2018年9月29日、東京・品川プリンスホテルにて、一般社団法人日本野球機構(NPB)の12球団がプロ野球eスポーツリーグ“eBASEBALL パワプロ・プロリーグ”の選手を獲得する“eドラフト会議”が行われた。
本稿では、選考会を勝ち残った36名の強豪選手たちが各チームに振り分けられたeドラフト会議の模様をお伝えする。
真中満氏、岩村明憲氏、和田一浩氏、杉内俊哉氏、村田修一氏……会場には豪華OBやマスコットがズラリ!!
会議が始まる前には、東京ヤクルトスワローズ前監督の真中満氏や、元メジャーリーガーにしてルートインBCリーグ福島ホープス監督の岩村明憲氏が登壇し、会場に向かって挨拶。
実際のドラフト会議で指名される側、する側、どちらの経験も持つ真中氏は「肩の力を抜いて」と選手たちに言葉を投げかけ、選手の緊張をほぐした。続いて岩村氏は、会場に選手たちが同席し、その場で自分の指名順位がわかるということは「選手たちにとって刺激になる」と、eドラフト会議の特徴を語った。
真中氏、岩村氏のほかにも、会場には各球団のOB選手もそうそうたるメンバーが駆けつけ、それぞれ下記の球団の関係者として、指名する選手を真剣な面差しで相談していた。
- 中日ドラゴンズ(以下、中日):和田一浩氏
- 東北楽天ゴールデンイーグルス(以下、楽天):永井怜氏
- 阪神タイガース(以下、阪神):亀山努氏
- 広島東洋カープ(以下、カープ):比嘉寿光氏
- 福岡ソフトバンクホークス(以下、ソフトバンク):江尻慎太郎氏
- 横浜DeNAベイスターズ(以下、DeNA):鈴木尚典氏
- 読売ジャイアンツ(以下、巨人):杉内俊哉氏、村田修一氏
※球団名は50音順
eドラフト会議は、1巡目、2巡目は各球団が同時に選手を指名する入札抽選、3巡目はペナントレースの順位の逆順での指名。入札抽選で指名競合が起きた場合は、実際のドラフトと同じく、くじを引いて決める。ちなみに、eドラフト会議は“交渉権獲得”ではなく、指名が確定した段階で即入団決定、獲得となる。
まず1巡目では、パワプロチャンピオンシップス2017で優勝を果たし、日ハムへの入団を希望しているマエピー選手が東京ヤクルトスワローズ(以下、ヤクルト)、北海道日本ハムファイターズ(以下、日ハム)、楽天、横浜DeNAベイスターズ(以下、DeNA)の4球団から指名が重複! その後、代表者によるくじ引きが行われるが、日ハム、楽天からはマスコットが代表者としてくじ箱の前に立つという、実際のドラフトでは見られないちょっとシュールな光景に。
緊張した表情で指名を待つ選手と、にぎやかに動き回るマスコットが同じ会場にいるのはおもしろい。配信では「マスコットがくじを引くのはドラフト史上初めてじゃないですか?」というコメントも飛び出した。
くじ引きの結果、マエピー選手を獲得したのはヤクルト! 希望球団の日ハムではなかったものの、マエピー選手はうれしそうに頬を緩ませた。獲得後ヤクルトは、マエピー選手に期待することとして「優勝に向かって戦い抜くこと、そして将来のeスポーツ選手の見本となるようなプレイをしてほしい」とコメントしていた。そのほか、1巡目の指名は下記の通り。
●セ・リーグ
- 広島:ゴジラ選手
- 阪神:ベルガモット選手
- DeNA:じゃむ~選手
- 巨人:てぃーの選手
- 中日:でらナゴ!選手
- ヤクルト:マエピー選手
●パ・リーグ
- ソフトバンク:さんらいく選手
- 埼玉西武ライオンズ(以下、西武):BOW川選手
- 楽天:ねお選手
- オリックス・バファローズ(以下、オリックス):みっすん選手
- 日ハム:ビッシュ選手
- 千葉ロッテマリーンズ(以下、ロッテ):イッキー選手
1巡目の抽選が終わると、各球団の席へインタビューが行われた。巨人の杉内俊哉氏は「『パワプロ』は息子とプレイするので知っていますが、いつも大敗してしまうので、eBASEBALL パワプロ・プロリーグの選手から技術を盗んで『パワプロ』対決に勝ちたい(笑)」、とコメントし会場を和ませた。
続く2巡目の指名では、DeNAと中日の2球団が、ふが選手を重複指名。くじ引きでは、OBの和田一浩氏がくじを引き当て、中日が見事ふが選手を獲得した。ふが選手の指名理由について、和田氏は「26年ほどのキャリアがある選手なので、その勝負強さに懸けてみました」とコメント。そして「これからプレッシャーのかかる場面でも力を発揮してくれるのではないかなと思っています」と、ふが選手への期待を語っていた。
その後は、2巡目、3巡目ともに順調に進み、各球団3名、計36名の選手の指名が終了。会場では、指名された選手から、各球団のユニフォームを着ていた。
ユニフォームはそれぞれ今回のeBASEBALL パワプロ・プロリーグのために製作されたオリジナルデザインだ。下の写真ではすべての選手に“18”の背番号が与えられているが、『パワプロ』シリーズの谷渕弘プロデューサーは「今日のユニフォームはeドラフト会議用の仮のもので、本番では背中に名前も入ります」と明かしており、リーグが始まるとそれぞれに違った番号が与えられるとのことだ。
セ・リーグ
カープ
1巡目:ゴジラ選手
2巡目:坂本選手
3巡目:カイ選手
阪神
1巡目:ベルガモット選手
2巡目:びび選手
3巡目:ショーラ選手
DeNA
1巡目:じゃむ~選手
2巡目:ヒデナガトモ選手
3巡目:AO(あお)選手
巨人
1巡目:てぃーの選手
2巡目:たいじ選手
3巡目:ころころ選手
