2018年9月20日から23日まで開催中の東京ゲームショウ2018(20~21日はビジネスデイ)。9月23日にカプコンブースにて行われた“モンスターハンター:ワールド ドリームマッチ 東京ゲームショウ2018”の模様をリポートする。
本イベントは、世界各国で行われた『モンスターハンター:ワールド』(以下『MH:W』)タイムアタック大会の優勝者が東京ゲームショウで一堂に会し、ふたつのクエストにチャレンジし、モンスターの討伐時間でその腕を競うというもの。
いわば『MH:W』世界大会であり『モンハン』天下一武闘会であり狩猟世界一決定戦。興奮のあまり表現が大げさになっている気がしないでもないが、実際にプレイを見ていると、そう言いたくなるのも自然なほど、超ハイレベルなプレイヤーたちが集結していたのだ。
登場したのは以下の5組。いずれも各地区の公式大会で優勝を収めた代表選手だ。
- 狩王決定戦2018(日本大会) 優勝 AGent
- USA CHAMPIONSHIP 優勝 Social Dissonance
- KOREA CHAMPIONSHIP 優勝 여친회피복장
- HONG KONG CHAMPIONSHIP 優勝 麻郁達拿曲嗲咪羅(迷ったら食ってみろ)
- TAIWAN CHAMPIONSHIP 優勝 Monster Hunter Forever!!
彼らが、チャレンジクエスト“MHWイベント:乱と律の果て”と“MHWイベント:狩人と青い妃”を行い、合計タイムを競う。
※ちなみに、ふたつのチャレンジクエストはプレイステーション4では2018年9月28日まで配信中。
そしてここで、辻本良三プロデューサーから「ひとつ報告があります」とアナウンスが。その報告というのは……
『モンスターハンター:ワールド』が、日本ゲーム大賞の年間作品部門で大賞を受賞したという報告! これには観客も登壇者も笑顔でお祝い。会場は祝福のムードに包まれた。
そして、クエストが開始されるとそんな雰囲気が一変。真剣勝負の緊張感が漂う中、この日のために練習を積み重ねてきた各代表によるプレイを、観客は固唾をのんで見守っていた。
この日、中でも観客を湧かせたのは、ハンマー&ハンマーでバゼルギウスに挑んだ台湾代表“Monster Hunter Forever!!”チーム。ほかのチームが闘技場の正面から素直にクエストを始めていたのに対し、1チームだけ翼竜を使って闘技場の奥に移動。闘技場奥にある傾斜を利用し、空中回転攻撃をくり出し始める!
落とし穴でもがくバゼルギウスに、ふたりが息を合わせて何度も何度もハンマーの空中回転攻撃を叩き込む一連の流れは見ていて異常な爽快感があり、会場も大盛り上がりで拍手や歓声が飛んだ。
日本代表AGentも危なげない討伐を見せた。危なげないというか、どのチームもそうなのだが、動きがつねに洗練されていて、高度に習熟されたダンスや、一糸乱れぬマスゲームを見ているような感すらある。狩猟とは。
壇上で解説を行っていた徳田優也ディレクターが、世界で行われた『MH:W』のタイムアタック大会の思い出を語るなかで、「韓国やesportsが盛んな国では、魅せプレイをやるチームもあっておもしろかった。でも今日ここにいあるみんなはうますぎて、理論と作戦を突き詰めたプレイをしているからこれだけで魅せプレイになる」と語ったように、極限まで最適化されたキャラクターの動きは、“美しい”とすら感じさせる。
そうして1クエスト目のバゼルギウス討伐が終わった結果は……
こちら。AGentが1位となり、韓国代表がそれに続いた。しかし本イベントは2クエストでの合計タイムで競われる。まして、2クエスト目は強力なモンスター“ナナ・テスカトリ”の討伐である。ワンミスでひっくり返る危険性を孕んだクエストだけに、気が抜けない展開でドリームマッチは進んでいった。
また、ステージでは歴戦王ナナ・テスカトリや歴戦王ゾラマグダラオスなどの新情報も明らかにされた。詳しくはこちら(https://www.famitsu.com/news/201809/23164742.html)。
続いて2回戦のクエスト“狩人と青い妃”がスタート!
