも本当に素晴らしいメンバーを集めました。

――おお、なるほど。メンバー集めはどのように?

 今回は僕がメンバーを集めたのですが、僕は開発に専念にしたかったので、リーダーを彼(蒲生)任せたというのがあります。

蒲生 彼(車)が発起人という感じです。彼がいてくれたおかげで、このメンバーが集まったので。

――人数が多くなると取りまとめもたいへんなのでは?

蒲生 10人くらいの規模になると、そういうことも起こりがちだと思うのですが、今回はそんなことはありませんでした。このチームには、全員が我を出さずに、ちゃんとおもしろいものを客観的に評価できるメンバーが集まっていました。ですので、僕がまとめあげる必要はなしに、ひとりひとりがちゃんとおもしろいものを作ろうという、ひとつの目標に向かっていました。

――おお、なるほど。では、本作でとくにこだわったポイントを、それぞれの立場から教えていただけますか。

蒲生(リーダー) いちばんこだわったところは、ステージ1からステージ2に移動するシチュエーションですね。ステージがそのままフェードアウト→フェードインしていくのも味気ないということで、地面がパカっと割れてそこから(ステージ1が)落下して、つぎのステージにいくようにしたんです。また、ステージ2、3、4とそれぞれ用意しているのですが、細かいところで遊びの要素を設けられたのが、いちばんのこだわりポイントです。

弓達(プログラマー) 僕は、ステージをクリアーしてつぎのステージに行くときに、シームレスにステージをロードして……というところで、大量にバグを出してしまいました。こだわりポイントではないですが、開発においていちばんしんどかったというか、印象深かったです。

――つらいのが印象深いのはよくわかります(笑)。

物部(プログラマー) ゲームのメインとなる部分はもうほかの信頼できるプログラマーたちが全部やってくれるということで安心していたので、自分はそれ以外のところに注力しました。モノによって音を変えたり、ゲームの画面の細かいシーン作りだったりです。

――ああ、『Glalear(グラリア)』が高いクオリティーを担保できた大きな理由として、プログラマーだという認識があるということですか?

物部 そうですね。やっぱりプログラマーの力あってこそ、この企画はできあがったものだと思います。

(プログラマー) 僕は、このゲームのメインであるガラスを担当したのですが、現実世界のガラスをそのまま表現してしまうと、ゲームとしては見にくかったりしたんですね。そこで、ゲームに寄せながらも、現実とは違うけれどもゲームでガラスを表現するという点は、なかなかに苦労しました。

――それは難しそうですね……。そこがいちばん大変だったのですか?

 そうですね。プランナーとコミュニケーションを取りながら、「これも違う」、「あれも違う」と試行錯誤しながら、やっと「これだ!」というものを見つけて、ゲームにしっかり落とし込めたというのはあります。

――ちなみに、ガラスをしっかりと表現できた秘訣などはありますか? 技術を突き詰めることによって可能になったのですか?

 そうですね。単純に現実世界を表現するのではないので……。難しい技術だけを使うのではなくて、あえて簡単な方向で行くことでプレイヤーさんに分かりやすく伝えるというのも大事だと思いました。そういうところをおもにがんばりました。開発にあたっては、実際に本物のガラスを購入して、つぶさに観察しました。たとえば、本物のガラスは縁にエメラルドのようなところがあるのですが、そういったところもきっちりと再現しています。

前野(グラフィック) 自分の中でとくにこだわったのは、作る量ですね。クオリティーに関しては、自分のやりたい部分まで作りこめば、そこそこのクオリティーができると自分を信じているので(笑)。今回は背景が全部で6種類ほどあるのですが、“とにかく量”ということでがんばって作らせていただきました。先生方から評価をいただくときに、「一目見てクオリティーが高い」という風におっしゃっていただけることが多かったので、僕としてはかなり「やった!」という感じです(笑)。

――ゲームというのは、見た目が大切というか、一目で惹きつけられたといのは大事ですよね。

前野 そうですね、心を掴むというか。一目見て「すごい!」と分かってもらえるというのが、僕としてはかなりうれしいです。

成瀬(プログラマー) 僕はおもにキャラクターを担当していたので、キャラクターの触り心地にこだわりました。本作は、パズルゲームが主体で、後半にアクション要素も入ってくるのですが、そういうゲーム性の広がりに対応できるような触り心地にはけっこうこだわって作っています。先生やみんなといろいろ話しあって、試行錯誤しながらやっとあの形になりました。キャラクターの動きは気持ちよくできていると自負しています。

ウォン(プランナー) とにかく飽きさせないように、ひとつひとつのパズルをがんばって考えました。

西山(キャラクターモデリングとモーション) プレイヤーが操作するキャラクターなので、どうすれば愛着が湧くか……というのをいろいろ考えました。モーションを入れたりですとか……。とにかく、動きにはとくに力を入れて作りました。

