プレイ中、時間や空間、常識を越えてしまう摩訶不思議なゲームたち
2018年5月12日、13日に京都勧業館 みやこめっせにて開催された、インディーゲームの一大祭典BitSummit Volume 6。今回は、記者が会場でプレイした出展タイトルの中から、ゲームプレイの過程や結果が画面内で完結しない、規格外の魅力を持ったインディータイトルを紹介する。
キック&ブランコ / 3Balancos

Viveのヘッドマウントディスプレイを装着してブランコに乗り、高所でのユラユラ感を楽しみつつ、“靴飛ばし”の要領で的を狙うシューティングゲーム。靴飛ばしの方法はもちろん、キック。両足首にセットしたViveコントローラーによってプレイヤーの足の動きを検知し、キックの速度や方向に応じた軌道で靴が飛んでいく仕組みになっている。
ユーザーがVR空間を安全なものとして認識するための身体感覚的な拠りどころのひとつとなっている“足場の確かさ”をあえて奪い、その状態を楽しんでもらう……というコンセプトは挑戦的。今回、イノベイティブアウトロー賞(独創的で、革新的なタイトルに贈られる賞)を受賞したのもうなずける。


箱だけのブルース/ Flashゲーム日本代表Final

2000年代前半に隆盛を極めたFlash製ゲームのクリエイターを中心に結成され、2014~2017年開催のBitSummitで奇想天外なゲームを出展してきた“Flashゲーム日本代表”。今回はチーム名に“Final”が付け足され、チームの中で何かがひと区切りを迎えたことを予感させる出展となった。
今回出展された作品のひとつ『箱だけのブルース』は、過去に『本気の重機VSシュウマイ』を出展した制作ユニット“Wataru Nakano × MIYAZAWORKS”の新作。プレイヤーは、屋外でやむなく全裸になった男性となって、社会性を保つための唯一のアイテム・段ボール箱を駆使し、一刻も早い帰宅を目指す。本物の段ボール箱を使用する直感的・体感的な操作システム、リスクとリターンが一体化した絶妙なゲームバランスにより、多くの参加者がカジュアルにストリーキング気分を味わうことができた。



演ゲープロジェクト / RCGS(立命館大学ゲーム研究センター)

立命館大学の卒業生が、在学生の協力を得て実験的に行っている、演劇とテレビゲームを融合したプロジェクト。いざ始めると、プレイヤーは博士に作られたAIとして、博士のじつの息子と仮想空間で勝負する……という状況の芝居が、目の前でくり広げられた。対決パートは、かなりシンプルなシューティングゲームを実際にプレイ。勝利すると息子にとどめをさすか見逃すかの二択をゲーム画面外で迫られ、以降、選んだ展開の結末が、芝居で表現され終了となった。
今回出展用の脚本やゲームは、プロトタイプということで断片的かつ短いものだったが、演者の存在感や息づかいを間近に感じつつ、その世界観の中でゲームをプレイする……という体験は既存のプレイ環境では得難い、贅沢なものだった。



RPGタイム!〜ライトの伝説〜 / DESKWORKS

ゲームクリエイターを夢見る男子小学生の“手作り超大作RPG”を疑似体験できる、iOS/Android/Steam(PC)用ゲーム。「プログラミングとか難しいことはわからないけど、こんなゲームを作れたらいいな」という、ゲーム好きな少年少女が抱く夢に、小難しい理論や気が滅入る現実を押し付けることなく、それがそのままの形で叶ったとしたら……というif(イフ)が、ひたすら丁寧に作り上げられている。
記者の前に出展バージョンをプレイした女性が「泣けてきました」と言っていたのを聞き、さすがにそれは大げさでは……と思っていたのだが、実際にプレイすると、子ども時代特有の「僕はなんでもできる」という自信がチラチラとよみがえり、気恥ずかしくも決して不快ではない感覚に包まれた。
6年の開発期間を経て、今回のBitSummit出展が初公開となる本作。開発のDESKWORKSによれば、2019年初旬のリリースに向け、ローカライズを施しての海外展開も見据えつつ 、現在も細部の調整をひたすら行っているとのこと。ゲームクリエイターに憧れる現役キッズはもちろんのこと、より多くの“元・子どもたち”の心を響かせる作品としてリリースされることを願いたい。



『RPGタイム!』出展バージョンの簡易体験リポート




