F2P的にプレイ可能だが、買い切りパックもアリ。

 ボストンで開催中のゲームイベント“PAX EAST”で、海外でPC向けに発表されているid Softwareの対戦型FPS『Quake Champions』を遊んできたのでご紹介しよう。

アリーナ型対戦FPS『Quake Champions』をPAX会場でプレイ。開発を率いるティム・ウィリッツ氏へのショートインタビューとともにお届け【PAX EAST 2017】_01

 本作は、昨年のE3で発表された、FPS『Quake』シリーズ最新作。中でも対戦オンリーでキャンペーンモードなしの『Quake III Arena』とその後継作『Quake Live』の延長上にある、競技性の高いオンライン対戦を目指したタイトルとなっている。

 今回のPAXでのトピックとしては、クローズドβテストの登録が始まったほか、PAX会場では5v5マッチ2セット分の試遊スペースもオープン。また本作をF2P(基本プレイ無料)として遊ぶことも、従来のシリーズ作のように買い切り型でも遊べることが判明し、話題を呼んだ。
 これは、F2Pとしてはデフォルトのチャンピオン(使用キャラ)として“Ranger”がアンロックされていて、その他のチャンピオンはゲーム内通貨でレンタルなどが可能。一方“チャンピオンパック”を購入すると全チャンピオンが無制限に使えるようになる(つまり買い切り型と同様)という方式だ。

 というわけで試遊ではまずRangerをセレクトしつつ、試合中の復活時に他のチャンピオンに切り替えていくという形で、どれほどの違いがあるか試してみた。なお会場ではRanger、Scalebearer、Visor、Anarki、Nyx、Sorlag、Clutch、Galena、Slashの9キャラが使用可能となっていた。

 モードは5on5のチームデスマッチで、マップは本作発表時の“Ruins of Sarnath”以外に旧作のCamping Groundsを元ネタに発展させた“Blood Covenant”が追加されていて、マッチング後に投票式で選ぶという形。もちろん新マップのBlood Covenantが選ばれた。

 ローディングが終わるとまずは練習タイムで、カウントダウンが終わると本番スタートとなる。挙動はかなり速い。恥ずかしながらストレイフジャンプ(『Quake』をはじめとするFPSでおなじみのテク)などを試しつつ、連続ジャンプしながらのコーナリングや、バックジャンプしながらの移動&射撃なども確認。記者はまったくハードコアなプレイヤーではなかったので読み違いもあるかもしれないが、個人的にはこれぞ『Quake』といった感じだ。

 初期武器はいくつかあるが、基本的にはアーマー同様にマップ内に落ちているものを拾っていく形。また強武器などはポップアップ位置に出現までの時間を示したメーターが表示されていて、わかりやすい。
 そして自分の撃った弾が当たると、「ピロピロピロ……」という『Quake Live』でおなじみのサウンドが鳴ってヒットを直感的に教えてくれるとともに、ダメージ値も表示される。デフォルトのユーザーインターフェースで自分がうまくやれているのかはっきりわかるのはありがたい。

 本作ならではの大きな違いとしては、チャンピオンごとに体力などの性能差が少しあり(ただし武器ダメージは共通)、一定時間が経つとそれぞれ固有のアビリティが使えるようになるという部分。
 Rangerの場合は、発動するとオーブを飛ばして、再度キーを押すとその場所に瞬間移動できる“Dire Orb”が専用アビリティ。敵とすれ違う前にひと足先にすり抜けて後ろに回ったり、タイミングや狙いをズラすことができる。
 そのほかのチャンピオンでは、一定時間透明になれるNyxの“Ghostwalk”や、急加速して体当たりをカマすScalebearerの“Bull Rush”など、移動系・攻撃系・防御系にわたっていろいろある。

 重要なのは、アビリティはそう頻繁に使えるわけではなくて、基本的にはプレイヤーの基礎能力が問われるのは変わらないということ。『オーバーウォッチ』的な、チャンピオンによって根本的に性能が全く異なるようなゲームになったわけではないので、試合中にチャンピオンを変える=そのチャンピオンのアビリティを狙いたいという予測が簡単に立つし、基本的には流れを変えたいここぞの時の駆け引きの要素が増えた、というぐらいではないかと思う。性能の是非などは、クローズドβテストを通じて調整されていくだろう。

「ローンチがスタート地点のようなもの。どんどんアップデートする」

 というわけで、懐かしい思いとともに思わず、敵チームのプレイヤーを倒しては「余裕だわ!」、撃ち合いで負けては「ねーわ!」と叫びながら楽しく遊んだ(どうやら周囲に「このアジア人は何か煽ってるぽいな」というのは伝わった模様)。流行の固有ギミックを取り入れつつ、されど本質はゴリゴリに『Quake』という、面白いポジションを狙えるタイトルになっていると思う。

