東京ゲームショウ2018にて初来日した『Dead by Daylight』のディレクター、マシュー・コート氏にインタビューを実施! 『Dead by Daylight』を制作したきっかけや、1vs4という非対称なマルチプレイに至った経緯などについて聞いた。

 東京ゲームショウ2018のために、非対称のマルチプレイでいま話題の『Dead by Daylight』を開発するBehaviour Digitalのディレクター、マシュー・コート氏が初来日を果たした。マシュー・コート氏は、会期中の9月21日はDMM GAMESブースで、22日には、Twitchブースにて、それぞれステージイベントを行い、日本のゲームファンを喜ばせた。ファミ通.comでは、ステージイベントを終えたコート氏に直撃取材を敢行。『Dead by Daylight』を制作したきっかけや、1vs4という非対称なマルチプレイに至った経緯などについて訊いた。

プレイヤーをホラー映画の世界に送り込みたい

――まずは、『Dead by Daylight』を企画したきっかけから教えてください。

マシュー プレイヤーがホラー映画の世界に入り込むような環境を作りたかったという思いが最初にありました。キラー側でもサバイバー側でもどちらでもよかったのですが、とにかくプレイヤーの皆さんをホラー映画の世界にそのまま送り込みたかったのです。

――プレイヤー数が非対称のマルチプレイというのは最初から考えられていたのですか?

マシュー 最初のころからそういう考えはありました。私たちはこのゲームを“絶対的な力を持っている強者”対“非力な弱者”の構図にしたかったのです。そういった意味では最初から不平等なバランスを想定していました。また、サバイバーの数を増やしたことによってサバイバーは協力が可能になります。ですが、“本当に協力してくれるか”は分かりません。自分が生き残ることを優先して囮に使われる可能性もありますから(笑)。そういった不確定要素が、本作をより楽しいゲームにしているとも思います。

――なぜ不平等であることにこだわったのでしょうか?

マシュー じつは、最初は1対1にしてみたのです。サバイバーは何回殺されても生き返るようにしました。それはそれでおもしろかったのですが、サバイバーの数を増やして復活できないようにしたほうが楽しみかたが増えると考えたのです。サバイバーは一度死んでしまったら自分のプレイは終わりになってしまいますが、ほかの人のプレイを見て楽しめます。これはまさに、ホラー映画を見ているのと同じような楽しみかたであると言えます。

――最初から1対4だったわけではないのですね。サバイバーの人数に関しても試行錯誤があったのでしょうか?

マシュー いろいろ試しました。5人や6人、あるいは7人になることもあり得ましたが、最終的には4人だろうと判断しました。というのも、リリース当初はどれくらいの人数がプレイしてくれるか分かりませんでした。サバイバーの数があまりに多すぎると、もしキラーをやりたい人が多かった場合にサバイバーの数が足りず、ゲームが始まらなくなるというリスクも考えられました。ありがたいことに、いまとなってはこれだけ多くのプレイヤーに遊んでもらえているので問題にはならないかもしれませんが。

――ちなみに、いまはキラーとサバイバーだとどちらを望む人が多いのでしょうか?

マシュー いまは少しだけサバイバーが多いと思います。これ自体は正しい比率だと思っています。というのも、ゲームとしては1対4を最後まで維持しなくてもいいのです。サバイバーは死んでしまったらつぎのゲームに移行が可能ですが、それまでプレイしていたゲームは、ほかのサバイバーが生きている限り続行されます。つねにオーバーラップが起こっているので、サバイバーが少し多いくらいがちょうどいいのです。

――日本のプレイヤーはサバイバーを選ぶ人が多そうだな、などと勝手に想像してしまうのですが、実際に国や地域別でプレイヤーの傾向は異なりますか?

マシュー もしかするとそういうことがあるのかもしれませんが、調査をしていないのでわかりません。社会学を勉強している人たちが実験すればわかるかもしれませんね(笑)。われわれのチームには学生時代に生物学や集団行動学を勉強した人たちがデータアナリストとして所属していますので、そういう分析を行うというのもありえない話ではないでしょう。

――本作を制作するにあたって、インスパイアを受けたホラー作品はありますか?

