とにかく緊張感がハンパない
2015年8月5日~9日(現地時間)ドイツ・ケルンにて、ヨーロッパ最大のゲームイベントgamescom 2015が開催中だ。会期中に、ユービーアイソフトの『レインボーシックス シージ』を試遊することができた。『レインボーシックス シージ』といえば、記者がE3で接して極めて印象に残ったタイトルのひとつ。5人の仲間で協力して、テロリストに相対するという本作。E3で記者が体験したのは、PvEにあたる“Terrohunt”だったが、今回試遊できたのは、5対5のPvP。各国のメディアに集まってもらい、5対5で対戦してもらおうという趣向だ。
対戦は、オフェンス側とディフェンス側に分かれて、交互に行われる。最初に記者が所属したのはディフェンス側。守るべき部屋を多数決で決めて、敵の侵入を防ぐことになる。最初に与えられるのは、30秒の準備時間。その間、オフェンス側はドローンなどを飛ばして建物内を内偵し、ディフェンス側はバリケードを築くなどして、侵入に備えることになる。記者が隙間から侵入してきた敵のドローンを破壊すると、リーダー役のユービーアイソフトのスタッフの方から「ナイス!」とのお褒めのボイスメッセージが。
と、気をよくしたところで対戦がスタート。対戦時間はずばり4分。「思いのほか短いな。これなら守りきれるのでは?」と思いつつ、敵の侵入に備えるわけだが、これがけっこうな緊張感。「あっちから攻めてくるかな? こっちから来るかな?」とドキドキしつつ、なかなか行動が定まらない。正攻法で正面から攻めてくることもあれば、壁などを破壊して侵入してくることもあるようで、ディフェンスしなければいけないポイントがいくつもあるのだ。ついつい、ふらふらしようとすると、同席してくれたユービーアイソフトの広報さんから、「あまりディフェンスポイント(部屋)から出ないほうがいいですよ」とのアドバイスが。
1分、2分と時は過ぎていき、緊張感が募るばかり。“緊張感”というのは、本作のキーワードとしてよく言われることではあるようだが、たしかにこの緊張感はハンパない。と、いきなり正面から敵が侵入。味方は団結して相対することに。さすがに正面から攻めてくる敵にそうそう遅れを取ることはあるまい……と思っていると、記者は後ろから狙撃され、あっさり倒されることに。どうやら、ドローンが侵入していて、部屋の中の様子は筒抜けで、壁の向こうから狙撃されたようなのだ。「なかなかやりますね」とは、ユービーアイソフトの広報さんのお言葉。ご存じのとおり『レインボーシックス シージ』では、1回倒されるとリスポーンできないというシビアな設定。記者は戦況を見守ることに。味方はひとり倒され、ふたり倒され……と1対3となり、「これはきびしいかな」と思われたところで、一挙に劣勢を挽回。ディフェンス側の勝利となった。この緊張感、ハマる!
ちなみに、本作ではFBIやSWAT、スペツナズ、SAS、GSG9、GIGNといった5ヵ国のカウンターテロ組織から好きなメンバーを選べるのだが、今回ドイツの連邦警察局(BPOL)に所属する特殊部隊GSG9が初プレイアブル出展。そこで記者はオフェンス時には、GSG9のBlitsを選択してみた。このBlits、防弾シールドを駆使する前線のエキスパートであるらしい。
まずは、30秒の準備タイム。ディフェンス側はバリケードなどを築き防御したが、オフェンス側がこの時間内でやるべきことはドローンによる探索。味方全員がドローンで敷地内を探索して、敵の出方をうかがい、状況をシェアするのだ。とはいえ、30秒は短く、「ドローンの操作も楽しいなあ」などと思っているうちに準備時間は終了。これもマップの詳細などがわかってくれば、要領よく敵の出方を探ることができるんだろなあ……と思われた。
いざ、敵地に侵入。我がチームの戦略は“ゴリ押し”であるようで、正面から突入しようとするみなさん。ここで大いに役に立ったのが、Blitsの防弾シールド。これが超強力で、敵の攻撃をシャットアウト。すかさず入り口付近に出現してきた敵を屠ることに成功。ところが、「これって、いいんじゃん!?」と勇んで建物の中に侵入すると、あっさり一撃を食らい瀕死状態に。この状態で味方のサポートがあると蘇生することができるようだが、誰からも救いの手は差し伸べられず(涙)、記者はあえなく絶命となった。
にしても、『レインボーシックス シージ』はおもしろい。攻防時の緊張感もさることながら(とくにディフェンス時)、戦略性の高さがたまらない。ちゃんとマップも把握して、お互いの立ち居振る舞いを理解して連携を深めれば、相当深みのあるプレイができるのではないかと思われた。絶妙なのがプレイ時間で、リスポーンがないことで、プレイ時間は短めに設定されているが、さくさくテンポ進めるのがいい。そして、記者のようなFPSがあまり得意ではないプレイヤーにとってうれしいのが、操作方法がけっして難しくはないところ。もしかして、操作はある程度基本的な部分におさえて、戦略面を重視しているのではないか……と思われたが、この敷居の低さはうれしい(もちろん、上級者には上級者で奥深いスキルがあるのでしょうけれども)。
