あの広大な世界をVRで体感できる! 日本展開も調整中
アメリカのテキサス州ダラスで現地8月24日から27日にかけて行われたゲームイベント“QuakeCon”。本来ベセスダ・ソフトワークスと同グループのid Softwareのファン向けイベントとして始まったQuakeConだが、近年はベセスダ・ソフトワークスから発売される他スタジオの作品なども出展されてきた。
今年は同社のVRレーベル“Bethesda VR”が専用のブースをかまえ、PSVR専用ソフト『Skurim VR』や、PC用VRヘッドマウントディスプレイHTC Vive対応の『Fallout 4 VR』、そして両者に対応する『DOOM VFR』がプレイアブル出展され、ファンを楽しませていた。またすでにお伝えしたように、QuakeCon開幕前にはそれぞれの海外配信日が11月17日(Skyrim)、12月12日(Fallout 4)、12月1日(DOOM)発売と発表。それぞれの日本展開についても調整中とのことなので、いずれ発表があるのではないかと思う。
このたび本誌では『Skyrim VR』と『Fallout 4 VR』について、ベセスダ・ソフトワークスでPR&マーケティング部門担当の副社長であるピート・ハインズ氏にインタビューを行う機会を得たので、その模様をお届けしよう。
なお両タイトルのデモの内容についてはE3でお届けしているので、そちらのリポートも参照されたし。本文中でも触れている通り、基本的にはどちらも超大作オープンワールドRPGであるゲーム本編をフルに収録(『Skyrim VR』はDLCも同梱)したVR版で、『Fallout 4 VR』のV.A.T.S.システムなど、一部はVRを前提にした独自仕様(VR版のV.A.T.S.は発動すると周囲の世界がスローになり、ハンドコントローラーで狙っている部位がハイライトされる)となっている。
――現世代のVRが本格化した時からいろんな人が言っていたのが、「これでいずれスカイリムやフォールアウトみたいなオープンワールドゲームにVRで行けるぞ」ということでした。強引にPC版をVR対応させるソフトもあったし、実際僕も試しました。そして今、公式なタイトルとして実現しようとしています。これはどうやって始まったんでしょうか?
ピート・ハインズ氏(以下、ハインズ) 会社としてVRについて研究を続けてきてしばらく経つ。その中の一スタジオであるBethesda Game Studiosにとっても、そもそも一人称視点の没入感あふれる世界を作ろうというスタジオなわけだから、当然VRは注目するに値するプラットフォームだった。没入感が高い世界を、さらに没入感高く訪れる体験を作れるかもしれないわけだからね。
要するに我々だってもちろん、VRで核戦争後の世界の住人になったり、雪山でドラゴンと対峙したいわけだから、まずは何ができるかというのを調べることになった。それで、これらの世界はひとつのオープンワールドとして動くことを目的に作られているわけだから「ああ、じゃあちょっとこのままだと難しいんで、一部だけ切り出してスカイリムってことにしちゃいましょう」というわけにはいかないことがわかったんだ。VRに合わせてスピンオフとして翻案するならともかく、基本的にそういう風には作ってないんだから整合性が取るのが大変だ。
だから、どうせVRにするならもう全部行こう、クエストやなんやら、みんなが『Skyrim VR』や『Fallout 4 VR』と聞いて期待するものは全部あるように、そのまま望んだように遊べるようにしよう、という方向で製品化が決まったんだ。
――業界的にはもうほとんど反則ですよね。VR専用のアクションRPGとかが「結構大きい世界作りましたよ、ボリュームありますよ」と頑張っている所に、「はい、『フォールアウト4』や『TES V: Skyrim』の世界がまるごと入ってます」とやってきたわけで。
ハインズ 「遊ぼうと思えば400時間遊べます(※)」とね(笑)。そう、これまでVRに出てきたコンテンツとは結構性質が違うものになるだろうから、そこは面白いことになるんじゃないかと考えている。(※「400時間」というのは『フォールアウト4』発売時の売り文句のひとつ)
――グループの中で先行して研究を行っていたid SoftwareのVRへの研究投資は、これらのゲームにどれほど貢献していますか?
