2023年2月1日にYaza GamesとDaedalic Entertainmentから発売された、Nintendo Switch、Xbox Series X|S、Xbox One、PC向けのストラテジーゲーム『インクリナティ』(Inkulinati)。本作の舞台は、“ウサギのお尻が犬の剣よりも強い世界”を描いた中世の本。プレイヤーは生きたインクのマスターとなり、インクで描かれたビーストを駆使して戦いをくり広げる。
本稿では、『インクリナティ』をひと足早くプレイした、ストラテジーゲームやシミュレーションゲームに目がないライターのレビューをお届け。ストラテジーゲームが好きな方はもちろん、動物を擬人化したキャラクターを愛してやまない方も必見だ。
※本記事はDaedalic Entertainmentの提供でお送りします。
操作できるビーストのキャラクターがユニーク!
“ウサギのお尻が犬の剣よりも強い世界”? え、どういうこと?
ゲームの紹介文を読んで疑問に思ったのは筆者だけではないはず。その疑問は、本作を遊び始めてウサギのビーストを操作したときに解決した。ウサギのビーストたちは、“お尻がすぐそこに”というアクション(コマンド)を持っており、ふわふわのお尻を見せつけて、対象のビーストを強制的に“昼寝”に誘い、“頭痛”を与えられる。ようは状態異常にできるというわけだ。
敵を状態異常にするのも立派な戦術。“昼寝”を誘発できればアクションが取れなくなるうえ、“頭痛”になったビーストは、移動するかアクションを取るかのどちらかしかできなくなる。敵の行動を封じるうえで、“お尻がすぐそこに”は非常の優秀なアクションと言える。
なるほど。使いかたによっては、確かに“犬(のビースト)の剣よりも強い”かもしれない。妙に納得したのをいまでも覚えている。
ウサギや犬のビーストのほかにも、登場するユニットは個性豊か。お尻でトランペットを吹くロバや祈祷によって異端者たちを倒すネコの司教、生きた物を食らう重くて破壊的なカタツムリなど、使えるユニットを増やしていくのがおもしろい。
とくに凶悪なのはカタツムリだ。このユニットは、隣接するユニットを丸呑みして倒してしまう。どんなにヘルスの多いユニットも一撃、もといひと口でやられてしまう。味方にすれば非常に頼もしい存在だが、敵で出現するとやっかい極まりない。何度こいつの“口撃”に泣かされたことか……。現実でカタツムリを見ると、『インクリナティ』を思い出しそうだ。
ストラテジーゲームにおいて、戦略性はもちろんだが、筆者にとっては操作するユニットの見た目や能力も大事な要素。やはりお気に入りのユニットを操作できたほうが楽しい。そういう意味で本作は、非常に興味をそそられた。前述したように、ユニットはそれぞれ個性的なアクションを持っているし、インクで書き込まれた見た目も味わい深い。すべてのユニットをコンプリートするのが楽しみだ。
チャプター(ターン)制で進行する緊張感のあるバトル
敵とのバトルはチャプター(ターン)制で進行し、各チャプターで味方と敵のユニットが交互に行動してすべてのユニットが“昼寝(行動終了)”するとつぎのチャプターに進む。ユニットのビーストたちは、リーダーの“Tiny Inkulinati”がインクを消費して生み出すことができ、フィールドに最大5体まで配置できる。また、勝利条件はバトルによって異なり、敵のリーダーが存在する場合はリーダーを倒すと、敵がビーストだけの場合は全滅させるとクリアー可能だ。
勝利条件こそ多少異なるものの、敵を倒すのは同じ。ビーストやリーダーはアクションで攻撃してヘルスをゼロにするか、フィールドから弾き落としても倒せる。しかし、フィールドから落とせる場面はなかなかないので、基本的には前者で撃破を狙うことに。そこで大活躍するのが、インクで描いたビーストたちだ。
敵との距離が近いときは、剣や槍を持った近接戦闘向きのビーストが活躍するし、敵との距離が離れているときは、弓を持った遠距離攻撃向きのビーストの出番となる。敵の数やリーダーとの距離、フィールドの形状などを考慮しながら、限られたインクの中でどのビーストを新たに描いて召喚するのか。それがプレイヤーの腕の見せどころ。戦術がハマって勝利を収めたときは、得も言われぬ興奮が味わえた。
また、敵のリーダーを落とせる機会はそうそうないと言ったものの、これが決まったときはじつに気分爽快だ。逆にうちのリーダーを弾き落とされて負けることもあったが、「ビーストをいっぱいためてはじき出す距離を伸ばす方法もあるのか!」と、失敗から学ぶことも多く、再戦するモチベーションになった。
さらに、チャプターが進むと発生する“終焉の大炎”もバトルを盛り上げるいいスパイスに。“終焉の大炎”は、フィールドの端から発生し、チャプターが進むたびにフィールドを侵食していくシステム。
“終焉の大炎”に触れたユニットは消滅してしまうので、“終焉の大炎”を逃れつつ、いかに早く勝利を掴むかが重要になる。ちなみに、ここでもユニットを移動させるハンドアクションが大活躍。やっかいな敵も、“終焉の大炎”に移動させればすぐに倒せた。
充実のゲームモード! ひとりでもふたりでも楽しめる
本作はゲームモードも充実。チュートリアルの“アカデミー”や、最初に難易度を選んでひとりでじっくりプレイできる“旅”、コンピューターやほかのプレイヤーとルールを設定してバトルが楽しめる“決闘”とといったコンテンツが用意されている。
戦闘中にやれることが多いぶん、“アカデミー”をプレイしただけではフォローしきれていないこともあるが、“旅”の最初もチュートリアルを兼ねた内容になっており、バトルをくり返しプレイするうちに、ビーストたちの有効な活用法がだんだんと理解できるはず。
バトルに慣れてきたら、“決闘”で難易度や使用する部隊、発生する“終焉”の種類を変えて腕試しをするのも一興だ。“決闘”では仲間にしていないビーストを使うこともできるので、知らないユニットを使って新たな戦術を発見する楽しみも。また、対人戦がプレイできるのもミソ。発売後は、世界中の“Tiny Inkulinati”たちと白熱のバトルを堪能したい。