甲子園もアツかったけど『パワプロ』プロ予選もアツい!!
2018年7月19日に電撃的に発表された、KONAMIと日本野球機構(NPB)が共催するプロ野球eスポーツリーグ“eBASEBALL パワプロ・プロリーグ”の開催。
『実況パワフルプロ野球2018』を使用し、まずはプロテスト(オンライン予選、オフライン大会)、ドラフトを経てNPB12球団の“eスポーツチーム”を結成。そしてセ・リーグとパ・リーグに分かれて約2ヵ月にわたる“eペナントレース”を行う。さらに2019年1月には“e日本シリーズ”と銘打った頂上決戦を行うという、日本のeスポーツではかなり大掛かりなものだ。
『実況パワフルプロ野球』(以下、『パワプロ』)シリーズでは、過去にも全国規模での大会が開かれてきたが今回の“eBASEBALL パワプロ・プロリーグ”は、これまでの大会より規模も内容も格段に大掛かりなものとなっている。何より目を引くのは、NPBとの共催によりセパ12球団のチーム(1チーム3名)でリーグ戦が行われる点。
選手はNPB12球団によるeドラフト会議を経て選定されたり、選手は報酬として試合出場費が設定されていたり(リーグ本戦はひとり1日10000円)、e日本シリーズ優勝で1チームに300万円を超える報酬が設定されていたりと、『パワプロ』史上、そしてNPB史上、とにかくこれまでにない大きな試みとなっているのだ。
- 報酬(チーム総額/選手ひとりあたり)
- eペナントレース出場(21万円/7万円)
- eリーグ代表決定戦出場 (15万円/5万円)
- eリーグ代表決定戦ファイナルステージ出場(39万円/13万円)
- e日本シリーズ出場(114万円/38万円)
- e日本シリーズ優勝(321万円/107万円)
実技試験となるリーグ戦は緊張感もMAX!
2018年8月26日には大阪・ABCホールにて、オンライン予選を勝ち進んだ選手たちがドラフトへの生き残りをかけて激突するプロテスト西日本選考会が開催された。本記事では、その模様をお伝えする。
選考会では、総勢72名の選手が各6名ずつ、A~Iの12グループに振り分けられる。そのグループ内で総当たりで対戦を行い、上位2名の成績を残した選手がつぎのステップへと進めるのだ。広い会場には各テーブルごとに液晶とプレイステーション4が設置されており、それぞれの選手たちが肩を並べて火花を散らす。ズラッと並んだ液晶で『パワプロ』の真剣勝負が行われている光景は壮観だ。
ちなみに、対戦レギュレーションは以下の通り。打球の落下点表示が“なし”になっているなど、オンライン予選とも微妙に異なっている点もある。
- プロテスト実技審査対戦レギュレーション
- 使用チーム:オール・セントラル or オール・パシフィック
- DH制:ランダム
- 規定イニング:6回
- 延長:なし
- コールド:10点
- 天候:晴れ
- ケガ:なし
- スタミナ消費:あり
- 選手の調子:ふつう
- 落下点表示:なし
選手たちは全員、激しいオンライン予選を勝ち抜いた猛者揃い。投球時は、ほとんどのプレイヤーが“二度押し”を設定し、タイミングよくボタンを押すことで成功する“ナイスピッチ”を連発。打撃時はミート打ち派と強振派で分かれていたが、選手たちは全力ストレートや鋭い変化球にも動じることなく対応し、高い技術レベルを感じさせた。
実技試験後は面接審査が!
約5時間にもわたって行われた実技審査の後、グループで1位、2位だった選手計24名が面接審査に進むことができる。また、3位だった選手の中からプレーオフで面接審査に進む8名を決めるという制度も設けられていた。
面接審査は、人としての魅力や、野球・球団への想いなど、プロとして必要な要素についても重要な選考の基準となっており、プロ野球eスポーツ選手を目指す想いや決意などを面接官がヒアリングするという内容になっている。しかも、面接官はKONAMIの人事担当を中心にしたメンバーになっているとのこと。いわば面接のプロが対応しているそうで、その力の入れ具合がわかるというもの。
シビアなのは、実技試験をクリアーして面接に進んだとしても、9月に行われる予定の“eドラフト会議”には、全員が進めるわけではないという点。面接を経て西日本選考会・東日本選考それぞれ18名の“eドラフト候補生”が選出され、そこからeドラフト会議で指名され、所属球団が決定する。選手はオンライン予選→オフライン実技試験→面接審査→eドラフトと、4つの関門を経て初めて“eBASEBALL”の選手になれるというわけだ。
『パワプロ』トッププレイヤーによるスペシャルインタビューをお届け!
今回、実技試験を突破し、面接審査に駒を進めた選手数名にミニインタビューを行うことができた。どのような練習を積んできたかや上級者向けテクニックも訊いてみたので、『パワプロ』プレイヤーは必見!