 そして試遊終了後に、本作の開発を指揮するid Softwareの重鎮ティム・ウィリッツ氏に少し話を聞くこともできた。

アリーナ型対戦FPS『Quake Champions』をPAX会場でプレイ。開発を率いるティム・ウィリッツ氏へのショートインタビューとともにお届け【PAX EAST 2017】_02

――いやぁ、遊んでみたら本当に『Quake』でしたね!
ティム その通り! 『Quake』の核にあるDNAを維持するというのは我々にとっても大事なことだったんだ。今回僕らはチャンピオンのアビリティという新しい要素の導入にも挑戦するわけだけども、『Quake』を知っているプレイヤーが遊んでちゃんと楽しめるものにしたかった。
 チャンピオンごとのアビリティとかパッシブスキルはあるけども、それでプレイのありようそのものは変わらない。核にあるのは依然としてスキルが物を言う、純然たるQuakeゲームなんだ。

――F2P的にも遊べるというニュースを読みました。でも買い切り型もあるとのことですが。
ティム そうだね。大きく分けてふたつあって、チャンピオンパックを買えば全部のチャンピオンがついてくるから、そのほかのF2P的な部分は気にしなくていい。もうひとつは、このゲームが正式公開された時にはゲーム自体は無料でダウンロードできる。それにはRangerがついてきて、それでプレイしてポイントを得て、他のチャンピオンの利用権に支払うといったこともできる。
 これをやりたかったのは、買い切りにしたい人とF2Pでまずは遊びたい人の両方を取り込めるものにしたかったからなんだ。

――ローンチ段階でのチャンピオン、モード、マップなどの数はどうでしょう?
ティム 今回PAXでは9体のチャンピオンを使えるようにしているけど、公開の頃には12体ぐらいにはなってるんじゃないかな? でもこれは覚えておいてほしいんだけど、このゲームにとってのローンチはひとつのリリースでしかない。僕らはそこからチャンピオンにしても武器にしてもモードにしてもマップにしても追加していくわけで、常にアップデートされていくゲームだと捉えている。
 だからまずはクローズドβテストをやって、しかるべきタイミングだと思ったらそこで公開に踏み切る。ローンチで終わりというより、ローンチが始まりなんだよ。

――今回遊べるのは2マップですが、そこだけでももうちょっと出す予定があるのでは?
ティム まぁね。いくつかデュエル(1on1)のマップもあるし、今日出しているようなモードでももうちょっといろいろある。異なるマップのテーマもあるし……十分な量を提供できると考えているよ。

――昔のQuakeのリメイクマップなどの予定は?
ティム 今回お見せしているうちのひとつ、Blood Covenantなんかはまさに、『Quake III』のdm6(Camping Grounds)にとてもインスパイアされているマップだ。それに対してRuins of Sarnathは新マップになる。このように、いくつかはリメイクマップで、いくつかは新マップという形でバランスを取っていきたい。ハードコアなQuakeファンは僕らが作ってきたマップを愛しているし、一方で新しいものをみんなに提供したいしね。

――スペクテイターモード(大会配信などに使う観戦者モード)や、デディケーテッドサーバーなんかはどうでしょう。
ティム eSports対応ということだよね。スペクテイターモードは我々にとって非常に大事だし、『Quake』にとって欠かせないものだと思う。それに加えて、競技シーンが必要とするものをちゃんと提供していきたい。もっとeSportsにフォーカスしたチームモードなども考えているし、またそこにも観戦機能をきっちり入れていくことでシーンを助けて一緒に盛り上げていきたいね。

――アリーナ対戦系のQuakeとしては『Quake Live』がありました。いいゲームで対戦シーンを引き継ぎましたが、新しい層のプレイヤーを獲得するという段階には至らなかったかと思います。今回そのあたりはどうお考えですか?
ティム 確かに。『Quake Live』はグレートだったけども、実質的には(その前身である『Quake III』が発売された)1999年から地続きのようなゲームだった。『Quake Champions』では、その伝統を絶やさないようにしつつ、みんなが遊べるようにもしたい。新しい層に来てもらうためには、すごくいいゲームにしなければならないということもわかっているよ。
 それができれば本作をもって「アリーナシューターの復活」ということも狙えると思う。ミリタリーシューターに飽きてきている人も多いし、いいタイミングだと思うんだ。『Quake』のスピリットを新しい要素とともに復活させる、それが『Quake Champions』だと認識している。

――本作の展開は日本では発表されていませんが、日本のQuakeファンはたとえ日本語サポートがなくてもプレイしたいだろうと思います。実際、昔そうしてきた人も多いですし。しかし日本からプレイするということは可能でしょうか?
ティム できるだけ多くの地域をカバーしたいと考えているけども、実際どこまでサーバーでフォローしていくか、どういうPing(遅延)になるか次第だと思う。実際、日本とも話してはいるよ。一般論として世界的にどこに置くかは調整中だけども、サーバー自体は増やしていけるから、トーキョーでカバーすることは難しくない。