コーエーテクモゲームス ガスト長野開発部が手掛けるRPG『アトリエ』シリーズ。その最新作であるPS Vita/PS4/PS3用ソフト『ソフィーのアトリエ ~不思議な本の錬金術士~』(2015年9月25日発売予定)では、前作からキャラクターや世界観が一新されており、『アトリエ』シリーズの中核をなすアイテム調合のシステムも、大幅にリニューアルされている。
さまざまな面で『アトリエ』の“新スタンダード”を目指す本作。シリーズ初の“W(ダブル)イラストレーター”を採用していることも、大きな特徴として挙げられるだろう。主人公ソフィーや、冒険の拠点となる街キルヘン・ベルに住む人々を描くのは、新進気鋭のイラストレーターNOCO氏。物語のカギを握るキャラクター・プラフタや、遠方からやって来たキャラクターを描くのは、透明感のあるタッチが特徴のイラストレーターゆーげん氏だ。
本記事では、NOCO氏とゆーげん氏のインタビューをお届け。『ソフィーのアトリエ』のキャラクターデザインにおいてこだわった点や、絵に対する想いをうかがった。
※本インタビューは、週刊ファミ通2015年8月6日号(2015年7月23日発売)に掲載された内容に、加筆・修正を行った完全版です。
左 NOCO氏
埼玉県出身1992年4月2日生まれのイラストレーター。「艦隊これくしょん-艦これ- 陽炎、抜錨します!」(ファミ通文庫)、「大正空想魔術夜話 墜落乙女ジヱノサヰド」(電撃文庫)、「祓魔科教官の補遺集授業」(一迅社文庫)などのライトノベルを中心に活動している。
右 ゆーげん氏
千葉県出身、東京都在住のイラストレーター。空気感を意識したイラストと、緩急つけたキャラクターを描き分け、小説などの挿絵を手掛ける。近年ではゲームなどでもキャラクターデザインをするなど活躍の場を広げている。主な代表作として「クロス×レガリア」(角川スニーカー文庫)や「アウトブレイク・カンパニー」(講談社ラノベ文庫。後にアニメ化)、ゲームでは『ブレイブリーデフォルト プレイングブレージュ』(スクウェア・エニックス)のキャラクターデザインなどを担当。
Wイラストレーターで“いいものをお届けする”
――初めに、コーエーテクモゲームスの方からキャラクターデザインの依頼があったときのお気持ちを教えてください。
NOCO氏(以下、NOCO) 『アトリエ』シリーズのことは以前から知っていまして、「いつかはキャラクターデザインをやりたい」と憧れていたので、うれしかったです。自分にはまだ早いな、という気持ちもあって、緊張も感じましたが……。
ゆーげん氏(以下、ゆーげん) 僕もすごくうれしかったですね。自分が子どものころ、『マリーのアトリエ』がゲーム屋さんに並んでいるころから『アトリエ』シリーズのことは知っていて、長く愛されているシリーズに携われるということで、光栄でした。ただ、今回はW(ダブル)イラストレーターということで、最初は不安も感じました。
NOCO 私も、不安はありました。ぜったいにケンカになるんじゃないかと思いましたし……(笑)。
ゆーげん お互い不安もあったので、まずは「仲よくなろう!」と思って、敬語を撤廃するところから始めたんですよね。それから話をしていくなかで、考えていることとか、気持ちの流れが、僕とNOCOさんはすごく似ているなと思って。いまはふたりで“いいものをお届けできる”と思っています。
――お互いの絵の魅力は、どんなところにあると思いますか?
NOCO ゆーげんさんの絵は、繊細なタッチなのに、エネルギーがあって。繊細さと力強さが共存しているところが、すごく魅力的だと思います。ハートで描いているんだなと感じて、刺激を受けています。
ゆーげん NOCOさんの絵を拝見して思ったのは、「上手いなぁ」ということです。しっかりと描き込んでいる部分と、いい意味で抜けている部分があって、僕にはない技術があってすばらしいと思います。そういう絵が描けるのは、やっぱりNOCOさんの魅力的な人間性あってのものですよね。NOCOさんはおとなしそうに見えて、サバサバしていたり、一方で情緒的なところもあったり……すごく魅力のある人だなと、いっしょにお仕事をして、好感度がすごく高まりました。
NOCO ありがとうございます。
ゆーげん いまはふたりで合作を描いていますが、NOCOさんはNOCOさんのいいところを出しながら、僕に背中を預けてくれるというか。いい関係を築けていると思います。
NOCO ゆーげんさんはとても勢いがある人で、絵にもそれが表れていると思います。その勢いに引っ張っていただきながら描いていますね。
ソフィーのデザインは15回も描き直した!
――デザインは、ふたりで密にやり取りをしながら進めていったのですか?
ゆーげん 初めのうちは、NOCOさんの絵はあえて見ないようにしていました。相手のデザインを見ると、どうしても影響されてしまうので。ガストさんも、「お互いが影響を受け合わないようにする」というスタンスでした。
――確かに、せっかくのWイラストレーターなのに、互いの個性を消してしまってはもったいないですよね。では、NOCOさんはデザインを進めるうえで、どんなところに苦労されましたか?
NOCO いままでの『アトリエ』らしさもありつつ、“アーランド”シリーズや“黄昏”シリーズとは違うデザインを、ということで、イメージを掴むまでに時間がかかりました。とくにソフィーのデザインは難しくて、ほかのキャラクターのデザインを進めながら、いろいろな方向性を考えましたね。最初にデザインが完成したのは、コルネリアでした。
――てっきり、主人公のデザインが最初に決まったのだと思っていました!
NOCO コルネリアは、ちょっと中華風の、異色のキャラクターなのですが、しっかりとイメージが固まっていて、デザインしやすかったんです。つぎに決まったのはモニカですね。ソフィーはデザインが決まるまで、長い道のりがあって……15案くらい考えたと思います。魔法少女みたいな格好をしている時期もありました(笑)。かなり悩んで、改めてそれまでに描いたラフを見返したら、コートを着ている案がありまして。そのコートを活かそう、ちょっと野暮ったい方向にしよう、ということで、いまのソフィー(初期衣装)ができあがっていったんです。
――主人公を生み出す苦しみは、そうとうなものだったのですね。ところでソフィーは、物語の途中で衣装を着替えますが、変身後のデザインのコンセプトは?
NOCO “アーランド”シリーズ以降の錬金術士のイメージを引き継いでいけたらいいな、と思いながらデザインしました。黄色をメインにしつつ、青色も取り入れて、爽やかな衣装になっています。野暮ったい最初の衣装とイメージを変えていますね。