「拘束する手段がほとんどないのでアクションで動きを操作することが、タイム差、勝負の分かれ目になる」(徳田氏)というナナ・テスカトリ討伐。2クエスト目は、バゼルギウス討伐のタイム下位順で行われる。そこで輝いたのが香港代表チーム“麻郁達拿曲嗲咪羅(迷ったら食ってみろ)”だ。
選んだ装備は片手剣とガンランスという組み合わせで、ひとりが闘技場の入り口からそのまま、もうひとりが翼竜で闘技場の奥へショートカットし、挟み撃ちにするという作戦。片手剣がナナに乗り、ガンランスは段差を利用してジャンプ攻撃をくり返していく。ここぞという場面でフォールバッシュをくり出し大ダメージを与える片手剣に、司会が思わず「かっこいいぞ片手剣!」とシャウト。1クエスト目のバゼルギウス討伐ではすこしミスをしてしまった香港代表の面目躍如となった。
そして、今大会の最後のクエストとなる、ナナ・テスカトリ討伐5組目は、バゼルギウス討伐でクリアータイム1位だった日本代表・AGent。
練習ではナナ・テスカトリを400体以上討伐し、「日本代表として恥じぬように練習してきました」とコメントを残し、クエストが始まった。
選んだ組み合わせはヘビィボウガンと片手剣。まずはヘビィボウガンが乗りに成功し、ナナが倒れたあとは頭を撃ってめまい値を貯めていく。「弾の選択が異常に速いんですよ、徹甲榴弾を撃ったと思ったら、もう散弾を撃っている。この前カプコンTVでもやってもらったんですが、コントローラーを持つときに昔の“モンハン持ち”みたいにして持っているんです」(徳田氏)。
ナナが動き出し、あわや暴れだすか……!? というところで、片手剣が乗りに成功。片手剣が乗り、飛翔しているあいだもヘビィボウガンは打ち続ける。そして倒れたろところに、また狙いすまして強力な弾を撃ち込んでいく。
実況するアナウンサーが「動かないナナ! もう頭がボロボロだ!!」と叫んだかと思った瞬間、狩猟成功でクエスト完了となった。
会場にはもちろんクリアータイムは表示されないようになっているが、その立ち回りのスムーズさ、体感的な時間の感覚から言って、かなりよかったのではないかという雰囲気が漂う。果たして結果は!
見事、AGentが優勝! 表彰式では万雷の拍手の中、辻本プロデューサーから優勝盾を受け取り、熱い戦いは幕を閉じた。
世界の『モンハン』仲間にいろいろ聞く! 出場者インタビュー
大会終了後、会場の控室で、本日の出場メンバーたちにミニインタビューができた。ステージの緊張がとけ、リラックスしたところでいろいろな話を聞いたぞ。大会の感想や、世界の『モンハン』人気事情にも注目!
――かわいいTシャツですね。
ゼロビッシュ ありがとうございます(笑)。これは香港にいる友だちが絵も描いて、今日のために作ってくれたんです。背中側にはチーム名にもしてある「迷ったら食ってみろ!」と書いてあります。
――ちなみに、おふたりは『モンハン』シリーズはどれくらい遊ばれているんですか?
ゼロビッシュ 僕はプレイステーション・ポータブルの『モンスターハンターポータブル 2nd』からですね。
ロウェル 私は『2G』からで、シリーズが進むに連れて周囲にプレイヤー増えて、友だちもできました。
――今日のために、練習はどのくらい積みましたか?
ゼロビッシュ 平日は4時間、休日は8時間くらいですかね。実際、僕と相棒では仕事の勤務時間が違っていて、練習時間を合わせるのがたいへんでした。相棒が仕事が先に終わるので、先に仮眠してもらって、深夜にプレイしたり。あと、会社を休んで練習もしましたよ!(笑)
――今日の感想はいかがですか?
ロウェル 世界大会は初めての出場でした。トッププレイヤーの方々が、どういう戦術を使うか、勉強になりました。ナナ・テスカトリの制御という面では、そういったトッププレイヤーたちと我々が同じ考えかたをしていたというのがわかって、誇りでもあります。
ゼロビッシュ そして、この場をお借りしてひとつ言いたいことがあります。それは、前日にホテルで練習しようとプレイステーション4をふたつ接続したときのことです。同じ部屋でひとつのWiFiからふたつの本体を接続をしようとすると、エラーが起きてしまって接続できず、困っていたんです。そうしていると、台湾チーム(Monster Hunter Forever!!)が、自分たちのポケットWiFiを貸してくれて、練習することができたんです。本当に助かったし、とてもうれしかったんです。
マイケル じつは私は、Youtuberとして活動していて、チーム名もそのチャンネルの名前なんです。
――おお、そうなんですね! やはりアメリカでも『MH:W』は盛り上がっているのですか?
