WargamingとVR&ARの融合は何をもたらすのか。担当者にその可能性を訊く【TGS2017】

東京ゲームショウ2017のWargamingブースでは、VRとARのコンテンツも展示されていた。これらの新技術に注目し続け、関連会社との提携も進めたWargamingは何を目指すのか。担当者に話を訊いた。

 2017年9月21日(木)~9月24日(日)まで、千葉県・幕張メッセにて東京ゲームショウ2017が開催された。昨年から引き続き、WargamingブースではVR(Virtual Reality:仮想現実)とAR(Augmented Reality:拡張現実)のコンテンツを推していた。

 具体的には、2017年8月にビジネス提携したVR開発会社“VRTech”提供のVRゲーム2種類を展示。また、ヘッドマウントディスプレイを装着することで、ブース内に実物大の戦車“シュトゥルムティーガー”が出現するARコンテンツも好評を博していたようだ。

各ゲームタイトルと同様に、VRとARを大きくプッシュしていたWargamingブース。力の入れようが、はっきりと見て取れる。

 今回の出展について、Wargaming側としてはどのような意図をもっているのか。担当者に詳細を伺った。

シニアR&Dマネージャーのマリア・チェルノワ氏。モスクワでWargamingの新たなアイデアや企画を生み出す氏は、現在はVRをその題材として、マーケティングリーダーを務めている。

スペシャルプロジェクトディレクターのトレーシー・スペイト氏。ゲーム以外のコンテンツにおいても、かつてないエンターテインメントを生み出すのが氏の役目だ。後述するが、ARを用いた大企画を成功させた実績を持つ。

ふたつのVRコンテンツ、それぞれの利点とは?

 ドイツで開催されたgamescom 2017でもすでに発表された通り、WargamingとVRTechはビジネス提携を結び、新たなコンテンツの開発に向けて動き出した。東京ゲームショウ2017で体験可能とだったのは『CinemaVR』と『PolygonVR』という、それぞれ異なる形態のVRコンテンツだ。

『CinemaVR』のシステムを使った『REVOLVR』。4人同時プレイでの撃ち合いが熱いシューティングゲームだ。見ての通り、さほどの広さがないスペースでも設置可能で、なおかつ必要設備が少ない。

『PolygonVR』コーナーでは、秘密拠点を強襲して貨物を奪うガンシューティング『プルート9』が体験できた。モーションキャプチャースーツによって、全身の動きを反映させられるのが最大の特徴だ。

 チェルノワ氏はこのふたつのコンテンツについて、『PolygonVR』は将来的に大きなプロジェクトに使用したいもの、『CinemaVR』はより小規模なイベントなどで使用したいものと評した。

 VR自体はそこまで目新しい言葉ではない。しかし、『PolygonVR』には新しいコンテンツとして試みるに十分なスペックがあると氏は考えている。『CinemaVR』のほうはと言うと、すでにロシアのモールで人気を博しており、毎月ごとに好調なペースで設置場所を増やしているという。

 『CinemaVR』はセットアップが容易で、専門家でなくても扱いやすいのも強みだ。VRコンテンツとしては安価なことも人気の理由となっている。『CinemaVR』を設置していくことで、近年薄れつつあるアーケードゲームへの興味を復活させることもできるだろうと、チェルノワ氏は語った。

安価で設置コストが少なく、ゲームタイトルも豊富に用意されており、数多く展開できる『CinemaVR』と、VRの現時点での最高峰、全身で未知の体験ができる『PolygonVR』。2017年のWargamingブースでは、ふたつのビジネスパターンでVRの多面性を示した。

ARがもたらす、不可能を可能とする現実への付与

 続いてはARについてスペイト氏が解説してくれた。

 スペイト氏は以前、イギリスのボービントン博物館にて、同館のティーガー戦車のコレクションの中で唯一揃っていなかったシュトゥルムティーガーを、ARによる展示で博物館に出現させた。シュトゥルムティーガーの実物はドイツにあったが、さまざまな理由から、博物館への移動が難しいと判断されたのだ。

ARならではの“そこに実在する”かのような感覚。さらに、ARでなら主砲の発射シークエンスなど、実車では再現不可能なアトラクションも用意できる。

 氏が出現させたのは、戦車だけではない。イギリスの王立海軍国立博物館での記念祭典に際しては、艦艇・HMSキャロラインを再現。スマホにアプリをダウンロードするだけで、だれでもその場に艦艇を出現させることができるようになったという。

 このように、ARを活用すれば、本来は移送や再現が不可能な遺物や兵器も、手軽な手段で“出現”させることができるのだ。

 本来はドイツにあり、イギリスの博物館の空白を埋めているはずのシュトゥルムティーガーが、今回は東京ゲームショウの会場に出現した。こんな破天荒な実例を目の当たりにした以上、誰もがARの可能性を認めることだろう。

ARを活用すれば、稀代のマジシャンが行なったような現実を超えたショーが実現可能となる。これまでにない形のエンターテインメントを追求するWargamingとスペイト氏が興味を持ったことにもうなずける。

VRとARで、Wargamingは何をしでかしてくれるのか?

 続いて、VRとARを使用して将来的に成し遂げたいことを伺った。

 スペイト氏は、ARは重要な技術であるとし、またARやVRは若い世代に非常に人気があり、いろいろな市場への展開が考えられると語った。その事例として、現在も博物館とのコラボレーションが若い世代に人気であることを挙げつつ、こうした場で若者や子供たちに“教える”体験を生み出していければ幸いであるとも語ってくれた。

 チェルノワ氏としては、将来的にはVRをもっと積極的に使いたいとのこと。すでにVRTechが実現しているように、ゲームにも使用していきたいと語った。ターゲットとなる客層を喜ばせ、興奮させることができるコンテンツとしてVRは大切であると、その重要性を改めて示した。

▲Wargamingの仕掛け人であるこの両名が、ここまで推していくVRとAR。これらがWargamingの新たなエンターテインメントとして活用される日も、遠くはなさそうだ。

 ゲームそのものだけではなく、驚きや未知の体験をエンターテインメントとしてファンに提供するのが、Wargamingの理念でもある。いつも我々の想像を軽く超えていくWargamingとVR&ARが、化学反応を起こそうとしている。そのとき、いったい何が始まるのだろうか。