PlayStation VRの発表会が行われ、ついに価格と発売月が発表に。そこから見えてきたPSVRの強みや今後の課題を探る。

●ついに価格と発売月が公開

 日本時間の2016年3月16日、アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコで、プレイステーション4向けのVR(バーチャルリアリティ)ヘッドマウントディスプレイであるPlayStation VRの発表会が行われ、2016年10月に4万4980円(税抜)で発売されることが発表された。

 Facebook傘下のOculus VRによるOculus Riftや、ValveのSteamVRプラットフォーム(およびHTCと共同開発したVive)といったVRヘッドマウントディスプレイが今春より続々と発売開始されることもあって、消費者向けの本格的なハイエンドVRの時代が到来すると言われる2016年。
 そんな中、ついに発売への最終段階に入ったPSVRの発表会から見えてきたのは、前者2機種にはない独自の立場を活かした、ゲーム機ベースの“コンソールVR”としての普及を目指す戦略だ。

▲PSVRの価格と発売月の発表を行うアンドリュー・ハウス氏(SCE代表取締役社長 兼 グローバルCEO)。

●“コンソールVR”という性質と強み

 まずRiftとViveの2機種はPC用のハードウェアであり、安定して動作させるには、ゲーミングPCの中でもハイエンド寄りのマシンが必要。両者とも、自分が使っているPCでそのまま利用できるか判定するベンチマークソフトの配布や、これを買えばオーケーという認定PCなどの施策を行っているし、それだけ高品質な(しかも処理能力に余裕があればさらにゴージャスな設定にもできる)VR体験ができるという裏返しでもある。

 だが、PSVRの場合はプレイステーション4(+PS Camera)があればスペックを気にせず同一に動くという強みがある。この、開発者の手元のマシンから消費者が実際に使う実機まで性能が統一されていて、「それを遊ぶために何を買えばいいか」がわかりやすくはっきりしているのは、まさにコンソール(家庭用ゲーム機)ならではのいい点。
 一方で、ウルトラハイエンドなPCのVR体験にこそ及ばないかもしれないが(単純なスペック比較でもディスプレイ部分の解像度などが少し劣る)、PSVRで遊ぶVR体験は現在求められる消費者向けのハイエンドVRのハードルをきっちりと超えており、コンテンツによっては、最適化などにより遜色ないレベルまで迫ることもできるだろう。
 実際、今回のイベントにもデモが出展されていたOwlchemy Labsの『Job Simulator』など、PSVRを含めた3機種対応としているタイトルも多い。

 そしてこれに価格面の優位性が加わる。Viveは部屋サイズのVR空間を歩ける“ルームサイズVR”を実現し専用のモーションコントローラーも付属しているとか、RiftのモーションコントローラーであるTouch(別売り)の価格が判明していない点、両者にセンサーカメラが同梱されている一方、送料がかかることや複数のゲームが付属するといった違いはあるが、ひとまず現在出ている基本セットの価格で単純比較すると、Riftが8万3800円、Viveが11万1999円。
 対してPSVRの4万4980円という価格は、別途購入が必要なPS Cameraやモーションコントローラーとして使えるPS Moveなどの価格を勘案しても十分に競争力がある(ちなみにPSVRでは『THE PLAYROOM VR』が無料配信される)。

 これは先に挙げた「わかりやすさ」と相乗効果を発揮する。例えば友達なり親戚が「VRってのを家でやりたいんだけど」という時に「これとこれを買えばいい」というのが値段も含めて提案しやすい形になっているんじゃないだろうか。
 蛇足になるが、ゲーム機で幅広い市場を相手にしてきたがゆえの文化なのか、PSVRはアジア人の“平たい顔”でもHMDと顔の隙間から光が入りにくいし、眼鏡をかけたままでも着用しやすく快適性も高い(もっとも、RiftやViveでも慣れればある程度は光を抑えられるし、実際に眼鏡のまま着用可能で、不快なわけではまったくない。あくまで比較しての個人的な感想のレベル)。

●ローンチから年末までに50タイトル以上を展開予定

 しかしVRヘッドマウントディスプレイは、テレビや汎用のパソコン(あるいはゲーム機そのもの)と同じく、それ自体では何の娯楽も生み出さない。重要なのはそこで再生されるゲームなり映像といったVR対応コンテンツだ。

 今回の発表会では、10月のローンチから年末までに50タイトル以上が展開予定であること、大手からインディースタジオまで230社以上が参入表明をしており、SCEの自社開発タイトルを含めて160タイトル以上が開発中であること、それにあたって必要なゲームエンジンや開発ツールおよびミドルウェアなどについても20社が参入と対応表明していることが明かされた。

▲エレクトロニック・アーツ(および開発スタジオのDICE)、ルーカスフィルムが独占タイトルとして『Star Wars バトルフロント』を土台にしたPSVR向けゲームを開発していることも判明。最強のIPによるキラーソフトになるか?

 発表会では、実は発表自体は冒頭でサクッと行われ、あとは3時間以上たっぷりデモを体験する機会が設けられており、さまざまなタイトルを遊ぶことができた。すでに過去のゲームイベントを通じてリポートをお伝えしているものも多かったのだが、VRならではの「そのソフトでしかできない体験」を味わいたくて、リポートを書く予定がないのについ再び遊んでしまったこともしばしば。

 とくにリズミカルなシューティングゲーム『Rez』をVR仕様にして復活させた『Rez Infinite』(昨年12月に既報)や、パズルゲーム『Super Hyper Cube』(こちらも12月に既報)、そして先日PSVR対応を表明した“バイオレンスリズムアクション”『Thumper』(非VRタイトルとして昨年のINDIE STREAM AWARDで受賞)といった、サウンドや視覚効果とゲームプレイが融合したタイトルは、VRらしい“複合した体験の快感”を味わえるので、個人的にも好み(ちなみに『Rez Infinite』は会場でも恐らく一番人気で、閉場まで体験者が途切れなかった)。

 これはVRの諸刃の剣でもあって、もっと極端な“体験の面白さ”だけで押しきれるようなタイトルもある一方、VRはそれを実際に体験するまでは、その面白さを完全に伝えるのは非常に難しい。ローンチまでに体験会などを通じてどれだけ多くの人にその魅力を知ってもらえるかが、普及のカギになってくるだろう。
 また、現在のAAA(トップクラスの)ゲームのような重厚で長時間遊べるタイトルや、日本のゲームメーカーが得意なキャラクターが牽引するタイプのゲーム(VRではキャラクターに存在感が出るため、魅力が倍増する)はまだ数が少なく、今後の発表に注目だ。

 一方非ゲーム系のコンテンツでは、360度写真や360度動画を観られるプレイヤー機能のデモや、グラミー賞受賞のヴァイオリニストであるジョシュア・ベルがピアノの伴奏とともに間近で演奏する様子を見られるデモを体験できた。PSVRはゲーム機ベースではあるものの、VRの真の普及のためには非ゲーム系VRコンテンツを手軽に体験できる環境であることも重要(PS2がDVDプレイヤーとしても普及したように)。こちらのコンテンツ開発も期待したい。

▲単なる360度動画ではなく、サラウンド効果を考慮した映像アプリケーションになっており、顔の動きを変えると、ちゃんとヴァイオリンはヴァイオリニストの側から、ピアノはピアニストの側から聞こえてくるのがわかる。