マイケル 私は確か2006年ごろ、『Monster Hunter Freedom』(『モンスターハンターポータブル』の海外版)から『MH』シリーズを遊んでいますが、もっとも有名でいい受け止め方をされていると思います。世界同時発売で、とてもエキサイティングでしたよね。
――おふたりはUSA CHAMPIONSHIPの優勝者とのことですが、そのときの思い出を聞かせてください。
マイケル 私はアメリカの東海岸にあるコネチカット州に住んでいるのですが、大会はアメリカのカプコン本社がある、太平洋側のサンフランシスコで行われました。ですから、飛行機に6時間も乗って大会に参加したのですよ! それでも、プレゼンテーションの小さな大会ではなく、そういった大きな大会が行われること自体が初めてでしたので、うれしかったですね。
――今回、他国のハンターたちのプレイをご覧になっていかがでしたか?
マイケル やはりいろいろと違うんだなと発見できましたね。たとえば、アメリカのプレイヤーは自分がダメージを食らっても気にせずにドンドン攻めるプレイヤーが多いのですが、他の国の方はきちんと予測して避けて攻撃しているようです。違うやり方を見るのはおもしろかったです。
――まずは本日の感想を聞かせてください。
ソン 各国のいろいろなゲームプレイが見られて興味深かったですね。とくに日本チームのプレイにはインスピレーションを受けました。
――今日のようなタイムアタックプレイというのは韓国でも楽しまれているのでしょうか?
ラヒョウ そうですね。歴戦モンスターや新しいモンスターが配信されると、Youtubeにアップされますよ。
――『モンハン』シリーズはいつごろから遊ばれているのですか?
ソン 『モンスターハンターフロンティア』です。
ラヒョウ 僕は本作『モンスターハンター:ワールド』からです。
――今日に向けて、どのくらい練習されたんですか?
ソン 1週間で80時間くらいですかね。
――ほかの国のプレイを見て、いかがでしたか?
ソン みんな、僕たちと違う攻略法で攻撃していました。僕たちは僕たちで研究をして「これが正解だ!」と思った方法でやっているのですが、それ以外にもたくさんの“正解”を見たという思いです。
――『モンハン』シリーズはいつごろから遊ばれているのですか?
アモン プレイステーション・ポータブルのころから遊んでいます。そのころからつながりを持ってグループを作っていました。その後インターネットになって、いろいろな人と遊んでいます。
――かなり昔から遊ばれていたんですね。『MH:W』が出たとき、いろいろと変わってどう思われましたか?
アモン すごくスケールが大きくなったなと感じました。景色も美しいし。私がもともと恐竜が好きだったというのもありまして、すぐに攻撃を仕掛けて行ったのですが、ボコボコにされて(笑)。「絶対倒してやる!」と思いましたね。
――体験版のアンジャナフですかね、確かに強かった(笑)。
トウムギ ハードのスペックも上がって、超でかい進化でしたよね。
――バゼルギウス討伐の際に、ハンマー&ハンマーで空中回転攻撃をくり返すところは、会場もすごく盛り上がっていましたが、あれはどうしてああいう戦法にしようと?
トウムギ 辻本プロデューサーがカプコンTVでよくあの空中回転攻撃をやっていて、「楽しそうだな」と思ったからです(笑)。ひょっとしたらもっと効率のいい攻略法もあったかもしれないけど、辻本プロデューサーにお見せしたくて、やりました(笑)。
――今日は、2位という惜しい結果でした。感想はいかがですか?
トウムギ 全力を出したので納得です。
アモン いやもう、練習の成果をお見せできたと思うので素直にうれしいです。確かに、じつはちょっとした失敗もあったのですが、そこは我々の“伸びしろ”ということで(笑)。
――なるほど(笑)。ところで、いま掛けているメガネって、『モンハン』のコラボメガネですよね?
アモン 日本のアルクで買いました(笑)。
AGentに優勝インタビュー!
――あれ? せっかく優勝したのに、ちょっと表情が固くないですか?
――もっともっと、全身でいまの感情を表現して見せてください!
――うわーすごい躍動感! すごく喜びが伝わってくる!! こういう写真ネットで見たことある! おめでとうございます!
ああああ 何をやらせるんですか(笑)。
――すみません(笑)。まずは、本日を振り返ってみていかがですか?
