5ヵ国10名の『ウイイレ』エリートが激突
2017年4月23日、東京・JFAハウス 日本サッカーミュージアムにて『ウイニングイレブン 2017』(以下、『ウイイレ 2017』)のアジア大会、“PES LEAGUE ROAD TO CARDIFF~アジア地域決勝~”が行なわれた。ここではその模様をリポートする。
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本イベントは現在世界各地で行なわれている、“PES LEAGUE ROAD TO CARDIFF”(PESことPro Evolution Soccerは『ウイイレ』の海外でのタイトル名)のアジア地域の決勝大会。韓国、香港、東南アジアの代表に、前日に同会場で行なわれた日本代表決定戦で好成績を収めたプレイヤーを加えた以下の10名が、ウェールズの首都、カーディフで行なわれる世界大会への切符をかけて戦った。
・hulrestar(韓国)
・Leopard(韓国)
・JK(香港)
・verysutton(香港)
・Yunan(インドネシア)
・Razak(マレーシア)
・シロー(日本)
・まやげか(日本)
・ごんた(日本)
・じょー(日本)
大会は、まず決勝トーナメントに進む4名を決定するためのグループステージ(5人x2リーグ。各グループの上位2名が決勝トーナメント進出)からスタート。
Aグループは前日の日本代表決定戦から多くのゴールを決めて勝利を重ねてきた、じょー選手の攻撃力が爆発。初戦こそ2-2で引き分けるも、その後は6-0、4-1、7-1というスコアで勝利し、無敗での1位通過に成功。続く2位につけたのは「オフラインの大きな大会への参加は初めて」というシロー選手。2戦目のじょー選手との試合には敗北するものの、残る3試合で勝ち点を稼ぎ、決勝トーナメントへ駒を進めた。
一方のBグループは最終試合まで誰が勝ち抜くかがわからない“死のグループ”的展開に。序盤は参加者で唯一の“非バルセロナ”、パリ・サンジェルマンを操作して早々に2勝を挙げたverysutton選手が1位抜けの有力候補と思われたが、残る2戦を1敗1分けで終えてしまい、3位でフィニッシュ。決勝進出を果たしたのはそのverysutton選手の勢いを止めたまやげか選手とLeopard選手。両者ともに勝ち点8、得失点差は3で並ぶという接戦だった(グループリーグ後に行なわれたプレーオフの結果により、1位はまやげか選手、Leopard選手は2位に)。
カーディフへの切符+優勝賞金2万ドルを手にしたのは……
勝てば世界大会行きが確定する準決勝は、1st leg、2nd legの2試合の勝敗、ゴール数で決着をつける試合形式(現実のサッカーとは異なり、得点にホーム/アウェイの差はなし)で、じょー選手とLeopard選手、まやげか選手とシロー選手が激突した。
準決勝1試合目じょー選手 vs Leopard選手の1st legは、無敗&得失点差15という勢いに乗って勝ち上がってきたじょー選手がキックオフ直後の前半2分にチャンスを作り出し、それをメッシのヘディングで先制。しかしその後はLeopard選手がグループリーグから見せていた細かいドリブルテクニックと現実のバルセロナ以上にショートパスでの繋ぎにこだわる姿勢で試合のペースを握る。Leopard選手の猛攻に耐えていたじょー選手だが、後半55分を過ぎたあたりでついに最終ラインを崩され、1-1のイーブンに。するとここから試合が一気にハイスピード化。両者が交互に速攻とカウンターを仕掛ける展開になった結果、1st leg終盤は激しい点の取り合いへと移行。勝敗はこの攻めあいの中で3点を奪ったLeopard選手が3-2で勝利を収めた。
そのまま間を置かずに行なわれた2nd legも、1st legの後半と同様にテンションの高い攻めあいでスタート。しかしその主導権を握ったのは、1st legとは異なりじょー選手側。前半20分過ぎにゴールを決めると、後半もその勢いを持続。51分にLeopard選手にゴールを決められ2試合のトータルスコア3-4で再び優位に立たれるも、リスタート後の1分ほどで追いつき4-4。そして後半60分にはLeopard選手のミス(とは言えないレベルの小さな綻び)をつき、メッシを起点にしたカウンターが炸裂。フィニッシュはスアレスによる“スコーピオンキック”での劇的ゴールでトータルスコアを5-4に逆転。以降もLeopard選手にペースをほとんど握らせず、世界大会への出場権を獲得した。