――今回のオフライン選考会に向けて、どの程度練習されましたか?
てぃーの 平日だと1日3~4時間、休みの日は8時間以上練習していました。
――どのような練習内容だったのでしょうか?
てぃーの オンラインとオフライン、それぞれで対戦を繰り返しました。というのも、オンとオフでは、対戦の感覚がまったく違うので、とくに今回のオフラインの選考会に向け、人を呼んでいっしょにプレイしたり、強いCPUと戦ったりしていました。
――会場では“強振”を使う選手と、“ミート打ち”の選手がいましたが、てぃーの選手はどちらを使用されていますか?
てぃーの 僕は強振しか使わないですね。練習では、とにかく球筋にカーソルを合わせる訓練を重ねました。
――つねに強振だと、変化球に対応するのは至難の業ではありませんか?
てぃーの 変化球を投げられた場合は、変化に合わせて追いかけるのではなく、球種と変化量を判断して、球が変化する先にあらかじめカーソルを動かすようにしていますね。
――ピッチングでは、コツといいますか、プレイの際にとくに気を使っている部分はありますか?
てぃーの 二度押し設定で、できるだけ多く“ナイスピッチ”を出すことですね。こちらも練習を繰り返し、6~7割の割合で成功できるようにしました。
――練習時間は1日にどのくらいだったのでしょうか?
たいじ 1日に約3時間くらいですが、前日、前々日には8時間ほど練習しました。
――その内容はどのようなものですか?
たいじ オンライン予選と今日の予選会では対戦レギュレーションが変わっていたので、できるだけそのレギュレーションに近い環境で、ひたすらオンラインで対戦していました。
――今日は強豪揃いの選考会でしたが、勝つために意識していることはありましたか?
たいじ ナイスピッチで投げられることが多かったのですが、やっぱりどれだけうまい人でも、100%ナイスピッチで投げられるわけではないんですよ。どれだけうまくても成功率は8割くらいですかね。ですから、残り2割のナイスピッチではない球を狙いました。逆に、守備のときは、できるだけナイスピッチを出しながら、相手の心理を読んだ配球も心掛けました。
――打者心理というと、たとえばどのような。
たいじ 速いストレートを投げているのに引っ張られてファールになると、「バッターはストレート待ちかな」という具合ですね。
――オフライン選考会に向けての練習はどのくらいされましたか?
坂本 ほとんど毎日、1~2時間ほど練習していました。
――練習ではどんなことをされていたのでしょうか?
坂本 CPUと対戦しながら守備、打撃の弱点を見直したほか、ベストピッチのために、投球の二度押しでボタンを押すタイミングのフレーム(※)を調べたりもしました。投手によってモーションが異なるので、ボタンを押すタイミングも違うんですよ。
※静止画状態のグラフィックのことで、ゲーム内での時間を表す最小単位。1秒間に描画される静止画の数を表したのがフレームレート。
――フレームはどのように調べられたのでしょうか?
坂本 プレイを録画し、動画ファイルを検証して調査しました。きちんと調べることで、ナイスピッチの成功率が1割ほど上がった気がします。
――ちなみに、打撃では強振とミート打ちのどちらを使っていますか?
坂本 昔はミート打ちを使っていましたが、いまは強振が楽しいので、ほとんど強振ですね。強振でカーソルを芯に当てられたときの気持ちよさは『パワプロ』の魅力だと思います。
東日本選考会&ドラフトはこれから!
今秋の開催に向けて本格的に動き出した“eBASEBALL パワプロ・プロリーグ”。2018年9月1日には東日本での選考会が行われ、9月中には選手が12球団に割り振られる“eドラフト会議”が開催予定だ。11月の“eペナントレース”開幕に向け、動きはさらに加速していく。
これはあくまで記者個人の感想だが、『パワプロ』は現実でも親しまれている野球をもとにして作られているだけあり、FPSや格闘ゲームといった、eスポーツとして競技化されているほかのジャンルに比べて、ゲームの知識がなくても試合の展開がわかりやすいように感じた(ゲーム自体に、アナウンサーによる“実況”もあるし)。
さらに、操作するプレイヤーも、満塁のチャンスでタイムリーヒットを打てば喜んだり、逆に失投をホームランにされたプレイヤーが頭を抱えたりと、プレイ中に発生する細かな結果に対する一喜一憂が見ていてわかりやすく、感情移入しやすい。
“eBASEBALL パワプロ・プロリーグ”は、eスポーツ全体の課題でもある、ふだんはゲームをあまり遊ばない層の取り込みにもひと役買うのではないだろうか。とくに野球ファンなら、現実のプロ野球がシーズンオフになる退屈な季節に、“eBASEBALL パワプロ・プロリーグ”が開催されていたら、そこでもひいきチームを応援したくなるはずだ(PCで試合の配信を見ながら、熱燗を片手に応援する自分が目に浮かぶようだ)。
まずは9月のeドラフト会議、その成り行きに注目したい!