マシュー 本当にたくさんのホラー映画から影響を受けています。古典と言われるような1970年代~1990年代くらいの古い映画からも多く影響を受けていて、そのうちのいくつかはキャラクターをゲームに登場させています。新しく追加したチャプターに関しては、私が子どものころに見た、いくつかの日本のホラー映画から影響を受けています。

――具体的に作品名を挙げてもらうことはできますか?

マシュー まずは『ハロウィン』です。シーンやライティングがとにかくパワフルな印象です。直接的にバイオレンスが描かれているというよりは、それを予期させるようなシーンが特徴的です。なおかつすごく緊張感が高くて、見ているうちにドンドン恐怖感が高まっていくのです。それから『キャビン・イン・ザ・ウッズ』。そして新チャプターに関しては、『リング』や『呪怨』などから影響を受けています。

――ゲームをリリースした当初、ここまで評価されると思っていましたか? また、その要因はなんだと自己分析されていますか?

マシュー まったく予期していませんでした。ここまでの評価をいただけるとは思っていなかったので、とても嬉しいです。評価された理由は難しいところですが、私はふたつあると思っています。ひとつは、ゲームの核となるシステムがシンプルであることです。誰かが逃げる、それを追いかけるというシンプルな“鬼ごっこ”ですから、遊びかたをすぐに理解できると思います。もうひとつは、見ているだけで楽しいということです。ほかの人がプレイしているのを見ているだけでも楽しめます。プレイの終盤にクライマックスがあるわけではなく、つねにサプライズが隠されています。映画を見ているような楽しさもありますし、配信に向いているタイトルだと言えるでしょう。

――ダウンロードコンテンツを積極的に配信されていますが、コンテンツセレクトの方針などは決められているのでしょうか?

マシュー 溢れんばかりの熱意を持ったメンバーばかりなので、アイデアはたくさんあります。やりたいことが多すぎて、どれからやるかを決めるのが難しいくらいです(笑)。最新のチャプターに関して言えば理由は明らかで、私たちはずっと長いあいだ日本のホラーをやってみたいと思っていました。どうすればうまくいくか、ずっと考えていたわけです。基本的には、オリジナルで人を驚かせられるもの。既存のコンテンツに関しては、私たちがどれだけ熱意や愛を持っているかを表現できるもの、というのがひとつの基準と言えるかもしれません。

――コンテンツの方向性はあまり固め過ぎず、アイデアに任せる部分が大きいのでしょうか?

マシュー クリエイティブディレクターはだいたいの方向性を決めているのかもしれませんが、なるべくみんなで知恵を寄せ合って考えています。「アイディアを持っている人はとにかく話してみようよ」というスタンスでやっています。

――とても仲のよさそうなチームですね。

マシュー 和気あいあいとしていますよ。特別なチームだと思います。10年以上いっしょに仕事をしていますが、こんなに魔法のように人間関係がうまくいっているチームはほかにないと思っています。

――「金曜日の夜はみんなでホラー映画を見る」みたいな、仲良しエピソードを何か教えてもらえませんか(笑)?

マシュー (笑)。“THE LEATHERFACE(カニバル)”が出る前に、実際にチームのメンバーを一堂に集めて、いっしょに映画を見ました。どういうことをやろうとしているかという理解のレベルを共有するためです。これが仲良しエピソードかどうかは分かりませんが(笑)。いずれにしても、非常に熱意を持った人たちが集まったチームで、メンバー全員がこのチームにいられてラッキーだと思いながら働いていると思います。私たちはお互いの持っている専門知識やそれに伴う経験を評価していて、お互いをリスペクトし合っています。

――(TGS2018での)ステージイベント内で、じつは怖がりでホラー作品は苦手だとおっしゃっていました。にもかかわらずホラーゲームを制作されている理由を教えてもらえますか?

マシュー その秘密はシンプルです。じつは、私がプレイするときはほぼ100%キラー側でプレイします。キラーなら怖い思いをしなくて済みますし、すべてを自分の支配下におけますから。

――ちなみに、“Behaviour Interactive”という社名の由来は何ですか?

マシュー 私は正解を知りません(笑)。私の解釈としては、ビデオゲームを使ってどういう風にストーリーを語れるか、人の挙動を語れるか、ということだと思っています。Behaviourは挙動という意味ですので。

――『Dead by Daylight』は日本でも大人気です。日本のユーザーからのフィードバックはどんなものがありましたか?

