2017年11月16日~19日の期間、韓国・釜山(プサン)のBEXCO Busan Exhibition & Convention Centerにて開催中の“G-STAR 2017”。
Blueholeは、PC用バトルロイヤルシューター『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』(以下、『PUBG』)を出展すると同時に、会期中にアジア大会を同社ブースで実施している。
そこで、本作のeスポーツへの取り組みや、リリースが12月下旬に迫る“バージョン1”(製品版)について、PUBG Corp.のCEO、Chang Han Kim(キム・チャンハン)氏に話を伺った。※一部、合同インタビューの内容を含む。
<関連記事>
(左)同席のPUBG Corp.副社長、チョ・ウンヒ氏
――先日、『PUBG』はGame of the yearの複数部門にノミネートされました。PCゲームかつ早期アクセス中の作品が候補に挙がり、とても驚かされました。このことについて、どんな感想を抱かれたでしょうか?
キム 早期アクセス中の作品を対象としていいのか、という声もいただいています。私としては、ゲームの本質=おもしろみで評価していただけたのかなと考えています。もし受賞することができれば、世界のゲーム産業にもある程度の影響を与えられるのではないかと思います。
――今回のG-STARにはBlueholeが単独ブース出展を行い、かつ『PUBG』アジア大会を開催しています。そこに込めた思いを伺えますでしょうか。
キム オフラインでのeスポーツ大会については、まだいろいろトライしている段階です。今回は初めてアジアの国々が中心となる大会となっています。これまで欧米で行った大会でのフィードバックを受け、よりおもしろい大会にできればという期待を込めて、本大会を実施させていただきました。
――Blueholeのお膝元である韓国で、今回のアジア大会を開催することの意義についてはいかがでしょうか?
キム よく知るパートナー企業も多いので、やりやすい環境だとは思います。韓国では、『スタークラフト』をはじめとするeスポーツが発達していますので、韓国で実験的に大会を行い、そこでの経験を積んだのちにグローバル展開する企業もあります。我々も来年は(日本を含む)世界でeスポーツを盛り上げていければと考えています。
――PUBG Corp.を設立されましたが、その狙いを教えてください。
キム まず、親会社のBlueholeは、ゲーム開発を主とした企業で、新しいゲームを次々と生み出すことを目的としています。PUBG Corp.では『PUBG』に特化して、『PUBG』ならではの新しい文化を作るというビジョンがあります。そのひとつとして、『PUBG』をコンペティティブな(競技性の高い)ゲームとして広げていくことが挙げられます。
――ということは、PUBG Corpが今後おもだって『PUBG』でのeスポーツ展開を行っていくのでしょうか?
キム そうですね。しかし、まずは『PUBG』をプレイすることに楽しみを感じてもらうこと(ゲームの開発)が大事だと思います。そのつぎに、人がプレイしているところを見る楽しさ(動画配信や実況動画)を伝えることを広めていきたいですね。それがだんだんと競技性に発展していけばいいと考えています。『PUBG』が一方的にeスポーツを押しつけるのではく、見て楽しいゲームになれば、結果的にeスポーツとして発展していくと思います。
――見る楽しみを広めつつ、よりよいゲームにするための開発を行なう、と。開発はBlueholeで継続するわけではなく、PUBG Corp.に移管しているのでしょうか?
キム はい。現在は、PUBG Corp.にて一貫して開発しています。『PUBG』に関するすべての業務を行っていると考えていただければ。
――そしてゆくゆくは大きな規模の大会も視野に入れている、と。
キム まだ大会フォーマットも統一していないので、競技の観点から見てどうか……という課題はあります。そのため、今回のアジア大会や、gamescomでの大会は、“インビテーション”として実験的に行っているところです。
――eスポーツという観点で、ほかのゲームにはない『PUBG』ならではの競技性や可能性はどうお考えでしょうか?
キム 野球とバスケットボールのルールが異なるように、eスポーツでもジャンルやタイトルによって、さまざまなフォーマットがあります。韓国で人気の『スタークラフト』や『CS:GO』、『LoL』とはまったくゲーム性(ルールや参加人数)が異なりますし、見る側にとっても新鮮だと思います。なんといっても『PUBG』の戦いには、1試合の中に100人ひとりひとりのドラマがあります。どう戦って、どう死んだのか。それが“見る楽しさ”につながりますし、新しいeスポーツの形を実現できるのではと考えています。
――ストリーマー(配信者)やインフルエンサーとの取り組み、支援などのパートナーシップはお考えでしょうか?
