昨今の大きな盛り上がりから、ゲーム業界の枠を越えて注目を集めているeスポーツ。昨年(2017年)、ひと際気になる動きがあった。北米バスケットボールリーグのNBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)と『NBA 2K 』シリーズの発売元である2Kの親会社、テイクツー・インタラクティブがプロフェッショナルeスポーツリーグNBA 2K League を共同設立。世界中から『NBA 2K』のトップ選手を集め、2018年からeスポーツリーグを開幕するというのだ。
あの、泣く子も黙る、世界最高峰のバスケットボールリーグがeスポーツの事業に大々的に取り組むというのは相当な驚きだが、さらにびっくりさせられるのがその本気ぶりだ。リーグは全17チームで構成され、もちろん独自のチーム名やロゴを用意。試合自体はそれぞれの選手がプレイヤーを操作するという5オン5形式を採用している。そして約4ヵ月におよぶレギュラーシーズンを経て、プレーオフが実施されるという、まさに実際のNBAの展開をそのままeスポーツに移し変えたかのような流れになっているのだ。なんとも壮大なスケールではないか。
気になるのが全85選手(17チーム×5選手)のセレクト方法だが、こちらも本格的で、この1月から2月にかけて、世界中の『NBA 2K18』プレイヤーを対象としてトライアウトを行い、各選手の実力を判断。3月にドラフト会議を実施し、全85選手を選ぶという。チームによっては予備選手も登録できるようだ。2月から行われるトライアウトに参加するには、1月31日まで実施中の予備予選において、Pro-Amモードで50試合勝利しなければいけないので、敷居は決して低くはないわけだが、世界中の誰にでもプロ選手になれるチャンスがあるというわけだ。
とにかく気になることが多いNBA 2K League。そこでファミ通ドットコムでは、NBA 2K Leagueに取材を申し込んだところ、NBA 2K League マネージングディレクターであるブレンダン・ドノヒュー氏にメールインタビューを行うことができた。詳細は本稿の後半部分を読んでいただくとして、気になるのは具体的な試合形式。まずは試合に際して、選手セレクトをどうするかだが、NBA 2K Leagueで選択できるのはオリジナルキャラクターのみで、実際のNBA選手は使用されない。全プレイヤーが、カイリー・アービング選手に……なんて事態にはならないようだ。
オリジナル選手をカスタマイズするとなると、みんな身長が高くてスピードがある最高の選手にエディットするような気もするが、それに関しては「バランスの取れたプレイ環境を整えるため、選手はリーグ用にカスタマイズされた『NBA 2K』でプレイします。試合の勝敗は完全にプレイヤーの力量に左右されます」(ドノヒュー氏)という。実際のところはどのような感じになるのか、想像がつかないが、eスポーツということで、公平性は保つようにしているのだろう。
というわけで、聞けば聞くほどワクワクせずにはいられないNBA 2K League。たとえば、いずれはNBA 2K League界のマイケル・ジョーダンだって生まれる可能性が大いにあるわけで、いろんなことを想像するだけで夢は大いに膨らむ。世界中のバスケットボールファンを巻き込んでどのような盛り上がりを見せていくのか…… 5月のNBA 2K Leagueの開幕が楽しみだ。
eスポーツにとても胸を躍らせ将来性を感じている
――相当スケールの大きな取り組みとなりますが、NBA 2K Leagueを企画した経緯を教えてください。
ブレンダン NBA 2K Leagueの設立にはさまざまな理由があります。1点目は、ここ数年のeスポーツのすさまじい成長率です。どの調査会社に聞いたとしても、「eスポーツがこれから成長するかどうか」ではなく、「その成長の規模がどのぐらいか?」が論点となるでしょう。2点目は、NBAのチームオーナーたちはeスポーツにたいへん期待しており、ある意味でリーグの設立の機会を与えてくれたのは彼らだったという点です。彼らはほかのeスポーツリーグにも投資しており、eスポーツにとても胸を躍らせ将来性を感じています。3点目は、『NBA 2K』シリーズが大成功している点です。2016年にリリースされた『NBA 2K17』の売り上げは900万本に達しており、毎日平均160万人のユーザーが楽しんでいます。2Kはリーグの強い基盤であり、最高のパートナーです。
――NBAは、ほかのプロスポーツリーグに比べて、eスポーツにより積極的な印象を受けますが、eスポーツに大きな可能性を感じる理由を教えてください。
ブレンダン NBAは70年以上続くリーグであり、2Kは大成功しているゲームです。私たちは双方の経験を活かし、eスポーツコミュニティー及びバスケットボールファンと新しい方法で関わりあえるリーグを設立するよい機会であると考えました。
――NBAとしては、NBA 2K Leagueを開催することでどのような効果を期待していますか?