さて、gamescom 2015では、『レインボーシックス シージ』の新たなゲームモードが発表されている、それは“Spectator Cam”、いわゆる観戦モードだ。この“Spectator Cam”は、一人称視点はもちろんのこと、俯瞰視点の“タクティカルビュー”での観戦も可能で、チームの戦術やプレイヤーの立ち振舞などを閲覧可能となっている。すぐれたチームの戦術を勉強するには最適のモードと言えるだろう。そして、昨今はやりのe-スポーツにも、大いに親和性があるのではないか。
「FPSというジャンルを変えるような作品に」
というわけで、記者もさらに引きこまれてしまった『レインボーシックス シージ』。もっと、本作について知りたい! ということで、ユービーアイソフト モントリオールのアートアニメーションディレクター、スコット・ミッチェル氏にお話をうかがうことができたので、以下にそのやり取りをお届けしよう。スコットさんは、アニメ(動き)に特化したアートディレクター。ゲーム全体のアートのビジョンを統括している。2Dアニメからキャリアを出発させ、プレイステーション版『トニー・ホーク プロスケーター』を遊んでゲーム業界を志したとのことだ。ユービーアイソフトでは、『スプリンターセル カオスセオリー』などを担当したとのことだ。
――本作において注力しているポイントは?
スコット FPSの“ゴールデンルール”と言われている、基本のルールがあって、FPSをやる人はみんなそれに慣れているんですね。そこから離れるとすごく遊びにくくなるわけですが、今回はサードパーソンビューを取り入れるので、そこをうまくゴールデンルールとかみ合わせなければいけませんでした。そこは苦労した点でもあり、醍醐味でもありましたね。そのため、モーションキャプチャーをするにも、役に見合った人にお願いする必要があったんです。カウンターテロリストのオペレーター役も、実際に仕事に従事していたイスラエルの方にお願いしています。その方は、本当にさまざまなカウンターテロリストユニットのことをよく知っている方で、ガンの構えかたやどうやってしゃがんで隠れるかなど、GIGNのやりかたやSASのやりかたなど、それぞれやりかたが異なることを熟知されていたんです。実際の経験者にお願いできたのは、結果として大きかったですね。
――モーションキャプチャーはその方がおひとりで?
スコット あー、いえいえ。けっこうな数の方にお願いしています。このゲームは全体を通して7年くらいかけて取り組んでいるプロジェクトで、以前のプロジェクトをリブートして、『レインボーシックス シージ』となってからは2年くらいになるのですが、そのあいだ多くの俳優さんにお願いしています。シネマティックに関しては3人の俳優さんを使っていますよ。オペレーターだった方、警察の関係者、カナダの国家警察に所属していた方と、いわばその道のプロの方ばかりですね。
――それぞれのカウンターテロリストのユニットって、やっぱり動きが異なるものなんですね?
スコット もちろん! 一例をあげると、足の立ちかたが異なっていたりするんですよ。『レインボーシックス シージ』では、そのへんもしっかりと再現しているというわけです。
――今回のgamescomでは“Spectator Cam”が発表されましたね。
スコット “Spectator Cam”はとてもおもしろいフィーチャーです。いわば、“11人め”として、観察者としてゲームに参加できるんです。“Spectator Cam”には、10個のカメラを通して、ゲームの詳細を見ることが可能です。あと、“タクティカルカメラ”というのが用意されていて、全体を俯瞰することができるんです。プレイヤーは“Spectator Cam”を通して、自分が何をすればいいのかを学ぶツールなんです。
――はい。戦略を学ぶ、学習ツールの役割もあるんですね。
スコット e-スポーツの見地からみても、マッチを見て、自分が何をすべきか学習するというのはいいフィーチャーだと思います。
――最後に、『レインボーシックス シージ』を心待ちにしているファンの方にひと言お願いします。
スコット 『レインボーシックス シージ』が発売されることを本当にわくわくしています。本作は、インドアでの戦闘なので、緊張感を感じてもらえますし、さらに、爆発ひとつとっても同じものはないので、1回1回、異なる経験をしてもらえる。本作にはこれまでのFPSとは違う要素がたくさん入っているので、FPSというジャンルを変えるような作品になっていると自負しています。発売日を心待ちにしていてください。