予告編が世界初公開

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▲会場となった都内のイベントスペース“TABLOID”。

 士郎正宗の原作マンガに始まり、映画やテレビアニメなどで展開され世界的に高い人気を誇る『攻殻機動隊』。そんな『攻殻機動隊』がルパート・サンダース監督のもとハリウッド映画化されることはご存じの方も多いと思うが、2017年春の公開を控えて、同作の“エクスクルーシブイベント”が、2016年11月13日に都内にイベントスペース“TABLOID”にて開催された。

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▲着物姿の女性たちによる合唱と太鼓にてイベントが開幕。会場は一気に盛り上がった。

 「『攻殻機動隊』が日本発のIPだから」との制作陣の粋な計らいのもと、日本で行われたイベントには、緊急来日を果たしたルパート・サンダース監督と草薙素子役を演じる主演のスカーレット・ヨハンソンさん、さらには荒巻大輔役のビートたけしさんがゲスト出演し、いまだベールに包まれた映画の内容について言及したほか、世界初公開となる予告編がお披露目されるなど、見どころの多い内容となった。まずは、その予告編からご覧いただこう。

 なお、映画は『GHOST IN THE SHELL ゴースト・イン・ザ・シェル』とのタイトルで、日本国内でも2017年4月に劇場公開されることが明らかにされている。

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▲ルパート・サンダース監督。『スノーホワイト』などでおなじみ。

 まず登壇したサンダース監督は、「『GHOST IN THE SHELL ゴースト・イン・ザ・シェル』は“リメイク”ではなくて、“リイマジン”」としたうえで、「士郎正宗さんや押井守監督、神山健治監督の作品からいろいろなものを盗んだ……というのは冗談として(笑)、多くのファンから支持を受けているIPに関われるのは光栄です」とコメント。『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』などのファンなので、インスピレーションを受けたものを実写化しようとしたのだという。また、サンダース監督は、同作のテーマについて「テクノロジーを信じること。そこに希望がある」と説明。さらに「素子の自分自身を発見する旅でもある」と続けた。

 草薙素子役にスカーレット・ヨハンソンさんをキャスティングした理由を聞かれたサンダース監督は、「女優として20年の経験があり、幅広い映画に出演していて、姿勢のタフさが少佐にぴったり。アンドロイドの表現ができる女優さんで、素子の成長をしっかりと体現できている」と絶賛。一方、荒巻役のビートたけしさんに関しては、「彼以外には考えられなかった」監督たっての希望であることを明らかにした。

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▲荒巻大輔役のビートたけしさん。サービス精神旺盛なトークで会場を大いに盛り上げた。

 続いて大きな歓声とともに姿を見せたのがビートたけしさん。「こんにちは、渡辺謙です」とギャグを飛ばして会場を笑わせたたけしさんは、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』について聞かれると、かつてアニメはあまり評価していなかったが、同作が出たときは「なかなか、いい作品だ」と思ったとのことで、「あの時代のSFアニメが、違和感なく実写で作れるようになったときに、荒巻を演じられることになってうれしかった」と続けた。ただし、「アニメの荒巻は左卜全みたいで情けない」とのことで、たけしさんにかかったら荒巻も形無し。映画版の荒巻に関しては、メイクさんなどと相談して、たけしさんならではの荒巻像を作り上げたようだ。

 映画では、たけしさんは日本語で通しているのだが、「英語は嫌だ」と断ったとのこと。そもそも英語ができないから……というのがその理由だが、いざ日本語のセリフにしてもらうと、今度はセリフ覚えが悪いという問題にぶち当たったらしい。そのため、制作陣がプロンプター(役者が演技中にかげでせりふを教えてくれる役)を用意してくれたという。それでも字がよく読めないなど、いろいろな難題が持ち上がったらしいのだが、あるときスカーレット・ヨハンソンさんが、たけしさんのカンペを持っていたのだとか。たけしさんいわく、「記念写真に撮りたいくらいの感動ものでした。それ以来、ちゃんとセリフを覚えるようになりました」というから、さすがは“世界のたけし”というべきだろう。