ハインズ とても大きい。id Softwareはもちろんidの作品にフォーカスしているけども、我々はグループのスタジオ間でさまざまな情報を共有しているから。これはVR技術だけじゃなくて、モバイルやらアートやら、エンジンもそうだし、ゲームデザインの手法なんかもね。
それと付け加えたいのは、この2作品についてはBethesda Game Studiosは数ヶ月前にグループに加わったEscalation Studios(※VRタイトルの開発経験がある)と協力して開発を行っている。Escalationはここダラスにあって、idと距離的にも近い。そうやってスタジオ間の協力をしているし、『Skyrim VR』についてはPSVRでスムーズに動かすためにソニーからさまざまな知見を提供してもらっている。
――『Skyrim VR』ではワープ移動でない形式、つまりマニュアル移動はあるんでしょうか? マニュアル移動はワープと比較するとやや酔いやすい反面、より没入感を切らさずに遊べますよね。E3でスタッフに聞いた時は「それは開発中」ということでしたが、昨日遊んだデモは依然としてPS Moveを使ったワープ移動のみでした。PS Moveにはアナログの方向入力がないので、この質問は恐らく「コントローラー操作に対応するか」と言い換えることもできると思います。
ハインズ イエス。自由なマニュアル移動はできる。デモに入れていないだけで、製品版には入るとあらためて言っておくよ。デュアルショック4コントローラーを使ってマニュアル移動ができるし、PS Moveならワープ方式で移動できるという両対応だ。
デモではオフにしてある機能がいろいろあって、一部のUIもオフにしてあるし、死体からアイテムを漁るとか、宝箱を開ける、キャラクターに話しかけるとかもできない。これはできることを絞ってダラダラ時間を使っちゃわないようにして、限られた時間で『Skyrim VR』の基本的なテイストをきっちり体験してもらおうといった意図なので、製品版の仕様ではない。
――『Fallout 4 VR』はどうでしょう?
ハインズ 『Fallout 4 VR』の場合はViveコントローラーだけでワープ移動とマニュアル移動の両方に対応している(※左のタッチパッドで移動入力が可能)。
――Bethesda Game Studiosのツイートで、「『Fallout 4 VR』は12月12日にVive向けに“最初に”出るけども、それ以外のプラットフォームにもできるだけ対応したい」という旨の投稿がありました。これは具体的にどういう意味なんでしょうか。PSVR版を期待しても?
ハインズ そのツイートは今のところ、文字通りの意味でしかない。対応できるものには対応していきたいけども、まずはHTC Viveで、ということだね。
――ではその逆、PCバージョンの『Skyrim VR』はどうでしょう。
ハインズ それもそのうちわかるよ(ニヤリ)。
#Fallout4VR arrives FIRST on @htcvive on 12/12, but we still want to support as many platforms as possible. https://t.co/15AhIYWfKY
— BethesdaGameStudios (@BethesdaStudios)
2017-08-23 10:17:39
――『Fallout 4 VR』でMODサポートはどうでしょう。例えばラッドローチを置き換えられれば、数十センチサイズのゴキブリにVRの没入感で襲われるということを避けられると思いますが……。
ハインズ 現時点ではMODサポートはどちらのタイトルでも計画にない。その先はどうなるかわからないし、ファンが何か発見するかもしれないけども。
――あなたにとって、この2作品で最高だと思う部分はなんですか?
ハインズ 自分が一番いいなと思うのは、『Skyrim VR』ならドラゴンが周囲を飛び回るのを目で追って、自分の目の前に降り立つという体験。ぐるっと飛ぶドラゴンをマウスやコントローラーで追うこともできるけど、やっぱり自分の顔を自然にそちらに向けて見回すというのはいい。これは『Fallout 4 VR』でも『DOOM VFR』でも同じだね。あるいは見上げるんじゃなくて、足元を走り回るドッグミートを見るのもいい。自分が普段世界を見るようなやり方で、そのままゲーム世界を見られるのは、その世界をより真実味があるものに見せてくれる。個人的には自分は一人称視点で酔いやすい人間で、実はあまりVRを長く遊ぶことができないんだけども、それでも自分が世界の一部であることを実感できるのは嬉しい。
――どちらのゲームも、VR観光という点でも楽しめる場所が無限にありますしね。
ハインズ まさに。核戦争後の廃墟から夕焼けを眺めたり、雪山の下に広がる広大な世界を見下ろすだけでも楽しいはずさ。
――Bethesda VRからもっとさまざまなゲームが出てくることを期待してもいいでしょうか?
ハインズ 端的には「イエス」と言えると思う。でも、どのスタジオのどのゲームがどんな形で出るかは、その時になってみないとね。我々パブリッシング部門として「どんなアイデアがある? VRでどんなことをやりたい?」と聞いた時に各スタジオから「これをやりたい」「こんな感じで」というのが出てくることもあると思うけども、『Skyrim VR』のように移植のような形のこともあれば、『DOOM VFR』のように翻案と言えるものもありえるだろう。新IPが出てくるかもしれないね。各スタジオが研究はしているけども、それで何をやるか、まずはスタジオ次第だ。
――『The Elder Scrolls: Legends』のVRも面白そうですよね。VRでカードをバチーンと出したら目の前にクリーチャーが出てくるような。
ハインズ それは僕もやりたいよ(笑)。