アジア代表の残り1枠をかけたまやげか選手対シロー選手の1st legは、試合開始からシロー選手操るバルセロナの選手たちがまやげか選手のゴールに絶え間なく襲いかかる展開でスタート。しかしこの前半15分過ぎまで続いたシロー選手のシュートラッシュをなんとか無失点で耐えきると、前半25分を超えたあたりからは試合は徐々にまやげか選手のペースに。前半30分過ぎに先制点をもぎ取ると、その数分後には2点目を獲得し、得点差とともにピッチの主導権も逆転した。
しかし、シロー選手も後半に入ってからは反撃。大会参加者で唯一3バックを採用して堅牢な守備を築いていたまやげか選手の最終ラインの中央をスアレスで破り1点を返す。ここからシロー選手の逆襲開始か!? と思われたが、まやげか選手はいっさいの動揺を見せず、その後も試合を優位に展開。後半74分ごろに追加点を挙げると1st legをそのままクローズド。そしてさらに圧巻だったのは2nd legで、まやげか選手はキックオフから10分足らずで2点をゲット。その後も動揺が見られるシロー選手に立ち直る一分の隙も与えずに攻め続け、試合終了までには8ゴール、トータルスコアでは11-2という圧倒的な結果で決勝へ駒を進めた。
日本人対決となったアジアの頂点を決める決勝戦は、勝てば2万ドル、負ければ1万ドルの1発勝負。ここまで大量のゴールを積み重ねてきた両者だったが、試合展開は準決勝に比べれば落ち着いた入りかたでスタート。お互いが大きな隙をさらすことなく、時間が経過していった。試合が動いたのは前半35分。まやげか選手がゴールキーパーのテア・シュテーゲンに蹴らせたショートパスをじょー選手のメッシが前線でカット。そのまますかさずシュートを蹴り込み、これが先制点となった。
じょー選手はさらに前半終了間際に追加点を獲得、後半に入ってもじょー選手がやや優位にボールを回していたため、このまま試合終了か!? と思われた後半70分過ぎ、まやげか選手がついに反撃。スローインから作ったチャンスをネイマールでモノにすると、フォーメーションの微調整(4トップに近い布陣)と交代枠をすべて使い切る采配で追撃。その執念が結実したのは後半86分過ぎ。ゴール前でパスを収めたスアレスにあえてすぐにシュートを打たせずタメを作り、100%枠を捉えられるコントロールの効く状態で冷静にシュート。これで2-2の同点にしたのち、アディショナルタイムにも2点目と似た崩しからまたもスアレスがゴールを決め、まやげか選手が劇的な展開でアジア王者の栄冠を手にした。
■PES LEAGUE ROAD TO CARDIFF~アジア地域決勝~ 準優勝 じょー選手インタビュー
――準決勝が一番きびしい戦いだったと思うのですが、試合中はどんなことを考えてプレイしていましたか?
じょー 準決勝は苦しかったですね。準決勝は2試合とも基本的に向こうがペースを握っていて、ぼくが耐え忍ぶ……という展開だったので。相手のコースを防ぎつつ、なんとかスペースを見つけてという感じで戦いました。1戦目はとくにLeopardさんのムービング、2列目から飛び出してくる動きに全然対応できていなかったです。それで2試合目は全体的にフォーメーションを中央に寄せたりして、外はある程度捨てても中の守備を安定させたいと思いました。そのおかげか2戦目の守備はわりとよかったかなと思います。
――準決勝最後の勝ち越しゴールはすごかったですね。決めた瞬間から“スコーピオンじょー”って呼ばれてましたが?(笑)
じょー 名前ついちゃいましたね(笑)。あれは中のスアレスが空いていたので、ここしかないなと思ってイニエスタにフライスルーパスを出させました。スコーピオンシュートはいつも通り、□ボタンを押しただけなんですけどね。
――逆に決勝はいい入りかたができたと思うのですが。
じょー そうですね。もう少し押し込まれるかと思ったのですが、思ったより自分のサッカーができた上に前半だけで2点取れましたし。ただ後半はまやげかさんが対応してきてリズムをつかまれたので……正直2点目を取られたときは「もう1点取られるだろうな……」ってぐらい押し込まれましたね。守備は課題ですね。3点目ももう少しディフェンダーの寄せが早かったり、そもそもパスが切れていれば失点しなかったので。世界大会では逆転負けしないように練習したいと思っています。
――じょー選手もまやげか選手もリスタートから点を取るのが非常にうまいと感じたのですが、なにか特別に心がけていることはありますか?
じょー (ゲーム的に)ゴールが入りやすいしくみがあるわけではないと思いますけど、点を取った後も取られた後も「やってやるぞ」とは思うので、メンタル的な効果はあるのかもしれませんね。
――こういう大会に出る経験はいままでありましたか?