 荒巻像に関しては、「素子との関係はある意味での“親子”。一方で、冷静な判断を下す存在としてある。躊躇なく人を撃つし。でも、身内には熱い関わりを持つ」と分析した。

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 また、ハリウッド映画の収録の感想を聞かれると、興味深いコメントが聞かれた。たけしさんは日本で映画を撮るときは、演出もやるし、カメラワークもやるし、編集も自分でやるとのことだが、ハリウッドでは違うという。演技指導は監督がやるが、カメラワークは撮影監督、編集もしっかりと担当がいるというのだ。カメラはつねに3~4台あり、廊下を歩くだけで38カットもあったという。当初は、「この監督は、なんでこんなに撮るんだろう?」と疑問に思ったというたけしさんだが、理由を聞くと、編集担当から「この部分の絵がないのか?」と言われるのがたいへんだから、とりあえず撮るのだと聞いて納得したのだとか。ハリウッド映画は思いの外、役割分担がしっかりしているようだ。ちなみに、収録時のたいへんだったエピソードは、収録地のニュージーランドで、「オークランドからウェリントンに行く飛行機が死ぬほど揺れたこと。死ぬほど怖かった」だそうです。

 さらに、スカーレット・ヨハンソンさんと共演することを周りの誰も信用してくれなかったというエピソードも披露。証拠となる写真を撮る勇気がなかったというのも、なんとなくたけしさんらしい。そんなたけしさんのスカーレット・ヨハンソンさん評は、「役者には旬の時期があるが、この人は子どものときからずっと“旬”なんだ」とのこと。収録に際しても、毎回テイクを重ねるごとに新鮮な感じて演じてくるので、「すごいな。アメリカで主役を張るのはこういうことなんだな」と思ったという。「いっしょの映画に出られるのが光栄でした」とたけしさん。

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▲素子役のスカーレット・ヨハンソンさん。

 最後に登壇したのが、スカーレット・ヨハンソンさん。映画『ロスト・イン・トランスレーション』で、17歳のときに日本に来たとき以来、14年ぶりとなる訪日だそうだが、「日本はすばらしい、大好き。なじみ深く感じる」とのこと。素子役を演じることになるまでは、『攻殻機動隊』のことは知らなかったそうで、脚本が届いてアニメを見たときに、哲学的だし、どう貢献できるかわからなかったが、「魅力的に感じた」という。自身が演じることになる素子に関しても、大いに惹かれるものがあったようだ。ビートたけしとの共演について聞かれると、役柄上でも英語と日本語の違いはあれど、同じ映画言語で話しているようなつながりが感じられたという。

 スカーレット・ヨハンソンにとって、素子は相当思い入れが深いようで、「この作品は、少佐の自己発見の旅です。アクション満載の本作ですが、少佐の成長の物語でもあります。私がつながりを感じたように、素子に対してつながりを感じてほしいです」とのことだ。

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 最後にビートたけしさんから「ちょっとだけ映像を見せてもらったのですが、すごいですよ。悔しいくらいお金がかかっています。自分の映画が100本くらいできるくらい。特殊メイクやフィギュアのデザインなどもすごく、映画は総合芸術だということがわかります。映像をとにかく楽しんでほしいです」とのコメントが聞かれた。予告編だけでも引き込まれる『GHOST IN THE SHELL ゴースト・イン・ザ・シェル』のクオリティーの高さ。早く本編を見てみたい。

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▲エクスクルーシブイベントには、小島秀夫監督も訪れていた。中央はプロデューサーのアヴィ・アラッド氏。『マーベル』シリーズを数多く手掛けた、重鎮だ。

サンダース監督に聞く「少佐はスカーレットしかいなかった」

 イベントのあとは、取材陣を対象とした、ルパート・サンダース監督に対する合同取材が行われた。以下、おもなやりとりをお届けしよう。

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 まずは、「ほかに参考にした作品はあるのか?」との質問には、「こちらが製作者として甘やかれされてしまうくらいに、原作自体がたくさんのテーマや要素を持っています。それだけで手一杯で、ほかのものを参考にすることはありませんでした、ただ、フィルムメーカーとして、20年間映画を作り続けていますので、それまでの年月のあいだにいろいろなものを吸収し続けています。それが作品に自然にでてくるということはあると思います。こういった作品を作るときは、自分を浸すように制作し、その中からテーマ的な部分や視覚的な要素を作り出していきます」とのこと。

