『UNDERTALE』の開発者トビー・フォックス氏に聞く 「すごく楽しいゲームを作りたい」その思いが本作になった

世界中から高い評価を得ている『UNDERTALE』の作者であるトビー・フォックス氏に実施したメールインタビューをお届けしよう。

●トビー・フォックス氏に聞く

 2015年にPC向けにリリースされるやミリオンヒットを記録し、数々の賞に輝いた2DタッチのRPG『UNDERTALE(アンダーテイル)』。E3 2017で、プレイステーション4とプレイステーション Vita向けにリリースされることが発表されるや、会場から大きな歓声が湧き上がったことからも、その人気ぶりはうかがい知ることができる。

 週刊ファミ通では、2017年7月20日号(7月5日発売)にて、『UNDERTALE』の特集記事を掲載し、開発者のトビー・フォックスさんからコメントをいただいた。スペースの都合で誌面ではどうしても掲載し切れなかったそのコメントを、ファミ通.comにて全文紹介。トビーさんらしさを彷彿とさせる内容なので、ぜひともご一読を!

■テーマのひとつ“決意”の意味とは?

――まずは、『UNDERTALE』を開発するに至った経緯を教えてください。

トビー 2012年の12月、大学の三回生だったころ、ウィキペディアを拾い読みしていたら、配列データ型の記事を見つけたんです。当時はデータ型の知識なんてまったくなかったのですが、記事を読んで、「これで何らかのゲームを作れるんじゃないか」と気づきました。それで、まずはテキストを表示させるシステムをプログラミングして、つぎに、それを使って戦闘システムを作りました。そして、戦闘システムを作っているうちに、このシステムを使って語れそうなストーリーのアイデアがいろいろ湧いてきた、という感じです。それからアーティスト探しに取りかかったのですが、テミー・チャンのブログを見つけて、本人に単刀直入に問い合わせてみました。「僕とゲームを作りませんか?」って。テミーとは話したこともなければ知り合いでもなかったのですが、彼女は「イエス」と言ってくれて、それで僕の未来はすっかり変わったわけです。テミーには感謝しています。2013年の初めにデモ版が完成して、Kickstarterのプロジェクトを立ち上げました。あとは、皆さんご存じのとおりです。

――本作のテーマは何になりますか?

トビー いくつかあるのですが、代表的なものだと“決意”ですね。“決意”は英語では“Determination”と言いますが、この言葉にはいろんなニュアンスが含まれています。ここでは“意志の力”というような意味ですが、“決断”のような意味にもなり得ます。“ケツイ”は、運命をコントロールする力……自分の決断や望みを、現実に変える力です。だから、とても重要な力と言えますね。これを持たない人は、世の波に押し流されてしまうでしょう。とはいえ、誤解しないでもらいたいのは、“決意”を持つことは生きる上で大事なことだけど、必ずしも善ではない、いうことです。あまりに固すぎる決意を持った人は、たったひとりで世界の未来すら変えてしまうかもしれない……。そんな力が、果たしてよいものなのか悪いものなのか、これは誰にもわからないでしょう……?

――独特の戦闘システムを採用した理由を教えてください。

トビー まず、『真・女神転生』シリーズの敵と話せるシステムがすごく好きだったので、あんなふうにできたら楽しいだろうなと思いました。それから、『マリオ&ルイージRPG』シリーズで敵の攻撃をよけるのも好きでしたし……『東方Project』がすごく好きなので、弾幕系も楽しいだろうなと思いましたし……。要するに、すごく楽しいゲームを作りたかった、ということです。弾幕のパターンは、よけるのが楽しくなる形にするのが大事だと思いました。そのモンスターの性格を表す、印象的なパターンにしたかったんです。ゲーム中のモンスターにとって、弾幕のパターンは自己表現の手段、という感じ。ですので、たとえば“アーロン”というマッチョなモンスターの場合、彼は鍛えあげた筋肉を見せびらかしたいと思っているので、筋肉の形の攻撃技も登場します。わかりやすいでしょう?

――世界観やキャラクターがとても魅力的ですが、発想したきっかけを教えてください。とくに、キャラクター造型に関して、心掛けた点などはありますか?