ブレンダン 現在までのリアクションを考えると、とてもよい方向に進んでいるのではないかと思います。NBAは『NBA 2K』とeスポーツとして関わるのは初めてではありません。2017年に“Road to All-Star”という大会を開催し、10万組のチームがニューオーリンズでの決勝に向けて競い、観戦したファンは200万人に上りました。このように、eスポーツに大きな需要があることはすでに証明されているのです。
――17チームにした理由をお教えください。
ブレンダン 昨年、NBAとテイクツー・インタラクティブがリーグ発表した際、すべてのNBAチームに対してリーグへの参加を依頼しました。チームからの反応は非常によく、2018年から半分以上のNBAチームが参加することをとてもうれしく思います。チームオーナーたちのeスポーツへの熱意が伝わります。
――トライアウトの実施期間を教えてください。また、トライアウトはどんなことをするのか教えていただけないでしょうか。
ブレンダン Xbox Oneまたは、プレイステーション4用の『NBA 2K18』を持っている18歳以上のユーザーであれば、世界中の誰でも予選に参加することができます。最初の予選は1月1日から31日まで開催されます。その期間中にPro-Amモードで50試合勝利し、オンライン上のリーグ参加申込フォームを1月31日までに提出しなければなりません。1月中にその条件を満たしたプレイヤーのみが2月のトライアウトに招待されます。
――レギュラーシーズンは何試合行われるのですか? また、1試合何分で行われる予定ですか?
ブレンダン レギュラーシーズンは5月からスタートし、開催期間は15週間です。その後、2週間のプレーオフがあります。リーグ構成やスケジュールについてはeスポーツとNBAの両者のよい点を取り入れることを検討しています。レギュラーシーズンの試合に加え、シーズン中にもトーナメントを開催する予定です。
――85選手はアバターを作成することになるかと思うのですが、身長が高くてスピードのある選手が有利になるかと思います。つまり、85選手とも同じようなアバターになってしまうのでは……とも思われるのですが、そのへんはいかがでしょうか?
ブレンダン バランスの取れたプレイ環境を整えるため、選手はリーグ用にカスタマイズされた『NBA 2K』でプレイします。試合の勝敗は完全にプレイヤーの力量に左右されます。
――ドラフトがあるということは、17チームにはオーナーもしくはヘッドコーチに近い立ち位置の人が存在するのでしょうか?
ブレンダン チームの判断にお任せします。
――現実と同じくヘッドコーチが指揮して、選手を入れ換えて……みたいなスタイルもあり得たかもしれないと思うのですが、今回1チーム5選手に限定した理由を教えてください。
ブレンダン 最初のシーズンでは、各チームの選手は5人ですが予備選手を用意することもできます。
――85選手は“プロ”とのことですが、やはり現実と同じように試合での貢献度に応じて報酬も変わるのでしょうか?
ブレンダン 選手は全員、貢献度に応じた報酬が保証されており、福利厚生と住居も提供されます。また、トーナメントやプレーオフで賞金をもらう機会もあります。
――少し気の早い話ですが、NBA 2K Leagueは単年での取り組みとなりますでしょうか? それとも毎年継続しての取り組みとなりますでしょうか? 毎年継続して……となった場合、翌年以降の選手はどうなりますでしょうか?
ブレンダン NBA 2K Leagueは長期で存続する予定です。いずれは、新しい選手も参加可能にしていくつもりでいます。
ブレンダン・ドノヒュー氏
NBA 2K League マネージングディレクター
NBA 2K Leagueのマネージングディレクターとして総合責任者を務める。これまでに数々のスポーツチームやリーグのマネジメントを担当し、スポーツ業界において20年以上の豊富な経験を持つ。
アトランタ・ホークス、アトランタ・スラッシャーズ、 フィリップス・アリーナのチケットセールス、サービスのバイスプレジデントを務めた後、2009年NBAに入社。NBAのチームマーケティング、ビジネスオペレーションズのシニアバイスプレジデントとして、NBA、WNBA、NBA G リーグすべてのチーム戦略企画や、マネージメントを担当。2017年4月にNBA 2K Leagueのマネージングディレクターに就任。