George バゼルギウスは、罠とか相手を固める選択肢が多すぎて作戦に悩みましたね。
ああああ 拘束が拘束で打ち消されたりしちゃうんですよ。
――確かに、徳田ディレクターも「何を使って何を残すかが作戦のポイントです」と解説していました。
George ですから、「まずこの罠を使って、つぎにあの罠を使ったら……」あるいは「その罠を使ってこうしたら……」と、いろいろなフローチャートを作って研究しました。
ああああ そしてナナ・テスカトリは、発表されたときから「これは普通に戦うとまずい」と感じていました。今度は逆に拘束できる罠がなく、攻撃だけでいかに動きを制御するか……というのがポイントだったんですけど、じつは僕がひとつミスをしちゃって。これは本当に、狩王決定戦でもやったことのないようなミスで……。
――え、そうなんですか、見ているぶんにはわからなかったですし、実際こうして優勝されているわけで……。
ああああ 一度、乗りを失敗しちゃったんですよ。ナナは一度ミスって暴れられるとそれでもう台無しになっちゃうようなモンスターで……。
――やはり、日本代表ということで、特別なプレッシャーがあったのでしょうか?
ああああ うーん、こういう大会自体は慣れているので、プレッシャーはなかったんです。
George ただ、普段使っているコントローラーではない、会場のコントローラーを使うので、ちょっとアナログスティックの硬さが違うとか、そういう影響があったのかもしれないですね。でもその“ミス”も、ナナがあまり動かなかったので結果的には大きな影響がなく、助かったんですよ。
ああああ いやほんとに助かりましたね。ナナに感謝ですよ。暴れないでくれてありがとう! と。その後リカバリーできる程度におさめてくれてありがとう! と。ナナと仲良くなっておいてよかったなと思いました(笑)。
――(笑)。今日はほかの国のハンターのプレイも多く見られたと思うのですが、印象に残ったチームはありましたか?
George 香港チームですか、狩猟笛とハンマーという組み合わせには驚かされましたね。緊張のせいか本番ではちょっとミスっていたんですけど、聞いたらベストタイムは僕たちよりも速いんですよ。
――ええ! ということは、本当に一歩間違えていたら優勝できていなかったかもしれないくらい僅差だったんですね。それでは最後に、改めて世界一になった感想をお願いします!
ジョージ また大会の地域が広がったら、絶対におもしろくなるだろうなと思います。そのとき我々がまた1位になれるかはわからないですけど(笑)、またがんばっていきたいと思います!
ああああ これまでは国内のみだったのが、規模がおおきくなっていろいろな攻略法、考えかたが見られますよね。もっともっとタイムアタックがいろいろな地域で遊ばれるようになって、いろいろな考えかたが見られるようになったらいいいなと思います。
――ありがとうございました!
「より公式的に、規模を広げてやりたいという野望はある」(辻本氏)
最後に、辻本プロデューサーと徳田ディレクターに、本大会の感想などをうかがった。
――本日の感想をお聞かせください。
辻本 おもしろかった!
徳田 皆さんの練習の成果がすごく見られて、うれしかったです。昔から世界規模の大会をやりたかったので、それがひとまず無事できて、ホッとしています。観客の盛り上がりもすごかったです。
――今回は東京ゲームショウのブースの一角という形でエキシビション的でしたが、公式な世界大会をやる予定というのは……?
辻本 『モンハン』って、プレイヤーどうしが戦うPvPのゲームではありませんから、こういった形のゲームは運営がかなりしっかりやらないと難しいんですよ。でも、もっと世界的にやりたいなという野望というか想いは持っているんです。今回は欧州地域での出場者がいませんでしたし、ヨーロッパでも大会をやりたいですね。
――おお! 期待しています!
徳田 ついさっきも出場者の方から「またすぐに『MH:W』の大会をやってください!」って言われましたよ(笑)。
――選手たちへのインタビューでも聞いたのですが、『MH:W』は世界的な盛り上がりがやはりすごいですね。
辻本 ゲームのおもしろさは世界共通だと思いますね。海外の大会を見ていても、すごいプレーのところでは歓声が上がりますし、言葉関係なく遊んでもらえるのがやっぱりゲームのすばらしいところじゃないかなと。『MH:W』に関してはまた配信などで広めてくれた部分もありましたね。
――話は変わりますが、新情報の発表もすごかったですね。まさか歴戦王のゾラマグダラオスが来るとは。いったいどういう感じになるんでしょう……。
徳田 そうですね、古龍で、ゾラマグダラオス自体の遊びはしっかり作ってあるので、また遊んでほしいなと。開発チームに「歴戦王ゾラマグダラオスやるぞ」と言ったら「マジかよ」と驚いてはいましたけどね(笑)。また別のテンポというか、きちんと撃龍槍などを使わないと難しくなっていると思います。けっこう砦を壊されることも多くなると思いますが、でも、じつはそれが企画当初にやりたかった思想でもあるんです。ベヒーモスで培ったコミュニケーション力を活かして遊んでいただければ(笑)。
――楽しみにしています!