中日
1巡目:でらナゴ!選手
2巡目:ふが選手
3巡目:m.o.m.o選手
ヤクルト
1巡目:マエピー選手
2巡目:TKD選手
3巡目:えぞひぐま選手
パ・リーグ
ソフトバンク
1巡目:さんらいく選手
2巡目:ケーバック選手
3巡目:tell選手
西武
1巡目:BOW川選手
2巡目:ミリオン選手
3巡目:なたでここ選手
楽天
1巡目:ねお選手
2巡目:okd選手
3巡目:MASA選手
オリックス
1巡目:みっすん選手
2巡目:いちろー選手
3巡目:N-岡田選手
日ハム
1巡目:ビッシュ選手
2巡目:TOKING選手
3巡目:JOY戦士選手
ロッテ
1巡目:イッキー選手
2巡目:スンスケ選手
3巡目:マツ選手
以上が、11月10日から2018年度のeペナントレースで優勝を目指して競い合う12球団のメンバーだ。選手たちは実力だけでなく優勝への気合も十分。各チームのメンバーの多くが希望球団に入団していたこともあり、球団の名前を背負うということの喜びを噛みしめながら、選ばれた期待に応えたいと活躍を誓っていた。2018年11月10日から、いよいよ開幕となるeペナントレース。各選手が目覚ましいプレイを見せ、eBASEBALL パワプロ・プロリーグをさらに盛り上げていってほしい。
和田一浩氏に直撃! 「互いに盛り上げていきたい」
和田一浩(わだかずひろ)
1997年西武ライオンズ(当時)入団、2008年より中日ドラゴンズに移籍し両リーグで活躍。通算1968試合に出場し、通算打率3割3厘、319本塁打、2050安打の記録を残した大打者。
――和田さんは『パワプロ』シリーズってプレイされたことはありますか?
和田 ちょっと遊んだことがありますよ、そんなに一生懸命というわけではないですが(笑)。
――実際にこういったesportsの選手とお会いするのは初めてだと思いますが、どういった感想を抱かれましたか?
和田 最初はもっと軽い感じでやられているのかなと思っていたのですが、直にお会いして話を伺うと、非常に真剣にやっていらっしゃることが伝わってきて、イメージが変わりましたね。
――本日、ドラゴンズとしてはどういう方針で獲得選手を決めたのでしょうか。
和田 そうですね、ドラゴンズのことを好きな選手を中心に指名しました。プロ野球のドラゴンズと、eBASEBALLのドラゴンズが互いにいい刺激になって盛り上げたいと思っています。今回指名した彼らもドラゴンズファンと聞きましたので、よりそういう気持ちが強くやってくれるかなというところで選びましたね。
――最後に、本日選ばれた選手たちに向けてエールをお願いします。
和田 すごく志が高い方たちだと思いますので、ぜひ目標に向かってプレイしていただきたいですね。そしてドラゴンズを始め12球団の看板を背負うわけですから、ぜひチームをアピールしてがんばってほしいと思います。
――ありがとうございました!
取材を終えて
(文:堅田ヒカル)
会場の品川プリンスホテルには、ゲームメディアに限らず各スポーツ新聞やテレビ局も取材に訪れ、大勢の取材陣でごった返すほどの盛況ぶり。会場は12球団ごとのテーブルに分かれ、各球団が資料を見ながら獲得選手を決め、中央の大きなモニターに映し出される。うわあ、すげえ、本当にドラフト会議だ! そう驚いて会場を見渡すと、鈴木尚典、村田修一、杉内俊哉、和田一浩、亀山努、永井怜、江尻慎太郎……(敬称略)、有名OB選手がズラリと並んで、テーブルに着いている。
以前、関係者の方が「こんなビッグネームが(eドラフト会場に)来ていただけるのかと、我々も驚くくらいの方が来られる予定です」と語っていた。本当だった。
マスコットも大勢集まっていて、12球団が「“eBASEBALL”を盛り上げよう!」という協力的な姿勢であることが何より雄弁に語られていたのではないだろうか。それは、NPBのインタビューで語られた「若い人にどう野球の魅力を伝えるかという危機感はみんな共有している」という問題意識もあるだろうが、よりポジティブにかつシンプルに、“esportsという盛り上がりをみんなで楽しもう”というあたたかい雰囲気が感じられた。
正直に言うと、「eBASEBALLは、プロ野球の現場の人からは眉をひそめられているのではないか?」という懸念というか怖さというか一抹の不安を抱いていたのだが、どうも、そうでもないらしい(ホッとしました)。和田氏へのインタビューでも出てきたように、互いに盛り上げていけるならどちらにとってもいいことだ……と受け止められているというのが、実態に近いところではないだろうか。
また、12球団がこれほど協力的であるのには『パワプロ』シリーズへの信頼感、安心感が土台にあることも間違いない。
同シリーズのCMに現役選手が起用されていたり、真中氏も配信の中で「娘が『パワプロ』の“マイライフ”(ひとりのプロ野球選手になって、プロ野球人生を体験できるモード)を遊んでいて、娘のキャラクターが上田選手にご飯に誘われていたから、行くな! と言いました(笑)」というエピソードを明かしたりと、じつはプロ野球界のなかにも『パワプロ』プレイヤーは多い。NPB12球団がこれほど協力的にイベントに参加してくれたのはそんな背景も大きいだろう。
11月10日からは、いよいよeBASEBALLリーグ戦が始まる。試合はインターネットで中継されるというから、ぜひ注目したい。プロ『パワプロ』プレイヤーの超絶テクニック、マジですごいからみんなも見てね!