トビー キャラクターによって、作った理由や、作るときに受けた影響は違うので、心がけた点というのも、キャラクターごとにぜんぜん違います。でも、ひとつ共通して言えるのは、どのキャラクターにもちゃんと“筋が通っている”、ということ。架空の世界を舞台にしていても、キャラクターたちの考えや行動は、リアルでウソのないものにしたかったんです。彼らには“人格”があって、ちょっと変なところがあったり、欠点があったり、好きなものや嫌いなものもある。信念も持っているし、間違うこともあれば、考えを変えることもある。幸せ、悲しみ、優しさ、憎しみ、勇気、恐怖……そういういろいろな感情もあらわにします。そして、彼ら“モンスター”は“敵”だけど、ただポツンと存在しているわけではないんです。たとえゲームの中で描かれていなくても、彼らには家族がいて、友だちがいて、目標もあって、いろんな人と関わり合いながら日常を送っている……。なぜなら、その人をその人たらしめるのは、本人だけじゃなく、周りにいる人たち……。その人が大切に思っている人たちでもあるからです。つまり彼らは、“愛”に溢れる“モンスター”なんですね。だって、愛こそが、人を形づくる要素でしょう?

 ちょっと話が深くなってしまいましたが、キャラクター作りに生かした要素は、ほかにもあります。もともとこのゲームは、自分と友だちだけのために作っていたので、一部のキャラクターは僕の知り合いからインスピレーションを受けています。たとえば“サンズ”と“パピルス”は、ジョーンズという友だちへのジョークとして誕生しました。ジョーンズはスケルトンが大好きで、スケルトンが出てくるコミックを描いているのですが、そのコミックの主人公が“Helvetica”という名前なんです。“Helvetica”は、世界中で広く愛用されているフォントの名前ですね。それと、ジョーンズはスケルトンが大好きなのに、スケルトンをネタにしたジョークは嫌いで……。だから、嫌がらせのつもりで、スケルトンのキャラクターをふたり作って、“Comic Sans”と“Papyrus”という、米国ではすごくダサいと評判のフォントにちなんだ名前をつけました。そして、そのダサいフォントで、スケルトンネタのジョークを連発させたんです(笑)。でも、どういうわけかジョーンズはこのふたりを気に入ってくれて……。すごくうれしいことですね。

▲サンズ(左)とパピルス(右)。

――本作は日本のゲームに影響を受けているとのことですが、トビーさんは日本のゲームのどのような点に心惹かれているのですか?

トビー 僕が日本のゲーム、とくに『MOTHER』シリーズをプレイして影響を受けた点は、映画や本やテレビにはできない方法で、感情を揺さぶってくれるところだと思います。『MOTHER』シリーズ、とくに『MOTHER3』は、ユーモアとシリアスさのバランスが絶妙で……。あまりシリアスじゃないところでは、まるでゲームと友だちになったみたいに感じる。だからこそ、悲しい場面になると、余計に心に刺さるんですよね。『MOTHER』シリーズに関しては、僕は10年以上、ファンサイトで活動していた時期があって、いまいっしょに仕事をしているFangamerのスタッフも、そのファンサイトのユーザーだった人たちです。『MOTHER』シリーズと触れあってきた時間があまりに長すぎて、出会って以降、自分がどう変わったのか、よくわからないぐらいです。出会う前の自分がどんなだったか覚えていないもので。要するに、僕の血となり肉となっているわけですね。もしその部分を奪い取られたら、死んじゃうかもしれないです(笑)。

――開発期間は2年7ヵ月とのことですが、開発の日々を教えてください。

トビー ごめんなさい、開発中のことは、もうほとんど覚えてないんです。毎日コンスタントに作業できていたわけではないのは覚えてますが……。でも、デモ版の制作当時から、ちゃんと完成させられる範囲で開発を進めるようにしていたので、つねにゴールは視野に入っていて、それが、最後までやり抜く力になりました。だから、取り立てて言うほど立派なことじゃなくて、強いて言うなら、自分にも達成できる現実的な目標を設定する能力があった、というだけだと思います。大きな挑戦をすることも大事ですけど、ひとりでバベルの塔を完成させることを目標にしたら、とても達成できませんよね。これは、自分でプロジェクトを立ち上げる人が、陥りがちな落とし穴だと思います。開発中のことを覚えていない理由は……ゲームのキャラクター風にご説明したいと思います……。

(トビーの代理として、ステージ下手から1匹のイヌが現れた)

イヌ:どれどれ……開発中のことを思い出してみるんだワン!

