日本のクリエイターとも開発は進めている
2017年11月7日、Xbox One Xがついに発売! に関連して……マイクロソフトのシャノン・ロフティス氏に電話取材をする機会を得た。シャノン・ロフティス氏と言うと、記者もE3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ) 2016の会期に合わせて取材させていただく機会があったが、20年以上にわたってマイクロソフトのゲーム事業に関わり、いまはマイクロソフトスタジオのゼネラルマネージャーとして、ファーストパーティータイトルをハンドリングする立場にある。というわけで、シャノン氏とのやりとりをお届けしよう。興味の赴くままに、ついついとりとめもなく聞いてしまいました……。
――今日はよろしくお願いします。まずは、改めてというわけではありませんが、シャノンさんのお立場をお教えください。
シャノン マイクロソフトファーストパーティーのパブリッシングを統括し、世界のゲームデベロッパーと協力して、ゲームを弊社プラットフォーム向けに開発しています。これまでに、『ReCore』や『Quantum Break』、『Crackdown 3』、『State of Decay 2』などを手掛けてきました。Xbox One Xのローンチを迎えて、とてもワクワクしています。いまは、新コンソールのソフト、サービスの準備に忙しい日々を送っていますよ。
――Xbox One Xのローンチ時に、Xbox One X Enhanced Gamesはどれくらいに?
シャノン 150タイトルを予定しています。そのなかには『Gears of War 4』や『Forza Motorsport 7』も含みます。『Forza Motorsport 7』は、4K、HDR、ドルビーアトモスなどをサポートしており、60フレームを維持しています。とても美しいゲームですね。
――Xbox One X Enhanced Gamesにするかどうかは、どのような基準で決定するのですか?
シャノン パートナーやサードパーティーなどのスケジュールの都合や動機づけによって、進めていくかどうかが決まりますよ。
――ファーストパーティータイトルについては、すべて対応する方針ですか?
シャノン そうですね。とりあえずは『Quantum Break』まで遡って、すべてのタイトルについてXbox One X Enhanced Gamesをリリースする予定でいます。
――シャノンさんが接している、デベロッパーのXbox One Xへの反応はどのような感じですか?
シャノン 反応は非常にいいです。この夏、Xbox One SとXbox One Xを両方サポートする開発キットを作ったのですが、ひとつのソフトを“S”と“X”の設定を容易に変えられることもあり、デベロッパーの方の敷居も下げられていられるのではないかと、自負しています。
――お話をうかがっていると、Xbox One X Enhanced Gamesの開発は、比較的簡単そうな雰囲気ですね。
シャノン 私たちの立場からすると、「開発が容易」と言うのは正しくないかもしれません(笑)。今夏にご提供した開発キットは、典型的な開発プロセスにきちんと対応しています。デベロッパーさんはまず理想的なゲームとして超高解像度のゲームを作り、その後出荷するプラットフォーム用にレベルを下げて特化していくわけです。このホリデーシーズンには、Xbox One Sでゲームをリリースされるデベロッパーさんにとっては、理想に近いゲームが出せるということです。ちなみに、ちょっとしたお話ですが、開発キットは積み重ねて置くことができるので、小さなオフィスではとても使い勝手がいいと言われています。
――Xbox One Xが発売されて、今後対応タイトルもどんどん増えていくかと思いますが、ファーストパーティー担当として、とくにおすすめのタイトルは?
シャノン ここは勝手に自分が好きなタイトルを挙げさせていただきますね(笑)。私のチームが開発している『Super Lucky's Tale』です。とてもチャーミングなプラットフォームゲームで、冒険好きな狐のラッキーが主人公です。本作では、ラッキーがさまざまなワールドを探検しながら課題を解いていくのですが、バックグラウンドが非常に生き生きした世界になっています。つねにクリーチャーが動いていて踊ったり、鶏が卵を温めながら羽をパタパタさせたりしているのが見えます。チャーミングで生き生きとしていて、完全にインタラクティブな世界なんです。
――ちなみに、『Super Lucky's Tale』のプロジェクトはどのようにして始動したのですか?
シャノン Oculus Riftで『Lucky's Tale』がリリースされたときに見て、キャラクターとその可能性に強く惹かれました。ファミリーやゲーマーに楽しんでもらえるコンテンツだと思いました。そこで、開発元のPlayfulに会い、パートナーとなって、これまで楽しく仕事をしてきました。本作は音楽も素晴らしいですし、ユーモアたっぷり。ストーリーもとてもおもしろいです。
――Playfulはなかなかにおもしろそうなスタジオですが、どんなところがお好きですか?
シャノン 好きなところはたくさんありますが、ゲーム開発へのアプローチが社名に現れていることがいちばん好きです(playfulには、“遊び好きな”、“ふざけたがる”、“陽気な”といった意味がある)。新しいプラットフォームで可能性を引き出すことに長けていて、特別なゲームを作ることができるんです。Xbox One Xで、それをやり遂げていますね。
――ほかにおすすめのタイトルは?