 「オリジナルの『攻殻機動隊』は実写化が難しかったと思いますが、いちばんたいへんだったポイントは?」との問いには、「チャレンジはたくさんありました。アニメをそのまま実写化しようとすると、物語もわかりやすさがあるわけでもないですし、哲学的に難しいと感じられる部分も多いと思います。とくに『イノセンス』はそう感じられました。そのため、あえてセリフなどには落とさずに、根底に流れるテーマみたいなものを映画的な感じで観客の方に感じてもらう……というアプローチをしたいと考えました。セリフに落とされていなくても、見ているだけで感覚的にそういった何かが伝わる。そういう映画にしたいと思っていましたし、観客の方に対して、“フロイドが……”とか、“デカルトが……”といったような説教くさい感覚にはならないようにしたかったんです。二面性や人間性、テクノロジーについて、何か響くような、そんな映画にしたつもりです」とサンダース監督。

 続編の可能性を聞く質問に関しては、「いまは『GHOST IN THE SHELL ゴースト・イン・ザ・シェル』に集中しています。この作品は、終わったときにつぎにつなげるような終わりかたはしておらず、独立した作品として成立した形にしています。もし幸運なことにつぎを作ることができるのならば、そのときに考えたいと思っています」とのこと。

 さらには、キャスティングについての質問も。「少佐の配役について、日本人のキャスティングについて考えなかったのか?」との質問に対してサンダース監督は、「制作初期の段階から、私はスカーレットに演じてもらいたいと思っていました。『GHOST IN THE SHELL ゴースト・イン・ザ・シェル』を世に問いたいというときに、彼女が役者としてどんどん成長しており、世界的に非常に魅力的な役者であるということもありました。20年間仕事をしてきて、さまざまなレベルをどんどん超えてきているのはすばらしいことです。20年のあいだで知的な選択を何度もしてきましたし、とくにこの手のタイプの映画で印象的な役柄を演じている、とても勇気のある役者さんということもありました。本作のような作品観に対する姿勢を持っている役者さんが、僕の中ではほかに見つからなかったんです。“映画スター”とよく言われますが、考えてみると、“映画スター”と呼ばれる存在はそんなに多くはいません。そんな“映画スター”と呼ばれうるようなひとりと、こういう形で仕事ができて光栄です。たけしさんのことを最初から荒巻と考えていましたが、スカーレットのことも最初から少佐を演じてほしいと考えていました」とサンダース監督。

 一方で、スカーレット・ヨハンソンさんのキャスティングに対して一部で否定的な意見があることに関しては、「いままで映画に関する情報があまり解禁されていなかったせいもありますが、これからは『GHOST IN THE SHELL ゴースト・イン・ザ・シェル』の、どういうところが新しいのかというところに目を向けてくだされば……と思いますし、最終的にはスカーレット自身の演技によって、皆さんが“彼女でよかった”とおっしゃっていただけるのではないかと、私は思っています。作品は日本の文化にインスピレーションを与えられているグローバルな観客の方に向けた作品なので、そういった意味でもスカーレットでよいのではないかと、私は考えています」とのことだ。

 ちなみに、『イノセンス』などでも印象的だった犬のバセットハウンドは本作にも出てくるとのこと。香港での撮影に際して、押井監督が自身の愛犬を連れていこうとして叶わなかったようだが、登場と相成ったようだ。そのほかにも、『GHOST IN THE SHELL ゴースト・イン・ザ・シェル』には『攻殻機動隊』ファンを喜ばせてくれるような要素が入っているようで、ファンにとっては楽しみだと言えるだろう。

展示スペースの模様を紹介

 『GHOST IN THE SHELL ゴースト・イン・ザ・シェル』のエクスクルーシブイベントでは、展示スペースも展開され、劇中で使用されたコスチュームなどが披露されていた。以下、その展示内容をお届けしていこう。以下の写真は、編集部撮影によるもの。

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▲少佐・ボマージャケット。
▲少佐・戦闘服。
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▲バトー・トレンチコート。
▲バトー・戦闘服。
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▲荒巻・スーツ。
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▲青い芸者。
▲アニマトロニック芸者頭部。
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※オフィシャルフォト
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▲野外には劇中で使用されたバトーのクルマも展示。