コーエーテクモゲームスの『アトリエ』シリーズ20周年記念タイトル『リディー&スールのアトリエ』のプレイインプレッションをお届け。

 『リディー&スールのアトリエ ~不思議な絵画の錬金術士~』をプレイして、その完成度の高さに驚き、ガストブランドの本気を感じた。

 前作『フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~』が発売されたのが、2016年11月2日。『リディー&スールのアトリエ』の発売日は2017年12月21日であるから、発売までのスパンは前作から1年と少し。開発期間は1年に満たないと聞いている。

 そんな状況で、ここまでパワーアップしたタイトルを作り出したスタッフの皆さんはスゴイ。ぜひ、まだ遊んでいない人にも触れてみてほしい……というわけで、発売からやや時間は経ってしまったが、改めて『リディー&スールのアトリエ』のプレイインプレッションをお届けしたいと思う。

小気味よい達成感と、成長への実感が波状攻撃のようにやってくる

 『アトリエ』シリーズの魅力をひと言で言えば、“止めどきを見失う”だと思う。これは約20年前に発売された『マリーのアトリエ』から変わらない魅力なのだが、なぜ止めどきを見失うのかと言えば、“小さな目標が途切れることなく生まれ続けて、それをひとつひとつ達成していくのが楽しい”から。

 『アトリエ』の最大の特徴は、フィールドで薬草や鉱石などの材料を集め、錬金釜に投入してアイテムを作り出す“調合”システム。序盤こそ、作れるアイテムの数は限られているが、ゲームを進めるうちに、どんどん新しいアイテムが作れるようになる。まずは「いま作れるアイテムをひと通り調合しよう!」と目標を立てて取り組むだけでも、いつのまにか、かなりの時間が経ってしまうほど。

 さらに今回は、双子の主人公リディーとスールの夢を叶えるためのステップとして、スールが考えた目標“野望ノート”や、特定の条件(ある材料を採取する、特定の敵と戦うなど)を満たすとアイテムのレシピを思いつく“レシピ発想”、物語の舞台となる都メルヴェイユに暮らすキャラクターからの頼まれごとなど、つぎからつぎへと案件が湧いてきて、とにかく“やってみたいこと”づくしになる。

こちらがスールお手製の野望ノート。スールらしい文章を読むのも楽しい。
レシピを発想するためのヒントを頼りに、今後の自分の行動を考える。これが楽しい。

 そんなに案件があったら、やる気がなくなっちゃうんじゃないの? と思うかもしれないが、難度調整が絶妙で、案件ひとつひとつは、どれもそんなには難しくない。「これは、すぐに達成できそう」、「ついでに、これもちょっとがんばればできそう」と取り組むうちに、ゲームが進んでいく。

野望をクリアーしたときの音が、まさに「やったぞ!」という達成感を表していて気持ちよく、プレイヤーのやる気アップに一役買っている。レシピを発想したときの「閃いた!」といった声や音も気持ちいい。

 この“止めどきを見失う”感覚は、これまでの『アトリエ』シリーズでも味わえるのだが、『リディー&スールのアトリエ』の秀逸なところは、さらに定期的に“自身の成長への手応え”を感じられる点だ。

 まず、アイテム調合の画面を見てほしい。

 正直、“不思議”シリーズをプレイしたことがない人は、「さっぱりわからん」と感じると思う。

 最初はさっぱりわからなくても問題ない。「材料には色がついていて、特定の色のアイテムをたくさん投入すれば、アイテムに効果が付く」くらいの認識でいい。太陽や月や土星のマークの意味などは、わからなくてもゲームは進められる。

 でも、野望ノートに書かれた内容を達成したり、レシピ発想の条件を満たすうちに、ある瞬間が来る。「あ、私、この調合システムのこと、わかってきた……!」という瞬間が。太陽や月や土星のマークの意味を理解し、望みの効果を持ったアイテムを作れるようになる瞬間が。「理想の効果と特性をつけてやったぞ!」とドヤ顔したくなる瞬間が、必ず来る。

 筆者は長く『アトリエ』シリーズをプレイしているが、正直、調合システムを完全に理解しないままエンディングを迎えてしまった作品はいくつかある。最近では『アーシャのアトリエ』などがそうだった。それでもクリアーできるので問題ないし、むしろそういうバランスのほうが望ましいと思うが(複雑な調合が必須になると、ついていけないプレイヤーが出るため)、ゲームの神髄を知らないままというのは、ちょっともったいない気持ちにもなる。