キム 金銭的な支援は予定していませんし、過去にもありません。パートナープログラムは以前から行っていまして、パートナーの方々にはカスタムサーバーを設置する権限をお渡ししています。そして現在は、カスタムサーバーの強化(機能拡張やモード追加)に取り組んでいるところです。
――たとえばギルドやクランのような、ゲーム内でのコミュニティー機能の実装は予定していますか?
キム コミュニティー機能の重要さは実感していますが、現在は開発が追いついていない……という状況です。
――不正なプレイヤー(チート行為)への対策についてはどうお考えでしょうか?
キム まさについ先日から、チート行為への本格的な取り締まりの強化を行っています。バトルアイを強化するとともに、不正プレイヤーの行動パターンや数字的な分析を行って24時間体制で監視するモニタリングチームを発足させました。先日もBAN数を発表させていただきましたが、ゲーム内の健全化につとめていますので、もう少々お待ちいただければと思います。
――先日、Steamでの同時接続者数が250万人を突破しました。ユーザーが増加の一途を辿る一方で、サーバーの強化が必要かと思いますが、その点についていかがでしょうか?
キム PUBG Corp.のメンバーには、昔からオンラインゲームに携わっている経験豊富なサーバー技術者がいます。ユーザーの増加速度が大きくて追いついていない部分はありますが、技術力に関しては問題ないと考えています。今後も、サーバーの強化に注力していきます。
――FPS/TPSに慣れていないユーザーのなかには『PUBG』を難しいととらえる人もいると思います。初心者へ向けた取り組みや施策は予定していますか?
キム たしかに『PUBG』はすべてをマスターしようとすると難しいゲームだと言えます。マップや武器も今後増えていきますし、それらに対応するために時間がかかることも理解できます。……とはいえ、そこがこのゲームを長く遊んでもらえるポイントだと考えています。現在では、チュートリアルのような要素の追加は予定していませんし、今後もおそらくないと思います。よろこばしいことに、多くの方が『PUBG』の動画を配信してくれています。それらを見て楽しんでいただくことが、チュートリアル的な意味を持っているのではないか、と思っています。
――死んで覚えることが楽しみのひとつとも言えますね。
キム はい。easy to play, hard to masterであるゲームだと考えています。
――バージョン1(製品版)についてお聞かせください。大きな要素として、マップの追加と、クライミング機能の実装があります。これによって戦いかたはどう変わるのでしょうか?
キム クライミングは、我々が考えるバトルロイヤルゲームとして、非常に重要なものだと考えていました。これまでにできなかったルートを移動できたり、小さな窓を抜けられたりして、サバイバルの本質により近づいたのではないかと思います。また、新マップの“砂漠”が追加されます。地形や建物が異なりますし、いままでとは違った戦略が生まれると思います。『PUBG』では、つねに新しいものを楽しんでいただくために、短期的なトライとフィードバックをもとに開発を行っています。ですので、プレイしていただき、どんどん意見をお寄せくださるとうれしいですね。
――『PUBG』は買い切り型のゲームですが、バージョン1のリリース後、追加コンテンツは有料になるのでしょうか?
キム いまの段階ではまだ申し上げられません。もうしばらくお待ちいただければ。
――Steamのワークショップや、MODやスキンなどに対応する予定はありますか?
キム それにつきましても、まだ申し上げられません。
――これからより多くのユーザーを獲得するための施策は何か予定されていますか?
キム まだ7ヵ月しかサービスしていませんので、まだまだユーザーが増えるのではないかという期待はあります。日本市場においては動画配信を強化する余地があるのではないかと思っています。また、eスポーツ(見る楽しみ)の活性化により、もっとアグレッシブにアピールできるかと思います。
――PC、Xbox One以外のプラットフォームでの展開は予定していますか?
キム より多くの方に遊んでもらいたいと、つねに考えています。長期的に見て、プラットフォームを拡張したいという気持ちはあります。しかし、現状ではPC、Xbox Oneでの展開に注力していきます。
――最後に、ファンへのメッセージをお願いします。
キム 日本人はPvPを好まないという見かたがありますが、非常に多くの方がプレイしてくださっています。日本の方は、自分たちの感覚や文化に合う楽しみかたで楽しんでいただいていて、とても感謝しています。日本市場での反響は、我々としても新しい発見となりました。今後はDMM GAMESとのパートナーシップを強化しつつ、『PUBG』が日本のeスポーツ振興の新たな一手となり、新たな文化を生み出せれば幸いです。