シリーズプロデューサーの飯塚隆氏を直撃
2017年3月にアメリカで開催されたエンターテイメントイベント“サウス・バイ・サウスウエスト”にて、正式タイトルとゲーム映像が初公開された『ソニックフォース』。セガを代表する『ソニック』シリーズの最新作にして、ひさびさの正調3Dソニックは、いかなる内容なのか。ロサンゼルスで活動中のシリーズ統括プロデューサー飯塚 隆氏に、気になる内容について詳しく聞いてみた。
※本稿は週刊ファミ通4月27日号(4月13日発売)に掲載されたインタビューの完全版です。
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『ソニック』シリーズプロデューサー
セガゲームス飯塚 隆氏
【『ソニックフォース』ゲーム概要】
世界は、新たな力を手に入れたエッグマン軍の手により、99%が支配されようとしていた……。その危機に立ち向かいのはソニックとその仲間たちレジスタンス! 超音速ハイスピードアクションで、新たな力を使うエッグマンの侵攻を阻止しよう!
そして、別次元から来た強力な助っ人“もうひとりのソニック”! 彼はなぜこの世界に来たのだろうか?
ふたりのソニック、ふたつのスタイルのハイスピードアクションに加え、さらにもうひとつの新たなスタイルも登場! 3つのスタイルを使いこなし、エッグマンの手から世界を取り戻しその野望を打ち砕け!
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日本のソニックチーム開発による待望の3Dハイスピードアクション最新作!
――まずは、『ソニックフォース』の企画は、いつごろどのように立ち上がったのでしょうか。
飯塚 アニメ『ソニックトゥーン』発のゲームがアメリカで制作されている一方、日本のソニックチームとしては、スタンダードなモダンソニックの進化系を提供したいということで企画がスタートしました。『ソニック ロストワールド』(2013年)の開発が終わった直後ですから、かれこれ3年ほど前です。
――タイトル名の由来は?
飯塚 フォースという言葉は力や軍隊といった強い意味があります。その言葉の通り、ソニック率いる仲間たちvsエッグマン軍という、ふたつの強大な力と力がぶつかり合う。そういったゲームの世界観を表す意味でフォースに決めました。
――世界をほぼ手中に納めたエッグマンに、ソニックと仲間たちが立ち向かうというような?
飯塚 そうですね。いままでは平和な世界に悪巧みを仕掛けたエッグマンをソニックたちが弾き返すという形でした。ですが、今回はエッグマンが世界をほぼほぼ占領してしまっているので、ソニックたちはあくまで少数勢力であり、レジスタンスとして強い力に立ち向かうというのがコンセプトです。
――では、エッグマンが支配している世界をひとつひとつ解放していくような展開に?
飯塚 ストーリーに関してはまだあまり多くは語れませんが、ここのところ、シリアスなストーリーの中でソニックが活躍するという、『ソニックアドベンチャー』の流れを汲むタイトルを展開してこなかったので、今回はストーリーを楽しみながらアクションゲームを楽しめる形にしています。
――クラシックソニックの登場はサプライズですが、これはどのような意図から?
飯塚 『ソニックジェネレーションズ』で初めてモダンソニックとクラシックソニックが共演しましたが、あれはあくまで20周年のお祭りというコンセプトのもと、共存しえないふたりの共演となりました。今回は、アニバーサリーイヤーではないのですが、強大な敵に立ち向かうソニックの仲間たちの中に、クラシックソニックも仲間入りさせてあげたいなという思いから、プレイアブルキャラクターとして出演させました。どうして彼がこの世界にやってきたかという点は……いまはまだお話できませんが。
――モダンとクラシックではゲームの遊びが変わってくるのでしょうか?
飯塚 そうなります。久々のソニックチームプロダクトということで、ユーザーさんにはブーストを使った3Dソニックのハイスピードな遊びであるモダンソニック、それと従来の2Dのクラシックソニックの遊び。このふたつは提供したいなという思いがありました。従来の『ソニック』が好きだったファンの気持ちに応えられる形でこのふたりを出しているので、皆さんの期待に応えられるゲームプレイが展開すると思います。
――第3のスタイルがあるとのことですが、いったいどのようなものになるのでしょう。
飯塚 『ソニックフォース』には3つのプレイスタイルがあって、モダンソニックではブーストを使って進んでいく3Dハイスピードアクション、クラシックソニックでは2Dタイプのアクションとなります。それぞれのスタイルにあわせて最適なアクションが楽しめるステージを用意しています。ファンの皆さんの予想では「クラシックとモダンが出たから、つぎはトゥーンソニックじゃないか」なんて言われていますが、そうではありません(笑)。おそらく皆さんが想像されていないであろうキャラクターになります。その第3のキャラクターが物語のキーにもなってきますし、ゲームの大まかな特徴を体現するキャラクター、とだけ言っておきます。E3ではプレイアブル出展の予定です。
新ゲームエンジンの採用で美しくも独自の映像を提供
――公開された画面には燃え盛る街があるなどハードな世界観のように思えますが、全体的にシリアス調に?
