主要キャストが日本に集結

 士郎正宗氏のマンガ『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』を起点にして、押井守監督の映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』、そして神山健治監督によるテレビアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』シリーズなど……『攻殻機動隊』は日本のみならず世界中のファンに親しまれてきた。そんな、日本が世界に誇るIP『攻殻機動隊』がハリウッドで実写映画化。『ゴースト・イン・ザ・シェル』として、いよいよ2017年4月7日よりTOHO シネマズ 六本木ヒルズほかにて全国ロードショー公開される。

 日本発のIPが世界で初お披露目されるのはやはり日本……ということで、全世界での公開に先駆けて、世界最速で『ゴースト・イン・ザ・シェル』の試写が上映される“『ゴースト・イン・ザ・シェル』ワールドプレミア”が、3月16日に開催された。この“ワールドプレミア”に合わせて、“少佐”役のスカーレット・ヨハンソンさん、バトー役のピルー・アスベックさん、オウレイ博士役のジュリエット・ビノシュさんという主要キャストと、ルパート・サンダース監督が来日。“世界初お披露目”を祝福した。

『ゴースト・イン・ザ・シェル』が“ワールドプレミア”で世界初公開! スカーレット・ヨハンソンさんやビートたけしさんも祝福_05

 まさに、『ゴースト・イン・ザ・シェル』一色となった3月16日は、まずは午前中に、東京・六本木のザ・リッツカールトン東京にて“来日記者会見”が実施。出席者は、スカーレット・ヨハンソンさん、ピルー・アスベックさん、ジュリエット・ビノシュさん、ルパート・サンダース監督に加えて、荒巻役のビートたけしさんという超豪華メンバー。スカーレット・ヨハンソンさんが「再び東京に来られてうれしいです。(作品ができるまでは)長い旅でした。『ゴースト・イン・ザ・シェル』が初めて公開される地は、東京がふさわしい」とコメントすれば、ピルー・アスベックも「『ゴースト・イン・ザ・シェル』をみんなとわかちあえることを光栄に思います」とコメント。さらに、ジュリエット・ビノシュさんが「日本発のコンテンツの初お披露目を、こうして日本で迎えられることがうれしいです。同作の世界観の一部になれることがうれしいです」と、日本で“ワールドプレミア”を迎えることが感慨深げな様子。

 美術学校の学生のときに『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』を知って、「この作品の監督をしたい」と思ったというルパート・サンダース監督も、「すばらしい“レガシー”の一部になることは光栄です。世界中の方々が、日本の素晴らしい文化を、本作を通して知ることになります。私が(『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』に)刺激を受けたように、『ゴースト・イン・ザ・シェル』に刺激を受けてほしいです」と語った。ちなみに“レガシー”とは、遺産を指す言葉のようだが、士郎正宗氏や押井守監督、神山健治監督らの偉業に加われたらうれしいといったくらいの意味だろうか。『攻殻機動隊』を作り上げた先達たちにリスペクトを示しつつも、新しい『攻殻機動隊』の世界を作り得たとの自信もうかがえる。

『ゴースト・イン・ザ・シェル』が“ワールドプレミア”で世界初公開! スカーレット・ヨハンソンさんやビートたけしさんも祝福_04

 ビートたけしさんはビートたけしさんで、来場者の期待を裏切らないちょっとアブナイギャグを飛ばしつつ、「初めてこれだけ大きなバジェットの本格的なハリウッドの大作に出られていい経験になりました。役者としてどう振る舞えばいいかを、スカーレットさんに教えてもらいました。彼女は本当のプロだと実感しました」とコメント。スカーレット・ヨハンソンさんへの賛辞を惜しまない。昨年(2016年)11月に行われた極秘イベントでも、スカーレット・ヨハンソンを賞賛していたが、彼女のプロ意識は相当印象的だったようだ。

 質疑応答では、『ゴースト・イン・ザ・シェル』に参加してみての感想が語られた。スカーレット・ヨハンソンさんは、少佐役のオファーがあって最初アニメを見たときには、「実写化されるイメージが沸かなくて、不安になった」との当初の心情を吐露しつつ、監督との話し合いなどを重ねていく過程で、徐々に方向性がつかめていったとコメント。『ゴースト・イン・ザ・シェル』という存在が頭から離れなくなっていったと、手応えをつかんでいったことを明らかにしてくれた。そんな『ゴースト・イン・ザ・シェル』を、スカーレットさんは「未知の世界に踏み出すこと」と表現し、「愛されている原作ということで、少佐を演じることを光栄に思うし責任も感じます。素晴らしい経験になりました。感情的にも肉体的にもたいへんな役でしたが、役者としていろいろと学びました」とコメント。「劇中での少佐の成長が自分に重なる大きな体験ができた作品」とのことだ。