 『リディー&スールのアトリエ』は、つぎつぎ湧いてくる目標が、自然とシステムについて教えてくれて、だからこそ、より調合が楽しくなる。そして、調合したアイテムを使って闘うバトルも、より楽しくなる。この“プレイヤーの理解を自然に促す”バランスは、シリーズ随一だと思う。

システムとキャラクターの変化を見るのが楽しい、それが『アトリエ』

 この秀抜なバランスが生み出された背景には、もちろん、前々作『ソフィーのアトリエ ~不思議な本の錬金術士~』、前作『フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~』の存在がある。

 とくに前作『フィリスのアトリエ』の存在は大きいと思う。シリーズ最大規模のフィールドを用意し、拠点となる町は設けずに、流れるように旅していく……というシステムを採用した挑戦作『フィリスのアトリエ』は、シリーズの新しい地平を切り拓いたが、賛否両論があった。

 未知の土地を旅する楽しさはあったが、1年という期限の中で、目的地を目指して進む旅の中では、“プレイヤーが自分の中で計画を立てて、目標をひとつひとつクリアーしていく”という、前述の『アトリエ』らしい楽しさを味わいづらかった(目的地到着後は、時間制限がなくなるが、そこまでがちょっと長い)。また、調合時に投入することでボーナスが発生する“触媒”も、その意味を理解するまでに時間がかかった。

 そんな前作を踏まえてか、『リディー&スールのアトリエ』は、旅する楽しさや、触媒による調合の深化といった、前作のよさは活かしながら、利便性とわかりやすさをグンと向上させている。

 具体的には、冒険の舞台となる“不思議な絵画の世界”が、非日常のワクワク感を演出。一方で、拠点となるアトリエと目的地を、一瞬で行き来できるショートカット機能のおかげで、ストレスフリーで計画の立てやすいプレイが実現されている。また、触媒のボーナス発生条件や、アイテムの効果ゲージが、視覚的にわかりやすいものになった。

 『ソフィーのアトリエ』、『フィリスのアトリエ』で生み出された物語とキャラクター、システムが、ユーザーのフィードバックを得て、『リディー&スールのアトリエ』という集大成が生まれた。変化していくシステムと、キャラクターの成長を見守る楽しさを、短期間で味わえる。それが『アトリエ』ならではの魅力だ。

 また、興味深いのは、“●●”シリーズの中でも人気がばらけるところ。今回の不思議シリーズでも、完成度は『リディー&スール』がダントツだと思うが、それでも「私は『フィリス』の旅情感がいちばん好き」、「『ソフィー』みたいに、ターンの始めに全員の行動を選択するバトルが好き」という人もいるだろう。同じ『アトリエ』のくくりの中で、それだけバリエーションが出せるというのもおもしろい。

 さて、『リディー&スールのアトリエ』について、しいて不満を挙げるなら、カゴの容量を増やせるようになるまでが長すぎることと、コンビネーションバトルの醍醐味が味わえるようになるまでが長すぎることか。そう、本記事ではバトルについてはあまり触れていないが、新要素満載のバトルもおもしろい(詳細は下記の関連記事で)。あと、相変わらず曲がいい(星彩平原とスールのバトル曲がとくに好き)。キャラクターもみんな味がある。

 なお、過去作を遊んでいなくても、お話を引っ張っていくのは新キャラクターなので、プレイにはまったく支障がない。……が、過去の不思議シリーズを遊んでいると、ニヤリとできる要素はたくさんある。『リディー&スールのアトリエ』を遊んだら、過去作に触れてみるのも一興。

『ソフィーのアトリエ』ではハロルさんが好きでした。元気そうで何より……欲を言えば登場してほしかったけど!
ジュリオとシャノンは出世した模様。

 筆者は全種類のエンディングを見終えて、隠しボスもとりあえず倒したところ。未達成の案件が少なくなってきて寂しさを感じていたので、今後、機能拡張アップデートやダウンロードコンテンツで、不思議の世界が広がると聞いてうれしい。そう思えるのは、「ちょっとがんばれば、自分でも、やり込み要素を達成できそう」という、絶妙なバランスあってこそ。レベル上限が解放された隠しボスを倒すのは、ちょっと骨が折れそうだが、「やる前から無理って諦めない!」という双子を見習って、がんばってみるつもりだ。

ちなみに今回のキャラクターの中では、アルトさんの造形が好きすぎて、めっちゃスクショ撮ってた。こんなクールな美少年なのに、あるときはギャグ要員になるところもすごかった。