(カメラ、イヌの頭にズーム。頭の中には、2匹の小さなイヌがいる)

脳ミソイヌ1:ワン! ゲーム開発中の記憶を出すんだワン! どこにしまってあるんだワン?

脳ミソイヌ2:あー、あれねー……もういらないから、ゲームが完成したときに全部捨てたワン。

脳ミソイヌ1:へ!? 全部!? なんでワン? スペース足りなくなったワン? 代わりに何を入れたワン?

(頭上から『UNDERTALE』のファンアートが大量に降ってくる。押しつぶされる2匹のイヌ……)

脳ミソイヌ1&2:イェッフゥー!

イヌ:イェッフゥー!

――『UNDERTALE』は世界中で大ヒットを記録しましたが、ここまで評価されると予想していましたか? ここまで評価された理由はどの点にあると自己分析されていますか?

トビー どんな反応があるかは、まったく予想できませんでした。そもそも自分と友だちのために作ったので、「僕と趣味がまったく同じ人なら、気に入るんじゃないかな」ぐらいの気持ちでした。でも、意外にもそういう方がたくさんいたみたいです。自己分析というのは、したことがありません。どうしてヒットしたのかは理解していますが、ヒットさせるためにゲームを作るわけではないので……。それなら、頭を別のことに使います。たとえば……

(イヌの頭上にからっぽの吹き出しが現れた)

(吹き出しはからっぽのままだ)

――今回プレイステーション4とプレイステーション Vita版の発売が決定しましたが、率直な感想を教えてください。

トビー これまではPC版しかありませんでしたが、日本では家庭用ゲーム機でゲームをプレイするほうがポピュラーだと聞きました。だから、まったく新しいユーザー層に遊んでもらえることがすごく楽しみで、とても感謝しています! それに、プレイステーション Vita版なら出先でもプレイできるのがいいですよね。もし、外でゲームをしながら涙を流している人がいたら、なんのゲームか一目でわかりますね!

――オリジナル版とプレイステーション4&プレイステーション Vita版で違いがあったりしますでしょうか?

トビー ほんの数ヵ所、小さな変更が必要な部分はありましたが、プレイステーション版もPC版とほぼ変わらないゲームエクスペリエンスになるように、現在鋭意制作中です。

――合わせて日本語版の配信も決まりました。日本でも『UNDERTALE』のファンは多く、独自に日本語化されていたりもしますが、そんな反響についてはどう思いますか?

トビー 僕が大好きで、これまで影響を受けてきたゲームの多くは、日本という国と文化が生んでくれたものです。だから、日本は僕にとって特別な場所なんです。『UNDERTALE』を日本の皆さんがこんなに楽しんでくれていることは、僕にとってすごく大きな意味のあることです。

 この気持ちを、またゲームのキャラクター風に表現してもいいですか……?

(トビーの代理として、ステージ下手から1匹の小犬が現れた)

イヌ:SU・GO・I! SU・GO・I! SU・GO・I! SU・GO・I! SU・GO・I! SU・GO・I!

(イヌは電柱にぶつかって転んだ)

イヌ:本当にありがとうございますワン!

――まったくもって気の早い話ですが、『UNDERTALE』の続編の予定などはありますか?

トビー 『UNDERTALE』のストーリーは、とてもいい余韻を残して終わっていると思うんです。それを……本当に……壊してほしい……?

――本作を心待ちにしている日本のファンにひと言お願いします。

トビー 皆さんのサポートには、本当に感謝しています! ありがとうございます! 発売をお楽しみに!

(けむり弾を投げるトビー)
……。

(煙が消えても、まだ立っているトビー)

トビー やべっ!

 

 最後に、今回の記事に合わせて提供してもらった資料を紹介!