じょー ほとんど初めてですね。(オフラインの大会に出たのは)去年出たレッドブルの大会が初めてぐらいです。
――今日は海外のプレイヤーと対戦しましたが、ふだん対戦している日本人とのプレイスタイルの違いとかは感じましたか?
じょー そうですね。とくにLeopardさんみたいな(サイドで)ムービングを使ってこちらの視線を誘導して、中のスアレスをフリーにさせる……みたいな形はなかなか日本人相手だと見ないですね。ただ裏へ抜け出すんじゃなくて囮になる動きかたっていうんですかね。そこは新鮮でした。
――世界大会へ向けて、イメージしていることはありますか?
じょー 公式サイトに上がっているPESリーグの予選の動画なんかはちょっと見たりはしたんですが、ホントにどこの地域の人も、とくにヨーロッパやブラジルの人は『ウイイレ』がうまくて。楽しみしかないですね。強い人と戦うのが『ウイイレ』をやってて一番楽しいと思える瞬間なので、ふだんは対戦できない強い人たちと戦いたいですね。ベストを尽くして楽しみたいと思います。
■PES LEAGUE ROAD TO CARDIFF~アジア地域決勝~ 優勝者 まやげか選手インタビュー
――今日はもちろん優勝を目指してたと思うのですが、勝てる見込みみたいなものは感じていましたか?
まやげか とにかく1試合1試合集中してやらなければいけないとは思っていて、予選突破、優勝とかいろいろ考えてはいたのですが、目の前の試合に集中することを心掛けました。その結果が優勝につながったと思います。
――今日の試合を見させてもらうと、準決勝、決勝に限らず、試合中の修正やコントロールがうまいなという印象を受けました。
まやげか 自分はふだんから同じ人との連戦がけっこう得意なんですよね。1試合目で相手の特徴をつかんで2試合目で活かす……っていうのは、今日のカーディフ行きを決めた試合(準決勝)もそうですね。最初の10分はホントにきつかったんですけど、あそこですぐに修正できたのは大きかったです。逆に決勝は2点差になったから開き直れたっていうのがよかったというか。「3‐0で負けても4-0で負けてもいっしょだ」と思ったので、FWの枚数を増やして、より攻撃的にいけましたね。
――準決勝の1st legの後半、1点返された後ぐらいですかね? あの時間帯にふつうなら中央に戻してパスで崩すのを選びそうなシチュエーションで、あえてサイドの角度のあるところからシュートを打つシーンが何度かありました。あれって、相手の意識を散らすためにあえてやったプレイですか?
まやげか 「これ(意外な場所からのミドルシュートなど)もできるんだぞ」っていうのを見せて、相手の守備が後手に回ってくれたら……という意図はありましたね。相手に多くのことを考えさせるっていうのは意識してやっています。
――あと今日のプレイヤーで唯一3バックを採用していましたが、これの狙いは?
まやげか 3バックには“圧倒的に相手が対戦慣れしていない”っていう利点がありますね。試合が始まったら相手はまず3バックに慣れるところから始めないといけないので。自分は逆にやり慣れた4バックと戦うので、試合開始の時点でこちらがちょっと有利になっていると思いますね。
――なるほど。やり慣れていないといえば、グループリーグの相手に唯一パリ・サンジェルマンを使っている選手がいましたが、あれはやりづらかったですか?
まやげか はい、やりづらかったです。大会期間中にはバルセロナとしか対戦していないので、パリの選手の特徴が正直あまりわかっていなくて。試合に入ったときにはそういう点でギャップを感じましたが、能力自体はバルサの選手のほうが高いと思っているので、落ち着いてやれました。
――今日オフラインで対戦して、外国人プレイヤーと日本人プレイヤーの違いを感じたりはしましたか?
まやげか 日本人よりも直接的にゴールを目指しているという感じはしましたかね。ミスを恐れていないというか、けっこうシュートを打ってきますね。日本のプレイヤーは決まるのがきびしそうなところからシュートを打つよりは、確実な状況を作ってから打ちたいって感じがありますよね。
――そのあたりはリアルサッカーにも通じる話かもしれませんね。世界大会への出場が決まりましたが、いまの時点でイメージしていることはありますか?
まやげか 全然ないですね(笑)。ヨーロッパどころか今日までアジアの人ともほとんど対戦したことがなかったので。『ウイイレ』の世界大会ではなかなか日本人が結果を出せていないと聞いているので、「日本人でもできるんだぞ」、というのは見せたいですよね。優勝を目指してがんばりたいと思います!