『マッドマックス』でこだわったポイントとは?
ワーナー エンターテイメントから2015年10月1日に発売予定のプレイステーション4/Xbox One用ソフト『マッドマックス』。ここでは、開発を手掛けるアバランチスタジオのクリエイター陣へのインタビューの模様をお届けしよう。
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※『マッドマックス』の世界観だからこそ実現し得た、究極のオープンワールド【アバランチスタジオ訪問記・前編】
「オープンワールドだからこそ、世紀末の世界観が際立つ」
シニア・プロデューサー/ジョン・フラー氏
――まずは、『マッドマックス』を開発することになった経緯を教えてください。
ジョン アバランチスタジオでは、世紀末の世界観をモチーフにしたゲームを開発したいとかねてから思っていました。実際にプロトタイプもいくつか作って、方向性を模索したりもしていましたね。そんなときに、ワーナー・エンターテイメントから「アバランチスタジオにぴったりのIP(知的財産)がある」という話があって、それが『マッドマックス』だったというわけです。熟慮するまでもなくゴーサインを出していました。『マッドマックス』の世界にはとんでもないマシンやクレイジーなアクションがあり、まさに私たちが作りたいと思うようなゲームだったんです。
――アバランチスタジオは、オープンワールドに強いこだわりを持っているようですが、やはりオープンワールドと『マッドマックス』の相性はよかったのですか?
ジョン その通りです。映画版『マッドマックス』シリーズで決してファンが味わえなかったのは、「自分がマックスだったら、どんな体験をするだろうか?」ということです。『マッドマックス』の世界観に接して、ファンは「自分自身が物語の独自の語り手でありたい」と思ったりするわけですが、オープンワールドは、まさにそれを叶えてくれるんです。
――アバランチスタジオは、なぜオープンワールドにこだわるのですか?
ジョン 1本道のゲームプレイは、同じ体験を何度もくり返すことになります。それは劇的で鮮やかな体験ではあるかもしれませんが、プレイヤーが決められるものではなく、コントロールできません。アバランチスタジオが提供するオープンワールドゲームで、私たちがプレイヤーに対して強調したいのは、地平線の果てに火山があるとしたら、それは決して“背景”に留まらないということです。火山が見えたらそこまで行って飛び込むもよしということで、プレイヤーは世界観の一部であり、その世界に影響を与えることができるんです。何かと関わったら、それは反応する。それが、ゲームがもたらす特別な体験なんです。映画にもなくリニアなシングルプレイのゲームでもない。奥が深く、共感できる体験です。その点が私たちにとって重要であり、それこそがアバランチスタジオの開発者たちが“遊びたい”と思うゲームなんです。
――アバランチスタジオは、13~14年間ずっとオープンワールドゲームの開発に携わってきたわけですが、本作でいままでにない取り組みとしては、どのようなものがありましたか?
ジョン ストーリーテリングやキャラクター造形などは、これまでに私たちが手掛けてきたほかのどのゲームよりも進化していると思います。オリジナルが映画のIPである上に、物語自体が強烈なので、ストーリーとキャラクター造形はおのずと濃くなりましたね(笑)。さらにはカーアクション。私たちは以前にもカーアクションは手掛けていましたが、本作のカーアクションは、技術的にもゲームプレイの上でも革新的なものになっています。これはほかのどんなゲームと比較してみても、“新しい試み”と言えるでしょうね。
――カーアクションは『マッドマックス』のメインフィーチャーと言えますね。
ジョン そして、世紀末の設定です。いかにリアリティーのある世紀末を設定するかは、私たちにとって新たな取り組みでした。『マッドマックス』の世界は一見すると“不毛の地”のようにも見えますが、多くの秘密を秘めており、独自の魅力があります。ある意味では、オープンワールドであればこそ、『マッドマックス』の世紀末の世界観が際立つと言っていいかもしれません。
――ちなみに、『マッドマックス』のゲームエンジンは何を使っているのですか?
ジョン オープンワールド専用の自社エンジンを使っています。私たちが使うテクノロジーはすべて自社開発で、これまで私たちが制作したすべてのゲームの基盤となっています。アバランチスタジオのゲームエンジンは、オープンワールドゲームでは業界の最先端を行くものという自負があり、だからこそ私たちはそれを使っています。
――本作の開発期間はけっこう長かったと聞いたのですが、開発では試行錯誤があったのですか?
ジョン 今回プレイしていただいたものの開発期間は、だいたい3年半くらいです。『マッドマックス』の世界観を見事に再現し、ゲームプレイに奥行きを与えて、ここまで作り上げるには、それくらいの年月が必要でした。どんなゲームの開発サイクルにおいてもそうですが、チャレンジもあったし、これまでのやりかたを変えて改善しなければならなかったり……ということがありました。たとえば、アクション映画的なプレゼンテーションのほうが重要なのか、プレイヤー自身がコントロールしていると実感できるプレゼンテーションのほうが重要なのか……といったような相反する価値観での葛藤は、それこそ数えきれないほどありました。それでも本作における目的ははっきりしていて、それは「真の『マッドマックス』の体験とは何か? そしてそれをどのような形でプレイヤーに対して提供すべきか」というものでした。
――ちなみに……ですが、もしジョンさんが『マッドマックス』の世界に放り込まれたらどうしますか?
ジョン うーん(笑)。おもしろいもので、じつはジョージ・ミラー(映画『マッドマックス』の監督)と会ったときに、『マッドマックス』の世界観に対する理解を深めるために、彼と似たような仮定の話をしたことがあるんです。「『マッドマックス』の世界はどんなだろう?」という。そのときに話したのは、『マッドマックス』の世界は社会が我々に制限を課す世界であり、そこでは人間の真の行動が浮き彫りになるというものでした。取り繕うことなどせずに人々の心の中に潜むものは何か……というのが見えてくる。まあ、人間性がいかに醜いものかということがわかるんですね。それこそが、私が感じる真の芸術なんです。まあ、それが“芸術”と認識できれば……ですが。個人的にはそう思っています。そんな世界に放り出されたときに、自分がどうするかはまったくわからない(笑)。
――率直なお返事ですね(笑)。
ジョン 私個人としては、利他的に振る舞うと思いたいところです。それからなんとか生き残って、スクロタスから身を守ろうとすると思いたい。でも、実際のところはあっさりと犠牲者になるかもしれません。
――最後に、このゲームを楽しみにしている日本のゲームファンに向けてひと言お願いします。
ジョン なるべく多くの日本のゲームファンに、アバランチスタジオのゲームをプレイしていただきたいと願っています。私たちが開発を楽しんだのと同様に、皆さんにもゲームを楽しんでいただきたいです。