 ビートたけしさんは、マンガやアニメを実写化するとファンから文句を言われることが多いが、『ゴースト・イン・ザ・シェル』が違うと、映画のデキに太鼓判を押し、「忠実でありつつも、新しいものが入っていて、アニメの実写化としては最初に成功した作品。大きなスクリーンで見てほしいですね。いかにディテールにこだわっているかがわかります」と賞賛した。「ただし、唯一の失敗は荒巻という意見がありますが」と続けて会場を笑わせた。

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 ピルー・アスベックさんが口にしたのも、原作に対するリスペクトと、その実写作品に参加することに対する不安。「日本から生まれたもっとも素晴らしい物語のひとつに参加することに対する怖い思いはありました。とくにバトーは愛されているキャラクターなので(ファンからの)期待を裏切れない」とのこと。アスベックさん自身、14歳のときにアニメーション『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』に触れ、「アニメはアイデンティティーを模索する物語だったかと思うのですが、ちょうど自分のアイデンティティーを探す時期だったので、共感しました」と思い入れはひときわな作品だけに、当然のこと原作ファンを裏切れないとの思いは強かったようだ。2014年にバトー役をオファーされたときも、アニメ版と自分との共通点が見つからなくてとまどったそうだ。自体を打開したのは、士郎正宗氏原作のマンガを読んたとき。そこでのバトーは「ビールも好きで、ピザも好き。これだ!」と思ったのだという。「(映画の完成までは)たいへんな道のりだったが、やり遂げました」とアスベック氏。

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 ジュリエット・ビノシュさんは、「初めて脚本を読んだときは、暗号を解読するようで、まるで意味がわかりませんでした(笑)」と、あっけらかんと語る。それが映画関係で3Dの仕事をしているという息子が大の原作ファンで、ジュリエットさんが監督と話し合いをしているあいだ(出演を了承するかしないかの話し合いか?)に、脚本を2回も読んで、「ぜひ出てほしい!」とジュリエットさんに要望したのだという。その言葉に後押しされる形で、ジュリエットさんは『ゴースト・イン・ザ・シェル』への出演を決意したのだとか。そこからは、監督と激論を交わしつつ、“独自の言語が存在していて複雑なキャラクター”である、オウレイ博士の役柄をつかんでいったようだ。「素晴らしい現場でした。スカーレットは朝からがんばっていましたし、監督も目の下にクマを作って撮影に臨んでいました。世界中から優秀なスタッフが集結していました」(ジュリエットさん)とのことだ。

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 サンダース監督は、「映画作りではつねにプレッシャーがある」と前置きしたうえで、本作に関しては「恥のないようないいものを作らないといけないというプレッシャーがあった」と、率直にコメント。そのプレッシャーたるや想像に余るものがあるが、「狂気の中をさまよっているかのよう」、「まるで戦争のようだった」との監督のコメントが、その苦労の一端を物語る。「いままでに見たことがないような、世界中の人々に響くようなものを!」という熱意が原動力になったようだ。

 監督に対する「アニメ・マンガ原作を実写化するにあたっての注意点」といった趣旨の質問に対する返答も興味深かった。監督いわく「アニメで簡単に実現できることが実写だと難しい。バトーの目も実写だとこっけいなものになってしまうし、荒巻の髪もそう」とコメント。一方で、「光学迷彩スーツはちゃんとやらないと映画的にもよくない」との判断もあったようで、再現度の調整は相当苦労したようだ。そのへんのさじ加減は、本作ではキモのひとつと言えるかも。あと、印象的だったのが、「『ゴースト・イン・ザ・シェル』は『酔いどれ天使』と『ブレードランナー』が出会うようなもの」とのコメント。『酔いどれ天使』は、1948年に公開された黒澤明監督作品で、要は、『ゴースト・イン・ザ・シェル』には、カット割やペースなど、日本の映画的な手法が取り入れられているらしい。

 最後に、「ハリウッドと日本映画の違い」という質問に対するビートたけしさんの答えを紹介しよう。たけしさんが監督をするときは、基本ワンテイクが多く、カメラは3台。それに対してハリウッドでは最低でも5~6台用意されている。そして、歩くというシーンを演じるときでも、「(監督が)“グット!”と言ったあとで“ワンモア”、つぎは“ナイス!”と言って“ワンモア”、つぎは“ベリー、グッド!”と言って “ワンモア”、さらに“ジーニアス!!”と言って“ワンモア”と、歩くだけでも5~6テイク取る」のだという。「これは、お金がかかるなとつくづく思った」とたけしさん。それだけ『ゴースト・イン・ザ・シェル』は気合を入れて贅沢に作っているということなのだろう。

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▲フォトセッションは、最初にスカーレット・ヨハンソンさんが登場して、そのあとひとりずつ参加というスタイルで行われた。せっかくなので、全カット紹介!