シャノン いま、世界で大人気を誇っているゲームが弊社のプラットフォームでリリースされることにとてもワクワクしています。『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』(『PUBG』)というタイトルです。PAX オーストラリア(10月下旬にシドニーで開催)でも、Xboxブース全体の約4割のモニターを駆使してプレイされていたので、どんなにプレイヤーに期待されているのかがわかります。
――『PUBG』をXbox One Xで出すことにした理由は?
シャノン 理由はいくつかあります。まずは、大人気を集めていることです。また、クリエイターのブレンダン・グリーンと話をして、提供しているゲーム経験のビジョンが、私たちのビジョンとうまくマッチすると思ったのです。
――ビジョンですか?
シャノン PCのキーボードとマウスでのプレイに比べて、コントローラーでとてもうまくプレイできること。そして、マルチプレイを愛してやまないXbox Liveコミュニティーに、『PUBG』は最適だということです。
――今後のファーストパーティータイトルの戦略を教えてください。どんなタイトルをリリースしたいですか?
シャノン Xbox One Xのローンチから始まり、ソフトやサービスを提供していくにあたり、ゲーマーの皆さんにできるだけ多くの選択肢をご用意したいと思っています。この秋、Xboxのエコシステムへの参加をご検討されている方は、Xbox One SかXbox One Xのいずれでも、すべてのゲームが遊べるわけで、とてもお得だと思います。今回、Xbox One Xが提供されるわけですが、将来はデベロッパーが新しいエキサイティングな方法で、ハードのパワーをうまく使ってくれるようになると思います。これから新しいイノベーションを見ることができるのではないかと期待しています。
――Xbox One用の『ディズニーランド・アドベンチャーズ』や『ラッシュ:ディズニー/ピクサー アドベンチャー』、『Zoo Tycoon: アルティメット アニマル コレクション』などもリリースされましたが、今後はよりファミリー層に訴求していく方針なのですか?
シャノン 現在Xbox Oneではファミリーゲーマーに多くのゲームを提供しているので、楽しんでいただけているはずです。人気の『Minecraft』や『Super Lucky's Tale』もありますし、お話しいただいたXbox 360からの移植となる、『ディズニーランド・アドベンチャーズ』、『ラッシュ:ディズニー/ピクサー アドベンチャー』、『Zoo Tycoon: アルティメット アニマル コレクション』などもリリースさせていただきました。これらのタイトルはもともとKinect向けでしたが、Xbox One版ではコントローラーでのプレイも可能になっています。すべて4K対応で、アメリカでは価格も20ドルと、極めてお求めやすい価格設定になっているんですよ(日本での販売価格は2900円[税抜])。
――Kinectといえば、先日Kinectの生産中止が発表されましたが……。
シャノン ゲームユーザーの皆さんから明確にいただいたご意見は、「強制的にKinectを購入させられたくはない」ということです。市場には、Kinectの在庫はまだありますが、もっとも重要なのは、私たちの展開していくほとんどの仕事で、このテクノロジーはこれからも生きていくということです。ナチュラルユーザーインターフェースの重要性は高まるばかりです。現在マイクロソフトが進めているMixed Realityのテクノロジー、HoloLensは、Kinectがベースになっています。Kinectのテクノロジーはしっかりと根付いているのです。
――商業用途でもニーズは高いですしね。
シャノン Kinectのソフトウェアには、さまざまな企業や団体が興味を持っており、情報を共有しています。今後もプログラムのひとつとして、進めていきたいです。
――あと、初代XboxタイトルがXbox One Xで遊べるようになりましたが、これは今後も?
シャノン おっしゃる通りです。社内では“OG Xboxゲーム”と呼んでいるのですが、昔のタイトルのカタログを見るのはとても楽しいものです。これからも、現在のゲームプレイとして通用するタイトルを選んで提供していきたいです。後方互換プログラムの一環として、これからも以前のタイトルを現在のラインアップ追加していく予定です。Xbox 360用タイトルよりは複雑なプロセスなので、それほど早くは進まないかもしれませんが……。
――“OG Xboxゲーム”は、プロセスがそれほど複雑なのですか?
シャノン 私には技術的な詳細はわかりませんが、エミュレーターがほかのエミュレーターといっしょに、コンソールの中で動くようになるようですので……。
――“OG Xboxゲーム”のリリース目標などはあったりしますか?
シャノン 具体的な数は言えませんが、Xboxエコシステムの中で、ゲームファンの希望に沿って進めていきたいと思っています。
――せっかくの機会なので、ファーストパーティー担当として、日本の開発スタジオについてご感想がいただけるようでしたら……。
シャノン 幸いにも、これまで多くの日本のデベロッパーといっしょにお仕事をする機会に恵まれました。日本のデベロッパーとともに作ってきたゲームのクリエイティビティーとオリジナリティーにはつめに感銘を受けてきました。現在も、日本のクリエイターとのプロジェクトは進めています。まだ発表していないので、ここではお話しすることはできませんが……。日本のデベロッパーは世界のゲーム開発にとって重要だと思っています。
――最後に、日本のゲームファンにひと言お願いできますか?
シャノン 新しいXbox Oneを気に入ってもらえるとうれしいです。オンラインでいっしょにプレイすることを楽しみにしています。