マシュー 大きく分けてふたつあります。ひとつは、日本人向けのコンテンツを増やしてほしいということです。これについては、私たちが適切だと思うコンテンツを作っていくことになると思います。もうひとつは日本語のフォーラムやヘルプが欲しいということです。こちらも計画がありまして、日本語対応のカスタマーサポート、もしくはコミュニティマネジメントのチームを作るつもりでいます。

――日本向けのコンテンツを増やしていくつもりだと理解してもいいのでしょうか?

マシュー 唯一言えるのは、“おぞましい祭りコレクション”のようなところからインスパイアを受けたアウトフィット的なものが出るだろうということです。これ以上は何も言えません。

――自国のコンテンツを増やしてほしいという要望は、世界中から湧き上がっていると思います。つぎはどの国のコンテンツにするかというのは決まっているのでしょうか?

マシュー それはお答えできませんが、ここで申し上げておきたいのは、たとえばあるチャプターを出すときに、それをある地域、国のものであるとは考えていないということです。悪夢というものは普遍的なものですから。

――日本のホラーの独自性は海外の方にも評価していただいていると思うのですが、ほかにも独自のホラーを確立している国はあるのでしょうか?

マシュー とても限られています。少なくとも、カナダのホラーはそこまでの価値を持っていないと思います(笑)。

――コンテンツ化するに値するほどのものは少ない中、日本のホラーは光栄なことにそれに選ばれたと考えてもよいですか?

マシュー まさにそのとおりです。だからこそDLCを作りました。日本のホラーは語りかたもパワフルかつ豊かな内容を持っているユニークな存在であると思います。

――新たなチャプターの見どころについて教えてください。

マシュー ディテールに注目してほしいと思っています。制作の際、細かいところに神経を使っています。それはストーリーの語りかたであったり、アドオンやパワーについての書きかたをあいまいにしてみたりといった具合です。たとえば、「われわれのストーリーを語るにあたって、日本のホラーストーリーの筆を使って書いてみました」というような感じです。

――先日PS4版が配信され、とても好評でした。ほかのプラットフォームでの展開は考えておられますか?

マシュー はい。プラットフォームとしては同じですが、ゲームを手に入れる方法としては3gooさんの協力を得て、パッケージ用ソフトとして発売することができるようになりました。異なるプラットフォームについて詳細を語ることはできませんが、現在DMMさんとお話をしています。これについては、皆さんにお知らせできる情報が少しでもでき次第、いたるところで叫びます。Nintendo Switchなどにも興味を持っていますが、もしやるとなれば、いまあるものをそのまま適用させるのではなく、専用のバージョンが必要になるだろうと思います。

――ずっと気になっていたのですが、腕にチラッと見えているタトゥーは『スーパーマリオ』のクリボーですよね? 日本のゲームがお好きなのですか?

マシュー 子どものころから大好きです。私はビデオゲームはストーリーを語る媒体として素晴らしいものだと思っていますが、それを学んだのは子どものころにプレイした『スーパーマリオ』からでした。いまではそうした媒体としてのビデオゲームはかなり成熟していて、本や映画では語れないようなやりかたでストーリーを語ることができます。そんな語りのアートというべきものに制作者として私も関わっていられることを、すごく嬉しく思っています。

左腕のタトゥーは「恥ずかしいので……」と撮影はNG。こっちならOKということで、右腕のタトゥーを撮らせてもらった。

――ちなみに、いちばん好きな作品は何ですか?

マシュー すべて、と答えたいくらいです。私のバッグにはNintendo Switchが入っていて、ふだんは『スーパーマリオ』や『マリオカート』をプレイしています。もちろん、ほかにもいろいろな素晴らしいゲームがあると思いますが、私にとっては『スーパーマリオ』がやはり特別です。子どものころからの思いがたくさん詰まっていますから。

――最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

マシュー これは日本に来てからずっと言っていて、日を追うごとにその気持ちがどんどん強くなっているのですが、皆さんからこれだけ熱く歓迎をしてもらって、受け入れられていただいて、感謝に堪えません。プレイヤー、そしてコスプレイヤーの皆さんの熱量も、ものすごいものを感じています。これらがまた燃料となって、つぎのやる気に強く繋がります。新たなコンテンツは続々と出していきますし、サポートもより手厚くしていこうと思っていますので、これからも『Dead by Daylight』をよろしくお願いします。

■撮影/小森大輔