井上(サウンド) ゲームを始めてみんなが最初に見るのはキャラクターだと思ったので、サウンドの一番のインパクトはキャラクターに合わせつつ、ゲームの雰囲気を大きめにとらえて、BGMや効果音を制作しています。この点に関しては、うまくハマったかなと思うので、うれしいです。

井島(ゲームデザイナー) 僕は、クオリティ―コントロールやイベントシーン、ステージの制作など全般的に広く関わったのですが、いちばん見てほしいところとしては、やはり全体のクオリティーですね。サウンドであったり、デザイナーさんであったり、プログラマーさんであったり、全員に無茶を言ってもみんなそれに食らいついてきてくれたので、よりよいものが積み重なってできていったと思います。ですので、ゲームをすべてを見てもらいたいです。

――ちなみに、チーム内でいちばん歯応えがあった人は誰です?

井島 背景モデルの前野くんですね。彼は、クオリティーの高い背景を多く作ってくれたんですよ。背景は、当初は4つの予定だったのですが、「オープニングの最初にインパクトを持ってきたい」ということと、「最後にぐっとくるようなエンディングにしたい」というのを伝えて、最後の1ヵ月とかで作り上げてきてくれたので、それに関してはすごくありがたく思っています。イベントシーンにしてもクオリティーの高いものができているので、ぜひ見てください。

「ゲームって素晴らしいな」と思ってもらえるゲームを作りたい

――最後に、今後の抱負として、将来の目標などを教えてください。これまでは蒲生さんからだったので、最後は逆に井島さんから。

井島 僕はコンシューマーゲームが好きなので、もっとコンシューマーゲームを盛り上げていきたいです。ゲーム業界全体のクオリティーをもっと高めていけるような存在になれたらと思っています。

井上 フリーで動きつつ、サウンドとして将来みんなとどこかで会えたらな……と思います。

西山 みんなに愛されるようなキャラクターを作って、たくさんの方に操作してもらって喜んでいただきたいという思いはあります。

ウォン 私はインディーゲームのほうに行きたいので、できたら仲間を見つけて自分で考えて新しいゲームを作りたいと思います。

成瀬 日本ゲーム大賞 アマチュア部門 大賞というすばらしい賞をいただけたので、さらに実力や実績をどんどん上げていきたいです。世界中の人に楽しんでもらえるようなゲームを作れたらいいなと思います。

前野 これから、社会人として働いていくことになって、よく言われるのが「(就職は)ゴールではなくてスタート」ということですが、とりあえず、今日大賞をいただけたことは、学生のひとつの“ゴール”として、喜びを噛みしめたいです。今日、壇上でも企業の方々に表彰していただけましたが、僕もああいう立場になれるような存在なりたいです。クリエイターとして世の中に認めてもらえるような人になって、またあの壇上に立って、今度は若者たちに賞を渡せるようになるくらいの仕事を手掛けたいです。

――それは、すばらしく高い志ですね。

 僕は本当にコンシューマーのゲームが好きなんです。最近スマホゲームがどんどん出てきていますが、それに負けないようにコンシューマーですごいゲームを作りたいです。コンシューマーゲームを盛り上げていければ……と思います。

物部 プログラマーであり技術者として、少しでも高みに登って、表舞台に名前を出せていけたらなと思っています。

弓達 あまりゲームに親しみがない人に触ってもらえたり、もっといろいろな人が楽しめるようなスマホ向けのゲームを作っていけたらなと思います。

――では最後に、リーダーである蒲生さんに締めてもらいましょう。

蒲生 本当に心から、このチームでゲームを作れたことをうれしく思っています。チーム自体はゲーム大賞に作品を提出した時点(6月30日)で解散したのですが、その後もずっと連絡を取り合っているような仲のいいチームです。できることならこのチームでまたゲームを作りたい。そう思えるような、本当にいいチームです。

――それは、実現できたら素晴らしいですね。

蒲生 そうですね。最後に、これはメンバー全員の共通の意見だと思うのですが、お客さんから愛されるような、「ゲームって素晴らしいな」と感じていただけるような作品を、これから僕たちがお届けしていきたいなと考えています。

――ああ、皆さんが見ている方向性がいっしょだったのが、チームワークの秘訣だったのかもしれないですね。

蒲生 そうですね。今日はありがとうございました。

 ちなみに、皆さんは全員4年生であるが、ゲーム業界など希望の進路に進むことが決まっているとのこと。これだけ優秀ならば放っておかないだろうなあ……という感じだが、今後彼ら&彼女がどのような作品を作り上げていくのか期待したい。