飯塚 本筋の『ソニック』としては、コメディータッチの『トゥーン』とは違う骨太なストーリーを打ち出そうという方針です。ただ、今回は作品イメージをダイレクトにお伝えするために燃えている街をお見せしましたが、ゲーム全体としては明るいステージもあります。
――ゲーム画面にも巨大なデスエッグロボがいたりなど、見た目からしてエッグマンの大軍勢といった趣です。
飯塚 これまでもエッグマンは数々の手下ロボを引き連れていましたが、今回は強大なエッグマンの軍隊に立ち向かうというコンセプトなので、従来のテントウムシやカニといった動物モチーフを保ちながら、よりミリタリーな雰囲気のデザインに寄せています。画像にある巨大なデスエッグロボだけでなく、ステージ中に登場する敵もエッグマンテイストは残しつつも、ミリタリーベースのデザインにしています。
――ステージのデザインコンセプトは?
飯塚 とくにどこの国といったことは考えていなくて、『ソニック』の世界観にふさわしいものとしました。コンセプトとしては『ソニック ロストワールド』からの流れを取り入れて、リアルになりすぎない世界観作りを心掛けてもらっています。画質のおかげでリアルな世界観に思われるかもしれませんが、ディテールを見てもらえるとわかる通り、意外とカートゥーンぽい世界観なんです。木のシルエットなども適宜デフォルメしたりしていますし。
――ゲームエンジンを新たに“Hedgehog Engine 2”としたとのことですが、どういった変更が?
飯塚 『ソニック ワールドアドベンチャー』のときに“Global Illumination”を搭載した初代Hedgehog Engineを作りました。その後のシリーズ作でもマイナーアップデートをしつつ、ずっと使い続けてきたんですね。今回“Hedgehog Engine 2”としてアナウンスさせてもらいましたが、まったく違うものをイチから作ったわけではなくて、改良を積み重ねて、プレイステーション4、Xbox One、Nintendo Switchという次世代ハードに適した、新たなレンダリングエンジンを搭載してステップアップをしたのが、“Hedgehog Engine 2”なんです。
――画像の印象がかなり違いますね。よりフォトリアルとなったようです。
飯塚 いちばん大きな違いは、Global Illuminationに加えて、物理ベースレンダリングという、実際の光を物理的に計算して再現する手法に変わった点です。それぞれのオブジェクトにアーティストが色をつけるのではなくて、光源や天候といった数値を用意するだけで、適切なライティングが物理的に計算されて反映されるわけです。夕焼けのステージの場合は色表現とかも誇張されていますが、実在のライティングの再現度を持つエンジンとなります。それと、『ソニック』の場合はハイスピードな展開が必須となりますから、汎用のゲームエンジンではなく、我々がこれまで培ってきた、高速で処理するためのノウハウを搭載した専用のエンジンとなっています。
――汎用エンジンだと、ゲーム性に特化した表現をしようとすると手間取るのでしょうか。
飯塚 そうですね。『ソニック』のように速く進むゲームって、ほかにないじゃないですか。それについてこられるエンジンを外部に求めるよりは、我々の手で作ろうということで改良を続けています。日本のソニックチームの中に、エンジンだけの専属チームがあります。
――開発は順調ですか?
飯塚 現在日本のソニックチームでは日々忙しく鋭意製作中です。間違いなくスケジュール通りに、皆さんのお手元にお届けできるいいペースで開発は推移していますので、ご安心ください。
――では最後に、本作を期待しているソニックファンに向けてメッセージをお願いします。
飯塚 『ソニックフォース』は日本のソニックチームによる開発で、これまでの3Dソニックを楽しんでくださった皆さんに、自信を持って楽しんでいただける作品になりつつあります。すでにゲームはスタートから通してプレイできるくらい順調に制作は進んでいます。強大なエッグマン軍団に立ち向かう、ソニックと仲間たちのシリアスな活躍を楽しみにしていただきたいです。ゲーム全体を通して3つのプレイスタイルのいずれも、爽快に遊べる『ソニック』らしいゲーム展開を実現していますので、きっと皆さんの期待に応えられる内容になっていると思います。ご期待ください。